その日、鹿目まどかは不運であった。
『たまたま』普段より少しばかり早く目が覚めて。
『たまたま』ちょっと早めに学校へ行ってみようかなんて思いついて。
『たまたま』塀の上で毛づくろいをしていた可愛らしい黒猫さんを見かけて、「にゃー」なんて声をかけてみたらそっぽを向かれて。
『たまたま』黒猫さんが塀から降りた先で、明らかにスピード違反な車が超高速で迫ってきていて。
『たまたま』まどかは黒猫さんよりも先に車の存在に気がついて。

だから、彼女はほぼ反射的に「黒猫さんを助けなくちゃ」と思う暇すらなく、道路に飛び出した。


彼女は知っていたのかもしれない。
死にゆく誰かの命を救うことは、対価として命を支払わなければならないことを。

知っているからこそ、数多の世界線においても、いつだって他者の為にその身を捧げてしまう―――のかもしれない。
だから、この場で黒猫さんを庇い命を落とすとしても、その選択肢を選んだのは自分だ。
ならば、それはやはり不幸ではなく「目の前で命が失われ行く瞬間を目撃してしまった」不運だとすべきだろう。

だが、それで彼女の命が費えるわけではない。

なぜなら

パァン

不運な彼女を救う者が傍にいたのだから。

「あれ...?」

まどかはキョロキョロと見回し己の状況を確認する

たしかに自分は轢かれると思っていた
だが、自分の身体には傷一つなく、代わりに車は道脇に寄せられボンネットが大破している始末だ

訳がわからない。だが、自分も黒猫も無事なのは素直に喜ぶべきだろう

ほっと胸をなでおろすのも束の間、今度は車の運転手が気にかかり、助けなくてはと車に駆け寄る

それがいけなかった。

車から降りてきた男は、大丈夫ですか、と声をかけようとしたまどかの首根っこを掴み、力強く頬を叩いた。
頬に走る痛みに、遅れて恐怖を覚え、声すら出せず硬直するまどか。
その様を見て男はにやりと口角を吊り上げ、傍にあった細道へとまどかを引きずっていく。

ダンッ、と壁に叩きつけられ、首筋の痛みと共にまどかは咳き込む。

「このクソガキが。俺の車をあんなにしやがって」

こめかみに青筋を立て、歯軋りと共に恫喝する男に、まどかの喉がヒッ、と鳴った。

「ご、ごめんなさ...」
「ごめんなさいで済むなら警察はいらねェんだよ、エェ?あの車がいくらすると思っていやがる」

男はこめかみに青筋を浮かべながらも、内心は舌を出してあざ笑っていた。
非は明らかにスピード違反を犯していたこの男にある。百歩譲って飛び出した方を責めるにしても、まずは轢きかけた相手の容態を確認するのが常識だ。
だが、この男、自分に非があることを隠すどころか、むしろまどかを脅して金を毟り取ろうとしているのだ。

「とりあえず修理費の100万を払いな。話はそれからだ」
「ひゃ、百万なんて、そんな...!」
「てめェが壊した車だろうが!!」

パァン、と再び小気味良い音が鳴り、まどかの頬が赤みを増す。
彼女から漏れる悲鳴と涙が、男の興奮を煽り欲をそそり勃たせる。

「ハッ、良い声で鳴きやがるじゃねェか」
「うっ...えぐっ...」
「まあ、俺も鬼じゃねえ。今すぐ払えとは言わねえよ。代わりに」

男は下卑た笑みを浮かべ、舌なめずりする野獣のようにまどかの服へと手をかける。

「いっちょ身体でも張ってもらおうじゃねえか!」
「―――!!」

響く悲鳴をあげようとするまどかの口を押さえ、しかしその微かに漏れる悲鳴に男はますます息を荒げる。
背後のかばんから取り出すのはビデオカメラ。余すことなくまどかのつま先から髪の先までねっとりと視線を這わせる。

「いいねェいいねェ、その恥辱と恐怖で歪んだ顔を女子(おなご)でしか勃たねえ変態共に売りつけりゃボロ儲けだ。俺もしばらく使わせてもらうぜ」
「や...やめて...」
「やめられねェな、ええ!?お前はこれから俺の奴隷になるんだよ!」

ガハハハ、と男の笑い声が木霊する。

「ちくしょう勃起が半端ねェ。もう我慢できねェよ」

男はズボン越しに己の局部をまどかへと押し付けようとする。
まさに人生の終末への分岐点とでもいえる、この瞬間にも鹿目まどかは『不幸』ではなく、やはり打ち消すことができる程度の『不運』だ。

何故なら。


ヌッ

背後から現れた手が、男の口元を抑え

グイッ

男を無理矢理まどかから引き剥がし

「フンッ」

ぐしゃっ

男が落としたカメラを踏みつけ壊してしまったからだ。


「ウチの者に、手を出さないでもらおうか」

声の主は男だった。
細身の体躯に、晴れの日だというのに身を包むレインコート、そしてその顔を隠す丸メガネとマスクといった明らかに"変質者"の出で立ちである。
当然、そんな男に投げ飛ばされた男は思わず言葉を失ってしまい、パクパクと口を開閉するだけ。

しかし、まどかの反応は違った。

「あ、篤さん!!」

まるで窮地にヒーローが現れた子供のように、パァッ、と顔を輝かせたのだ。
篤と呼ばれた男は、ハァハァと呼吸を繰り返すのみで、まどかへと言葉を返さない。

「警察はもう呼んである。退くならいまのうちだ」

丸メガネが煌き、その双眸を微かに覗かせる。

(ち、チクショウ...)

男は、現状の不利と篤の脅威を感じ取り、早々に背を向け、壊れた車に乗り込み去っていった。

「...ほら、立てるか?」

篤は振り返り、まどかへと手を差し伸べる。

「は、はい。ありがとうございます」

まどかは、お礼と共に、その目に涙を浮かべつつもにこやかな笑顔を浮かべた。

「そういえば警察は...」
「あれは嘘だ。俺の立場でそんなものを呼べるわけがないだろう」




てく。てく。てく。

まどかと篤の二人は、通学路を並列で歩いている。車道側が篤なのは、彼なりの気遣いからだ。

「なあ、なんでさっきのやつに抵抗しなかったんだ?」
「え...」
「魔法少女だったか。お前ならあんな奴の腕をへし折るくらいはできただろ」
「へし折るだなんて、そんな」
「聖杯戦争が始まれば、あんなものじゃすまなくなる」

篤の顔が険しくなり、まどかを見る目もかける言葉も自然と力み始める。

「さっきの奴はNPCで、ただの一般人だった。だが聖杯を狙うマスターやサーヴァントはあんなものじゃない。もっと残酷で、卑劣で、予想外の行動すらとるだろう。
そんな時ですら、お前はああやって相手に遠慮して力を振るわないつもりか?」

投げかけられる厳しい言葉に、まどかは思わず俯いてしまう。

「...わかってます。どこかで戦わなければいけないことは」

まどかは、静かに、震えつつある声で搾り出す。

聖杯戦争。
この世界に連れてこられた際、封印されていた記憶の再構成の際に知ることができた断片的なその全貌。
それは、如何な願いも叶える器『聖杯』を勝ち取るための、命を賭けた争奪戦だった。
自分に他者を蹴落としてまで叶えたい願いはないし、当然、魔女でもない人々を殺めること自体が嫌だ。
誰も傷つけあわず、このままもとの世界に帰ることができればどれほどいいか。
けれど、聖杯戦争では帰る権利すら、他のマスターと戦い、蹴落とし、勝ち取らなければならない。
人に害為す魔女を倒せば元通り、なんて甘い考えは通用しない。
たとえ相手が一般人であろうとも、殺さなければ帰ることすら許されないのだ。

「でも、わたしは殺すために戦いたくはありません」

それが困難な道であることはわかっている。わかっているからこそ、まどかは顔を上げ力強い眼差しで篤を見据えた。


「きっと、わたし以外にも聖杯戦争...ううん、そんな大層な名前で誤魔化したくない。殺し合いをしたくない人はいるはずです。そんな人たちを見捨てることなんてできません」
「甘い考えだ。お前の言うような人間でも、自分が生き残るためなら...願いを叶える為ならどんな手段も平然と使ってくるぞ」
「甘くていいじゃないですか。魔法少女は、みんなの夢と希望を叶えるんですから。もしここで誰かを見捨てたら...わたしは、もう魔法少女じゃいられなくなる」

鹿目まどかは、なんの取り得もない少女だと彼女自身が自覚していた。
ドジで、弱虫で、のろまで、なんの役にも立てない。そんな自分が大嫌いだった。
けれど、魔法少女となってからは、だいぶ変わったように思えた。
魔女と戦い、間接的に人々が救われているのを見て、これでよかったんだと思えるようになった。
こんな自分でも誰かの役に立てるんだと、そう実感し、自分にもそれなりに自信がついてきた。

だから、この殺し合いでも同じ。
救いを求める声が聞こえれば、必ず『魔法少女』として力になる。
それを破ってしまえば、彼女はもう『魔法少女』でいられなくなるから。
だから、彼女はこの場に於いても己の信じる『魔法少女』で在り続けようと決意した。

「......」

フードから顔を覗かせる篤の顔色は、まどかから見れば暗く写っており、正確には読み取ることができない。
ある種の威圧感すら感じるその面持ちに、思わずまどかの鼓動は緊張感からドキドキと波打ち、自然とハァハァと息が漏れ始める。
いくら魔法少女となりそれなりに自信を持てるようになったとはいえ、根が温厚な少女である。
そんな彼女が篤からプレッシャーを感じれば、そうなるのも必然なのかもしれない。

「―――そうだな」

そう、口を開いた篤は、影が晴れ朗らかな微笑みを浮かべていた。

「誰も死なないにこしたことはない。お前の言うとおりだ」
「篤さん...!」
「ああ。俺も、及ばずながら力になるよ」

まどかの顔がパァッ、と明るくなる。
聖杯戦争はマスターとサーヴァント、どちらが欠けても為しえない戦いだ。
ここで二人が仲たがいしてしまえば、それだけで無力な存在と化してしまう。
だから―――いや、それ以上に、篤が賛同してくれたことがまどかにとって理由なしに嬉しかった。
魔法少女でもない彼が、共に手を携え戦ってくれる。これほど素敵なこともないだろう。

「あっ...そういえば篤さんはなにか願い事はあるんですか?」

ふと、そう問いかける。
わざわざ英霊と化してまで戦いに臨むというのだから何かしらの理由があるはずだ。勿論、意図せず呼ばれた者もいるだろうが。
ただ、あまり篤自身の素性は聞いていなかったため、自然と疑問に思った。

「そんな大層な願い事じゃないさ」

篤は笑みを崩さず、しかし丸メガネからのぞかせるその瞳にはどこか懐かしむような寂寥を帯びて言葉をつむぐ。

「ただ、弟や大切な人たちに幸せに暮らして欲しい。俺の願いはそれだけだよ」

まどかは思わずキョトンとした表情を浮かべてしまう。
篤の風格は、漫画やドラマなんかで見るような所謂『戦士』的なものだった。
それこそ、敬愛する師である巴マミ以上にだ。
しかし、その口から出た願いはなんとも素朴なもので。
だからだろうか。まどかの頬は自然と綻んでいた。

「篤さん、弟がいるんですね」
「ああ。俺の、かけがえのない弟だ」

弟の話題に触れた途端、篤の眉間からは皺が消え、その口のまわることまわること。
まどかがひとつ質問すれば、その答えに更にひとつ情報を加え、微笑みながら弟について語りだす。
まどかの目には、その姿が、英霊などという大層なものではなく、ただ弟思いな兄としか写らなかった。

「もしもあいつと会わせられる機会があったら会わせてやりたいよ。結構お前に似てる奴だし、仲良くなれると思う」
「ふふっ、楽しみです」

きっと、弟がかわいくて仕方ないのだろう。弟がいるまどかにはその気持ちがよくわかった。
だから、篤の弟の話は聞いていて楽しかった。
自分が弟のタツヤの話を振れば、篤は笑顔のまま聞き入ってくれた。

互いに弟の話に熱が入りつつも、まどかは思う。

もしもこれから起こるのが聖杯戦争なんかじゃなかったら。
こうして、過去の人と仲良くなれる催しだったらいいのにと。

けれど、これから起こるのは間違いなく聖杯戦争だ。己の願いの為に、他者を蹴落とし、そして勝利する。

そんな潰しあいなどしたくない。その気持ちに嘘はない。
しかしだ。もしも篤が語ったように、守ろうとした人が牙を向いてきたら。
果たして自分は魔女でもない人たちと戦えるのだろうか。戦った上でなお『魔法少女』でいられるだろうか。

まどかの不安と恐怖は拭い去れない。

(でも、わたしは一人じゃない)

まどかのサーヴァント、篤は言った。犠牲者が出ないのに越したことはないと。
犠牲者を出さないよう、共に戦ってくれる者がいる。それだけでも、まどかの背を押すには充分だ。

(わたしは、最後まで希望を振りまく魔法少女らしく生きる。きっと、マミさんがいたらそうするだろうから)

憧憬と理想を胸に秘め、鹿目まどかは密かに決意するのだった。








グジャッ

「ヒイイイィィィ!!吉川がぁ!吉川の頭が丸太にィィィ!」

グシャリ。

「嫌ァァァァァ!!」

パァン。

「な、なんなんだよ!俺たちはただ、ちょっとイタズラしようとしただけで...」
「イタズラ、か。車の腹いせで家に火を放つのをイタズラで済ませる奴を生かして置く訳にはいかないな」
「ヒィッ、た、たすけ」

グチャッ。


ハァ、ハァ、と呼吸音が大気に溶けていく。

月夜が照らす夜。
英霊・宮本篤の眼前には多くの肉塊が転がっていた。
その中には、今朝まどかを襲った男も混じっていた。

篤は、男がなんらかの形でまどかへと報復に来るであろうことを察していた。
その予感は見事に当たっていた。男達は、あろうことか10人以上の仲間を連れ、車が壊れた腹いせにまどかの家を襲撃しようとしていたのだ。
そこで篤は、男達がまどかの家へ向かう前に彼らと接触したのだ。
篤は彼らの姿を認識するや、即座に行動を開始。
対話を試みる暇すらなく、その手の丸太で問答無用で全員を叩き潰した。
これは全て、まどかの意思の介在しない、篤の単独行動である。

「...あいつが知れば、幻滅するだろうな」

『あいつ』とは、現在の己のマスター・鹿目まどかであり、最愛の弟・宮本明でもある。

鹿目まどかはこんな異様な状況に巻き込まれても、己の信じる道を進むと腹を括っていた。
明は吸血鬼でない者をどうにか助けようといつも奮闘していた。

篤のやったことは、全て彼らの意思に反する行為だ。

もしも彼らが篤の立場であれば、まずはどうにか犠牲者を出さないように穏便に済ませようとしたことだろう。

だが、篤は違う。
吸血鬼でもない普通の人間を問答無用で殺したのだ。

(それでも構わない。俺は、俺の願いを叶える為なら幾らでも手を汚そう)

篤の願い。
それは、聖杯で願いを叶え、吸血鬼の首領・雅を抹殺し、明を始めとした大勢の者たちを呪われた因果から解放すること
そして。

(まどか...お前の手は汚させない。お前にかかる火の粉は、俺が振り払う)

鹿目まどかが、その手を汚す前に元の世界に帰してやること。

篤は、本来なら従来の聖杯戦争のルールに則り、マスターと共に敵を斃して聖杯を手に入れるつもりだった。
まどかに対してもそうだ。
まどかを車から助けた後、男に乱暴をされてもギリギリまで助けに入らなかったのは、彼女というマスターを確かめる意味合いがあった。
もしも、魔法少女の力を使い男を捻じ伏せていれば、篤は共に勝ち抜くマスターとして彼女を扱った。
だが、まどかは自分の身が危険に晒されても魔法を使わなかった。

極め点けに、殺すために戦いたくないというあの返答だ。

篤は理解した。
鹿目まどかは、優しく、自分の為に頑張れない―――明と似通った人間なのだと。

明が幼稚園の頃、轢かれた猫を見てずっと泣いていたことがある。
そこには、打算のような邪な気持ちはなく、純粋に猫を悼んでいただけだった。
まどかが猫を庇ったのも同じだろう。邪な気持ちで身を投げ出すことなどできるはずもないのだから。

加えて、昔から明は、自分のためには頑張れない人間だった。
かつて明の運動会を見に行った時、徒競走の順位は5位。友達のケン坊は1位だ。
明は自分の順位を恥じることなく友達と笑いあっていた。
彼は、人を蹴落とすくらいならと頑張るのを諦めてしまう性格だった。

まどかもそうだ。
自分の命が懸かっているというこの状況でも、実際に恐怖を味わってもなお、他者を蹴落とすことに嫌悪を抱いていた。

同じだ。

鹿目まどかは、彼岸島へ渡る前の明そのものなのだ。

(まどか、お前は間違ってない。なんであれ、殺し合いで解決するなんてのは最低な解決方法だ)

自分と戦い見事に勝利した明を否定するつもりはない。
彼は彼岸島で友の死を背負い、本気で強くなりたいと願い、誰よりも頑張り始めた。
篤が内心で恐れるほどの資質はあれど、それを活かそうとしない明にもどかしさを感じていたが、強くなった明と全力で戦いあえたことはこれ以上ない喜びだった。
最後の最後で、明が自分との別れを涙し惜しみつつも、その悲しみを背負い刀を振り下ろしたことには誇りすら抱いている。

けれどその一方で、彼に自分と同じ道を歩んでほしくないと思っていたのも事実だ。

かつての親友、村田藤吉の弟、武。
彼もまた、明と同様、生き物を殺せないほど優しい少年だった。それも、吸血鬼相手でもだ。
村田の頼みで修行をつけてやっていたが、当初は彼のことを足手まといだと感じていた。
だが、まだ本土にいた明の姿と重ねるうちに、武はこのままでいいと思えるようになっていった。
彼岸島は地獄だ。それこそ、聖杯戦争以上におぞましく、残酷で非情な、命が紙切れのように散っていく地獄だ。
その地獄にあってなお、武は紙切れのような命を手放さず、生き物を殺せなかった。
篤はそれを恥だと思わず、むしろあの島でまともでいられる武を誇りにすら思っていた。
...そんな武がついに敵を殺し真に彼岸島の住人となった時には、ねぎらいの言葉をかけながらも涙を隠すことが出来なかった。

武も明も、本当はその資質をもっと別のことに使ってほしかった。
勉強でも、スポーツでも、仕事でもなんでもいい。
ただ、殺し合いなんかじゃなく、もっと他のことで自分と競い合って欲しかった。

(だからこそ、お前には敵を殺す憎しみを覚えてほしくない。お前には、まともでいてほしいんだ)

鹿目まどかは篤にとって『希望』だ。かつて、明や武を守りきれなかった自分への、最後のチャンスだ。

(まどか。お前にはそのままでいてほしい。勿論、この戦いでそんな悠長なことを言っていればいつかは殺されてしまう)

救世主、赤い箱、時間泥棒、怪盗。
このごろ囁かれる噂はロクなものではなく、それだけでも危険人物であることを察せられるものばかりだ。
もしもこの『噂』がまどかと遭遇すれば必ずや相容れず戦いが始まるだろう。

(だから、俺が守ってやる。手を汚すのは、何百人と殺してきた俺の役目だ。お前は、その純粋な眼差しを失わないでくれ)

わかっている。
たとえこんなやり方でまどかを守ろうとも、誰も喜ばないことを。
まどかを守ったところで、かつての失敗がなかったことになどならないことを。
それでも彼は決めたのだ。
自己満足であっても、かつての希望は必ず守ってみせると。


くるりと踵を返し、凄惨な現場を後にする。
宮本篤。
かつて彼岸島で戦い続けてきた男は、英霊と化してなお武器を取る。
かつて愛した全てのものを取り戻すために。かつての希望を守る為に。

彼の孤独な戦いは、舞台を変えてなお続く。



【クラス】ランサー

【真名】宮本篤

【出典作品】彼岸島

【ステータス】筋力:C+ 魔力:E 耐久:B 幸運:E 敏捷:A 宝具:B

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。 魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】

矢よけの加護:D
飛び道具に対する防御。
狙撃手を視界に納めている限り、弓矢による攻撃を肉眼で捕らえ、対処できる。
また、あらゆる投擲武器を回避する際に有利な補正がかかる。
ただし、超遠距離からの直接攻撃は該当せず、広範囲の全体攻撃にも該当しない。

単独行動:C
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
本来はアーチャーのクラススキルだが、長年の修練によって独自のスキルとして反映された。

気配遮断:B
サーヴァントとしての気配を絶つ。完全に気配を絶てば発見は困難。
本来はアサシンのクラススキルだが、長年の修練によって独自のスキルとして反映された。

無窮の武練:C+
かつて彼岸島の吸血鬼のボスである雅と一騎討ちの果てに一時的にとはいえ勝利を収めた武練。
いかなる戦況下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる


【宝具】

『丸太』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1~4 最大補足:1~15
彼岸島の主要武器のひとつ。これを振り回すことで篤や仲間たちは吸血鬼や亡者といった人外の者たちを葬ってきた。
また、矢を防ぐ盾になるのはもちろん、車に槍状に括り付け亡者の壁を突破、巨大な丸太で分厚い城の門を破壊する、ケーブルカーに括り付け吸血鬼を一掃など応用性も半端ない。

『薙刀』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大補足:1~30
篤の本来の武器。これを手にした篤はまさに縦横無尽じゃ。携帯に不便なため、普段は薙刀より運びやすい日本刀や丸太を使用している。
日本刀はともかく丸太の方が持ち運びにくいのではとかツッ込んではならない。それには訳があるんじゃ。

『吸血鬼化』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:自身のみ。
彼岸島の吸血鬼の身体になる。吸血鬼になれば力は増すわ病気にはかからないわ少々の怪我ならすぐに治る体質になる。
デメリットとして定期的に人間の血を飲まなければ意識の無いままに暴れまわる邪鬼や亡者のような醜い怪物に変貌してしまうこと。
この宝具は一度発動すると二度と元に戻ることができなくなる。


『感染』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:血を与えた者。
宝具『吸血鬼化』を発動した時のみ発動できる。魔力を消費することにより血を与えた者を彼岸島産の吸血鬼にすることができる。
NPCのみに有効であり、マスターやサーヴァントには効果がない。


【weapon】
篤の主要武器。
その腕前は、並みの人間の数倍は強いはずの吸血鬼ですらまるで歯が立たないほど。


【人物背景】
彼岸島の主人公である宮本明の兄。作中の通称は兄貴。二年前、婚約者の涼子と共に来た神社で、閉じ込められていた吸血鬼の雅を開放してしまった為に、悲劇を起こす事になる。
後に明を助けるために雅の返り血を浴びて吸血鬼ウイルスに感染し、雅の動きを封じたまま、明が邪鬼を落とした振動で起きた雪崩に巻き込まれ死亡したかに思われたが、吸血鬼として五十嵐の研究所址にて再登場し、その際に自らの意志で雅に従っている事を告白。
明側、ひいては人間側と訣別。吸血鬼側につく。
涼子を傷付けた事への贖罪も兼ねて、人間を捕まえられず雅に見捨てられた年寄り吸血鬼達の面倒も見ており、皆から信頼されている。
お互い守る者(明は人間、自分は涼子達)があることを明に教え、自分が弟に超えられる事を恐怖に思っていたことを告白。ワクチンを賭けて明と真剣勝負を挑む。初めの頃は雅から「丸メガネ」と呼ばれていたが、後に「篤」と呼ばれている。以前は青山冷と組み、雅の不死の秘密について調査していた。
武器は丸太と日本刀を愛用していたが、実際には薙刀をもっとも得意とし、その腕前は師匠をも上回る(大型の武器で携帯に不向きなため、あまり使用していなかった)。
明との真剣勝負で深手を負い、それにより吸血鬼の血が覚醒、逃亡した先の教会において、そこで行われていた結婚式に乱入、そこに居た神父、花嫁、参加者を皆殺しにし、自分の血で吸血鬼にして利用するという吸血鬼の本性を表した。
激戦の際に左目を潰され失明した挙句、明に深手を負わされている。涼子やお腹の中にいる子供、そして村の老吸血鬼達を守らねばと命乞いをするが、直後に足場が崩れ転落した。
その際、落下の衝撃から明を庇ったため下半身を失い瀕死の重傷を負う。その後、明にとどめを請い、彼の介錯でその生涯を終える。享年25。平成15年4月3日の事であった。


【方針】
聖杯は狙うが、なによりもまどかがその手を血で汚さないことが第一。


【聖杯にかける願い】
雅を抹殺し、愛する者たちを呪われた使命に縛られない元の生活へと戻す。



【マスター名】鹿目まどか
【出典作品】魔法少女まどか☆マギカ
【性別】女

【weapon】
  • 弓矢
彼女の魔法。魔力を消費し放つことができる。

【人物背景】
名前から察せられる通り、魔法少女まどか☆マギカの主人公。
大好きな親友にクラスメイト、心優しい家族に囲まれた温かく平凡な日常を謳歌していた彼女だが、キュゥべえと呼ばれる耳毛の長い獣との出会いと契約となり魔法少女と化してから全てが変わり始める。
魔法少女と化してからは、師である巴マミと共に魔女との戦いへ日常的に臨むことに。
戦いはやはり怖い。それでも、優しい師に恵まれ、大切な人たちや新たにできた友達を守れることに彼女は充実していた。
しかし、そんな日々にも終わりが訪れる。最大の魔女、ワルプルギスの夜の襲来。
共に戦った師は打ち砕かれ、見滝原市に最後に残った魔法少女は鹿目まどかただ一人。
逃げることもできた。自分の命と傍にいた一人の友達だけ、或いは自分に密接に関わった者達だけを選び、探し出し、生き延びることもできたかもしれない。
けれど、彼女はできなかった。大好きで、大切なあの日々から目を背けることができなかった。
だから、彼女は唯一人己の身を案じ涙してくれる友達の制止を振り払い、その身を焦がしつくしてしまった。
その選択肢こそが、より多くの人間を巻き込む最悪の■■を産むことになるとも知らずに。

この聖杯戦争には、第一週目のワルプルギス襲来前からの参戦(少なくとも暁美ほむらとも面識がある時期)となっている。

参考資料:TVアニメ10話を見れば大体わかる。
より掘り下げたい人はドラマCDやまどか☆マギカポータブルのストーリーを追うといいかも。




【能力・技能】
魔法少女として培ってきた戦闘技術。
ただし、まだ新米であるためそこまで熟成されておらず、肉弾戦はあまりできないものと思われる。
また、暁美ほむらが魔法少女になる前であるため魔力もそこまで高くはない。



【方針】
どうにかして聖杯戦争を止め、みんなで脱出する。



【聖杯にかける願い】
なし。聖杯を狙うための戦いはしない。
最終更新:2018年05月11日 00:43