ああ、なんという美しき町。
日本とは思えない、ヨーロッパ基調が随所に散りばめられた、芸術性すら感じられる見滝原。
まもなくここが戦場となって、血肉と硝煙が漂うとは想像できない。
『音』が響いていた。
穏やかに流れる『時』と聖杯戦争の舞台として用意された『空間』……これらの支配をすり抜けて
音だけは、町のどこからか聞こえる。
美しさと感情を混入させた、人々を感動させるありふれた音色じゃない。
誰かに対して
この『世界』のどこかに居るであろうヒトに対して音は響き続けていた。
音は誰に聞こえるだろうか。
マスターか、サーヴァントにか。
悪か、畜生にか。救いようのない者に、あるいは救われてはならない者に対して。
悪魔へ、それとも魔女に?
もしかして、全てに対してなのかもしれない。
音を聞いた者は、抗う前に何かを感じる。
独りの魔法少女が優れた聴覚をもって『音』を耳にし、僅かな時も経たない間に、静かな涙を一筋流した。
○
「聖杯戦争――とても素晴らしいです」
幻想に登場するエルフのような容姿の魔法少女が、まるで言い聞かせるかのように独り呟く。
彼女の手は、もうすでに。
戦争などに導かれる前から血にまみれ、彼女の気品ある服ですら血みどろになった事もあった。
夢と希望に満ち溢れた幼い少女が描く正義と善良な魔法少女と異なり。
死線と絶望に満ち溢れた戦場でほくそ笑むのが、彼女――森の音楽家クラムベリーだった。
強者との殺し合い。
正々堂々たる闘争を愛しやまない、救いようのない戦闘狂。
彼女がどうしようもなく。彼女に闘争を制す事のできなかった世界。
クラムベリーは、魔法少女たちを殺し合わせた、魔法少女たちと殺し合い続けた。
そして、彼女のように魔法少女たちは――狂っていった。
聖杯戦争は、クラムベリーの知らぬ未知の戦争であったが根本は同じ。することも、為す事も同じ。
殺し合い。殺し合わせ。
強者を討ち滅ぼし、勝利する。強者だけが生き残る。
まさに真理だ。
「ですから私が願うのは一つ。あなたと殺し合う事です」
ホウ、と老いた槍兵が言う。
「わしとの殺し合いを望むか」
「ええ。望みますとも。あなたであれば尚更です。ランサー『李書文』」
八極拳を始めとする伝説を産み出した武術家。
クラムベリーが最も欲する肉弾戦のプロであり英霊たる彼、李書文と合い見えるなど夢ではないか。
魔法少女のスペックで、かつての武術を極めし者に挑めるなど、果たして普通に叶えられるのか。
でもまあ。クラムベリーも冷静に
「それは最後まで取っておくとしましょう」
聖杯戦争に導かれし強敵は、確実にいる事だろう。
マスターであれサーヴァントであれ。
対して李書文は
「今のわしでは拳で本気を出せんが、それでも良いのならば構わんぞ。マスター」
ただ答えた。
ランサーである以上、槍の方が優れているが、それを望まぬならそうしよう。
彼はきっと誰よりもマスターを理解していた。
この町に訪れたクラムベリーが、あの音を聞いて涙を流した時から――
【クラス】
ランサー
【真名】
李書文@帝都聖杯奇譚
【属性】
中立・悪
【ステータス】
筋力:C 耐久:D 敏捷:A 魔力:E 幸運:D 宝具:-
【クラススキル】
対魔力:D
魔術に対する抵抗力。
一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
【保有スキル】
中国武術(六合大槍):A+++
中華の合理。宇宙と一体になる事を目的とした武術をどれほど極めたかの値。
修得の難易度は最高レベルで、他のスキルと違い、Aでようやく“修得した”と言えるレベル。
+++ともなれば達人の中の達人。
ランサーとして召喚されているが、槍術含めて八極拳を極めている。
絶招:B
李書文が学んだ八極拳の秘奥。対人における、一つの究極。
圏境:B
気を使い、周囲の状況を感知し、また、自らの存在を消失させる技法。
ランサーとして召喚された為、気配遮断ほどには到達していない。
【宝具】
『神槍无二打(しんそうにのうちいらず)』
ランク:- 種別:対人宝具 レンジ:2~5 最大補足:1人
宝具として昇華されるまでに極まった術技。
効果はアサシン召喚時の「无二打」と同じだが、槍を持つ分レンジが幅広い。
『猛虎硬爬山(もうここうはざん)』
ランク:- 種別:対門宝具 レンジ:1 最大補足:1人
神槍・李書文の切り札。八極拳の奥義であり厳密には彼のオリジナルではないが、
生涯を通じ頼りとした必殺の套路。李書文が最も得意だったとされる絶招。
天地すなわち八極と一体化した状態から放たれる大地そのものともいえる一撃。
ランサーでありながら無手による奥の手を持つという初見殺しの宝具でもある。
【weapon】
六合大槍
ぶっちゃけ槍じゃない方が強かったりするけど、突っ込んだら負け
【人物背景】
八極拳の使い手として『神槍』と呼ばれる槍技を究めた者として、数多の伝説を生んだ武術家。
本来サーヴァントは全盛期の姿で召喚されるが、彼は二度、全盛期が訪れた稀にみる存在。
今回は武術の全盛期とされる老いた姿。
青年時代と比べて大人しいが、根本は変わっていない。
【サーヴァントとしての願い】
マスターの望みに答える
【マスター】
森の音楽家クラムベリー@魔法少女育成計画
【マスターとしての願い】
強者との闘争
最後は李書文と殺し合う
【能力・技能】
音を自由自在に操ることができるよ
自分が認識する範囲の音を想い通りに奏でられる。
また聴力が優れており、僅かな、些細な音も聞き逃さない。
音による衝撃波で攻撃する事も可能だが、本人の戦闘スタイル上、あまり使用しない。
【人物背景】
闘争に全てを狂わされた魔法少女。
そして、彼女の闘争によって多くの魔法少女が狂わされた。
彼女は『ひとりきり』だが、殺し合っている間だけは『ひとりきり』ではない。
最終更新:2018年05月16日 22:31