「素材が美味しかったわ」

店員や他の客達の注目を浴びながら、青い髪の少女がファミリーレストランを後にする。
少女の佇まいは、頭の先から足の先までくまなく浮世離れしていた。

腰に掛かるほどに長く鮮やかな青い髪。
髪の上に鎮座する帽子には本物の桃の果実が飾られていた。
幾重ものフリルで装飾されたスカートは空の青を映したようで、虹色の飾り紐で彩られている。

浮世離れした服装であるにも関わらず、それらの全てが調和していた。
コスプレなどとは明らかに違う。明らかに自然な着こなしだ。

「あー、それって味付けは不満だったってことか?」
「そんなことはないわ。真っ先に印象に残ったのがそこだっただけよ」

青い髪の少女――セイバーのサーヴァントは上機嫌にマスターの前を歩いている。
セイバーのマスターは赤茶けた短髪の少年、いや、青年に片足を踏み入れた若い男だ。

「さてと、次はどこに行こうかしら」
「ちょっと待て、比那名居。まだ食べ歩くつもりか?」
「軍資金は私のスキルで集まってるんだから文句ないでしょ」
「そうじゃなくてだな……」

マスターの男はセイバーの姿をまじまじと眺めてから、決定的な一言を口にした。

「目立ちすぎだろ。いくらなんでも。変なウワサにでもなったらどうするんだ」
「あんた、仮にも聖杯戦争を勝ち残った人間なんでしょう。もっと堂々と構えなさい、衛宮士郎。私という大当たりを引き当てたのだから!」

そう言ってセイバーは心の底からの自身に満ち溢れた顔で笑った。

セイバーのサーヴァント、比那名居天子。
人間から天界に召し上げられた一族の総領娘。
素行不良なれど霊格は人の域を超え、元人間であるという一点をもって辛うじてサーヴァントの枠に収まっていると言っても過言ではない。

セイバーのマスター、衛宮士郎。
冬木における第五次聖杯戦争の最終的勝者。
かつてセイバーのサーヴァントと共に戦い、最強の敵を下して最後の一組となるも、聖杯を用いることを良しとせず破壊した魔術使い。

まるで馬が合わないであろう一人と一騎は、それでもお互いをパートナーとして戦うことに一応の同意を結んでいた。

「ところで、私のことはセイバーって呼ぶべきじゃない? サーヴァントってそういうものなんでしょう」
「悪いけどそれは駄目だ。俺にとってセイバーは一人だけなんだ」

真っ直ぐな目でそう言い返されて、セイバー――比那名居天子は面食らったように目を丸くした。
そして、これ以上の問答も要請も衛宮士郎という男の判断を覆せないと悟ったのか、あっさりと要求を撤回する。

「じゃあそれで妥協しましょ。ただし次のお店にも付き合ってもらうから」
「はいはい。今の時代の料理が食べたいってだけなら、言ってくれたら作ってやるのに」
「えっ、見た目によらずそんな技能が?」

天子は驚いた様子で振り返った。

「見た目によらずってどういう意味さ」
「そういうことなら腕を振るってもらわないわけにはいかないね。まぁ今は次のお店だけど!」

勝手に納得しながら歩き出す天子。
士郎は仕方なさそうにその後をついて行きながら、聖杯戦争に関する話を進めようとした。

「比那名居。最初にも言ったけど、俺は聖杯を手に入れる気も使うつもりもないぞ」
「聖杯を悪用するような奴には渡さない、でしょう? 鉄心石腸の心意気は結構だけど、身の程はわきまえた方が長生きできるよ。まぁ退屈はしなさそうだからいいけど」
「退屈……ね。比那名居が戦う理由は本当にそれだけなのか?」
「もちろん!」

それは紛れもなく心の底からの返答だった。

「だってどう考えても、喧嘩を売ったり売られたりしまくるに決まってる方針じゃない。最高の退屈しのぎだわ」
「小人閑居して何とやらってことわざもあったよな」
「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや。満ち足りることのない下界の民には、真の意味で足るを知る天人の考えを理解できないものなのです」

天人の中でも多分こいつが例外的に無茶苦茶なだけなんだろうな、と士郎は察したが、あえて言葉にはしなかった。
そしてそれと同時に、このサーヴァントが聖杯を手に入れたら絶対にろくでもないことになるな、という確信を抱いたのだった。


【CLASS】セイバー
【真名】比那名居天子
【出典】東方Project
【性別】女
【属性】秩序・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運A+ 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:A+
 A以下の魔術は全てキャンセル。
 パラメータ低下に対する耐性も強く、特に幸運は決して低下しない。

騎乗:C
 騎乗の才能。野獣ランクの獣は乗りこなせない。
 ちなみに自前の要石は異様に上手く乗りこなせる。

【固有スキル】
神性:A
 天界に住まう元人間の天人。
 死神を返り討ちにして寿命による死を回避するという天人の習性から、
 この神性は即死効果に対する一定の耐性として機能する。

黄金律:C
 身体の黄金比ではなく、人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
 裕福な過程に生まれ育ち、貧乏神と行動を共にしても金銭に困ることがない。

仙桃:A
 天界において天人が主食とする仙果。
 身体能力を強化する効果があり、物理ダメージに対する耐性を高める。
 これを常食し続けたことで、セイバーの肉体は生半可な物理攻撃を通さなくなった。

大地を操る程度の能力:EX
 地震、地盤沈下、土砂崩れなど大地に関わる自然現象を操る。
 有効範囲は狭いとされるが、小都市程度なら全域を対象に含められる様子。

【宝具】
『天空の霊石(かなめいし)』
ランク:A 種別:対地宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 要石。地面に挿すことで地震の発生を抑制する宝具。
 大地の歪みは消滅せず、除去すると蓄積したエネルギーが解放されて大地震が発生する。
 セイバーは自力で大地を操れるためか、この宝具を補助的にしか用いない。
 主な用途は高ランクの物理的オブジェクトとしての活用。
 直接打撃、足場としての利用、攻撃を防ぐ障壁、魔力攻撃の発動起点など多岐に渡る。
 ――そもそも天界と呼ばれる異界の大地は、宙に浮かぶ巨大な要石であるという。
 かつてこれが大地を離れた際には、歪みの解放によって地上の生物が死に絶えたと伝えられる。

『緋想の剣(ひそうのつるぎ)』
ランク:A 種別:対人・対天宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:1000人
 気質、すなわち万物に宿る「気」を見極める力を持つ剣。
 斬られた気質は緋色の霧となり、天候を気質に応じたものに変化させる。
 そしてこの宝具は対象の弱点となる気質を纏い、いかなる相手に対しても必ず弱点を突けるようになる。
 また「気」を集めて攻撃手段に転用することも可能。
 気弾やレーザー状の放射といった基本技のみならず、超高速・超高密度の気弾の集合体を放つ最終奥義を繰り出すこともできる。

【weapon】
『要石』
 地震の発生を抑制する霊石。比那名居一族のみが触れることができる。
 原作において本来の用途で使われたことはあまりなく、乗って移動したり発射してぶつけたりファンネルみたいに遠隔制御して魔力弾を撃ちまくったりと、もはや何が何だか分からない。
 しかも様々なサイズの要石が多数存在し、比較的小さいものを何十と同時に放つ攻撃も披露している。
 ちなみに、一族以外に触れられない理由は「すり抜けてしまうから」とのことだが、武器として使用した場合は普通にヒットする。理不尽。

『緋想の剣』
 気質を見極める程度の能力を持つ宝具。刀身は炎のようにゆらめく不定形。
 天界の宝物を勝手に持ち出してきたのだが、未だに没収されている様子がない。
 つまみ食いを咎められて地上へ追い払われたときも普通に持ってきていた。もはや完全に私物化されている。
 公式設定によると、
 「この剣はまず相手の気質を霧に変え、誰の目にも見えるような形に変える。
  そして、その気質の弱点である性質を纏う。
  緋想の剣が見せる気質の形とは、天気の事である。
  緋想の剣で斬られた気質は緋色の霧となり、天気を変えるのである。」
 とのこと。
 大地を操るのは本人と要石の能力だが、何故か剣を突き立てることで地面を隆起させる攻撃技がある。ただ格好つけてるだけかもしれない。

 ゲーム中で出現する気候は以下の通り。ストーリーモードではキャラごとに固定だがゲーム的な効果のない演出で、対戦モードではランダム発生だが対戦に影響を与える効果を持つ。
 「快晴」「霧雨」「曇天」「蒼天」「雹」「花雲」「濃霧」「雪」「天気雨」「疎雨」「風雨」「台風」「極光」「凪」「ダイヤモンドダスト」「黄砂」「烈日」「梅雨」「川霧」「春嵐」
 これらに加え、ストーリーモードの演出のみの天候として「緋想天」がある。

【人物背景】
ひななゐてんし。ひなないでもてんこでもない。天人くずれ。不良天人。
元人間の天人。ただし本人に能力や功績があったわけではない。
一族が仕えていた神官が神に昇格したついでに、一族もろとも天人にされた。
なお、本人は生粋の天人であると事実に反したことを口にしている。

超がつくほど自分勝手なワガママ娘。他人の迷惑を顧みないこと甚だしい。
しかし教育の賜物か頭自体は良いようで、知恵も働き猫をかぶったり目的のために負けを装ったりすることも。
天人らしい上から目線で他人に忠言したりもするが、大抵は本人も実行できていない内容ばかり。
しかも自分のことを棚に上げている自覚はあり、その上で平然と言い放っている。
そのくせ天人としての能力は本物で、刃物の刺さらない肉体や貧乏神の力が通じない天賦の幸運を持ち、大地を大気圏まで隆起させることすらできる。

根本的に愉快犯。初登場作では、自分を倒しに来た人妖と戦って暇潰しをするためだけに地上に混乱を巻き起こした。
しかも異変解決の役割を持つ主人公を確実に動かすために、主人公の住居である神社を破壊するという徹底ぶり。
この神社はシリーズの舞台である幻想郷を維持するにあたって重要な施設でもあり、罰として再建させられた際に身勝手な仕込みをしたことも重なって、幻想郷の管理者をキレさせた。

【聖杯にかける願い】
基本的に聖杯戦争で暇潰しするのが目的だが、もし手に入ったら面白そうなことに使う。
(その場合は絶対にろくなことにはならない)




【マスター名】衛宮士郎
【出展】Fate/stay night
【性別】男

【能力・技能】
原作通りの投影魔術使い。
Fateルート終了後なので固有結界の展開は不可。アヴァロンの投影も不可。
それ以外はUBWルートくらいにはあれこれできるんじゃないかな?的な想定。

【人物背景】
説明不要の原作主人公。Fateルート終了後。

【聖杯にかける願い】
当然なし。

【方針】
正義の味方として二度目の聖杯戦争を戦う。
最終更新:2018年05月18日 13:01