見滝原駅前のとあるハンバーガーショップは、今日も大勢の客で賑わっていた。
中高生はもちろんのこと、家族連れからサラリーマンまで客層は幅広い。
そこにいる誰もが、この平穏な時間が乱されることはないと心の底から信じていた。
――彼らが現れる瞬間までは。

「ハンバーガーセットを二つ。ドリンクはアイスコーヒーを」

あまりにも不審な二人組の出現に店内が凍りつく。

一人は肌の露出が全くない"銀尽くめ"の長身の人物で、注文をした声からして男であることは間違いない。
銀色のカウボーイハット状の帽子を被り、これまた銀色のコートをまとい、襟のボタンを全て閉めて顔すら隠している。
手には丈長の革手袋を嵌めていて、コートの袖口からすら素肌が見えないという念の入れようだ。

もう一人は"銀尽くめ"と比べると常識的な変装の範疇だが、念入りすぎて完全に不審者と化していた。
ニット帽で髪を隠し、大きなサングラスとマスクで顔を隠し、季節感のないガウンジャケットで体型を隠している。
個人特定の手がかりこそないものの、ひと目見たら忘れられそうにないビジュアルだった。

「こ、こちらでお召し上がりになりますか? それともテイクアウトで……!?」
「こちらで」
「……ハイ、ゴユックリ……」

早く帰って欲しいという店員の願いも虚しく、怪しすぎる二人組は店の一画に居座って話し込み始めた。
しかし他の客は盛大に距離を取ったり、足早に店を出ていったりしていたので、彼らの話を聞こうという者は誰ひとりとして現れなかった――




「マスター・奈緒。嫌だと言っていた割には実にブラボーな変装じゃないか。さすがはアイドルというだけのことはある」
「普段はしないからな、こんな変質者レベルの変装! 間違ってもあたしだってバレたくないから仕方なくだからな!?」

二人組の不審者の正体。
それはシールダーのサーヴァント・キャプテンブラボーとそのマスター・神谷奈緒であった。
奈緒の服装は純然たる変装だが、シールダーの格好は変装でもなければ仮装でもない。
この銀色の装束は、彼をシールダーたらしめる鉄壁の防御宝具なのである。

「正しい判断だ。マスターであるという事実はなるべく気取られない方がいい」
「いやそうじゃなくって。全身コートの不審者と一緒にいたとか噂になりたくないんだってば」
「安心しろ。俺はいかなる局面でも本名を名乗らずにやり過ごすことが得意中の得意だ。警察の職務質問だろうと容易に切り抜けられる」
「『仕切り直し』スキルってそういうことかよ!」

変装したまま頭を抱えて突っ伏す奈緒。
そんなマスターに対し、シールダーは急に真面目な口調で語りかけた。

「マスター・奈緒。ここはキミにとって本来あるべき世界ではない。旅の恥はかき捨てというほど気楽な問題じゃないが、マスターとしての自覚を取り戻した以上、過剰に周囲の目を気にする必要はないだろう」
「……何ていうか、その……」

奈緒は否定も肯定も出来ずに言葉を濁した。

「ふむ、なるほど。俺に改めて相談があると言っていたが、それ絡みの問題か」
「実はさ……あたしの友達っていうか、アイドル仲間も……ここに連れてこられてるみたいなんだ」

ためらうような素振りを交えながら、奈緒はシールダーとの対話を望んだ理由を説明する。
記憶を取り戻し、マスターとしての自覚を得た奈緒は、同じ高校の生徒に元の世界でアイドルユニットを組んでいた少女がいたことに気がついた。

その少女の名は渋谷凛。奈緒と同じトライアドプリムスのメンバーだ。

奈緒と凛は学年が違うので、彼女の存在に気がついたのは今日になってからのことだった。
驚いて声をかけようかと思ったが、様々な可能性に思い至ったので、まずは放課後にシールダーと相談をしてから行動することにしたのである。

「だってさ、ほら……あっちはまだ記憶が戻ってないだけかもしれないし、ただのそっくりさんって可能性もあるだろ? それに……」
「既にマスターとして覚醒し、聖杯戦争の準備を進めているかもしれない。そういうことだな」
「……うん……」

奈緒は気弱に俯いた。注文されたハンバーガーセットとコーヒーにも口をつけていない。

「あまり悲観的になり過ぎる必要はない。キミの友人は他人を傷つけることを厭わない人間ではないのだろう? ならば問題なく同盟を組むことができるはずだ」
「けど、もしも、もしもだぞ? サーヴァントに脅されて無理やり戦わされてたら……?」
「そのときこそ俺が戦おう。シールダーのクラスは護るという一点においてどのクラスよりも優れている。俺の宝具ならキミの友人を護りながらサーヴァントと戦うこともできる」
「ほ、ほんとか!? やってくれるのか!?」

力強い言葉で保証され、変装の下の奈緒の顔に笑顔が戻る。

「無論だ。俺の信念は一人でも多くの人を救うこと。それに、たとえマスターだとしても子供が死ぬのだけは避けたいからな」
「よーし……! そうと決まったら色々と準備しないとな!」

奈緒は腹ごしらえだとばかりにハンバーガーにかじりついた。
シールダーのサーヴァントが全面的に協力してくれるなら、凛のことでこれ以上悩むことは何もない。
無邪気にそう信じている顔だった。

――だがシールダーは、キャプテンブラボーは、防人衛は、ひとつだけ奈緒に語るのを避けていた。

一人でも多くの人間を救う。それこそが彼の行動原理とも言える信念。
子供を犠牲にしたくないと思う気持ちは本物だが、どうしても二つを天秤にかけなければならないとき、彼は苦しみぬいた末に前者を選ぶ男なのだ。

もしも渋谷凛が心の底から聖杯を欲し、大勢の人を犠牲にしようとしていらなら、彼は間違いなく彼女を手に掛ける。

無論、それが平気というわけでは決してない。悩み、苦しみ、苦悶の果てに自ら手を汚す。
奈緒がそれを恨むのは全くの正当だと受け入れるだろうし、令呪で自死を命じるつもりなら命じられる前に自ら命を断つだろう。
そうと覚悟した上で、彼は自ら殺すのだ。より多くの人を救うために。

「頼りにしてるからな、シールダー!」
「……ああ、任せてくれ」

過剰な変装越しに天真爛漫な笑みを向けられ、シールダーは帽子の鍔を下げて視線を遮った。


【CLASS】シールダー
【真名】キャプテンブラボー
【出典】武装錬金
【性別】男
【身長・体重】185cm・75kg
【属性】秩序・中庸

【パラメータ】筋力B+ 耐久EX 敏捷B 魔力D 幸運C 宝具A

【クラス別スキル】
対魔力:EX
 ドレイン系も含め、攻撃と判断される魔術に対しては事実上無敵。
 攻撃に該当しない魔術の場合は対魔力C相当で判定される。

騎乗:E
 現代文明で用いられる乗り物であれば人並み以上に乗りこなせる。

自陣防御:D+++
 味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。
 防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象には含まれない。
 守護範囲は決して広くはないが削減数値は圧倒的。

【固有スキル】
心眼(真):B
 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。
 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。

特性看破:C
 心眼から派生したスキル。武器や防具が持つ特殊機能を見抜く眼力。
 道具としての実体を持つ宝具の能力を一定確率で看破する。

仕切り直し:C+
 戦闘から離脱、あるいは状況をリセットする能力。
 不利になった戦闘を初期状態へと戻し、技の条件を初期値に戻す。
 瞬間的倍加の補正は、宝具と併用して状況をリセットする場合に適用される。

【宝具】
『防護服の武装錬金(シルバースキン)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1、1~5 防御対象:1人、1~5人
 全身をくまなく覆うオーバーコート型の防護服。
 攻撃に対し即座に金属硬化、破損部が瞬間生成することで着装者を防護する。
 物理攻撃のみならず、核・生物・細菌兵器もシャットアウト。宇宙空間での行動も可能。
 更にエネルギードレイン等の非物理的干渉すら遮断する。
 また、シールダーの任意で分解して形状を変えることができ、他者を護る『盾』にもなる。
 この宝具はシールダーが戦意を昂ぶらせることで強度が上昇し、条件次第で対城宝具の直撃をも防ぎうる。

『拘束服の武装錬金(シルバースキン・リバース)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~5、1~10 最大捕捉:1人、30人
 シルバースキンを裏表反転させ、その特性すらも反転させた形態。
 外部からの攻撃に対する絶対防御が、内部からの攻撃に対する絶対拘束と化す。
 通常形態と同様、六角形の細かな金属板への分解と変形が可能。
 これにより、単体の対象への強制着装のみならず、数十体の標的をまとめて拘束・捕縛することもできる。

【weapon】
『核鉄』
 錬金術による戦術兵器研究の成果。手のひらサイズの六角形の金属。
 所有者の闘争本能の昂ぶりに応じて、それぞれの個性を反映した武器『武装錬金』に変形する。
 シールダーはこれを二個保有し、両方同時に発動させられる。
 すなわち「防護服または拘束服を重ね着にして効果倍増」「一着ずつ発動させて併用」「自分自身とマスターを同時に防護」などの戦術を取ることができる。

『鍛え抜かれた肉体』
 シールダーの攻撃手段は肉弾戦のみだが、明らかに人間の粋を超えている。
 手刀で海を割り、渾身の拳の踏み込みで地面を砕き、軽く数十メートル以上の高さと距離を脚力だけで跳躍する。

【人物背景】
錬金術の管理とホムンクルスの討伐を目的とする組織、錬金戦団に所属する男。肩書は戦士長。
本名は「防人衛(さきもりまもる)」だが、新人時代に任務失敗で大勢の犠牲者を出してしまったことを理由に名を捨てた。
その名を知るのは昔からの知己に限られ、組織内では部下に対しても「キャプテンブラボー」で通している。故にサーヴァントとしての真名もこちら。

平時はノリが良くてとっつきやすい好人物。師として主人公を鍛え上げた。
戦士としては一人でも多くの人を救うという信念を持ち、その一方で戦士であっても子供が死ぬのは避けたいと考えている。
物語中盤、主人公が死をばら撒く怪物になりかけたとき、多くの人を救うためなら部下殺しの汚名を着て悪に堕ちることも厭わないと宣言。
主人公の命を狙う敵となり、全ての決着を付けた後には自害するつもりでいた。
しかしそれが逆に主人公の戦意に火をつけ、死なせないためにも勝つと決意した主人公に倒され、愛弟子の成長を喜びながら道を譲った。

【聖杯にかける願い】
なし。見滝原の人々を守るために戦う。


【マスター名】神谷奈緒
【出展】アイドルマスターシンデレラガールズ
【性別】女

【能力・技能】
とくになし。アイドルのレッスンで体力はついているはず。

【人物背景】
身長154cm、体重44kg。高校2年生の17歳。
ユニット「トライアドプリムス」の中では一番年上で一番小柄。
渋谷凛より11cmも背が低い(あちらが女子としては比較的長身なのもあるが)
ちなみに凛が所属する別ユニット「ニュージェネレーション」のメンバーを加えても一番小さい。

正統派なツンデレキャラにしていじられキャラ。
ユニットでは一人だけ学年が上だが、年上として扱われることはまずありえない。

【聖杯にかける願い】
なし

【方針】
元の世界に帰る。可能なら凛と共闘したい。
最終更新:2018年05月28日 09:40