夜、ベッドの上で不意に目が覚めた。
今までの人生が偽りで、思い出した記憶が本当の人生だったと、すぐに理解できた。
身を起こし、顔を洗う。記憶は鮮明だ。死の瞬間まで。夢ではない。
■
僕は、生前の父を知らない。
僕が生まれる前に、父は死んだ。新婚旅行の時に豪華客船が爆発、沈没し、母だけが生き残った。
正確には、母の胎内に宿っていた僕と……父が救い、母に託した赤ん坊、エリザベスも。
成長した僕は、全てを知った。吸血鬼ディオのこと、吸血鬼が作り出す屍生人(ゾンビ)のこと、波紋のこと。
母はずっと黙っていたが、スピードワゴンさんとストレイツォさんは、
父の誇り高き生涯をどうしても僕に語り伝えたかったのだ。
ディオは僕の父と共に大西洋に沈んだ。けれど、吸血鬼を生み出す石仮面は、ひとつだけだったのだろうか。
そして、吸血鬼やゾンビ、死にぞこないたちは……世界の闇のどこかで今も蠢いている。そんな予感がしたのだ。
■
1914年、サラエボでオーストリア皇太子が暗殺され、戦争が始まった。
オーストリア=ハンガリー対セルビア、ドイツ対ロシア。
ドイツはベルギーやフランスにも侵攻し、イギリスはドイツに宣戦布告。
僕も王立飛行クラブから海軍航空隊に入隊し、祖国のために戦った。
最新鋭の兵器がゴミのように人間を殺戮する、地獄のような戦場だった。
1918年4月1日、陸軍航空隊と海軍航空隊の融合によってイギリス空軍が設立。
同年11月11日にドイツとの休戦協定が結ばれ、戦争は終結。
僕とエリザベスは結ばれ……1920年9月27日、息子ジョセフが生まれた。ジョースター家の跡継ぎだ。
僕たちは幸福の絶頂にあった……。
■
「あの司令官は……『吸血鬼』か『ゾンビ』かも知れない」
思い返せば、おかしな司令官だった。はじめからなにか奇妙な雰囲気を纏っていた。
戦争で負傷したといって車イスにのり、昼間は決して表には出ず、それでいて社会にとけ込んでいる。
いかに新設の空軍とはいえ、あんな得体の知れない男が、なぜ司令官に?
とはいえ肩書や経歴、軍歴はしっかりしたものだ。政治的思惑が絡んでの人事だろうか。
だが、この間の行方不明事件は……。あるいは本来の彼が、何者かに乗っ取られているのかも……。
まさか。いや、考え過ぎか。確かなのは、僕にはいやな雰囲気がするってことだけだ。
エリザベス――――リサリサは、ストレイツォさんから波紋の修行を受け、達人の域に達している。
彼女なら吸血鬼やゾンビを殺せるだろう。だが、確証が得られたわけではない。
なにより空軍司令官という要職にいる男。おいそれとは殺せない。
それに彼女はジョセフを産んだばかりで、育児で手一杯だ。もしものことがあれば……。
僕自身は、波紋の修行を受けたわけではない。
父が波紋使いだから素質はあると言われたが、軍務で忙しくて修行している暇はない。
日光を浴びせれば死ぬだろうが、僕が無理やり上官を外へ連れ出す事は出来ない。怪しまれてしまう。
第一、日光で蒸発した上官の姿を目撃でもされたら、どう説明する。
吸血鬼やゾンビや石仮面の話をしても、狂人か狂言だと思われるのが落ちだ。
やはりチベットのストレイツォさんに連絡を取るしかない。そう思い、密かに手紙を書いていた矢先。
■
僕は……確か、あの空軍司令官の正体を探ろうとして、逆に襲われて死んだはず。
実際無念だが、復讐者となるのは……考えたくはないが、リサリサだ。
彼女なら僕の不審な死を疑い、証拠を見つけ、復讐を遂げてしまうだろう。
いや、ここにこうして僕が生きてるってことは―――それも、未来の日本に、独身の英語教師として―――
ここは、来世なのか?
胸ポケットに違和感がある。探ると、丸く透明な宝石が出て来た。
あの司令官、吸血ゾンビに襲われ、仰向けに転び、手をついたところに……そうだ、この宝石があったのだ。
その瞬間、僕はここにいて、しかも偽りの記憶を植え付けられ、聖杯戦争の参加者とされてしまった。
聖杯。アーサー王伝説にうたわれる聖遺物。万能の願望器。もし僕がそれを手に入れたら、どうすればいいのか。
「…………!」
見る間に、その宝石……ソウルジェムがボウッと光り始めた。
淡いその光は、闇の中に黄金の粒子となって広がり――――――人間の姿を形作る。
それは、東洋人の少年だった。黒髪で、額が出るほど短髪。眼鏡をかけ、白い詰め襟の制服を着ている。
傍らには重そうな鉄の鞄。軍の関係者か、士官学校あたりの学生か。だが流石に英霊、鍛え抜かれた戦士の面構え。
すうっと目を開くと、こちらに話しかけてきた。
「……問おう。貴方が俺のマスターか」
「そうだ。僕の名は『ジョージ・ジョースター』。『ジョジョ(JOJO)』と呼ばれている」
祖父と同じ名。そして、僕が成人した頃からのイギリス国王と同じ名だ。ありふれているが。
祖父が1世なので『ジョージ2世』となるが、皆からは父と同じく『ジョジョ』と呼ばれる。
息子ジョセフも、やがてそう呼ばれるだろう。
東洋人の少年は、右手を挙げ……敬礼した。
「俺の名は『葉隠覚悟』。クラス名は……『セイヴァー』です。以後、よろしく」
■
現人鬼と化した兄との戦闘は、曽祖父・四郎を共に打倒することで終焉した。
和解は成った。兄は地球環境を癒やすため、俺は人類を護るため、それぞれの道を歩んだ。
それから……俺は、どうしたろうか。戦術鬼の生き残りを狩り、人類文明がそれなりに復興するのを見届けて……。
そうだ、眠りについたのだ。平和な社会に戦士は不要。俺は眠りにつかされた。
いつかまた、親しき人々と逢えると信じて。
聖杯戦争に関する記憶は、英霊の座とやらで与えられた。
英霊とは死せる英雄の残滓。だが俺は、まだ死んだわけではないはず。冷凍睡眠の中のはず。
ならば、これは夢か。あるいは冷凍睡眠の失敗で死んだか。いや、迷うな。
「マスター、『ジョジョ』。偶然巻き込まれたようですが、聖杯にかける望みは、帰還ですか」
「ああ。僕は……生き残りたい。愛する妻子と母のもとへ帰りたい。僕の望みはそれだけだ」
それを聞いて、頷く。幸いなことに彼は善人だ。嘘をつけるような人でもない。
「そして、戦いは君に任せる。僕は魔術師でもなんでもないからね。無論、出来る範囲のことはしよう。ただし」
「ただし?」
「無力な女子供や一般市民、帰還だけを願う善良な人々は犠牲にしないと、約束してくれ。
これは命令ではない、お願いだ」
――――セイヴァーはマスターの瞳に『黄金の輝き』を見る。誇り高き勇気と正義の心を。
マスターもまた、セイヴァーの瞳に、同じものを見る。
俺がここにいる理由。マスターのような無辜の善人をも巻き込む、この聖杯戦争は『悪』だ。
この忌まわしき聖杯戦争を破壊し、悪を絶つ。立ちはだかる悪にも容赦はしない。そして。
「無論です。俺は牙なき者の牙、盾なき者の盾となりましょう」
【クラス】
セイヴァー
【真名】
葉隠覚悟@覚悟のススメ
【パラメーター】
筋力B+ 耐久A 敏捷A 魔力D 幸運A 宝具EX
【属性】
秩序・善
【クラス別スキル】
カリスマ:C
軍団の指揮能力、カリスマ性の高さを示す能力。団体戦闘に置いて自軍の能力を向上させる稀有な才能。
国家運営は出来ないが、志を共にする仲間とは死を厭わない強固な繋がりを持つ。
対救世者:A+
「救星主」となった兄と敵対した逸話によるもの。セイヴァーを相手にした際、そのパラメータを2ランクダウンさせる。
また誘惑や説得、カリスマ等を鋼の意志で撥ね返す。
英霊を成仏させるような霊的攻撃も、彼と「零」を消滅させることは出来ない。
【保有スキル】
零式防衛術:A++
第二次世界大戦中に生み出された最終格闘技。人類の潜在能力を極限まで引き出し、一触必殺を可能とする。
相手の力を利用する迎撃術「因果」、自ら仕掛ける「積極」、掌を振動させ硬いものを粉砕する「超振動」などの
技がある。その本質は使用者自身の「認識(こころ)」の制御であり、感情や恐怖心を滅殺し、
常に冷静な戦いを可能とする。スキル「無窮の武練」に相当し、宗和の心得・見切り・心眼・仕切り直し・追撃・
一気呵成などをAランク相当まで発揮できる。
戦闘続行:A+
往生際が極めて悪い。霊核が破壊された後でも、最大5ターンは戦闘行為を可能とする。
騎乗:B
騎乗の才能。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなせない。バイクに乗る。
【宝具】
『零式鉄球(ぜろしきてっきゅう)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1-50 最大捕捉:1
肉体に直接埋め込まれた、特殊金属製の球体。気合を入れると体内に吸引され、血小板と同化して血液中に溶解、
表皮に分泌されて迅速に凝固し、皮膚を装甲化する。
装甲化された皮膚は高熱や至近距離からの弾丸をも跳ね返し、かつ柔軟で動きを制限しない。
1個につき皮膚の7%を装甲化可能であり、8個を持つセイヴァーは56%までを装甲化出来る。
防御の他、打撃に用いる部位を装甲化して威力を増すことや、身体から鉄球を取り出して変形させ、
攻撃・防御に用いることも可能。
全力で投擲した場合は戦車砲並みの威力があり、着弾した瞬間に膨張変化して内部から破裂させる。
『強化外骨格”零”(ぜろ)』
ランク:EX 種別:対国宝具 レンジ:1-99 最大捕捉:1000
意志持つ超鋼。第二次世界大戦中に開発された、一体で一国を滅ぼす生ける鎧『強化外骨格』のひとつ。
白いマフラー、赤いゴーグルを持ち、頭部に星型レリーフと七生の文字が刻まれている。重量90kg。
非戦闘時には鞄の中に収納されており、戦闘時には瞬間的に着装される。
装着者には常軌を超える心技体の鍛錬が求められる。
外部には複合装甲展性チタン合金を用いており、瞬間的衝撃には戦車並みの耐久力を持つ。
凍結・圧迫・打撃浸透攻撃が弱点。内部には臓腑のような暖かさを持つ生体細胞が用いられ、
伸縮自在な触手を着装者に吸着させ、状態管理や意志反映を行う。
また人体実験の材料にされた三千の英霊(戦争被害者の怨霊、CV:藤本譲)が宿っており、着装者の行動を補佐する。
腰部左右に「着装者生命維持装置」(持続時間は40日間)と「化学兵器調合装置」を有し、
毒物・薬物問わず各種化学薬品を調合可能。指先や掌から非致死性麻酔液、昇華弾(高熱の火球)、超凍結冷却液、
超脱水鱗粉、戦術神風(無色無臭の超強力毒ガス)を発射し、足(脚部装甲「爆芯靴」、通常時の着装も可能)や
背中からは噴射剤を噴出して強い推進力を得る。外骨格自身を超高温にして打撃威力を高める「赤熱化」や、
一瞬で着装を解除して超鋼外骨格を射出する「瞬脱装甲弾」などの技も備える。
筋力と耐久力をランクアップさせると同時に、ブースト機能によって三つの能力値に「++」の補正が与えられる。
『人間の尊厳(ヒューマン・ディグニティ)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大捕捉:1
セイヴァーの体内に宿るゼリー状の生命体。
悪鬼となる人体改造を受けたが、善良な意志を保っていたため「失敗作」となった者たちの集合体。
その心と肉体によってセイヴァーを敵の攻撃から保護し、自らを犠牲にして死からさえも蘇らせる。
【Weapon】
四肢五体及び宝具の他、以下の武装を持つ。
『武装常装』
耐熱眼鏡、光線屈折ボタンなど、数々の特殊機能を持つ日常装備。
『無銘・日本刀』
四百の雑兵を斬った後も刃毀れを起こさぬ業物。
『逆鱗号』
兄から餞別として受け取ったバイク。
本来は特攻兵器で、敵艦などに突っ込んでも抜けないように「かえし」のある形状になっている。
【人物背景】
山口貴由の傑作漫画『覚悟のススメ』の主人公。CV:山寺宏一/関智一。1999年12月25日生まれ。
黒髪の短髪で、純白の詰め襟制服に身を包み、眼鏡を掛けた少年。
非常に生真面目な性格で、礼儀正しく自己抑制が強いが、本性は熱い男。
地殻変動や核戦争で荒廃した世界において、父・朧より兄・散と共に零式防衛術を習い、
零式鉄球と強化外骨格を授かった。だが兄が父を殺し、自身も兄に敗北。
生き延びた後は兄を探して全国を転々とし、やがて逆十字学園に転校。
人々を襲う悪鬼「戦術鬼」を退治していくうち、その首領が生き別れた兄であることを知り……。
ライダー、シールダーなどの適性もあるが、今回はセイヴァーとして現界。
救世主、救済者(Savior)というより「救助者(saver)」として。
【サーヴァントとしての願い】
なし。
【方針】
聖杯戦争の破壊。牙なき者の牙となり、悪を討つ。マスターや無辜の人を護り、救う。
【把握手段・参戦時期】
原作。幸いにもエクゾスカル版ではない。
【マスター】
ジョージ・ジョースター2世@戦闘潮流、JORGE JOESTAR?
【Weapon・能力・技能】
記憶は空軍パイロットであるが、あくまで1920年当時の水準なので現代の飛行機は操縦できない。
体格はよく、それなりに肉体を鍛えており、礼儀正しく学もある。
波紋やスタンドは習得していないものの、『黄金の精神』を秘めている。
【人物背景】
George Joestar。『ジョジョの奇妙な冒険』第二部「戦闘潮流」の主人公であるジョセフ・ジョースターの父。
ジョナサン・ジョースターとエリナの息子。祖父ジョージ・ジョースター卿が同名であるためジョージ2世と呼ばれる。
1889年12月生まれ。父ジョナサンは同年2月7日に死去していた。第一次世界大戦の時、イギリス空軍のパイロットとなる。
のちにエリザベス(リサリサ)と結婚、1920年9月27日に息子ジョセフを儲けた。
だが同年、上官である空軍司令官(ディオの作ったゾンビの残党)に殺害された。享年30歳。
舞城王太郎の小説『JORGE JOESTAR』では主人公をつとめる。
ジョースター家の男として、背は高く体格はよく、肩に星の形のアザがある。顔はジョナサンやジョセフそっくり。
スピードワゴンやストレイツォから、石仮面の吸血鬼やゾンビ、波紋のことを聞いている。スタンドについては知らない。
【ロール】
イギリス人の英語教師。独身。そこそこ裕福。
【マスターとしての願い】
現世への帰還。母や妻子と再会する。
【方針】
戦闘はサーヴァントに任せる。
【把握手段・参戦時期】
原作(単行本12巻に回想で数コマだけ登場)。『JORGE JOESTAR』は……まあ……多少参考にしてもよい。
ゾンビに襲われて蹴躓いて倒れ、偶然落ちていたソウルジェムに触れた。
最終更新:2018年05月29日 15:06