「……先生、作風変えました?」
上質紙を捲る手を止めながら、男が言った。
よれよれのシャツに、アイロンの掛かっていない皺だらけのスラックス。ネクタイは巻いていない。
真っ当な会社にこの格好で出社しようものなら、即時直属の上司に警告を出される事は間違いない恰好ではあるが、男の会社に限っては、
そう言った格好をしていても別段咎めはない。男は出版社の編集部に関係する人物であった。よく見てみると、男がもつ上質紙の束には、文字がプリントされている。
先生……即ち、担当作家の原稿である。男はそれを二〇ページ程眺めた後で、このような事を口にしていたのだ。
「そう思った訳は?」
マグカップに入ったコーヒーを、ズズ、と音を立てて飲む少女がいた。
いや、少女ではない。れっきとした成人の女性だ。二十歳を過ぎて四年以上の年月が経つが、中学生と間違えられても詮の無い位には背が低い。
加えてその顔立ちだ。二十代も半ばに入ろうかと言う女性にしては、童顔も良い所だ。幼さを残してはいるが……しかし、整っている。
目鼻立ちも眉の形も、唇の形も。どれもこれもが、男性を魅了するに足る造詣をしていた。驚く事に、これで『すっぴん』であると言うのだから恐ろしい。
この歳になればもう女性は化粧の一つや二つをして外に出るのがエチケットの領域となると言うのに、この女性作家の場合は化粧なしで通用してしまう。信じられない程に恵まれた女性であった。
「いやぁ……流石のぼくでも解りますよ。此処まで文体を変えられたら、ねぇ?」
「うーん、きみの御眼鏡には叶わなかったかな」
「いやいやいや!! 当初は面喰いましたけど、二〇ページもスラスラ没入させてしまう時点で、もう十分過ぎますよ!!」
慌てて男が否定する。この女流作家は、彼の勤める出版社を代表する稼ぎ頭、大先生である。
機嫌を損ねたらどうなるか解った物ではない。男の編集者としての腕前はそれ程良くない。
それにもかかわらず男が、今の部署にしがみつけていられるのは、目の前の女性の温情が全てであった。
――塩野くん以外に編集を任せるつもりはないな――
「それ以外の編集に? 任せないよ」、その言葉の後にはこう続いた。
こうと言われたら、上は従うしかない。変に機嫌を損ねて、他の出版社に移ってしまったらそれこそ大損害。
塩野瞬二と言う名の編集者は結局、この女流作家の個人的なリクエストで、年八〇〇万超の高収入を得られている、と言う訳だ。
その事は他人に言われるまでもなく、塩野当人もよく理解している。だからこそ彼女には頭が上がらない。
そして同時に、疑問に思う事がある。何故この女性は、自分を贔屓するのか?
自分で言うのもあれだが、俺より優秀で作家への気配りも熟達した編集者など、部署内にはごまんといる。それを蹴って、何故自分を?
幾度となく塩野は思ったが、結局解らないし、彼女自身に聞いても、はぐらかされるだけだった。
「ただ、珍しいなぁと思いましてね。自分の作風を頑として変えもしなかった先生が、此処に来て大きく路線変更に舵を取るなんて……」
既に述べた通り、塩野の編集者としての腕前は、お世辞にも良いとは言えない。
彼の編集生命を長らえさせているこの女流作家は、元々持ち込みでこの出版社にやって来たのだが、その時に彼女の原稿を見たのが他ならぬ塩野だった。
しかしこの男は、彼女の文章は気取っていてウケないと一蹴し、彼女を追い返したのである。後に売れっ子作家となる彼女をだ。
結局彼女がこの会社と契約している作家になれたのは、塩野が彼女から預かった原稿を偶然見た彼の上司に、三顧の礼をしてでも迎え入れて来いと言われ、
急いで引き戻したからであった。金の卵を産む鶏を見抜けない。石ころに混じったダイヤモンドを選別出来ない。
それは、一流の原石を探す事もまた仕事である出版社の人間にとって、致命的なまでのディスアドバンテージであろう。
そんな塩野ですら、いや。普段真っ先に彼女の原稿を目の当たりにする彼だからこそ解るのかも知れない。
今を時めく売れっ子作家、『高槻泉』は、作風から文体、果ては普段のキャラクター造形まで、ガラリと変えて来た。
まるで別人に書かせたか、何か幽霊にでも憑りつかれたのかとしか思えない程の変わり具合。塩野でなくとも、何かあったのでは? と疑ってしまうであろう。
「まぁわたしも、大衆に迎合した作風と言う物を模索するのも悪くはないかなと思うようになってね」
今や誰もが認める人気作家である高槻であるが、その作風・文体は、幼そうな容姿とは裏腹に暗く、人によっては『陰惨』と言うイメージを抱く程であった。
一部の短編集などではその傾向は薄れるが、本人の『地』が露になりがちな長編小説になると、彼女の作風は途端に厭世かつ破滅的で、陰鬱の気を露とする。
加えて地の文や台詞回しに、持って回ったポエティックな表現を用いる事も多く、上記の作風以外にも、こう言う面で敬遠する読者も少なくはない。
要するに、作家を構成する上で重要となるあらゆる要素が、クセが強いのだ。この作風で文壇のメジャー作家の一人になれた、この事自体が一種の奇跡だろう。
容姿も端麗で、作品自体ではなく高槻泉と言う個人自体のファンもいる程の人気作家なのだ。
これで今の作風と、大衆向けの作風を使い分けてくれていたら、さぞ今より人気が出る事だろうとは、ファンは元より、出版のプロ達の間ですら言われていた。
だが、基本的に人格面でもアクの強いのが作家連中と言う物。そう簡単にそんな意見を聞き入れる筈がなく、高槻とて同じだろうとは思っていた。
それが此処に来ての、方向転換だ。生来のものであるポエティックな表現は散見こそ出来るが難解さは薄れており、何よりも台詞が主体となっていて読みやすい。
一般小説、と編集者が聞いて真っ先に想起されるような文章が、その原稿にはあった。高槻と長い付き合いの塩野が、驚かぬ筈がなかった。
「勿論、今までのような作品も出すつもりではいるが。まぁ今回の原稿は手慰みに執筆した実験作と思ってくれ」
「はは、実験作でこれだけ書いてくれるあたりが、高槻先生らしい」
編集の道を進むと、一目見て原稿が何枚あるのか解る力が直に付く。
如何贔屓目に見ても、高槻が持って来た原稿は三〇〇ページ程もあり、とてもではないが、手慰みに書いたとは思えない量だ。彼女は速筆としても有名だった。
「ところで先生、此方の作品は連載を想定しているんですか?」
「うーん、予定は未定って奴だ。その質問の意図は?」
「いえ、直感でそう聞きました。まだこれだけしかページを見ていないので何とも言えないんですが、続きそうな設定だなと思いましてね」
高槻の持って来た原稿の内容を現状塩野が読んだ内容で纏めるのなら、『人一人簡単に殺せるレベルの超能力に目覚めた少年』の冒険……と言う風なものだ。
超能力の描写はアニメ的、ライトノベル的で、まるでコミカライズやアニメ化を想定したような内容だ。
塩野の出版社は、ライトノベルも扱っており、描写のライトさから、どちらかと言うとそっち向けの風がある。
ライトノベルは通常続き物、連載を想定している事が殆どだ。但しそれは、人気が出ていれば、の話。
高槻程の地力と実績のある作家なら、連載も余裕であろう。今日日大作家がそう言った作品を書いてみる、と言う事例も珍しくない。
後で同僚や上司に掛け合って見るか、と塩野は次の予定を組み上げ始める。
「まぁ連載云々については、そっちの意向に任せるよ。人気が出たなら連載、出なかったらそれまで、で良いじゃないか。その原稿は一応、一巻で綺麗に終われるようストーリーを導いてはいる。編集部の意向次第で如何とでも転がせられるよ」
「かしこまりました」
「さて、と」
コーヒーを飲み干してから高槻は立ち上がり、グッと背を伸ばす。おや、と塩野が反応する。
「おかえりですか? 原稿まだ読み終えてませんが」
「ちょっと用事の方があってね。原稿を読み終えて、今後の方針が決まり次第、わたしの方に何か連絡を入れて欲しい」
「解りました。急いで読んでおきますね」
原稿用紙を丁重にアタッシュケースの中に入れてから、塩野も立ち上がり、お辞儀をして高槻を見送ろうとする。
「ところで、塩野くん」
「? 何でしょう」
「きみ、今月の公休は幾つになってる?」
「え、ぼくの休みですか? うーん……一応暦通り、と言う事にはなってはいるんですけど……。こう言う仕事ですからねぇ、多分今月も、四日ぐらいしか休めないんじゃないんですかねぇ」
編集者のスケジュールと言うのは究極の所、担当している作家のスケジュールに合わせなければならない。
作家、つまり先生達のスケジュールを何よりも優先する。原稿の進捗を確認したり、締切が迫れば発破を掛けたり、時には差し入れをいれたりなどは当然の仕事。
それ以外にも社内の別部署に足を運び交渉や調整をしたり、その作家の一種のマネージャーとして渉外活動もしたり等。
勤務時間は9:00~18:00と言う事になっているが、今年に入って塩野が定時に帰れた日等ゼロである。泊まり込みの作業なども、上等の世界だ。
土日祝日返上は当たり前、不規則な勤務体系が避けられない。それが、書籍編集の世界なのである。
「働き過ぎだぞ塩野くん、もう少し有給を使いたまえよ」
「いやぁ、使ったら使ったで面倒でして……。それに、先生が本当に優秀で助かってますよ。何せ僕の担当してる先生達の中で、締切よりも遥かに早く原稿を上げてくれる優秀な人なんですから」
暗に、俺の担当している作家は締切ギリギリに仕上げるか、最悪守らない奴が殆どだと言っているのと同じだ。
納期、即ち締切は編集の世界でも絶対である。これが近づけば近づく程、編集者の内臓は荒縄できつく縛られたようにキリキリと痛み出す。胃痛止めは友達だ。
作家が締切を守れそうにないからその場から逃走する事を防ぐ為、寝ずの番を敢行する為の眠気覚ましが離せない同僚だっている程だ。
それを考えると高槻泉は、本当に優良な作家である。自分の編集者としての立場も保障してくれるし、締切も守る。塩野はこの女流作家に、全くと言って良い程頭が上がらない。
「そうか……」
ふっ、と笑みを零し、高槻は塩野に背を向け、その状態のままヒラヒラと手を振って、ロビーから去ろうとする。
「身体は大事にしろよ、塩野くん」
そうとだけ言って、高槻はその場を後にした。
――
粋な事をする、と思った。いや、嫌味な事をする、と言う方が正しいのか?
どちらにしても、作為的なものを感じなくもない。『差し入れ』として自分に出され、そして喰らった相手を、自分のロールと縁深いNPCとして出すなど。
高槻泉と言う名前はペンネームである。今まで隠して来た真なる名は、『芳村エト』。
最も、エトと言う名前自体は、割と表舞台にも流して来たつもりであるのだが。自己顕示欲が強い性格であるらしかった。
この見滝原と呼ばれる街に呼ばれて数日が経過した今でも、当惑している所がある。聖杯戦争。そんな名前だったか。
サーヴァントと呼ばれる、嘗て人類史に於いて華々しい活躍を遂げた万夫不当の猛者や、神話や叙事詩の中に登場する大英雄を駆って勝ち進むバトロワ。
そうと、エトは記憶している。ファンタジーにも程がある。事実は小説より奇なりと言うが、自分の巻き込まれているこの状況の方が、
塩野に手渡した超能力少年の原稿よりもよっぽどファンタジーではないか。生きていると不思議な事に出会うものである。
しかし、乗り気でない訳じゃない。喰種仲間やCCGからもよく認識されてるし、直接言われたりもしてきた。
何よりもエト自身ですら自覚している。今更言われた所で否定もしない、激昂する権利もない。エトは喰種としても人間としても、下衆の部類だ。
元居た世界で自分に致命傷を与えた、フルタと言う名の汚害――きたがいと読む。無論エトの造語だ――野郎と本質的には変わりない。
人類と喰種の相の子、ハーフ。それが彼女、芳村エトだ。互いの悪い所も、高いレベルで引き継いでいるのだろうと、割り切ったのは何年も前の話の事である。
結論を言えば聖杯は欲しい。聖杯戦争と言う名が仄めかす通り、聖杯と言う字は戦争に掛かっており、この聖杯なるものが主体である事は容易に想像がつく。
そして事実それはその通りで、聖杯とはこの戦争でサーヴァントを殺し続けた者に与えられるギフトである。
その内容が凄まじい。どんな願いも叶えると言う物だ。人の倫理観では殺し続けた末に得られる願望器など、いらない、と答える者もいるだろう。
しかし、人を殺して喰らわねば生きていけない喰種にとっては違う。言ってしまえば殺しが生態として組み込まれている彼らにとってしてみれば、
人を十何人か殺すだけで打出の小槌が手に入るのなら安すぎるものであろう。誰だって手に入れたくなる。
聖杯戦争には乗り気である。だが、叶える願いは俗ではない。
世界と言う概念を比喩する言葉に、鳥籠がある。広いようで狭い、閉じ込められている、と言う意味では妥当な表現だ。
そう言ってしまうと悪い響きに見えるだろうが、鳥籠自体には罪はないし悪くもない。籠の中で一生を終える人間や喰種がいるのも、また事実だからだ。
だが――その鳥籠が歪んでいると、途端に宜しくない出来事が頻発する。籠は脆くなるわ、鳥も逃げ出すわで、滅茶苦茶だ。
世界の均衡、即ち、人と喰種の天秤は著しく不安定だ。その天秤は、歪んだ籠の上で成り立っていると言うのだから、重さの釣り合いが取れる筈もない。
ならば一度、籠をなかった事にし、重石を見つけて天秤の釣り合いを水平にしてやればいい。
言うだけは簡単だが、やるとなると難しい。現にそれを行う為に、半生に近い人生を費やして来て、それでも届かなかった程である。
確か自分をいとも容易く倒して退けた、和修のゴミも、同じような目的を抱いていたか。残念ながら彼の目的は、ベクトルこそ同じであり、
行き着く先が排斥者目線からの平和である。排斥される側にとっての平和を望むエトとは根本的に相いれない。
結局元の世界でエトは排斥されてしまったが、何の因果か、こうして全く知らない世界に呼び出され、チャンスを与えられている。
疑わしい部分も多分にあるが、自分が生きていると言う事実は大き過ぎる。命あっての物種はこの世の真理だ。跡目は既に真なる王に託したが、自分にもやれる機会が巡って来たと言うのなら、存分にその機会を活かすべきだろう。
だがやはり問題は――
「今帰って来たじょー」
住まいである都市部のマンションに戻り、帰宅するなりエトは間延びした口調でそう言った。
独身である彼女に、夫も子供もいない。であるのに、誰か人がいるような言葉を口にする。いるのは無論の事、聖杯戦争を構成するもう一つの重大要素。
サーヴァントだった。彼女はそのサーヴァントに留守番を命じていたのである。
そして、そのサーヴァントは確かに部屋で大人しくしていた。
……その仕方が問題だ。冷蔵庫に冷蔵していた、プラスチックの保存容器に入れていた人体を腑分けした物。
それを取り出して、自前の能力でふわふわと空中に、DNAの二重螺旋構造のような形で浮かばせている少年。これこそが、彼女、芳村エトが召喚したサーヴァントであった。
「……おーい、食べ物で遊ばないでくりー」
皮膚や筋肉がついたままの耳や鼻、眼球に指が二重螺旋のまま宙を浮かんでいるのは、ちょっと見ていて面白かったが、
これらは全て、エトがこの街のNPCをハントして得た貴重な食料である。喰種が一般的どころか、存在すらしていない世界では、
人間が誰かに喰らわれたと言う事件はそれこそ重大犯罪、こと此処日本においては数十年に一度あるかないかの大事件とまで騒がれる。
元の世界では喰種に人が喰らわれる事は日常的な事であったが、喰種が常識でない世界は大きく騒がれるのだ。だからエトは慎重に人を殺し、食料を回収した。
それに、エトが人を喰らうと、その分魔力も回復するし、体力や傷の回復も早くなる。単なる生態系以上に、NPCを喰らう事は重要な意味を持つ。
この重要な保存食で遊ばれると、流石のエトも困る。それに血が垂れてフローリングも汚れるし。
「……」
エトの召喚したサーヴァントは、エトよりもなお小柄な、十歳にも満たないのではと疑う程幼い、黒髪の子供だった。
大人びた顔付きをしており、育てば美男子になるであろう素質はある。だが――異常なまでに感情を感じられない。
石ですらまだ感情を湛えているのではないかと思う程、少年の表情からは情動の兆しを感じ取る事が出来ない。
特にその『目』だ。エトは此処まで、心を感じさせない瞳は見た事がない。喰種として幾つもの死線を掻い潜って来たエトだったが、
此処までの物を年端もいかないこんな少年が持っているとは……。初めて少年の目を見た時は、久方ぶりにゾッとした感覚を覚えてしまった。
「ほら、それを元の所に戻して戻して。お菓子あるからそれ食いねい」
言ってエトは、塩野から差し入れに貰った饅頭の入ったビニール袋を見せ付ける。
食性が喰種である為こう言う菓子類はエトは駄目なので、貰ったらいつも捨てる事にしているが、処理してくれる人間――サーヴァント――がいるのはありがたい。
人の子供は甘いものが好きであると聞いた事がある。喜んでくれるだろう。
少年はやはり表情を動かさず、宙に浮かせていた肉片を消え失せさせる。
テレポーテーション、と言うものだ。これ以上と無い単純な能力だが、望む者は数多い能力だろう。エトも、出版社まで電車で行くのがたまに面倒になるからだ。
恐らくはこれを使って、元のプラスチックのパックに戻したのだろう。実際冷蔵庫の中を見てみると、不足なく、人体はパックの中に入っていた。
「よーしいい子だぁ」と棒読みで褒める。少年は無反応。「反応しろガキ」、と小声でエト。
塩野に手渡した原稿である、超能力に覚醒した少年の話は、目の前のサーヴァントがモデルになっている。
無論エトは、少年の過去を知らない為、適当に過去をでっちあげ、即席で小説の形に整えた。
作家としてのエトは、インスピレーションを大事にし、ネタの鮮度を優先するタイプだ。
意外と筆が進んだ為、今後もし、聖杯戦争を無事に勝ち進めれば、第二弾を執筆するのも吝かじゃないなと思って来た。
それにこの少年から発散される臭い……。誰かに捨てられた者だけが醸せる、この寂しげな雰囲気は、身に覚えがあり過ぎるのだ。
今更見捨てたくない、放っておけないと言う青い感情に振り回されるエトではないが、それでも、無視出来ない何かをこの少年バーサーカーには憶えていた。
完全なる人間ではあるのだが、喰らう気も起きない。サーヴァントだからと言う理由ではない。もっと根源的な理由で、だ。
塩野から手渡された饅頭の包装を破き、その内の一個を少年に放るエト。
それを、レビテーション能力で浮遊させ手元に取り寄せる少年。それを手に取り、眺めていた。
「食べるのは初めてか? 『アキラ』くん」
「……」
こくり、と頷いた。
人間の子供はこう言う甘いものが好きだから、食べた事がありそうな物だと思ったが。
アキラと言う名のサーヴァントは、食べた事もなかったようである。そう言った物を食性以上に、境遇から食べられなかったエトと同じである。
饅頭を齧り、その甘さに少し驚いたような表情を浮かべる少年を見ながら、エトはPCの電源を入れ始める。書きかけのストーリーのプロットを練る為だ。
モチーフは聖杯戦争。勝ち残ればきっと、良い物が書ける。そんな予感を感じながら、知恵を絞り始めたのであった。
【クラス】
バーサーカー
【真名】
アキラ@AKIRA
【ステータス】
筋力E 耐久E 敏捷E 魔力EX 幸運D 宝具EX
【属性】
中立・中庸
【クラススキル】
狂化:EX
バーサーカーは嘗ては感受性も感情も豊かだった一人の少年だったが、ある実験を境に得た強大な力と引きかえに、その感情が全て吹き飛んでしまった。
この場合のランクEXは特異性を表したもの。バーサーカーには元々、狂化を起こせる程の感情の総量が絶対的に足りない。
言葉を理解もするし、命令にも素直だが、今のバーサーカーは、超能力の力を命令によって外部に放出する蛇口でしかない。
【保有スキル】
超能力:EX
ESPやテレポーテーション、予知にサイコキネシス、サイコメトリーなどと言った魔術に拠らぬ異能の持ち主かどうか。
バーサーカーはこれらの能力についてA+ランク以上の実力で発揮する事が出来るだけでなく、彼だけの持つ特殊な超能力を有している事から、このランクに至っている。なお、その彼だけの特殊な超能力は、後述する宝具としてカウントされている。
無我:B
バーサーカーは感情の類が極端に希薄なサーヴァントである。Aランクまでの精神干渉に関わる魔術を全て無効化し、読心術を行った場合、その対象に精神的な大ダメージを与える事が出来る。
【宝具】
『無銘(超能力)』
ランク:EX 種別:対人~対星宝具 レンジ:1~ 最大補足:1~
バーサーカーが生前施された、超能力を得る為に施された処置。それによって得られた能力の一つが宝具となったもの。
その正体は、此処とは違う何処か別の、膨大なエネルギーが大量にプールされている次元に接続し、其処から力を引っ張り出してくるというもの。
限定的な第二魔法そのものであり、この力を行使している限り、バーサーカーに魔力切れと言う概念はない。
その性質上、本来は極めて多様な使い方が出来た筈の宝具だが、バーサーカーの精神性は極めて幼い為、集めた力を運動エネルギーや熱エネルギー等に変換し、
一気に解き放つと言った使い方以外、殆どしない。引っ張って来たエネルギーの総量次第では、簡単に対城宝具を上回り、最大の対星規模のそれにまでなってしまう。
【weapon】
【人物背景】
28号。日本国家の超能力研究極秘プロジェクトで超能力を開発された、人造の超能力者の一人。
凄まじい超能力の才能を持っていたが、その能力を暴走させ、東京の街を滅ぼしてしまった。
【サーヴァントとしての願い】
??????
【マスター】
芳村エト@東京喰種シリーズ
【マスターとしての願い】
迫害されている喰種でも、輝ける世界を
【能力・技能】
赫子:
種類としては羽赫と言う事になっているが、その姿形は異例中の異例。過去に喰種の共食いを行いまくったせいか、赫者となってしまった。
極めて多くの共食いを行ってきた為、極めて巨大かつ異形の形状の赫者と化している。
推定5mは軽く超える巨体であり、赫者の基準である纏うような赫子の範囲を超え、殆ど着ぐるみ状態になっている。
巨大な異形の姿に裏打ちされた打撃力と頑強な装甲を持ち合わせ、 肩に備わる刃で接近戦、羽赫特有のショットガンのような赫子で中遠距離をそれぞれ受け持つ。
異質なのは姿のみならず、赫子自体もイレギュラー。赫子それぞれがまるで意志をもって口を開き言葉を発し、『骨』と呼ぶ赫子を他人に埋め込むと、
喰種の域を越える治癒力を与えられるなど、他の喰種とは比較としても異常と言える能力を持つ。
【人物背景】
職業は小説家であり、ミステリーを中心に執筆しており、高い人気を持つ若手小説家。
その正体は喰種組織『アオギリの樹』の創設者『隻眼の梟』エトであり、アオギリを率いるリーダー『隻眼の王』とCCG上層部からみなされている最強の喰種。
人間と喰種の間で産まれ落ちた天然の半人半喰種のハーフであり、『あんていく』の店長、芳村は彼女の実の父に当たる。
8巻の時間軸から参戦
【方針】
打って出るのも待つのも良い。ただ、アキラの実力が解らない上、此処では喰種のネットワークもない為、慎重に動く事も大事。
【把握方法】
アキラ:コミックス全6巻の把握必須。
芳村エト:東京喰種全巻+次シリーズの:reを8巻まで読めば把握は可能。特に描写の都合上、:reの把握は必須となる
最終更新:2018年06月05日 16:04