――むかしむかし……いえ、この間まで、この町ほど清高な街はないのではないか、と思っていました。
私たちは日通りの良い道の反射を受けて、微笑みながら暮らしていたのです。
母とは死別して二人っきりでしたが、政治家の父と何不自由ない生活を送っていました。

 白い鳥が彼女の上を羽ばたいています。パタパタ。パタパタ――。小さいて愛らしい、
彼の身体は一般的な小鳥と変わらないぐらいに華奢です。
ただ、ほかの小鳥と違い、彼の胸元には赤くて深い嘴があり、そして、大いなる罪に対して立ち向かおうとする強い決意を持っていることでした。
……小鳥は、いつの間にか彼女の腕に降り立つと、ひどくひどく白い腕をつっつき始めました。
白い肌の上を、生命維持にはいささかたよりないさらさら血液が、パタ、パタ、と落ちていきます。
彼女は小鳥を振り払おうとして――愚直すぎる覚悟に身を引き裂かれる未来を見てやめました。

 鳥が彼女を見つめている。彼女の名前は何ですか?

 ――ある日、平和な街に一人の魔法少女が誕生しました。彼女は良家の子女であり、学校の白百合であり、そして予言者になりました。
そこには母を失い子供を止めた少女も、父親を失い誇りを見失った女性も、醜聞により羨望が反転した学生もいませんでした。
しかし、彼女は同時に何者でもなかったのです。彼女は誰よりも生きる理由を求めていました。

 首の長い鳥が彼女の後ろに天秤を携えて立っています。その高鳥――背の高いことからそう呼ばれていた――は、重大な責務によりやせ細り、
頭部は包帯状のもので覆われていて、視界が阻害されているようです。不安定な首の上に乗った天秤が、カタ、カタ、と時折音をたてて傾きます。
片方だけの底が厚く作られている不器用な天秤は、かつて彼が森において公正なる裁判官を務めていた証です。
森の平和のための、正しく罪を測れるはずだった天秤。ある意味でそれは少女のあこがれでもありました。
母を失ってから、感情に惑う少女のままでは、行き先も決まらず漂流する小娘がいるばかり。彼女には正しさが必要で、一身にそれに奉仕しなければなりませんでした。
彼女は、天秤に衝動のまま手を伸ばし――罪が身体を突き破る未来を見てやめました。

 町に住んでいる彼女は、住民たちが災厄に飲み込まれることを放っておけなかった。
目的は純粋だ。
理由も純粋だ。
傾いた天秤と共に動機と手段が汚れに濁っていく。

 ――彼女は人々の中に入りたがっていましたが、人々は彼女の有様を見て遠ざけました。
彼女はそれでも怒らずに自身が持つ使命を、言い聞かせるかのように語り続けます。

『やがてこの町に災厄が訪れるだろう。
 町は絶望と悲劇に染まり、暗闇が絶えぬだろう。
 悲劇が終わるときは恐ろしい怪物が町に現れ、すべてを飲み込んだ時だ。
 そうなったら二度と世界に太陽と月は昇らぬ。 ……私は絶対に阻止しなければならない』
どんなことをしても――

 いつの間にか視界が真っ暗になっていました。不意に彼女の前に明かりが揺れます。
明かりの持ち主は、翼の名残と真っ黒な腕を持っています。彼女のすべてを観測するかのようにたくさんの目があちらこちらを眺めます。
その大きな鳥は森の平和を守っていました。いつでも、どこでも、怪物が現れないようにずっと。
煌々と燃え続ける明かりは、彼の使命の現れ。すなわち、森の仲間たちの平和と安寧を見守り続けること、そしてそのために救いを与えること。
彼女の眼にはそれはとても気高い意志に満ちているように思いました。彼はその明かりのために自らの翼をすべて火種にしてしまったからです。
彼女は明かりに惹かれて近づいていき――頭を食い千切られる未来を見てやめました。

 たくさんの未来予知は絶望の未来を見ています。
町に住んでいた彼女は、人々が災厄に飲まれるのを見ていられません。

 『――が災厄の要因を摘んだのならば、人々は誰も災厄に飲まれない』

 彼女が未来を善くするたびに、あの娘は信仰を手に入れました。
彼女はどれだけ疲れていても予知を止めることはできませんでした。災厄はいつでも彼女たちの使命を台無しにできるからです。
使命が彼女を覆いつくす頃には、彼女の周りには誰もいませんでした。
彼女の崇高なる願いのために、無限に有限な愛のためにあの娘はすべてを使いました。
そのためあの娘の名残はすべて消え去り、魔法少女と呼ばれることもありません。

 こうして――彼女は災厄を防ぐためにいかなる手段をも用いました。
無垢な幼女を唆し、助けの手を罠に嵌め、無関係な人を多く巻き込み――
彼女は、(当たっていれば) 使命を果たしました。「……ああああ」災厄になるはずだった少女を、当たっていれば。
親友の断片で貫き、「あああああ」無事に討ち果たしたのです。当たっていれば! 迫害された予言者に、救世主に!
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 外した、外した。
信念の怪物は、繰り返す時の管理人に敗れました。



 ※ ※ ※


 災厄を予知した予言者、しかし、災厄の証明はいかにしてなされていたのでしょう?
彼女たちはあらゆる犠牲を用いて災厄の予防に努めました。
「その小さな少女のままでは何もできないよ!」彼女は決意をため込み、自らの心象を取り去りました。
「もしも惑ってしまったらどうするの?」彼女は変わることなき正しさを掲げ、災厄に傾くだけ傾く天秤に障害をかけました。
「暗い夜に災厄が現れたら?」彼女は何でもしてくれる狂信者を用意しました。
そして予言者自身の命すら生贄にして、災厄は存在しないと証明しました。

 しかし、彼女は誤ったのです。災厄に――鹿目まどかに、当たるはずだった礫は外れてしまいました!
その瞬間に――彼女が捧げてきたあらゆる犠牲は無駄となり、彼女は無のために大きな犠牲を出した、怪物になってしまいました。
元々、無理のあることだったのです。中学生の身の上で意志を貫き通し、禁忌を犯し続け目的を遂行することは。
徐々にはがれ始めていた心のメッキは外れた最期の一撃によって、ついに彼女の素の心を露にさせました。
小さな子供が言います。「結局、認めたくなくて大暴れしただけだったね」彼女の決心が折れました。
冷酷な女性が言います。「何をやっているの? これじゃあ何の意味もないじゃない!」彼女の天秤が壊れました。
黒い少女が言います「お前なんか※※※※じゃない」彼女は予知を信じられなくなりました。

 迫害された予言者は生きる意味を求め続けました。だからこそ、災厄に対してあそこまで苛烈に立ち向かったのです。
しかし、それも失敗し這いつくばってそして再び聖杯という希望を見つけた、彼女の顔は、皆が口をそろえて言うでしょう。

 ――あそこに怪物がいる!



【クラス】バーサーカー

【真名】
罰鳥/大鳥/審判鳥

【出典作品】
Lobotomy Corporation

【属性】
秩序・善

【ステータス】
罰鳥
筋力:E 耐久:D 敏捷:C 魔力:D 幸運:E 宝具:C

大鳥
筋力:B 耐久:A 敏捷:D 魔力:B 幸運:E 宝具:B

審判鳥
筋力:D 耐久:C 敏捷:D 魔力:A 幸運:E 宝具:A

【クラススキル】
狂化:A
バーサーカーのクラススキル。理性と引き換えに驚異的な暴力を所持者に宿すスキル。
彼らの思考は【怪物】から森を守るという一点に固定されており、事実上意思疎通は不可能である。

森の守護者:A
仕切り直しと戦闘続行の複合スキル……だが、
バーサーカーは【怪物】から森を守らなければならないために、霊体化に際して抵抗し魔力を消費する。
これは霊体化している数が多いほどに上昇し、三鳥すべての場合は莫大な量となる。
また、三鳥すべてが実体化したときに強制的に【森の入り口】を開く。




【宝具】
『処罰!(小さなくちばし)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:5 
罰鳥の宝具。相手から攻撃を受けたとき筋力、敏捷、耐久を最大3ランク引き上げる。

『永久の平和のために(大きな目)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:20
大鳥の宝具。周辺から光を奪い薄暗闇を展開する。ランクB以上の精神抵抗を持たないとき、判定によっては明かりに魅入られてしまう。

『審判(長い腕)』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:50
審判鳥の宝具。不平等な天秤によって周辺に持続ダメージを与える。また、元の平等な天秤としての性質により、
固有結界および時空間干渉に対しててある程度の抵抗を持つ。


『黒い森の怪物(終末鳥)』
ランク:EX 種別:- レンジ:-
三鳥が実体化し、森の入り口に入った時に発動する。三鳥が同化し一つの大きな怪物となった姿。

終末鳥
筋力:A 耐久:EX 敏捷:B 魔力:A 幸運:E 宝具:EX

三鳥すべての宝具をワンランク上げたうえで使用できる。周辺に宝具の卵を設置し、すべて破壊されるまで消滅しない(しかし、宝具の効果は消失する)。
また、範囲内ならば一定時間において自在に転移することができる。

【人物背景】
森の怪物。元々はただの森の住民だったが、ある日現れた予言者に怪物の出現を予言されたことによって狂気に陥る。
悪化していく森の状態に対して、彼らが選んだ最終手段は力を合わせることだった。


【マスター】
美国 織莉子@おりこマギカ

【マスターとしての願い】
聖杯により見滝原を災厄から守る。

【能力・技能】

魔法少女
魔法少女に変身することができる。
彼女の固有魔法は予知、しかし、断片的であり、自由に発動することはできない。
攻撃手段は宝石を飛ばす、宝石から光線を出す(オラクルレイ)等

【人物背景】
新約おりこ☆マギカ?sadness prayer?の終盤時間軸から参戦。おおむね作品通りの性格だが、
まどかの殺害に失敗したことにより、妄念に取りつかれてしまっている。

【方針】

どんな手段を使ってでも勝利する。
最終更新:2018年06月05日 21:27