とある民家の一室。
「夢じゃ...ねえんだよな」
金髪の青年―――初見では不良にしか見えない風貌の高校生、巽完二。
彼は、ベッドに腰掛け此処に至るまでのことを思いだしていた。
彼の住む稲羽市で起きた連続怪奇殺人事件。
その元凶となったマヨナカテレビにて真犯人を捕まえ、事件は終わりを告げた。
そして、その中心となった完二の先輩に当たる青年にして特別捜査隊のリーダー、鳴上悠は都会へと帰ることになり、彼の送別会の準備にとりかかっていた時のことだった。
折り紙で飾りを作っている完二の目に一枚の白紙のトランプがとまる。
それは買った覚えのないものだったが、偶然完二だけが見ていたのか、誰もそれに言及はしなかった。
なにかに使えるか、という算段もなく、彼はただそれに手を伸ばす。
それに触れた途端、気が付けば世界は変わり、仲間たちは『マヨナカテレビのことは知らないが仲のいい学友』になっており、自分もまたその一員となっていた。
「セーハイだかなんだか知らねえがよ...なんだっつーんだよ、クソッ」
頭を掻きつつそう吐き捨てる。
彼は勉強が得意な頭ではないことは自覚している。
しかし、そんな彼でも現状が「なにかとてつもなくヤバイ」ことは直感していた。
「どうだ。少しは落ち着けたか?」
ドアを開け、完二に声をかけるのはリーゼントをこしらえがっしりとした体格の巨漢。
彼こそが、完二のサーヴァントであり、生前の名はブラート。かつて殺し屋・ナイトレイドの一員として活躍した漢である。
召喚され、聖杯戦争について語ったのはいいものの、混乱する完二に落ち着ける時間を作るため、見張りがてら部屋に彼を一人残していたのだ。
「あ...ワリッス。なんか気を遣わせちまったみてぇで」
「ハハッ、気にするな。こんな状況受け入れられなくても仕方ないからな」
朗らかに笑うブラートに、思わず完二も笑みを零す。
「えっと...名前、なんでしたっけ?ら、ラ...」
「ランサーな。まあ呼び辛かったら兄貴かハンサムでいいぜ。いや、むしろそっちの方がいい」
「んじゃ、兄貴でいいっスか」
「よし!いい感じだ!」
ブラートの口元がキラリと光る。
その歯並びからしてかなり丁寧に磨いているのが窺える。
「それで、マスター。お前はこれからどうするつもりだ?」
スッ、と自然な流れでブラートは完二の隣に腰掛ける。ギシリ、と微かに軋む音がした。
「そういやまだ名前言ってなかったっスね。俺は巽完二。完二でいいっスよ。マスターがどうとかは俺の柄じゃねえんで」
「タツミ...」
「?」
「いや、かつての仲間にタツミって名前の熱い男がいてな」
「マジっスか。珍しい偶然もあるもんスね」
「まったくだ。まあ、それは置いておいてだ。完二。お前はこの聖杯戦争をどう勝ち抜くつもりだ」
ブラートの目付きが変わり、先程までの朗らかな雰囲気が一変引き締まったものになる。
「勝ち抜くってのは...」
「この聖杯戦争はただの喧嘩じゃない。正真正銘、れっきとした殺し合いだ」
"殺し合い"。その言葉に完二の目が見開かれる。
「殺しって...んなのヤるわけねえだろ!」
殺し。他者の命を奪いこの世から亡くすこと。
殺人は法律で禁じられた許されざる行為である。
だが、それ以上に完二は知っていた。
花村陽介。普段は軽い態度で、どうやったら女にモテるかを本気で考えるような、一言で言えば"チャラい"性格の完二の先輩。
だが、彼のかつての想い人であり、連続殺人事件の被害者である小西早紀の話題になると、いつも誰よりも悔しげに顔を歪ませていた。
小西尚紀。小西早紀の弟であり、突然の彼女の死にどう反応すればいいか戸惑い、一時期はロクに会話をしようともしなかった。
ようやく受け入れた時には、誰よりも姉を想って泣き腫らしていた。
それに、完二自身も経験がある。いや、彼以外の特別捜査隊の者も同じだ。
鳴上悠の妹同然の堂島菜々子が息を引き取った時、彼らは胸が張り裂けそうな苦しみを味わった。
悲しみ、怒り、憎み、下手人に対して本気の殺意をも抱いた。
奇跡的に息を吹き返したからよかったものの、もしその奇跡が起きなければ、皆の心には決して癒えない傷跡が残っていたはずだ。
人が殺される―――死ぬ。それは、多くの人間を傷付け地獄に突き落とす所業だ。
巽完二という男が、そんな残酷な所業に手を染められる筈もなかった。
「誰かを殺そうって奴がいるなら俺がブン殴ってでも止めてやる」
「それで済ませられると思ってるのか」
ブラートの声が一段と低くなる。
「聖杯戦争は、なにもただ殺し合うだけじゃない。勝ち残った奴には如何なる願いも叶える権利が与えられる。聖杯を狙うのは、単純な損得で動く奴らだけじゃねえ。例えどれだけ傷つこうが、屍を積もうが叶えたい願いのために戦う奴らもいる。例えお前がそいつらを殺さずに止めたとしてもだ。そいつらは決して夢を諦めない。命が尽きるまで戦い続けるだろう。
完二、もう一度聞くぜ。もしも命がけで願いを叶えるために戦う奴が現れた時。お前はそれでも敵を殺さないつもりか」
ブラートの言葉に、完二のこめかみから冷や汗が伝った。
目を伏せて考える。
完二とて、今まで何の苦労もしていない訳ではない。
だが、今まで自分の命を投げ打ってまで挑んでくる敵と一人で相対したことはなかった。
戦ってきた相手は、大概は己の欲圧された心のやり場を求める独りぼっちの影(シャドウ)であり、自分にはいつも信頼し合える仲間が大勢いた。
今回の聖杯戦争はそれとは状況が全く違う。
サーヴァントという仲間はいるものの、それは別の者も同じだ。
2対2、単純に考えれば1対1の構図になる。
そんな状況で、今まで通りにブッ飛ばすだけでは済まない相手と戦った時―――完二は、相手を倒せるのだろうか。
やがて、完二は意を決したようにブラートへと向き合った。
「...兄貴。俺ァ、人様に胸張れる人間じゃねえ。警察にはなにかと目をつけられるし、お袋や先輩たちにも迷惑をかけっぱなしだった」
「そんな俺でも、やっぱり人を殺しちゃいけねえのはわかるんだ。どんな理由があってもだ」
甘い考えだ、とブラートは思った。
彼にそれを非難するつもりはない。むしろ、一般人である彼にそう易々と殺し屋のような覚悟はしてほしくないとさえ思っている。
だが、聖杯戦争に選ばれてしまった以上、彼も敵を打ち倒さなければならないのだ。
そんなブラートの想いを、完二はわかっている、とでもいうように正面から見据える。
「けどよ、兄貴の言う本気の奴らはそこまでしても叶えたい願いって奴を抱えてるんだよな」
「ああ」
「だったら―――俺は、ソイツらを受け止めてやりてえ」
ブラートは耳を疑った。完二は、相手が殺意を持っていてもなおそれを受け止めたいというのだから。
「死ぬつもりか」
「んなつもりはねーよ。けど、そいつらは誰にも自分の想いを打ち明けられねえんだろ...ずっと抱え込んで戦うなんて、辛すぎるだろ。だったら、ソイツらが抱え込んでるモンを全部俺にぶつければいい。そんで、俺も本気で止めてえんだってことを伝えてやりてえんだ」
かつて、自分が向き合うことになった影(シャドウ)のことを思いだす。
彼(じぶん)は、男の身でありながら繊細な趣味であったことにコンプレックスを抱いていた。
そのことで自分を馬鹿にしてくる女が怖い。男らしいってなんだ。そうじゃなきゃ認められちゃいけないのか。
極め付けに、彼(じぶん)は言った。
『僕を受け止めて』と。
完二は知った。存在を認めることが、想いを受け止めることがどれほど救いになるかを。
彼(じぶん)だけではない。
直人も、りせも、クマも、自分が直接見た訳ではないがセンパイ達も。
みんな、そうやって己を受け入れ前へと進んできたのだと。
「あ~、うまいこと纏まらねえや。...とにかく、俺は、最後までわかりあうことを諦めたくねえんスよ」
「...なるほどな」
ブラートは完二への認識を改める。
どんな相手でもただ否定するのではなく理解を測る。
言葉にすれば簡単だが実行するのは困難だ。
相手は理念が違うのなら住む世界も違う。己の世界の常識が通じないのは当たり前だ。
完二はそれを承知のうえで解り合いたいと言うのだ。
頑固と言うべきかどこまでも純粋というべきか。
聖杯戦争を勝ち抜くマスターとしては厄介なタイプだろう。
だからこそ、共に戦いたいと思う。
もともと、ブラートの願いも聖杯を消すことだった。
どんな願いも叶うモノなど人間には過ぎた力だ。
強大な力は人を欲と狂気に溺れさせ、傲慢に陥れ、闘争を誘い、多くの人々を滅ぼす。
ブラートの生きた時代もそうだ。強大な暴力や権力を持った者が闊歩し力無き人々はいくら苦しんでも泣き寝入りするしかない。
そんな時代だったからこそ、ブラートは反乱軍に加わり国を変えようとした。
だから、この聖杯戦争でも願いは変わらない。
聖杯を消し、二度と聖杯戦争を起こさない。それがブラートの願いだった。
力を持とうとも他者を踏み台にすることをよしとしない完二は、反乱軍の目指した世界の理想の人間だ。
そんな男だからこそ、単に他のマスターを殺して願いを叶えるのではなく、共に違う方法を模索し聖杯を消したいと思う。
「お前の覚悟は認めるぜ、完二。俺はおまえがそれを望むまで一緒に戦わせてもらう」
「兄貴...!」
「だが、勢いだけでどうにかなるもんじゃねえことはわかってるな」
ブラートがゆっくりと距離を詰める度に、ギシ、ギシ、とベッドの軋む音が鳴る。
「人の関係ってのは繊細なものなんだ。俺が見る限り、お前は優しい奴だが周囲には誤解されやすい...違うか?」
「うっ...否定できねっス」
「だから」
俯く完二の顎に手をやり、くいっと持ち上げる。
「俺が教え込んでやるよ。手取り足取り...な」
徐々に近づくブラートと完二の顔。
やがて、互いの吐息が交わり合い―――
「なななな、なにやってんだコラァ!!」
完二は思わず顔を真赤に染め上げ飛び退く。
「ハッハッハッ、冗談だ」
豪快に笑い飛ばすブラートだが、彼が本当に冗談だったのかマジだったのか...その真意は完二にはわからない。
「まあとにかくだ。俺たちの目指す場所は同じだって分かったんだ。改めてヨロシクな、完二」
「ウッス!男・完二、身体張らせていただきます!」
「よおし、その意気だ!」
マスターとランサー。信頼を築いた二人の男は、固い、固い握手を交わした。
その信頼は、山より高く鋼よりも厚いだろう。
「さて。親睦を深めるために裸の付き合いとシャレ込むか!」
「オウ!...って、はだか?」
「なにキョトンとしてんだ。風呂だよ、風呂」
「あ、あぁ...風呂っスね。そういやここらへんにでかいサウナで有名な大浴場が...」
『僕の可愛い子猫ちゃん...』『あ、嗚呼、なんてたくましい筋肉なんだ!』『怖がることはないんだよ。さぁ、力を抜いて...』
「だだだだだ、だから俺はそういうンじゃねえって言ってんだろうが!キュッと絞めんぞコラァ!!」
【クラス】ランサー
【真名】ブラート
【出典作品】アカメが斬る!
【ステータス】
通常
筋力B 魔力E 耐久B 幸運C 敏捷B 宝具:EX
宝具発動後
筋力A+ 魔力E 耐久A+ 幸運C 敏捷A+ 宝具:EX
【属性】
秩序・善
【クラススキル】
対魔力 :C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
【保有スキル】
直感:B
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
視覚・聴覚に干渉する妨害を半減させる。
頑健:A
体力の豊富さ、疲れにくさ、丈夫な身体を持っている事などを表すスキル。
通常より少ない魔力での行動を可能とし、Aランクであれば魔力消費を通常の4割近くにまで抑えられる。
戦闘続行:A
往生際が悪い。
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『悪鬼纏身インクルシオ』
ランク:EX 種別:対人宝具(自分) レンジ:1 最大補足:己のみ。
鎧の帝具。
凶暴な超級危険種タイラントを素材として作られた帝具で、素材となった竜の強靭な生命力により装着者に合わせて進化すると言われている。
非常に高い防御力を誇り、生半可な攻撃ではダメージを受けず、毒等の特殊な攻撃も無力化または大きく軽減できる。また、副武装として「ノインテーター」と呼ばれる槍が備わっており、これを主な攻撃手段として用いる。 ほか、使用者の身体能力を飛躍的に向上させる効果もあり、武器を持たず戦うことも十分可能。
ただし、使用者に大きく負担が掛かる為、並の人間が身に着けると死んでしまう恐れもある。
また、適正があったとても長時間の使用は厳しく、体力の低下に伴い自動解除される為、持久戦に持ち込まれると不利になることも。
『インクルシオの能力』
周りの風景に合わせて姿を消せる能力だが気配や殺気まで消すことは出来ない。
これは生前のタイラントが高い環境適合力と防衛本能により身に付けた能力である。
帝具の材料となった竜型超級危険種「タイラント」の筋繊維や闘争本能は未だ生きており、使用者の思いと成長に合わせて進化するという強力な特性を持っている。
【weapon】
この状態ではただの頑丈な剣だが、宝具を発動するとインクルシオとなり、武器も槍に変わる。
【人物背景】
殺し屋「ナイトレイド」の一人。
筋肉質の大男で、同じくナイトレイドの一人であるタツミからは「兄貴」と呼ばれている。
豪快な性格で面倒見がいい兄貴分。タツミに目をかけており、いずれ自分を超えるかもしれないと期待を寄せている。
同時に、殺し屋としての非情な現実を突きつけることも多い。タツミとの会話で顔を赤らめることからホモ疑惑が浮上しているが、その性癖はナゾに包まれている。
元は帝国の有能な軍人だったが、帝都の腐敗を知ってナイトレイドに仲間入る。彼のトレードマークでもあるリーゼントヘアーはナイトレイド加入に際して行ったイメチェンであり、以前はかなりの美形だった。軍人時代は「100人斬りのブラート」として名が通っており、その戦闘力はナイトレイド随一。帝具がなくても十分な強さを持ち、ニャウからは「エスデスに次ぐ」とまで評されている。船上での護衛任務にてエスデス直属の帝具使い「“三獣士”」と戦闘になった際には、圧倒的な実力でダイダラを瞬殺。次いで、かつて尊敬していた上司リヴァと対峙し激戦の末、致命傷を与えるものの、猛毒を仕込まれた血を撃ち込まれこれに侵される。死を悟ったことでタツミにインクルシオを託し、その奮戦を見届けながら静かに逝った。
【方針】
完二に付き合い共に聖杯戦争を止める。だが、どうしても止まらない奴がいれば完二の代わりに手を汚すつもり。
【聖杯にかける願い】
聖杯を壊す。
【マスター名】巽完二
【出典作品】persona4 the animation
【性別】男
【weapon】
そんじょそこらの不良では相手にできないほどのケンカが強い。
鈍器として使用可能。
【人物背景】
稲羽市中央通り商店街にある染物屋「巽屋」の一人息子。 八十神高等学校に通う一年生で、主人公達の後輩にあたる。
中学時代から札付きの不良としてその名を轟かせており、過去にたった一人で暴走族を壊滅させたという話で周囲から恐れられているが、根は仁義にあつく、子供や動物にも優しい性格。
また信頼できると目上の人間にはちゃんと敬意を払うなど、ちゃんと礼節もわきまえられる実直な部分もある。が、からかわれたり興奮したりすると時々口調が荒くなる。
その風貌からは全く想像できないが、実は裁縫や編み物が趣味のオトメンであり、かわいいもの(モノ・動物問わず)が大好きである。
そのため、周囲の視線はきつく、本人も傷つくことは少なくなかった。
マヨナカテレビに落とされ、己の認めたくない部分である『影(シャドウ)』と対峙することになるが、主人公たちの助力を借りつつも己の影と向き合うことでペルソナ『タケミカヅチ』を習得。
以来、主人公たちの仲間の一員として事件の解決に協力した。
【能力・技能】
真っ黒な鋼鉄のボディに骸骨の文様という、それまでの『女神転生』系とは一線を画すデザインが成されており、手に持った稲妻形の鈍器を武器に戦う。
攻撃手段として強力な物理攻撃と電撃を有している。
この聖杯戦争内ではペルソナは進化前のものらしいが...
【方針】
聖杯を狙って誰かを殺そうとする奴を止める。
【聖杯にかける願い】
対聖杯派。元の世界に帰る。
最終更新:2018年06月05日 22:22