とある通り。沢山の人が行き交う中を悠々と進むボロボロの白衣を纏った男が一人。
口笛を吹きながら男は手の中で檸檬を弄んでいた。
「嗚呼、この街は素晴らしい! 新鮮な空気! 生い茂る草木! そしてそれに見事に合致した安穏とした雰囲気(アトモスフィア)! これこそが僕の求めていた理想郷(シャングリラ)!
――と、まあそれは置いておいて……疑問なんだがアサシン、君はどうして船乗りなのにライダークラスで召喚されなかったんだい?」
突如、意味不明なことを叫び始めたその男――、梶井基次郎は急に後ろに振り返って誰ともなく話しかけた。
「知るかそんなこと! おれだって本当はライダーとして召喚されたかったわ!」
霊体化していた梶井のサーヴァントであるアサシンがそれに答えて吠える。
「うはははは、ところでもう一つ質問。霊体化(それ)は他の参加者と遭遇するまで解かないのかな?」
「ああ、おれの格好は目立ち過ぎるからな……。なるべく解かないようにするぜ」
アサシンはいかにも海賊然とした自分の服装を見て言った。
「確かに。その混沌(ケイオス)を内包した鼻はよく目立つ」
「誰が目立ち過ぎるハデな赤っ鼻じゃい!!」
アサシンが首をいくつかのパーツに『分離させて』叫ぶ。
そう、アサシンは『身体を自在に分離することが出来る』のだ。
アサシンが言うには、昔食べた「悪魔の実」なる果物の呪いらしいのだが、その時、梶井はいつもの『実験』に夢中で詳しく聞いていなかった。
梶井のサーヴァントである『道化のバギー』は海賊だ。だが、海賊の癖に泳げない。それはやはり「悪魔の実」の影響であるようだった。
「そこまでは言ってないんだけどなあ」
「うるせえ! ハデにぶっ飛ばすぞ!!」
梶井は一応弁解したが、鼻のことに関すると全く聞いてもらえないのが常である。
「おい、そろそろ『時間』だ」
アサシンが途端に真面目な顔になって広場の時計を見てながらそう言った。
「うははは、いよいよか! 記念すべき第三回目の『実験開始』だ!」
梶井とアサシンは喧騒とした通りを抜け、暫く歩いた。
十分程歩くと、豪奢なビルの前に辿り着く。
ビルの屋外看板には、洒落た筆記で「丸善」と記されている。
梶井はそれを見てニッと嗤った。
「仕掛けは?」
「済んだ」
櫛で髪を几帳面に整える。
「時間は?」
「ぴったり」
早足で階段を駆け上がる。
「被験者は?」
「たくさん」
屋上まで一気に登り終える。
「素晴らしい。では、行こう」
「ああ、ハデにな」
――二人が屋上の柵から揃って町を見下ろした途端。
ドゴォォォォォォォォン!!!!
鼓膜をつんざかんばかりの轟音と、身を焦がさんばかりの熱風が丸善ビルの客らを襲った。
梶井とアサシンの手によって、丸善ビル中に仕掛けられた檸檬型爆弾が一斉に起爆したのだ。
それによってビルは半壊し、爆風と爆熱によって死傷者は百人は下らないだろう。
もちろんそんなことをすればビルの屋上にいた梶井自身もただでは済まないのだが――、
「ふぅっ、実験結果は上々だぁ。死と爆発が奏でる極上の協和音! 何時もながら素晴らしい!
ただ思ったよりもピンポイントでの破壊が出来なかったなあ。これは次回までの課題か。手帳(メモ)に記しておこう」
――梶井は生きていた。
梶井基次郎の異能、『檸檬爆弾(レモネード)』は「檸檬型」爆弾による爆発のダメージを一切受けないというものである。
正直言って弱能力だが、これによってビルの爆破に巻き込まれても無事で済んでいるのであった(もちろん天井の崩落に遭えば大変なことになるため屋上で起爆し、さらに床が崩れないよう細心の注意を払ったが)。
「よう、マスター。まーたハデにやったな! これでおれの魔力も増すってもんだぜ!」
魂を大量に喰らって魔力を補給したアサシンは、上機嫌で梶井の肩をバシバシと叩いた。
「趣味と実益を兼ねた素晴らしくハデな作戦だ! いやー、当たりのマスターを引き当てたぜ。
まあ、今日のところは面倒事にならない内にハデに逃げるとするか」
「アサシン、これで満足していては駄目だぞぅ。もっと、もっとだ!! 僕たちの実験はこの街の人間――いや、サーヴァントも含めた全てを被験体として、更なる段階(ステイジ)に進まなくてはならない!」
梶井は身のこなしも軽やかに屋上から一気に一階まで飛び降りた。
すると先に階下にいたアサシンが、梶井が落下する直前に腕を分離させ、それを空中で受け止める。
「おうともよ! そんでもって、ついでに『ソウルジェム』も集めて聖杯ゲットだ!」
間もなく、救急車のサイレンが近づいて来た。
「ぎゃははははははは!」
「うはははははははは!」
二人が闇に溶けた後も、彼らの笑い声は何時までも、何時までも焼け跡にこだましていた。
【クラス名】アサシン
【真名】バギー
【出典】ONE PIECE
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力:C 耐久:B 敏捷:D 魔力:E 幸運:A+ 宝具:D
【クラス別スキル】
自身の気配を消す能力。攻撃態勢に移るとランクが下がる。
【保有スキル】
船と認識されるものを駆る才能。
集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。
海賊独自の価値観から生じる特殊スキル。
低ランクの精神汚染、勇猛、戦闘続行などが複合されている。
【宝具】
『分離自在の悪魔(バラバラの実)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
アサシンは体の各部を自在に分離させる事ができる、斬っても斬れない「バラバラ人間」である。
切り離した体のパーツは自在に操る事が可能で、空中に浮遊させたり、それぞれに別々の動きをさせたりすることもできる。
ただし、操作できる範囲は地面に付いている自分の足を中心とした一定の範囲内に限られ、その範囲の外に出てしまったパーツはピクリとも動かせない。
なお、その制約の関係で足だけは浮かべる事ができず、完全な意味で全身を浮かべたり、体だけ飛ばして遠くまで飛んで行ったりするのは不可能である。
また海や川など水が溜まっている場所に入ると、たちまち全身の力が抜けて体が沈んでしまうという制約も持っている。
【Weapon】
指の間に挟んで斬りつける。
小さな村程度ならたった一発で滅ぼせる威力を持った「特製バギー玉」を靴の先に仕込めるほどに小さく改良したもの。アサシンの切り札。
【人物背景】
ピエロのような顔立ちをした男で、自分の赤くて丸い大きな鼻に凄まじいまでのコンプレックスを抱いており、鼻を指摘されると激怒する。
望みは世界中の財宝を手に入れること。笑い声は「ぎゃはははは」。口癖は「ハデに~」。
性格は卑怯かつ残忍で、鼻を馬鹿にされたと勘違いした時は部下を容赦なく爆殺した。
実は海賊王「ゴールド・ロジャー」の海賊団の元船員。
戦闘時は体を分離させて主に奇襲狙いで戦う。
【聖杯にかける願い】
ハデに遊んで暮らす。
【方針】
現状、非常に魔力に乏しいので一般人をハデに爆殺して魔力を大量に手に入れる。
邪魔するやつは一緒に爆破する。
【マスター】梶井基次郎
【出典】文豪ストレイドッグス
【性別】男性
【Weapon】
体中に大量に仕込んでいる。
なお、全て梶井の手作りであり、爆薬成分が一切検知されない特別製。
【能力・技能】
『檸檬爆弾(レモネード)』
檸檬型爆弾による爆発のダメージを受けない能力(なぜなら檸檬は美しき紡錘形だから)。
【人物背景】
横浜の裏社会に君臨する「ポート・マフィア」の幹部。死そのものを「無数の状態変化の複合音楽」と称するマッドサイエンティスト。
金色の髪と黒グラスのゴーグル、襟にバッジを止めた袖がボロボロの白衣を羽織った派手な出で立ちをしている。
隠密主義であるマフィアの構成員にしては珍しく指名手配犯として名の知られた爆弾魔。
【聖杯にかける願い】
聖杯戦争を通して、「死」についてより理解を深める。
【方針】
アサシンと共に一般人を爆破する。
最終更新:2018年04月11日 20:07