――町外れの教会に、外国人の神父がいる。
 それ自体は別段と、珍しくもないことだった。
 そもそも教会の宗派とは、西洋発祥のものである。いわゆる本場の神父達が、海外から移り住んできたとしても、決して不自然ではないだろう。
 そして現在、この見滝原市の教会にいる神父は、そういう類の人間だった。

「では神父様、ごきげんよう」
「ええ。主のご加護があらんことを」

 黄昏の色が世界を包む。
 茜色の空の下で、老婆が小さく会釈をする。
 ゆっくりと立ち去るその背中を、小さな教会の前に立ち、見送る者の姿があった。
 黒い法衣を纏う者は、金髪碧眼の美丈夫だ。
 怜悧な眼差し、見目麗しい顔立ち。理知的な印象を与える男は、その顔に柔和な笑みを浮かべて、歩み去る老婆の姿を見送る。
 そうしてしばしの時が経つと、彼は教会のドアを開き、ゆっくりと身廊を歩いていった。
 かつり、かつりと靴の音。他に音を立てるものはない。この時分ともあれば、礼拝に訪れる者が現れるのは稀だ。
 神父はややあって、祭壇へ至り、聖者の姿を静かに見上げた。
 殉教の図だ。
 磔刑に処せられた神の息子は、救世のために穢れを背負い、茨の冠を被って逝った。

「神がこの世におわしめすなら、私のような不心得者は、とうに裁かれているのだろうな」

 ふ――と。
 聖者は一人、シニカルに笑う。
 信仰など、心にもないと。この救いようのない世界では、とうに神など死に果てたのだと。
 十字架を見上げる金髪の男は、慈愛の表情が嘘だったかのように、ひどく冷たい笑みを浮かべたのだった。

「――主を試すことなかれ。悪なる者の誘いの声に、神の子はそう返したという」

 深淵から、囁く声だった。
 神父の他に誰一人として、いるはずのなかった教会に、低く響く声があった。
 人の言葉にありながら、人の世の者の声ではなく。
 まるで闇の奥底から――異界から囁きかけるような、そうした響きの声色だった。

「戒めであれ恵みであれ、神の見えざる手を疑うこと。確かめんとすること自体が、教義においては悪徳なのだ」
「手厳しいな。君にとってこの装いは、よほど気に障るものらしい」
「贅沢は言わない。謂われもない宴に招かれた時点で、意にそぐわぬと言えばそぐわぬが故にな」
「それはどうも」

 おぞましさすら漂わす声にも、神父は肩を竦めて応じる。
 声の主を、振り返りはしない。男の視線は今もってなお、正面の祭壇に向けられたままだ。
 何せ彼は知っている。その囁きを口にする者と、既に縁で結ばれている。
 白い手袋の下に隠した、血よりも赤き、罪人の烙印。
 神の信徒の装いにあって、なお殺戮を世に敷く者。聖杯戦争の参加者の証を、神父は既に宿している。
 なればこそ、彼はその男を知るのだ。天上の座へと祀り上げられた、英霊の存在を知っているのだ。
 たとえそれが世を乱す者――昏き復讐者(アヴェンジャー)であったとしても。

「相も変わらず、冷めたものだ。尋常ならざる監獄に、囚われ閉じ込められていながら」
「傍目にそう見えているのなら、きっと私には思った以上に、役者の才があったのだろう」

 私がお前が思う以上に、心を揺さぶられてはいるのだよ、と。
 割り当てられた盤上の駒に、笑顔の神父は語りかける。

「マスター。いかな因果か応報か、オレなぞを引き当ててしまった不運な男よ」

 その装いは、黒かった。
 ただの黒ずくめではない。目深に被ってみせた帽子も、羽織った外套も漆黒だったが、それだけの装いでは断じてない。
 ステンドグラス越しに注ぐ、茜の光を浴びてなお、その男の有様は黒かった。
 その佇まいそのものが、闇に魅入られた黒だったのだ。
 宵闇よりもなお暗く、暗黒よりもなお黒く。
 聖域に似つかわしい男ではない。正道を歩んだ者ではない。
 邪道外道よりなお暗い道――恩讐の魔道に囚われたが故。それ故の闇であり、黒であると。
 全身から滲み出る存在感、それそのものが物語るような、黒い男の姿があった。
 そうしていつの間にか現れ、長椅子に座り込む男こそが、教会の戸を叩き現れた者――神父に招かれしサーヴァントだった。

「オレは今なおお前を知らぬ。聖杯なぞを求める理由――オレを使う理由を知らぬ」
「いいだろう、名高きモンテ・クリスト伯。君には問う資格がある」

 黒い男の不躾な問いにも、神父は鷹揚に応じた。
 本来サーヴァントというものは、主君の手足となるべき道具だ。それこそ意に従わぬというなら、令呪で罰するだけの駒だ。
 しかし彼は男に対して、常に敬意を払って接した。
 彼が問うなら答えたし、拒まれたならば深入りを避けた。
 真名で呼ばれることに対して、不快感を示したならば、通称でこそ彼を呼んだ。
 モンテ・クリスト伯爵とは――彼の引いたアヴェンジャーとは、そうするべき相手であると見なしたからだ。
 仮に令呪をかざしたとしても、この男は決して止まらぬだろう。己が戒めるより疾く、彼の恩讐は己の胸を、深く抉って死に至らしめる。
 それは御免だ。まだ死にたくはなかった。なればこそ金髪の神父は、名高き英霊に対して、敬意を以て接したのだった。

「私が生まれ落ちた時代は、とうの昔に堕落していた。誰が神を試したことやら、主に見放された我らの星は、退廃と悪徳に穢れ、荒れ果てていた」

 神父が語るのは、歴史だ。
 モンテ・クリストの復讐譚が、世に語られた時代より後。
 この見滝原よりも更に未来、遥か数百年を隔てた時代。それこそが男のあるべき場所だ。
 神父が生まれたその時代は、厄災に穢された地獄であった。
 戦乱を乗り越えた人の姿が、輝いて見えるのはまやかしに過ぎない。
 為政者は権威主義に堕し、人身売買が公然と行われ、搾取と偏見が蔓延る時代は、中世の暗黒の再来とすら言えた。
 アンノ・ドミニを越えた時代――ポスト・ディザスターとは、そういう時代だ。

「私はね。世界を救いたいのさ。誤ったまま進んだ時計の針を、あるべき形へと戻し、歩み直す。それこそが聖杯にかける願いだ」

 そしてその時代に生きる彼は、なればこそと口にしたのだ。
 聖人と同じ、救済の願いを。
 強きが落ちぶれ、弱きが涙し、悪しきのみが笑う時代を、この手で正してやりたいのだと。
 男は為政者を志していた。
 それも連なる七星の、たった一つでは満たされない。
 その背に世界の全てを背負い、その手で世界の全てを救う。絶対的な救世主こそ、彼の求める在り方であった。
 故にこそそのための力を、己は聖杯に望むのだと。
 己が挑むこの戦いは、世界を救う戦いなのだと。
 何のてらいもなく言い放つ姿は、確かに、堂に入ってはいた。
 敬虔な信者を作り笑いで欺き、信じるべき神を皮肉ったとは、到底思えぬような自然体で、彼はそう言ってのけたのだった。

「――いいや、違う。そうではない」

 しかし、返るのは否定だ。復讐の器は切って捨てた。
 それが聞きたいのではないと。求めた言葉はそれではないと。
 心底に救世を願うのならば――真に聖人君子であるなら、己になど行き会うはずもない。
 人でなしの復讐鬼ごときを、こうして引き当ててしまったからには、それは本音ではないのだろうと。

「そんなお為ごかしではない。オレが聞いているのは、マスター――『お前』の話だ。マクギリス・ファリド」

 主の名前を。共犯者の名前を。
 業腹ながらも、己が身命を、預けねばならぬ男なればと、モンテ・クリストは口にする。
 誰にでも口にできるような、大義名分などではない。
 肝要なのは、そうした理由を、選ばれるに至った心根こそだ。
 他の誰にも語りえない――マクギリス・ファリドなればこその動機を、伯爵は問いかけたのであった。

「……ああ、つまりそういうことか」

 声のトーンが、僅か変わる。
 清廉を気取った男の声音に、僅か暗い影が落ちる。
 聖人の語る正義ではない。それは只人であるが故の揺らぎだ。
 マクギリス・ファリドとその名を呼ばれた、法衣姿の金髪の男が、ゆっくりと己を振り向かせる。
 明後日を向いていた彼の視線が、アヴェンジャーの血塗れの瞳に、遂に真っ向から向き合う。

「心奥を晒せと――『俺』を語れと? 自分は黙して拒んだ割に、随分と虫のいい話じゃないか。巌窟王(エドモン・ダンテス)」

 その有様は、一変していた。
 仮面のような笑顔は消え失せ、氷のような真顔があった。
 あるいは遠目に見たのであれば、そのようにも解釈できたかもしれない。
 しかし男の青い瞳は――涼やかであるはずのマクギリスの瞳は、今は激情に燃え盛っていた。
 青くあれども、それは炎だ。分け入るものを焼き焦がさんと、怒り猛って狂う業火だ。
 清らかさという仮面を剥ぎ取り、酷薄さすらも見透かした先に、初めて垣間見える心象の光景。
 それこそがマクギリス・ファリドの抱く、煮えたぎる憎悪の炎であった。
 なればこそだと、英霊は語る。それを本質と抱えたからこそ、己などを引き当てたのだと。
 復讐鬼――巌窟王エドモン・ダンテスは、戦禍(メギド)の熱に中てられ晒され、ようやく薄ら笑ったのだった。


 マクギリス・ファリド。
 ポスト・ディザスターの地球を治める、治安組織「ギャラルホルン」の名士。
 最高機関セブンスターズに、若くして席を置くその男こそ、巌窟王のマスターであった。
 何の因果か宿縁か。それが何者かの呼び声に招かれ、遥か過去の世界へと落とされ、そして目覚めた結果が、これだ。
 教会の神父などという、当てつけのような枠に嵌められ、道化を演じていた男は、そういう道筋を辿って来たのだった。

「ハハ。少しはらしくなった。オレもその方が心地良い」

 その男の逆さ鱗に触れて、なおも巌窟王は笑う。
 気色の悪い作り笑いなど、早々に捨ててしまえばいいと。
 地獄を味わい、憎悪に狂い、悪徳にこそ堕した己には、この熱こそが心地良いと。

「驕ってくれたな、巌窟王。俺の令呪は飾りとでも? 臆病者の主など、顔色を伺う謂れもないと?」
「使わんよ、お前は。恐れではなく、意地にこそ誓って。お前はそういう性根の男だ」

 たとえ生意気を口にしても、マクギリスは命じないだろう。
 戯言ごときを黙らせるのに、強権などを行使はしない。
 それが言い返せなかった己の、敗北なのだと知っているからだ。
 なればこそだと、理解している。瞳に炎を確かめたからこそ、エドモン・ダンテスは確信している。
 聖人君子などとんだペテンだ。冷酷非情ですら真からは遠い。
 こいつの本質に当たる部分は――そうした類の負けず嫌いだ。なればこそと巌窟王は、不遜を口にしたのだった。

「気に食わない。反吐が出る物言いだ。見透かしたような口ぶりで、俺を枠に嵌めようなどと」
「それは経験則か、マスター? あるいはそれこそがお前の、大層なお題目の動機であると?」

 善光を見た。悪徳を見た。なればこそ彼は見逃さない。
 マクギリスの口を突いて出た、その言葉尻を聞き逃さない。
 人を見下す物言いが。あるいは決めつける物言いが。それこそがマクギリスという男を、こう形作った理由なのかと。

「……世は既に堕ちたと、先程言ったな。俺の生まれはその奥底……地獄の果てこそに生まれ落ちた」

 マクギリス・ファリドは語って聞かせる。最奥で燃える炎の種を。己が絶望の成り立ちを。
 栄光あるファリド家の家紋は、最初から持っていたものではなかった。
 腐敗したポスト・ディザスターの、最底辺の貧民街こそが、かつてのマクギリス・モンタークの出生地だった。
 栄達など、望むべくもない果てだ。生きるためには残飯も食らい、食うためにこそ体すら売った。
 いかなる星の巡り会わせか、下衆な義父の情夫として、光の下へと拾い上げられても、なお偏見の目は付きまとった。
 全てを黙らせ、生きてきたのだ。
 己を貶めるものを。己を底辺に押し込めるものを。
 己が持つべきはずだった、尊厳を取り上げんとする者全てを、マクギリスはねじ伏せてきたのだった。
 ただ、怒りと憎しみを火種に。
 媚を売るための善良も、敵を切り捨てるための冷徹も。全てを迸る激情こそを、慰め満たすための術として身につけ。

「復讐だな。お前の動機とは」

 それがお前の本音だろうと、巌窟王は一言で括る。
 同じ境遇に生まれた哀れな者を、慰め救うなど心にもない。調停調和などという大義は、この男からは程遠い。
 ああ、そうだ。それは方便だ。
 聞こえのいい言葉で人を惑わし、味方につけて利用するため。そのために掲げた題目でしかない。
 この男の本質とは、怨みだ。
 謂れのない不幸を押し付けられ、台無しにされた半生を呪い、なればとぶち壊さんとする怒りだ。
 調停者(ルーラー)などを名乗れはしまい。マクギリス・ファリドとはその対極――同じ穴の復讐者(アヴェンジャー)なのだと。

「だとしたならば、満足するのか?」
「まさか。ようやく及第点だ」

 そしてそこまで語り聞かせて、なおも巌窟王の評価は、それだ。
 己を身命を捧げ従うに、十分に相応しい器であるとは、未だ到底言い難いのだと。
 だとするならば、この身の上語りは、一体何だったというのだ。必然、マクギリスの視線には、そうした棘の色が宿る。
 隠すことには、慣れていたはずだ。だとしてもその哄笑の前では、どうしても地金を晒してしまう。
 あるいはそれこそが怨念を集めた、アヴェンジャーの性質なのかもしれない。

「そうヒリつくな。救いようのない落第生より、多少はマシに思えているとも」

 そんな棘を突きつけられても、なおも巌窟王は笑う。
 肩を竦めて座席を立ち、かつかつと靴音を立てて歩む。
 元より仮面を被ったままなら、従ってやる謂れなどなかった。
 適当なタイミングで早々に見捨て、形だけの関係に終始し、さっさと脱落するつもりでいた。
 望みを持たぬ巌窟王には――光を喪ったアヴェンジャーには、その他に為すことなどなかったからだ。
 叶えるべき願いをとうに捨て去り、目的すら見失った憎悪にひた走る者が、聖杯など求めるはずもないのだ。

「故にだ、マスター。マクギリス・ファリド。ここからはお前の振る舞い次第だ」

 せいぜい振り向かせてみせるがいいと、視線を合わせて彼は言った。
 マクギリスの目鼻の先へと迫り、真っ向から見据えて口にしたのだ。
 何の面白みもなかった男が、隠していた己を曝け出した。
 それが怨念であるというなら。生粋のアヴェンジャーたる己の前で、復讐を語ってみせたのであれば。
 なればこそ、査定くらいはしてやろうと、ようやく腰を起こしたのだった。
 もはや巌窟王は亡霊ではない。為すべきことも、望みもなく、ただ招かれただけの囚人ではない。
 その身は虎だ。燃え盛る虎だ。煌々と怨嗟の炎を灯し、毒牙を突き立てる恩讐の獣だ。
 そしてだとすれば、お前はどうする。その虎をマクギリスはどう制する。
 あるいは己を屈服させるに、相応しいだけの魂の形を、魅せつけることはかなうのかと。

「……言われなくとも、知らしめてやろう。世界を壊す万能の器は、我が手にこそ相応しいのだと」

 ああ、もちろんだ。そのつもりだと。マクギリスは強く言い放つ。
 人の世を救う神は死んだ。厄祭戦の忌まわしき炎が、人の良心ごと焼き殺してしまった。
 なればこそ、人が立たねばならない。神が世界を救わぬのなら、人が世界を壊さねばならない。
 人類史に刻まれた英雄達が、我こそがと吼え叫んだように。
 人類最期の善性が――救世主アグニカ・カイエルこそが、終末の中でなお輝いたように。
 これは復讐だ。八つ当たりでしかない。そんなことは承知している。
 しかしそれが何よりも強く、己を突き動かす動機となるなら、従わずには救われない。
 この業炎から目を背けて、安穏と生きられるような腑抜けた性根を、マクギリスは持ち合わせられなかった。
 それは不幸ではあるのかもしれない。だとしても、哀みを許す気はない。
 他人の無責任な憐憫も、己の安寧も許せぬのなら、その怒りこそを撒き散らすまでだ。
 餓えるのならば。渇くのならばと。
 地位と名声も慰みに至らず、未だ餓鬼であった頃のように、貪ることを忘れられぬなら。
 己の激情を煽る全てを、薙ぎ倒し尽くした更地にこそ、渇望するものがあるのであれば。
 応報の結末を。奪われた宝を。
 掴めなかったからこそ憎んだ――その原初の望みたる、自由を。それこそを得たと納得する日を、迎えることができるのならば。



【CLASS】アヴェンジャー
【真名】巌窟王 エドモン・ダンテス
【出典】Fate/Grand Order
【性別】男性
【属性】混沌・悪
【パラメータ】筋力B 耐久A+ 敏捷C 魔力B 幸運? 宝具A

【クラス別スキル】
復讐者:A
 復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
 周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:B
 人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
 忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。

自己回復(魔力):D
 復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。

【固有スキル】
鋼鉄の決意:EX
 この世の地獄とさえ呼ばれた監獄シャトー・ディフ(イフの塔)から脱獄し、復讐の人生を歩んだ鋼の精神と行動力とがスキルとなったもの。
 痛覚の完全遮断、超高速行動に耐えうる超人的な心身を有している。複合スキルであり、本来は「勇猛」と「冷静沈着」スキルの効果も含まれる。

窮地の知慧:A
 危機的な状況で幸運を呼び込む。ファリア神父から授かった多くの智慧と天性の知恵によるもの。
 エクストラクラスの特殊性が合わさることで、ランクB相当の「道具作成」スキルが使用可能となる。

黄金率:A
 人生でどれだけ金銭に恵まれたかという、いわゆる財運。Aクラスなら大富豪として一生金に困らず暮らすことが可能。
 シャトー・ディフにてファリア神父から伝えられた「隠された財宝」を手に入れ、尽きぬ財と権力を得た巌窟王は、まず金に困ることがない。

【宝具】
『巌窟王(モンテ・クリスト・ミソロジー)』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人
 サーヴァントとして現界した彼は後悔と改心の果てに救われた存在ではなく、復讐心滾らせてパリへと舞い降りた「巌窟王」そのものであり、復讐の化身である。
 それ故にエクストラクラス・アヴェンジャーとして現界した肉体は、その生きざまを昇華した宝具と化している。
 (一説では、生前に邂逅したという「14の遺物」が関係しているとも)
 死に至る毒炎を怨念の魔力として行使する他、あらゆる毒を受け付けず、精神干渉系の効果を軽減する。
 自らのステータスやクラスを隠蔽、偽の情報を見せることも可能。
 真名解放すれば、溜め込んだ怨念が一気に周囲へと撒き散らされ――敵は疑心暗鬼に陥って同士打ちを始めることになる。

『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンシェル・シャトー・ディフ)』
ランク:A 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~20 最大捕捉:1~100人
 地獄の如きシャトー・ディフで培われた鋼の精神力が宝具と化したもの。
 肉体はおろか、時間、空間という無形の牢獄さえをも巌窟王は脱してみせる。
 人間には有り得ないほどの超高速思考を行い、それを無理矢理に肉体に反映することで、主観的には「時間停止」を行使しているにも等しい超高速行動を実現させる。

『待て、しかして希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1人
 悪逆と絶望と後悔に満ちた暗黒の中に在ってまばゆく輝く、一条の希望。
 人間の知恵は全てこの二つの言葉に凝集される。すなわち。
 待て、しかして希望せよ――。
 自陣のうち一名を、瀕死(戦闘不能状態)からでも完全回復させる上に、全パラメーターを一時的にランクアップさせる。

【weapon】
  • 毒炎
怨念による魔力投射攻撃。
黒い怨念のエフェクトが発生し、敵にダメージを与える。直接ダメージに加えて、持続ダメージやステータス異常を与える毒の炎。

【人物背景】
復讐者、として世界最高の知名度を有する人物。
通称「巌窟王」もしくは「モンテ・クリスト伯爵」として知られる。
悪辣な陰謀が導いた無実の罪によって地獄の如きイフの塔(シャトー・ディフ)に投獄されるも鋼の精神によって絶望せず、
やがてモンテ・クリスト島の財宝を得てパリへと舞い降り──フランスに君臨する有力者の数々、すなわちかつて自分を陥れた人々を地獄へと引きずり落としたという。

真名こそエドモン・ダンテスだが、マルセイユの海の男であった「エドモン・ダンテス」と自分は別人であると彼は認識している。
なぜなら「エドモン・ダンテス」はパリに於ける凄絶な復讐劇の果てに悪性を捨てたが……サーヴァントとして現界した自分は「復讐鬼の偶像」で在り続けている。
ならば自分はエドモンではない、と彼は言う。

我が名は巌窟王(モンテ・クリスト)。
愛を知らず、情を知らず、憎悪と復讐のみによって自らを煌々と燃え盛る怨念の黒炎と定め、すべてを灰燼に帰すまで荒ぶるアヴェンジャーに他ならない。
この世界に寵姫(エデ)はおらず、ならばこの身は永劫の復讐鬼で在り続けるまで──

【聖杯にかける願い】
そもそも聖杯というものを、悪逆の坩堝であると見なしている。
復讐にのみひた走る彼が、それに何かを願うこと自体、有り得ないと見ていいだろう。



【マスター名】マクギリス・ファリド
【出展】機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ弐
【性別】男

【能力・技能】
  • 騎乗
各種乗り物の操縦技術。特にモビルスーツの操縦に関しては、超一流の技量を有している。

  • 阿頼耶識システム(改)
 上記モビルスーツ操縦を補助するため、人体と機体を直結させる端末。
本来は子供の頃にしか埋め込むことができないが、マクギリスが新たに取り付けたものは、
「ある実験」の成果として生み出された改良型であり、成人後にも埋め込むことができた。
性能及び形状は、過去の大戦「厄祭戦」当時に用いられていたオリジナルのものを、忠実に再現している。

  • 実務能力
政治手腕および、古巣の監査局にて培った監査手腕に長ける。
優れた頭脳・判断力・洞察力を有しており、ギャラルホルンの将来を担う人材として期待されていた。
あるいは彼にとっての不幸は、己の心の在り方に比して、不相応なまでの力を身につけてしまったことなのかもしれない。

  • 会社経営
秘密裏に自身の私財を管理する企業として、「モンターク商会」を経営している。
人々の暮らしを支える企業として、地道に堅実に経営されているというのが、表向きの顔。
しかし実際には、マクギリスの暗躍のため、武装組織に兵器を横流しする場面も見られる。
更には企業沿革もでっち上げたものである可能性が高いなど、その実態は非常にきな臭いものになっている。

  • 奸計
望むにせよ望まざるにせよ、マクギリスという男の性質は「悪」である。
彼は旧時代の英雄を気取るには、あまりにも多くの者を利用し、そして切り捨て続けてきた。
たとえ最愛の友人であっても、彼はその理性と冷酷さをもって、地の底までも貶めるだろう。
もっとも、それが僅か残った彼の良心に、全く傷を残さないというわけではない。

【人物背景】
ポスト・ディザスターと呼ばれる時代にて、地球を支配していた武装組織「ギャラルホルン」。
その最高決定機関に当たる、セブンスターズの一角を成すファリド家において、若くして当主となった男である。

しかし幼き日のマクギリス・モンタークは、貧民街の最底辺から拾われた捨て子である。
彼は、そんな自分を生み出した社会に対して、強い復讐心を抱いていた。
表向きには理知的な青年を装っているが、その胸中には冷酷な野心と、社会への煮えたぎる憎悪が隠されている。

過剰なまでの権威主義に堕したギャラルホルンに対し、彼は強い軽蔑の目を向けていた。
このため彼は、来たるべき組織転覆・改革の日を迎えるに当たり、最も重要なファクターとなるものを、
ギャラルホルン創始者の魂が宿った神器――モビルスーツ「ガンダム・バエル」であると定めている。
正当な改革の理由を主張し、それをバエルの意志が後押しするのなら、勝ちの目もあると考えたのである。
……しかし、マクギリスは気づいていない。人類は彼が思っているほど、盲目に成り果ててはいないということに。
人の心を知らず、知る機会からも目を背けた彼を、失墜させるに足る証拠は、既に敵の手にあるということにも。

【聖杯にかける願い】
改革を成し遂げ、自由を勝ち取るための力。
それは自身の活動の補助となるものでもいいし、それ単体で世界を塗り替えることになってもいい。

【方針】
極力狡猾に立ち回り、本性を隠した上で聖杯を手にする。
利用できるものは全て利用し、何が何でも優勝する。
最終更新:2018年04月23日 21:29