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目が回るほど忙しい毎日。なにかを忘れている気がする。

発展著しい見滝原に転勤して、仕事や収入も増えたが、自宅に帰れる日数は減った。
故郷への電話やメールも、たまにしか送れない。去年は何度里帰りできたか。そろそろ嫁でももらう歳だ。

「帰らにゃ」

ぽつり、と声が出る。どこへ。自宅の賃貸アパートか。それとも実家か。ああ、たぶん実家の方だ。
いや。ここは自分のいる場所で、みんなも自分を頼りにしている。投げ出してしまうわけにはいかん。
古い価値観と笑わば笑え。そう育てられて来た男だ。実家は、田舎は、ここより怖いぞ。

「そうですね、随分ご無理させましたし。一旦帰宅していいですよ、後はやっときます」

メガネの部下が、気を遣ってくれる。新人も増えた。そういやなんだか、みんなメガネだ。
上司は気紛れ、後輩は自由。自分ひとりでなんだかんだ背負いすぎたかもしれん。

「おう。では、よろしゅう」

善は急げ。机を片付け、バッグを持ち、背広を羽織って職場を立ち去る。忘れ物はないはず。

「帰ろう、帰ろう」

自宅へ、自宅へ。足取り軽く。風呂を浴びて、晩飯食って酒飲んで、泥のように寝よう。
急いで自宅へ到着し、ストレッチして風呂を浴び、テレビを見ながら飯と酒。ああ、気分がいい。
―――まだ、なにかを忘れている気がする。忘れ物では、なく。人生がどうとか、嫁とかでもなく。

「あ、思い出した」


篠突く雨の中。泥を蹴立てて、騎馬武者どもが寄って来よる。
通すかよう。野太刀を構え、道を遮る。

「お退(ひ)きあれ!! おじ上!! お退きを! ここは、お豊にお任せあれ!!」

馬上から、おじ上……義弘公が叫ぶ。
「お前も帰るのじゃ、薩摩へ! 帰るのじゃ!! 豊久ッ!!」

振り向き、笑って返す。
「帰りたかです。死ぬるなら薩摩で死にたか。でも。
 おじ上一人薩摩に戻られたなら、俺(おい)も兵子(へご)もここで皆死んでも、
 こん戦、島津(おいたち)の勝ちなんでごわす」

おじ上は逃がした。さぁ後は、食い止めるのみ。時を稼ぎ、足止めする。命をかけて。
「兵子ども!! 射ち方構えぃ!! 死ぬるは今ぞ!!
 敵は最強、徳川井伊の赤備え! 相手にとって不足なし! 命捨てがまるは、今ぞ!!」


「俺は帰るのだ。薩州へ」

今年三十路の男―――『島津豊久』は、全てを思い出した。現代からすれば400年以上前の記憶を持つ者として。

「俺はなぜ、こげなとこでこげなことをしちょっか。あやかしん仕業(さた)か」

そうだ。総身に重傷を負い、烏頭坂からさまよい歩いて……ふいに、左右に扉の並ぶ、妙な石造りの通路に出て。
真ん中に机があって、妙な男がおって。そいつが――――

「これだ」

懐を探って出て来たのは、そいつに投げ渡された、妙なびいどろ玉。
これを手にとった瞬間から今の今まで、自分は偽りの人生を送って来たことになる。そんなあほうな。
下等な狐狸妖怪にしては手が込んでいる。天狗か仙人か、神仏か修羅か、そのたぐいの仕業であろう。そうとしか思えぬ。
少なくとも傷は塞がっている。ならばよい。これから帰るには……どうも、戦をせにゃならんらしい。

「あ、記憶、戻りました?」

テーブルの向こうから声。少女のような、少年のような。
顔や体つきを見てもどっちか分からんが、南蛮人のようだ。緑の黒髪ならぬ緑の髪。大きな瞳。黒い具足を纏っている。
「おう。――――ぬしが、俺の、さあばん? とかか」
「はい。クラス名は『シールダー』、真名は『ニコル・アマルフィ』。はじめまして、よろしくお願いします」
背筋を伸ばし、右掌を側頭部に翳して敬礼する。随分礼儀正しい。育ちは良いのだろう。

「ん。俺ん名は、『島津豊久』。ところでぬしゃ、男か女か」
「男ですよ」


そのままマスターと会話し、情報を交換する。方言がきついが、意志は通じる。
関ヶ原。島津。ステガマリ。見た目は普通の日本人だが、記憶は何百年も前の日本のサムライらしい。
狂気を感じるが、狂人というわけではない。確かに、戦場に身を置く人の雰囲気、目つき、佇まいだ。疑いようもない。
この人の方こそ英霊になっていてもおかしくないのだが―――生憎、彼は生きていて、僕は死んでいる。

「にこる。俺ん難しかこつば分からん。なんでん願いば叶うちゅうなら、ひとつしかなか。
 俺ん故郷へ、薩摩へ帰ることよ。父代わりんおじ上も、母上も、嫁も、一族郎党ん皆して俺を待っちょる。
 あん場で死んでん不思議んなか。互いん帰れんでん覚悟ば出来ちょる。
 じゃっどん、帰るち約束しちょる。おじ上と。俺がここん生きちょる以上、帰らねばならぬ」

家族。故郷。ああ。ふっと微笑み、顔を俯ける。彼は生きていて、僕は。
「……羨ましい、ですね」
ふと呟いてしまった。マスター・トヨヒサ氏は、眉根を寄せている。僕の事も話さねばなるまい。
「僕は、祖国のため、家族のために戦って死にました。あなたのいた時代や、この街が存在する時代より、遥かな未来に。
 戦友を庇ったんです。死後に赴いた『英霊の座』というところで、その後の顛末も知りました」

僕を殺したのは、アスランの幼馴染。僕の死が、二人の仲を裂くことになってしまったらしい。皮肉な話だ。
「後悔はしていませんが――――英霊は所詮亡霊、家族や友人の元へは帰れません。
 ですから、僕はサーヴァントとして、マスターのために行動します」

マスターは、じっと僕の顔を見る。強い目だ。傍にいるだけで士気が向上するような、狂熱を秘めた目だ。
「にこる。俺ん頭ん中ん吹っ込まいた、こんおかしか戦ん掟じゃっどん」
「はい」
「聖杯ち、七騎ん英霊ば討てば、ひとつ出来る。じゃっどん、そいで帰れっちわけでんなか。ひとつは、ぬしんやる」
「……僕に、聖杯を?」

困惑する僕に、腕を組み、大きく頷くマスター。当然だ、という表情だ。
「ん。俺は薩摩ん帰る方法ば探る。ぬしゃ生き返るため、聖杯ば要る。こいでよか」
「なぜ?」
「人間、死んだらしまいじゃ。戦場(いくさば)でさぱっと死ぬるは、誉れじゃ。
 じゃっどん、あるじの俺は英霊とは戦えんのじゃろ。俺は現世(うつしよ)では死んだことんなっちょるはずじゃろ。
 英霊と戦えん俺ばかり生き返って、実際に戦うお前(まん)に褒美んなかは、理(ことわり)ば合わなかではなかか」

理(ことわり)。奇妙な理屈だが、彼にはそれが物の道理であるらしい。
「……故郷へ帰るために、別に聖杯がいるとしたら?」
「もうひとつふたつ、聖杯ば作れば済む。英霊ば何騎おっか知らんじゃっどん、倒せばよか。
 俺は英霊のあるじの方ば殺す」
「分かりました。……ただ、僕は英霊として、従僕として、死者として―――マスターの生存を優先します」
「そいなら、そいでよか。あとは、情報と人数ば集める。こん戦ば開いたもんに、戦ばしかけっど」

右掌を側頭部に翳し、敬礼する。僕は英霊だが、戦争に関しては彼の方が手練だ。彼の判断に従う。
「了解しました、マスター」
「ん。よか兵子じゃ」


マスターは就寝した。僕はひとり、マスターの住居の窓から夜景を眺める。
美しい街だ。あの光のひとつひとつに、人がおり、家族があり、人生がある。忘れてはならない。
僕は、戦争とはいえ、覚悟の上とはいえ、大勢の人を殺した。自分の死は正直なところ、その応報かも知れない。
この地のような平和な場所で、静かに音楽に打ち込めていたら、どんなによかったか。
両親もきっとそれを望んでいただろうに。
他人が臆病者と言おうとも、その方がずっと勇気が必要な生き方だったかも知れない。

『臆病者は何度も死ぬが、勇者が死ぬのは一度だけ』だったか。
ならば、僕は臆病者になろう。生き返るために。マスターを故郷へ帰すために。何度でも。


 のがるまじ 所をかねて思ひきれ 時にいたりて涼しかるべし

                                  ―――日新公いろは歌



【クラス】
シールダー

【真名】
ニコル・アマルフィ@機動戦士ガンダムSEED

【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷B 魔力C 幸運D 宝具A

【属性】
秩序・善

【クラス別スキル】
対魔力:B
魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい。
宝具により強化されている。

騎乗:C
騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、野獣ランクの獣は乗りこなせない。
宝具に乗る(身に纏う)。

自陣防御:B
味方、ないし味方の陣営を守護する際に発揮される力。
防御限界値以上のダメージ削減を発揮するが、自分はその対象には含まれない。
また、ランクが高ければ高いほど守護範囲は広がっていく。仲間を庇って戦死した逸話によるスキル。

【保有スキル】
音楽神の加護(偽):A
本来は、音楽の女神ミューズの加護を受けていることを示すスキル。あらゆる音を聞き分け、天才的な演奏を可能とする。
更に、音楽魔術の行使にプラス補正がかかる。
生来の音感と才能、そして研鑽により、このスキルと同等の効果を自分自身の力として発揮できる。
ピアニストであったことから獲得したスキル。宝具の操縦や強化にも効果を発揮する。

機関の鎧:A
モビルスーツ・ガンダムシリーズのパイロットであったことによるスキル。
宝具を展開して身に纏い、自在に飛行・戦闘する。
筋力と耐久力をランクアップさせると同時に、ブースト機能によって三つの能力値に「++」の補正が与えられる。

気配遮断:B
自身の気配を消すスキル。隠密行動に適している。
完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
宝具の放つミラージュコロイドを纏って行動可能だが、使用中は防御力が低下する。

【宝具】
『闇に踊る雷の盾(ブリッツガンダム・トリケロス)』
ランク:A 種別:対城宝具 レンジ:- 最大捕捉:-

彼が使用していたモビルスーツ(MS)。全高18.63m、重量73.50t。
オーブ連合首長国の宇宙コロニー「ヘリオポリス」で極秘開発されていた試作型MSの一機。
黒を基調とした色彩が特徴。コードネーム「ブリッツ(電撃)」のとおり、敵陣深くへの電撃侵攻を目的として開発され、
格闘戦において高い戦闘力を発揮する。右腕にはビームサーベル、中距離用50mm高エネルギービームライフル、
3連装超高速運動体貫徹弾ランサーダートを搭載した攻盾システム「トリケロス」、
左腕には有線式ロケットアンカー「グレイプニール」を装備。
特殊金属に電流を流し続けることで防御力を高める「フェイズシフト(相転移、PS)装甲」を纏う。
また機体の周囲に電磁気で特殊コロイド粒子を纏わせ、視覚・電波・赤外線での探知から存在を隠匿する
「ミラージュコロイド・ステルス」も備える。ただしミラージュコロイド展開中はフェイズシフト装甲が使用できず、
防御力が低下する。また電力(魔力)消費も激しいので長時間の使用はできない(80分程度)。

近未来に開発された純然たる科学の産物であるが、なんか宝具化している。
シールダー自身がサイズダウンしたブリッツを身に纏って戦闘する。
マスターの魔力が乏しいため、全身を現界させることはそれなりの魔力か電力がないと困難。
聖杯などがあれば十全以上の戦闘力を発揮できよう。
さらに世界の記憶を引き出せば、派生機であるネロブリッツ、ネブラブリッツなどに変化することも出来るかも知れない。

【Weapon】
宝具。ナイフや銃での戦闘も一通りこなせる。

【人物背景】
アニメ『機動戦士ガンダムSEED』の登場人物。CV:摩味/朴ロ美。
近未来のスペースコロニー群国家「プラント」に属するマイウス市出身。男性。身長165cm。
父はマイウス市代表でプラント最高評議会議員ユーリ・アマルフィ、母はロミナ。
遺伝子操作による生まれつき優秀な人類「コーディネイター」の第二世代にあたる。
容姿は母に似て気品漂う甘い顔立ち、緑色の髪、大きな瞳を持つ美少年。
ピアニストとして活躍しており、リサイタルを開くほどの腕前。
穏やかな性格の平和主義者で、ナチュラル(非コーディネイター)への差別意識もないが、
祖国と同胞を守りたいという義務感からプラントの国軍にあたる武装組織「ザフト」に志願した。

戦闘員としての能力は高く、アカデミー(士官学校にあたる)時代の総合成績はアスラン・ザラ、
イザーク・ジュールに次ぐ第3位。爆弾処理技術では1位であった。
成績優秀につき「赤服」として、エリートを集めたクルーゼ隊に配属され、
オーブの宇宙コロニー「ヘリオポリス」襲撃に参加。ブリッツガンダムを奪取し搭乗機とする。
ヘリオポリスを脱出した宇宙戦艦アークエンジェルを追撃し、ユーラシア連邦の宇宙コロニー「アルテミス」を
陥落させるなど活躍。だが地球降下後にオーブ近海でキラ・ヤマトが乗るソードストライクガンダムと交戦し、
戦友アスラン・ザラを庇って戦死した。享年15歳。彼の死は主にアスランの精神等へ結構な影響を及ぼした。
その後32回もアスランの回想で死んだり、リマスター版で死因が改悪されたりと不憫な子。スパロボでは生存ルートも。
アサシン、ランサー、アーチャーなどの適性もあるが、今回はシールダーとして現界。

【サーヴァントとしての願い】
生き返って両親や友人たちと再会し、共に平和な世界で暮らせればいいな、と思う。

【方針】
マスターに従う。危険な主従を打倒し、友好的な主従とは手を組む。

【把握手段】
原作1話から29話まで。

【マスター】
島津豊久@ドリフターズ

【Weapon・能力・技能】
現代人のロールが与えられているため、野太刀や短筒などの武器はない。頑丈な肉体や戦闘本能、戦の勘働きは元のまま。
人馬諸共両断するタイ捨流剣術、相手をえげつなくボコボコにする組手術を習得済。
薩摩隼人、島津家の人間として戦国士道を叩き込まれている。全知全能が戦に特化しており、
集団戦では偽装撤退戦術を多用し、大将首を掻き取って兵を降らせるなど、戦いの要所では常に最善の選択肢を取る。
空気は読めるがあえて読まない。
人を戦いに駆り立てる「狂奔」の素質を持ち、戦功や勝利のためなら自分の命も餌にすることを躊躇わない。
逆に戦以外の役には立たず、平時は寝る・飯を食う・ぶらつく・武を練磨するといったことしかしない。

【人物背景】
平野耕太『ドリフターズ』の主人公。30歳。CV:中村悠一。薩摩弁で話す。
官位は中務少輔(史実では中務大輔・侍従)。異名は妖怪首おいてけ、薩人マシーン。
戦国時代の島津家の武将。元亀元年(1570)6月、島津家久の子として誕生。幼名は豊寿丸。
天正12年(1584)3月、島原の沖田畷の戦いにて15歳で初陣。
4月に元服して島津又七郎忠豊となり妻を娶るが、天正15年(1587)6月に父家久が急逝。
その跡を継いで18歳で日向国佐土原城(宮崎市佐土原町)の城主となる。
伯父義弘より実子同様に養育され、豊臣秀吉による小田原征伐(1590)や文禄・慶長の役(1592-98)などに従軍し、
各地を転戦。慶長4年(1599)に日向国で起こった庄内の乱(-1600年3月)に出陣し、武功を上げた。
慶長5年(1600)、中務大輔・侍従となり豊久と改名。
同年9月の関ヶ原の合戦では伯父の義弘と共に西軍として参陣するが、石田三成らへの不信から戦闘には参加せず、
東軍優位となると敵中に孤立。この時、義弘ら島津隊は東軍本陣を掠める形で敵中突破し撤退。
豊久は義弘を逃がすべく「捨て奸(すてがまり)」を敢行、敵将井伊直政に重傷を負わせるも討ち死にした。
『ドリフターズ』本編では、捨て奸の後に重傷を追った豊久が、謎の男に異世界へ飛ばされることになる。

【ロール】
独身のサラリーマン。偽りの記憶と悟ったので、辞職するかしばらく休職するつもり。預貯金はそこそこ。

【マスターとしての願い】
薩州へ帰る。

【方針】
主催者に戦を仕掛ける。そのために情報と人数を集める。世に害悪を及ぼす主従は積極的に狩って聖杯の糧にする。
戦は嬉しいものの、薩州へ帰るためには死ねないし、約束した手前シールダーも死なせるつもりはない。
義弘公だってあの後随分帰国に苦労したんだから捨てがまりは我慢なさい。

【把握手段・参戦時期】
原作。1巻2話冒頭で謎の男にソウルジェムを投げ渡され、この場に飛ばされた。
最終更新:2018年04月25日 10:01