村上外印は、焦燥感にさいなまれていた。
とにかく、現状に我慢がならない。生と死がせめぎ合う、闘争の場に身を置きたい。
遅れてきた中二病と言うにしては、あまりに深く心に食い込む感情。
だが記憶を取り戻したとき、外印は自分がその感情を抱いていたことに深く納得した。
自分は本来、何十年も平和が続いているこの時代に生まれたのではない。
幕末という動乱が過ぎた、明治の世に生きていたのだ。
彼が抱く焦燥感とは、戦乱の世を生きるために身につけた力を振るうことができなかったという苛立ちだった。
◆ ◆ ◆
「サーヴァント、アヴェンジャー。召喚に応じ参上した」
外印の前に現れたサーヴァントは、簡潔にそう名乗った。
2本の剣を携え、鎧を纏ったその姿は典型的な騎士そのもの。
顔立ちはやや年齢を重ねているが、美形と言っていいだろう。
「見た目はいかにも剣士のサーヴァントという感じなんですが……。復讐者のサーヴァントですか」
「俺とて、こんなクラスで召喚されるのは本意ではないのだがな」
外印の反応に対し、アヴェンジャーは苦々しげな表情を浮かべる。
「ああ、気を悪くしたのならすみません。別に文句があるわけじゃないんです。
特殊なクラスが出てきたのが意外だっただけですよ」
「ふん……」
外印のフォローにも、アヴェンジャーの表情は変わらない。
「まあいい。それよりお前は、この聖杯戦争に何を望む」
「戦いを」
アヴェンジャーの問いに、外印は即座に答える。
「戦うこと自体が目的か」
「まあね。それも、とびきり派手なのがいい。
できる限りたくさんの人間を巻き込んで、それこそ戦争と呼ぶにふさわしい戦いを起こしたいですね」
「まともな思考ではないな」
「そうかもしれませんね」
おのれの考えを異常と断じられても、外印は微笑を浮かべるだけだ。
「僕は自分の願望に忠実ですから。他人からどう思われようと気にしません。
あなたにも、そういうところあるでしょう?」
外印の発言に、アヴェンジャーはぴくりと眉を動かす。
「あくまで雰囲気で判断しただけだけど……。
あなたは僕と同じじゃないが、似た部分はある。
意気投合するのは難しいが、協力することは難しくない。
そんな感じがするんですが、どうですかね?」
相変わらず微笑を浮かべたままの外印に、アヴェンジャーは言葉を返さない。
しばしの沈黙の末、ようやく彼は口を開いた。
「お前と気が合うかどうかなど知らないが……。とりあえずは力を貸してやろう。
俺を使いこなせるかどうか、楽しみにしているぞ」
「よろしくお願いします」
外印は笑う。上っ面だけでなく、心から。
(いやあ、楽しくなりそうだ。
今度こそ、存分に戦争をしてやる!)
◆ ◆ ◆
(この俺がアヴェンジャーとはな……。
そう簡単に、心の闇は晴れるものではないか)
霊体化していったん外印から離れた後、アヴェンジャーは改めて自分自身について考えていた。
(死に際に、恨みは全て吐き出したつもりだったが……。
世界は、あくまで俺を復讐者として扱うということなのかもしれないな。
まあいい。聖杯を手にできたのなら、俺はそんな人生を変えてやる)
アヴェンジャーの真名は、ホメロス。
親友と共に英雄として讃えられ、その親友への嫉妬から道を踏み外した男。
彼はそんな生き方を悔い、聖杯の力で人生をやり直そうとしていた。
彼にとってこの聖杯戦争は、過ぎ去りし時を求める戦いなのだ。
【クラス】アヴェンジャー
【真名】ホメロス
【出典】ドラゴンクエストXI
【性別】男
【属性】中立・悪
【パラメーター】筋力:C 耐久:B 敏捷:C 魔力:B 幸運:D 宝具:B
【クラススキル】
復讐者:C
復讐者として、人の怨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。怨み・怨念が貯まりやすい。
周囲から敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情はただちにアヴェンジャーの力へと変わる。
忘却補正:C
人は忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。
時がどれほど流れようとも、その憎悪は決して晴れない。たとえ、憎悪より素晴らしいものを知ったとしても。
自己回復(魔力):B
復讐が果たされるまでその魔力は延々と湧き続ける。魔力を微量ながら毎ターン回復する。
【保有スキル】
軍略:C
多人数を動員した戦場における戦術的直感能力。
自らの対軍宝具行使や、逆に相手の対軍宝具への対処に有利な補正がつく。
魔術(闇):B
彼の世界で「ドルマ系」とよばれる、闇の力を操る魔術を修得している。
【宝具】
『邪悪に堕ちし銀の宝玉(シルバーオーブ)』
ランク:B 種別:対人宝具(自身) レンジ:― 最大捕捉:1人(自身)
強い神秘を秘めた六つの宝玉、「オーブ」のうちの一つ。
この宝具を解放することにより、アヴェンジャーは「魔軍司令ホメロス」としての姿に変身する。
幸運と宝具を除くステータスが1段階上昇し、使用できる技も増加する。
外見は肌が紫に染まり、角、翼、尻尾が生えたいかにも悪魔といったものになる。
【weapon】
「プラチナソード×2」
切れ味はそこそこだが、特殊効果は持たない剣。
アヴェンジャーは二刀流で用いる。
【人物背景】
デルカダール王国の将軍兼軍師。
幼なじみであり親友であるグレイグと共に「双頭のタカ」と讃えられ、民衆の支持を集めていた。
しかしグレイグが自分より重用されることに内心では劣等感を抱いており、そこを魔王ウルノーガにつけ込まれしもべとなる。
以後は本性を隠しつつ、魔王の宿敵である勇者を討ち取るべく行動していた。
世界崩壊後は六軍王の一人「魔軍司令」の座に就き、精神のみならず肉体も魔物と化す。
魔王の本拠地である「天空魔城」で勇者一行を迎え撃つが、成長した彼らには叶わず討伐されることとなる。
最期に、友としてグレイグと言葉を交わして。
【サーヴァントとしての願い】
人生をやり直す
【基本戦術、方針、運用法】
明確な弱点がない代わりに飛び抜けた長所もない、バランス型のサーヴァント。
マスターが魔術師でないため、魔力量を考えるとあまり無茶な戦い方もできない。
戦略でどこまで自分たちを優位に持っていけるかが鍵となるだろう。
【マスター】村上外印
【出典】るろうに剣心 銀幕草紙変
【性別】男
【マスターとしての願い】
戦争がしたい
【weapon】
「鋼線」
目を凝らさねば見えないほど細い鋼線。
ダイヤモンドの粉末をまぶし、たいていのものを切断できる「斬鋼線」と物を引き寄せたり持ち上げたりする際に使う「斬れない鋼線」の2種類を使い分ける。
【能力・技能】
「話術」
事実無根の嘘を大勢の人間に信じさせ、意のままに操るほど弁が立つ。
【人物背景】
隠密御庭番衆の候補生として、修行を積んでいた青年。
御庭番衆になった暁には「黒子」の名前を授かることになっていたが、その時が来る前に戦乱は終わり、御庭番衆は解体される。
力をもてあました彼は、武器商人・武田観柳の配下に。
彼の計画に乗じて政府に不満を持つ者たちを扇動し、大規模テロにより経験できなかった戦争を自らの手で起こそうとする。
外面は社交的な好青年だが、内面は自己中心的でひねくれた幼稚な男である。
……機巧芸術家のジジイ? 誰のこと?
参戦時期は斎藤に倒され、死亡する直前。倒れたときに、偶然落ちていたソウルジェムをつかんでいた。
【方針】
できるだけ大人数を巻き込んで、戦乱を起こす。
満足できる結果が残せれば、後は最悪死んでもかまわない。
最終更新:2018年04月26日 14:22