中山中さんのメッセージ
1.「はじめに」
先日、この度フェラーチ基金が発足いたしました。すでにご協力の表明をいただいた方々、まことにありがとうございます。
今日は、当基金のカンボジア側代表として、皆様に伝えておきたいメッセージを述べさせてください。
私がこの業界に足をつっこんでから、皆様には幾度か寄付金の協力をいただき、今の自分があるのは皆様のこのような応援があってこそであると思っています。メールでも応援をくださった方々に、どれほど元気をもらったことか。今思い出しても、モザンビークでの生活は楽なものではありませんでしたから、皆様の励ましに相当助けられました。改めて感謝申し上げます。
2. 「カンボジアと私の仕事」
さて、私が現在暮らしているカンボジアは、1970年代、ポルポト派によって国内は破壊し尽くされ、国民の4分の1から3分の1とも言われる人々が虐殺されました。政権は1990年代前半まで安定せず、政情安定はここ10年ほどのことですので、各地に内戦時の傷跡が残っています。それでも各国NGOと政府の努力で地雷の数は減り、経済が成長しているのも事実です。
そんな中、私の団体「JHP・学校をつくる会」は、1992年に当会代表の小山内美江子(金八先生の脚本家です)が立ち上げ、200棟以上の校舎を寄付してきました。未だに木の下や高床式のお寺の下で勉強している学校もありますし、何キロも離れた学校に通わなければならない子供がいるため、まだしばらくはこの事業が必要です(が、物価が高騰していてどれほど続けられるかが課臓です・・・)。また、私は孤児院支援も携わっていて、JHPが設立したCCHという孤児院によく顔を出します。現在47名、5歳から18歳の子供らは、もともとゴミ山でペットボトルや空き缶を拾い、それをお金に換えて生計を立てていた子供が大半で、それ以外は親から売りとばされかけていたり、家庭内暴力がひどくて家出した子、などなど、様々な事情を抱えていた子達です。彼らは今孤児院で3食の食事をとり、学校にも通うことができています。
そんな子達は今、ある取り組みをしています。一つは毎週日曜日に貧困地区に出向き、劇を通じて人身売買、ドラッグ、感染病などの問題を子供達に啓発し、自分の身は自分で守ることを伝えること。そして、劇の後は、字の読めない子達に本の読み聞かせをすること。最後に、寄付で集まったノートやペンを配っています。社会的弱者であった孤児達が今、たくさんのNGOから支援がくる孤児院で恵まれた暮らしを手に入れても、つらかった時のことを忘れず、そしてまだ劣悪な環境下にいる子供達がいることを忘れずに、そのような活動をしているのを目にすると、胸から熱いものがこみ上げます。そして二つ目は、貧困に悩む老人の支援をするというプロジェクトです(こちらは私はまだ直接目にしてないので、どういったものか分かりません)。
3.「フェラーチ基金設立の目的」
今回フェラーチ基金を設立するにあたり、何を目的とするのか、いろいろ悩みました。「ボールを学校に配ることにより、スポーツ振興を促し、楽しさを知ってもらう」、というのがフェラーチというサッカーチームが行う慈善活動として、一番シンプルで適切かと思い、それを目的としました。多くのNGOが多岐に渡る支援をしている国ですから、貧困撲滅だとか地雷除去だとか農村開発だとか難しいことには手を出さず、我々が知っている事実、「サッカーは楽しい」という事を子供に広め、笑顔笑顔の毎日を過ごしてもらうことが、フェラーチらしいと思ったのです。
しかし、こちらで生活していて、私にも気軽に手の届く範囲にある支援が、孤児院や貧困地区への物資提供かと思い、これを付け加えました。また、稀にメコン川氾濫による洪水被害や、政情悪化による緊急事態がないこともない、そんな国ですので、「緊急支援」という項目も追加いたしました。そんな支援が必要とならないことを祈っていますが。ちなみに、日本を含むカンボジア以外の国の緊急支援、例えば新潟地震やインドネシア沖津波などで募金が必要になった際は、年会費以外に緊急に募金を呼びかけることもあるかと思いますので、ご協力の程よろしくお願いいたします。
4.「なぜフェラーチ基金を設立したのか」
これは基金運営メンバーとは意見を交わしていない、あくまで私個人の意見として読んでください。そもそも元キャップ小林英二さんの提案があってこそ「やってみようか!」と思い、さらに現運営メンバーや他先輩方の後押しがあって、設立に至ったのですが、ここではそういった設立経緯でなく、「なぜ皆さんの募金を必要としているのか」、さらには、「なぜ皆さんは募金をすべきなのか」を中心に、私見として述べます。
「できることからはじめよう」というのが私の団体の合言葉でもあるのですが、「お金のある人はお金を、知恵のある人は知恵を、汗を一緒に流せる人は汗を」と、個人レベルで、税金を納める以外にできる、社会協力をする機会を提供したいと思ったのが始まりです。これは、橋もっちゃんや遠藤他が私に宛てたメールから、「少しでも社会貢献したい」と思う人がたくさんいるんだ、と確信したからです。皆様の中には、既に別団体で寄付金を出したり、ボランティア活動をしたりしている人がいるかと思います。私もPwCにいる頃からそうでした。それが膨らんで、PwCを辞めてこの業界に入ったのです。でも、多くの人はそこまでできない、もしくはしないようです。私は特殊なケースなのかもしれません。家族の事情うんぬん、人それぞれ生活があります。やりたいことも違います。ですから、「できることからはじめよう」でいいのです。個人個人事情があるから、できることとできないことがあって、あたりまえです。では今皆さんが「できること」で、一番身近なことは何か。それが、募金です。
自分の稼いだ金が他人の喜びになって、それで自分も喜ぶことが数千円でできるなんて、と思ってくれれば幸いです。
私は同情を誘って皆さんの募金を集めようとは思っていません。どうせやるなら、マイナスな面をアピールして同情を誘うより、希望に満ちた明るい未来があるとアピールして募金を集めたい。サッカーをして明るく笑う子供達をたくさん見たいし、支援物資を受け取って勇気付けられる子供らの眼差しを見たい。そんな楽しい未来のためにフェラーチメンバーに力を貸して欲しい。そう思ってフェラーチ基金を創設したのです。今ひどい暮らしにいる人々を助けるためではなく、彼らの今後の明るい未来の為への投資だと思って、多くの方の募金のご協力をお願い申し上げます。
大変長い文章で失礼いたしました。フェラーチ基金が皆さんの力で盛り上がっていくことを期待しています。
中山 中
最終更新:2008年04月28日 14:44