- 生徒会室 -
梨香
「会長、先日行われた体育会系クラブへの監査結果をまとめました、ご確認ください」
しのぶ
「はぁぃ…」
梨香
「以前よりお願いしているヴァナ祭に関する学校側への調整、もう終わっていますか?」
しのぶ
「あ、あれね~。なかなか校長が捕まんなくてさぁ、まだなのよ。えへへへ」
梨香
「えへへじゃありません、明日までにお願いします。絶対です」
しのぶ
「はぁぃ…」
放課後、たった二人の生徒会である"甲賀しのぶ""弓削梨香"は生徒会の事務作業に追われていた。
いや、正確には追われているのは生徒会長であるしのぶだけであろうか。
しのぶの机に置かれた未処理と書かれた底の浅い箱には、山のように書類が積み上げられている。
反面、梨香の机は綺麗なものだ。
しのぶ
「はぁ…」
しのぶはため息をつくとぼんやりと外を眺める。
いい天気だ。普段感じるより30%増で空が蒼く、高く見える。
外には陸上部、ソフトボール部などの体育会系の生徒達がこの天気を謳歌し、活気ある
活動を繰り広げている。
彼・彼女達の遠くに聞こえる声は、この静かな生徒会室には嫌に大きく響く。
しのぶにとってこの声は事務作業をしている自分を嘲笑うかのようにも感じる。
しのぶ
「なんであたしゃ、華の10代をこんなとこで過ごさなきゃならないんだろうねぇ…」
しのぶはぽつりとつぶやき、また深いため息をつく。
梨香
「自業自得です。普段雑務をこなしておけば、こんな時期に仕事が溜まったりしないです」
梨香はPCに向かったまま、冷たくしのぶを突き放す。
自業自得、まさにその通りだ。
梨香は生徒会だけではなく、弓道部にも所属し、優秀な部員として評価も高い。
しのぶは部には所属せず、放課後の活動は生徒会のみ、にもかかわらずこの状態。
普段の仕事をサボっていることは明らかだ。
梨香
「ヴァナ祭が近づいていますし、準備することもまだまだあります。今日明日中には溜まった
雑務だけでも終わらせてください。このままですと、ヴァナ祭準備に支障をきたします」
しのぶ
「……」
梨香
「ヴァナ祭準備期間に入ったら、もっともっと忙しくなります。今のうちに頑張らないと
いけませんね」
しのぶ
「……」
梨香
「会長、聞いています?」
しのぶ
「……」
梨香
「会長?」
梨香が顔をあげると、そこにしのぶの姿はなく"ごめんね♪"と書かれた紙が一枚残されていた。
梨香
「か、会長ーーーーーーーーー!!!!」
静かな生徒会室に梨香の怒りとも悲鳴とも聞こえる声が響き渡った。
- 廊下 -
しのぶ
「まったく、梨香の小言は長くていけないね。あたしは褒められて伸びるタイプなんだからさぁ」
しのぶは、ん~っと両手を挙げ背筋を伸ばすと、廊下の窓からもれる日の光に目を細めた。
しのぶ
「さ~って、逃げたものは逃げたものとして、これからどうしようかな」
勢いで逃げたが、いくあてもないしのぶは、どこに行こうか思案を巡らしながら、プラプラと
廊下を歩きはじめる。
しのぶ(小腹もすいたし、調理部にいって何か食べさせてもらおうかな。そろそろヴァナ祭に
出す料理も研究し始めてるだろうし、試作品食べれるかな。
あ、そういえば工芸部に邪魔したときに作ったものもまだ完成してなかったっけ。
中途半端といえば、アクセも中途半端に作っていたっけ、あれを完成させてもいいな。
こういうのって、追い詰められた方が魅力的に感じるから不思議。
あっはは、自分で追い詰めておいてこんなことしてるんだから、ホントあたしってば
自業自得。梨香が言うことは正しいわこりゃ。)
しのぶはクククと自嘲的に笑う。
しのぶ
「よっし!調理部にき~めたっと!」
目的が決まれば足取りも軽い。
笑みもこぼれる。
鼻歌も軽くこぼれる。
しのぶ(本当は天気もいいし、校外に出たいけどね~。梨香に悪いし、それだけはやめとこっと)
逃げたことがすでに悪いことなのだが、そんなことは気にしない。
しのぶは上機嫌に、家庭科室へ向かった。
- 教室 -
俺、こと遊佐は今、人生最大の危機を迎えている。
とはいえ、命がどうとうかって話ではない。
学校でも可愛いとそこそこ評判の女子"ローラ・コルセール""椎府 霞"を前に、パンツ一丁という
姿でいるだけだ。
おっと、別に俺は自主的に女子の前でこんな姿を晒すような変態じゃあない。
自主的に脱いだのではなく、彼女達に脱がされたんだ。
本来そんな状況であれば、人生最大の危機どころか、人生最大の幸福な状態っつぅか、それ
なんてエロゲ?って感じなんだが、こいつらは服を脱がせた後が目的なのではなく、俺が
服を脱ぐこと自体が目的なのが最大の危機なんだ。。。
霞
「さぁさぁ、あと一枚だけど、どうする~?」
ローラ
「ココで引き下がルような人は、オトコじゃないデ~ス♪」
ギラギラとした目で二人は俺に詰め寄る。ちょっと、、君達、、怖いデスヨ。。。
しかし、何でこんなことになっちまったんだろう。。。
最初はなんでもない、遊びだったんだ。。。
今日は本当にいい天気だ。
夜更かし上等、万年寝不足の俺には、これはもう神様が寝ろと言っているとしか思えない。
当然授業は爆睡。起きたらクラスに誰もいないという、ハイレベルさ。
起きたら誰もいないっていないっていう異空間に驚きながらも、俺は睡眠の余韻を楽しんでいた。
そこをこの二人に見つかり、暇ならゲームをしないかと持ちかけられたんだ。
女の子二人にこんなことを持ち掛けられて、断る奴はいるだろうか?もちろん俺は二つ返事で
了した。
彼女らがやろうと持ちかけたゲームの名前はバンカー。
なんでもラスベガスじゃ定番のギャンブルゲームらしい。
ルールはローラに教わり、最初のうちは玩具のチップで楽しんだ。勝敗もトントン。
しかし、ギャンブルゲームっていうのは単純でさくさくゲームが進む分、飽きも早い。
30分もやったころには、俺はまた意識がトロトロとしてきた。
嗚呼そうだ、それで俺はあんなことを言っちまったんだ。「刺激が足りない」と…。
そして俺はなんであの時気付かなかったんだろう。二人の目が勝負師の目に変わったことを。。。
どんな勝負においても、勝負を分けるのは「覚悟」をする心だ。と、誰かが言っていた気がする。
今なら骨身に染みるほど納得できる。
俺から金をぶんどる「覚悟」を決めたこの二人と、所詮お遊び程度から意識が変わっていない
俺とでは、勝負はこの時点で決まっていたんだろう。
金銭を掛け始めた瞬間から、あれよあれよというまに俺の財布は空。
ローラの「本場デハそういう時、身に着けているモノを質に入れるネ♪」の一言に、冷静さを
失っていた俺は抗えず、時計・カバン・そして服さえも巻き上げられちまった。
まずい、、実にまずい、、このままだとこんな格好で帰宅させられちまう。。。
だ、誰か!ボスケテ~~~~~!!!!
???
「は~い、君達なにしてるのかな~?」
突然割り込む声に、俺と勝負師二人はビクッと体を跳ねる。
声の主は俺の真後ろにいるらしい。顔を上げると、二人の勝負師は顔を蒼くしている。
俺も恐る恐る後ろを振り返る。そこにいたのは。。。
霞・ロール
「せ、生徒会長…」
しのぶ
「やぁ、ローラ・コルセールと椎府 霞だったかな?それと~、この間抜け姿は遊佐だっけ?」
振り返ったところには、我が校の最高権力者にして、暴君とも名高い、生徒会長"甲賀しのぶ"
先輩が不敵な笑みを浮かべて仁王立ちをしている。
しのぶ
「あちゃ~、これはあれだね。賭博行為ってやつ?」
俺達3人は返事をするでもなく、顔を蒼くしたままうつむいた。
だれも返答しないせいか、生徒会長は言葉を重ねる。
しのぶ
「ま~、学生同士が何をしようとあたしは基本的には自由だと思ってるんだけどねぇ。現場
押さえちゃった以上、ちょっと見逃す訳にはいかないなぁ」
さっきの人生最大の危機は撤回。今が本当の人生最大の危機。
このままだと、停学どころが退学の可能性もあるかもしれねぇ。。。
罪状は、賭博行為及び猥褻物陳列罪?うわ、最悪!とくに猥褻物ってところがもう人生終わっ
てるわ俺!たとえ停学でもこの罪状じゃ、今後の学生生活は灰色どころが真っ黒!
もう恋愛なんていうロマンスの単語もまったくなくなるに違いない!
うはははははははっはははっは、なんかもう笑えてきたわ!
しのぶ
「さて、とりあえず3人とも生徒会室にきてもらおっか。遊佐、服を着ちゃって。そんな格好
じゃ、、プッ、ここから連れていけないわ、クックック」
苦笑交じりで俺を指さす生徒会長。その笑いにようやく自分の格好の恥かしさに気付いた俺は、
慌てて服を取ろうと、腰を少し浮かせ、服に手を伸ばす、、、が、、、
ローラ
「待ってくだサイ」
ローラの言葉に遮られ、俺は腰を浮かせたまま体をストップさせる。
言葉の主に視線を送ると、そこにはさっきまでの怯えた目をしたローラではなく、嫌という程
見てきた、あの勝負師の目をしたローラがいた。
しのぶ
「ん?なんだい?」
ローラのただならぬ気配を察知し、生徒会長の顔から一瞬笑みが消える。
ローラ
「コノ戦利品は、遊佐サンに渡すワケにはイキマセン」
しのぶ
「ん~、どういうことかな?」
生徒会長はまた笑みを浮かべるが、目が笑っていない。。。
体からはTP=100%WS準備OKのオーラが出ていることを感じる。。。
ローラ
「コレは私のモノデス。ギャンブルが禁止されているから、戦利品が没収なのはワカリマス。
デモ、遊佐サンにこの戦利品を返すことは、また別の問題デス」
しのぶ
「つまり、罰は罰、勝負は勝負ってことかな?」
ロール
「イエス、モノの没収はよくても、勝負の没収は許せまセン。それは勝負を汚す行為ネ」
しのぶ
「あっははは!あんたこんな場面で面白いことをいうね~。確かに、正しかないが理屈は
間違ってはいないよ」
生徒会長はケタケタと笑い、場の空気が緩む。
俺も緊張が解け、ようやく腰を下ろすことが出来た。
しのぶ
「ん~、かといってね。あたしもこの子をこのままの格好にさせとくわけにはいかなくてね。
このまま家に帰らせると、、、クックク、本当に警察沙汰だしねぇ。さぁて、どうしたも
のかね」
ローラ
「それなら、簡単デス。会長サンがワタシと勝負して勝てばイイだけネ♪」
しのぶ
「あっはははは!あんた本当に面白い子だねぇ~。ただ、、、あたしに勝負を挑もうとは、
ちょ~っと調子に乗りすぎかな?」
ローラ
「フフン、会長だか回虫だか知りませんガ、ワタシと勝負するのが怖いのカシラ?」
再び場の空気が硬直し始める。。。
というか、二人の目の間にバチバチとしたものが見えるんですけど。。。
いや、もう、ほんと、無理!すげぇ逃げてぇぇぇぇ!
あれ?そういえば、、、ダレカガイナイ、、、
あああああ!霞の奴!いつの間にかいねぇ!!!
おぃぃぃぃぃ、お前それでいいのか!?っていうか俺も連れてけぇぇぇ!!
そんな俺の混乱をよそに二人のボルテージは上がりまくる。
しのぶ
「まぁいいわ。そのつまらない挑発、乗ってあげる。ただし、終わったらそれなりの
罰を受けてもらうよ。ついでにその子の服返してもらう」
ローラ
「ワタシが負ければ、の話デスワ。ワタシが勝ったら、今回の罰はナシでお願いしまス」
しのぶ
「オッケーオッケー。じゃ何で勝負を決める?あんまり難しいのはあたしパスよ」
ローラ
「シンプルにダイスの目で勝負でどうデス?このダイスを振って、ダイスの目の合計が
大きい方が勝ち。それだけネ」
そういうと、ローラは胸ポケットからサイコロを2つ取り出し、机の上に転がす。
会長はそのサイコロを手に取ると、しげしげと眺め、何回か机の上でサイコロを転がした。
しのぶ
「デラサイ、って訳じゃなさそうね。いいわ、これでいきましょ」
ローラ
「フフ、ワタシからいきますネ♪」
ローラは机の上のサイコロを掴むと、慣れた手つきで運命のサイコロを転がす。
サイコロは綺麗な軌跡を残し、ぴたりと止まる。軌跡が、綺麗すぎやしないか?
出目は・・・6と6・・・
合計は・・・12・・・
目を確認し、ローラはにやりと笑う。
ローラ
「フフ、6のゾロ目ネ。これでわたしの負けはなくなりましたワ♪」
罠だ。
こいつはこうなることが分かっていたから、自信満々だったんだ。
普段からギャンブルに精通するローラが、机の上という平坦な場で思い通りの数字を出すことは
たやすいに違いない。
会長~~~、どうするんだよこれ!
俺はあわてて会長を見上げる。
が、会長の顔を見ると、一瞬の驚きの表情はあったが、また不敵な笑みを浮かべている。
会長、出目をちゃんと見てる?
しのぶ
「ははぁん、そぅいうのはアリなのね」
ローラ
「アラ、決めたのはサイコロを振る、出目の合計ってことだけデス。振り方まで指示された
覚えはありませんデス。それにコレはイカサマではなく、テクニックネ」
しのぶ
「くっくくくくく、そっか、分かった。テクニックね。卑怯とかはいうつもりはないよ。
でもねローラ、これであんたの勝ちはほとんど無いに等しくなったよ…」
ローラ
「ハァ?出目を見ていなかったデスカ?12デスヨ12!勝ちが無くなったのは、会長の方
デース」
会長はゆっくりとした動作でサイコロを握る。
そして握ったその手をおでこのあたりに当てると、ブツブツと何かを言い始めた。
サイコロに念でも入れてるんだろうか?
あれ?なにかがオカシイ。。。
目の錯覚か?会長の姿ブレて見えたような…?
いや、錯覚じゃあねぇ。明らかに会長の姿がぶれている。一人、二人、三人、四人、、、
俺の目には会長が4人いるように見える。いや、実際にいる!
会長が4人になっている!!!
会長
「「「「空蝉の術!ふはははははは、これでサイコロは4倍!12なんて小さい数じゃ
あたしには勝てないよ~~~~!」」」」
ローラ・俺
「「えええええええ、そんな卑怯な~~~~!!!」」
会長
「「「「テクニックに卑怯もお経もあるかい!さぁいくよ!」」」」
4人の会長が一斉にサイコロを振る。カカッと小気味よい音がし、サイコロは停止する
サイコロ8個の出目は、、、え?
机の上のサイコロはすべて、赤目の印を示している。。。つまり1。
と、いうことは、、、1×8だから、、、8ぃぃぃ!!??
しばしの間。
ローラ
「え、、、、エーーーット、ワタシの、勝ち、、、?」
しのぶ
「あっちゃ~~、、、やっちゃたよ。勝負はローラの勝ちだね。
ま、今回のことは見逃してあげる。これからはあんまり派手にやるんじゃないよ?」
ローラ
「ハ、ハイ、気をつけまス…」
あまりの展開にローラと俺はついて行けず、元に戻ったダイスをただ見るだけだった。
生徒会長はそんな俺達を残し、教室を出て行こうとする。
が、何かに気付いたのか、扉の前で振り返った。
しのぶ
「っとと、忘れるところだった、遊佐!あんたは別。生徒会室に連行だよ」
俺
「えぇぇぇぇぇぇぇ!それってなんかオカシクないすっか!?」
しのぶ
「はぁ?なにがオカシイことあるのかな。ローラは勝利を勝ち取った、君は?」
俺
「えっと、間接的にではありますけど、負け、かな?」
しのぶ
「そうだね、じゃ君だけはまだ許されていないってこと。理解できた?」
俺
「えぇぇぇぇ!?あ、で、でも俺まだパンツ一丁っすよ!?」
しのぶ
「大の男がそんなことでガタガタ言わないの。あたしと一緒なら見つかっても教員室行きは
無いから、安心してその格好で生徒会室においで」
俺
「なんか俺、すげぇ損した気分・・・」
- 生徒会室 -
しのぶ
「たっだいま~。梨香いる~?」
ご機嫌で生徒会室の扉を開ける生徒会長。そのあとをトボトボとついてゆく俺。
ここまでの道のり、実に、長かった。。。
梨香
「あ、会長お帰りなさい」
声はすれども姿は見えず。いや、カーテンから足が生えて、ではなくてカーテンの向こうに
梨香と呼ばれる子はいるみたいだ。
しのぶ
「ん~?どした~?あたしは梨香の元気な姿がみたいぞ~」
梨香
「いえ、あの、その人…」
カーテンの向こうの人はこっちに出てこようとしない。
生徒会長はふ~っと軽くため息をつくと、うんざりした顔で俺を指差し、次に受付の机を指差す。
あぁ、そうですよね。俺ですよね。俺がこんな格好でいるのから出られないんですよね。
俺は生徒会長の指の動きの通りに、受付の机に体を隠し、顔だけを机の上から出す。
しのぶ
「梨香~。変態は隠したから、出ておいで~」
梨香
「あ、は、はい。分かりました…」
カーテンが揺らめき、梨香と呼ばれる女の子が姿を現す。
お、あの子はあれだ、副生徒会長だったっけ?選挙でみたことある。結構ちっちゃいなぁ。
俺の視線に気付いたのか、副会長は一瞬体を硬直させると、顔をうつむかせ、会長に
パタパタと駆け寄る。
しのぶ
「で?首尾は?」
梨香
「は、はい!えっと、これでいいんですよね?」
副会長は顔をうつむかせたまま、おずおずと服の束を会長に差し出す。
はて?あの服どっかで見覚えがあるような??
しのぶ
「梨香ぁ~~、あんた本当に分かってるね!よ~しよしよし、愛い奴愛い奴ぅ♪」
会長は副会長を熱く抱擁すると、わしゃわしゃと副会長の頭をなで回す。
副会長は顔を赤くしたまま、会長のなされるままに振り回される。
俺、なんかいけない世界を見てんじゃねぇかな。。。
その光景をボーっと眺める俺のほうへ会長は突然向き直ると、何かを俺に向かって投げつけた。
さっき副会長が持っていた、服の束。これって、もしかして。
しのぶ
「ほれほれ、呆けてないでちゃっちゃと着る。いつまでそんな格好してるつもり?」
服の束は間違いなく、、、俺の服だ!!うおおお、マジか!?着ていいの!?
俺、やっと人間に戻れるよ!
俺はいそいそと制服に着替える。あぁ、服っていいわ・・・俺が悪かった、もう離さないよ
ハニーバニー。
と、服の感触に喜ぶ俺の頭にふと疑問が浮かび、浮かんだ言葉がそのまま口からこぼれる。
俺
「あの、会長、この服どうやって手に入れたんですか?」
しのぶ
「ふっふっふ、どうしたんだと思う?」
俺
「いや、それが全然わかんないんすけど、、だって会長は俺とずっと一緒にいましたよね?
副会長はあの場にさえいなかったじゃないですか?」
しのぶ
「まったく、、なんにも見えてないね、君は。。。この子はずっとあの時あの場にいたのさ。
ローラがあたしに啖呵をきったところから、だったかな?」
梨香
「は、はい。その時から、いま、した…」
俺
「ええええ!俺ぜんっぜん気付かなかったっすよ!」
しのぶ
「梨香がいたからこそ、あたしはわざわざ『その子の服も返してもらう』って言ったんじゃ
ない、いまやっていることを梨香に伝えるためにね。それに空蝉の術だって、君達の注目を
浴びるためにだしたんだよ?梨香の存在が気付かれないように、ね?」
梨香
「はい、ですので、すごく服を、取り返しやすかった、です…」
しのぶ
「まぁ、本当は勝つ気満々だったんだけどねぇ。。。負けた時の保険っていうのかな?
しっかし梨香、よくあたしの考えを分かってくれた。嬉しかったよ、ありがとうね♪」
梨香
「い、いえ!光栄、です…」
会長はまた、副会長の頭をうりうりとなでる。副会長は黙ってうつむき顔を赤くする。
俺はまた、その光景を呆けたたまま眺め、ぼんやりと考える。
今日はなんか、すげぇ日だ。。。こんなに驚きが多い日って、高校生活初めてかもしれない。
こんなことが毎日起きるなら、高校生活はすごいものになるんだろうなぁ、と。
しのぶ
「さって!種明かしはここまでね。梨香、ちょっとアレ持ってきて」
梨香
「は、はい!」
副会長はパタパタとロッカーに走ると、腕章とマジックを持ってくる。
会長はそれを受け取ると、ふんふん♪と鼻歌交じりに、腕章に何かを書き、俺と正対する。
そして、軽く咳払いをすると神妙な面持ちで俺を見据え、宣言する。
しのぶ
「遊佐 洲彬!校内における賭博行為及び、パンツ姿での校内放浪、君の悪行は筆舌に尽くし
がたい!よってこの生徒会長甲賀しのぶの名のもと、君に今回の件に関する罰を申し付ける!」
俺
「は、はひ!」
しのぶ
「現在からヴァナ祭までの二ヶ月間!当生徒会における、奉仕活動に従事し、猛省すること!
また、この期間内、副生徒会長代理補佐に任命!偉大なる生徒会長・副生徒会長を補佐し、
ヴァナ祭を大成功に導くことを、君の使命とする!以上!」
俺
「は、はい、、、」
しのぶ
「返事が小さ~い!」
俺
「はい!!」
しのぶ
「うむ、よろしい。では副会長代理補佐の証であるこの腕章をつけ、業務を行うこと」
俺
「え?え?」
しのぶ
「ん~、これで人手不足は少し解消したかな?じゃ、梨香、代理補佐への教育はよろしくね」
梨香
「あ、はい、分かりました」
しのぶ
「とりあえず、きつ~い肉体労働に従事してもらおうか?折角の男手だしね」
梨香
「そうですね、では体育会系の物品管理を最初に…」
しのぶ
「あれは重いからねぇ~。代理補佐にうってつけね」
俺
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!????」
だ、誰かボスケテ…
最終更新:2007年01月19日 00:30