本当に終わりは突然くるものだ。
いつもと変わらない学校の朝。
しかし、いつもと違うことが一つだけあった。
井草
「あれ?遊佐、茜は?
今日は一緒じゃないの?」
もうすぐHRだというのに茜の席は空席のままだ。
それに気づいて、井草が尋ねてきのだ。
遊佐
「いや、俺は何も聞いてない。
昨日、一緒に帰ったときも特に変わったことはなかったし」
昨日、散々あいつに散々走らされた俺は見事に
筋肉痛で、休み休み
遅刻寸前の今来たところだった。
最近は茜と待ち合わせして一緒に来ていたが、さすがに今日は
この時間の為、先に行ったと思っていたのだが。
ガラガラ
扉が開き、担任が入ってくるといつものセリフを言い始める。
担任
「ほら、お前ら席に着け。はじめるぞ。学級委員、号令」
朝の挨拶が終わると、担任が話しはじめる。
担任
「まず、皆、既に気づいていると思うので最初にいっておく。
え~、突然の話だが茜さんは昨日付けで転校しました」
聞きたくない。
担任
「皆には黙っていて欲しいという本人の希望も踏まえ、あえて
知らせないでおいた。
皆も色々言いたいことはあると思うが家庭の事情ということなので、
そこら辺は分ってやる様に。それにもう分ってやれる年齢のはずだ」
わからない。
担任
「本人もこんな別れとなってしまい非常に残念がっていたし、
すみませんと謝っていた。」
あいつはまた明日と言ったんだ。
担任
「この話は、これで終しまいだ。
あ~、あと遊佐、お前はこれが終わったら、少し残れ。
渡すものがある。
それじゃ、他のものは体育館に行くように終業式をやるぞ」
誰か嘘だといってくれ・・・。
-- 屋上 --
辺りはすっかり、茜色に染まっていた。
既に校舎に生徒の声がすることも無く、教師たちが
幾ばくか残っているぐらいだ。
HRの後の俺は相当酷かったらしく、あの
中島さえも話しかけられなかったらしい。
終業式後の教室での会話にも一切参加することなく、
皆が夏休みの楽しい計画の話をしている時も、
只黙って、俺は外の景色を見ているだけだった。
HRの後、俺は担任から茜からという手紙を渡され、
屋上の金網にもたれながら、今もそれ読み返していた。
手紙ではまず、いなくなる事を言えなかったことについて
詫びられ、そして自分がとある小国の王族の者であることが
書かれていた。最近までその国では王位継承権の問題が発生しており
そのトラブルに巻き込まれない為、また丁度ここに王家所縁のものが
いることもあって、一時的に避難していたらしい。
本当ならここの学校にもくる必要は無かったのだが、前から一度普通の
学校いうのを体験したかったらしく、丁度いいということで転入してきた
というのだ。
遊佐
「確かに、王族としてそれなりの特別な教育を受けていたなら
あの万能さにも納得がいく」
その後の手紙の内容は、短い学校生活ながらとても楽しかったことと、
そしてそこから去らなければならないことが非常に悲しく出来ること
ならずっと居たかった綴られていた。王位継承権問題が解決した今、
自分にも国元で果たさなければならない役割も生まれ、どうしても帰ら
ねばならず、今日ここを去るとのことだった。
遊佐
「はぁ~、まいったね。
ここまで凹むとは」
王族だったとかそんなことは関係ない。
だが、既に手遅れだ。相手はもう遥か彼方にいってしまった。
もう告げることは出来ないのだ。
最終更新:2007年01月21日 19:58