遊佐「えーっと、これでいいのかな」
おいてあった服を着てみた。
がちゃっと音を立ててドアが開く。
霞「着替えたー?」
遊佐「ああ、変じゃないか?」
俺は両腕を広げながら尋ねる。
霞「へー、似合ってるよ」
遊佐「そう?」
霞「さ、それじゃ働こうー」
遊佐「はいはい、お願いします」
霞「はいは一回!」
ありがちな返答だなぁ。
遊佐「……はい」
霞「んー、何から教えればいいのかな」
霞が出て行く。
霞「ねー、まっつーん。遊佐君に何から教えればいいのー?」
店長「まっつんと言うのは止めなさいといつも言っているだろう」
霞「えー」
まっつん……。あぁ、松下さんって言うんだっけか。
店長「今は掃除は無理だから、とりあえず食器洗ってもらおうか」
霞「はーい」
食器洗いね……。
霞「ということで人手が少ないからすぐ食器たまっちゃうからよろしくね」
遊佐「わかった」
ま、食器洗いくらいなら……。
霞「清潔が命だから、しっかりね。あー、あとレジとオーダーの取り方と掃除は閉店後ね」
遊佐「オーダーか……」
覚悟はしてたけど、あんまりやりたくないな。まぁ四の五の言ってられないんだけど。
霞「それじゃ、わたしはオーダー行ってくるからまたね」
店長「おーい、霞ちゃんー」
霞「はーい、いらっしゃいませー」
霞は行ってしまった。
食器を洗う位置はテーブルからは見えない位置にあるようだ。
その隣で店長が注文された品を作りそれを霞が運んでいく。
遊佐「さすがに慣れてるなぁ」
俺は目の前に並んだ皿やらカップやらをどんどん洗っていく。
遊佐「清潔が命っと」
きゅっきゅっきゅ
確かに気を使いながら洗うと結構大変だな。
遊佐「しかも、思ったより数多い」
それだけ人が入るって事なのだろうか。何気に喫茶店だと思って侮っていた。
カップの底なんか特に気になる。
遊佐「きゅっきゅっきゅ!」
霞「きゅっきゅっきゅ」
遊佐「……」
霞が隣に居た。
霞「あはは」
霞「案外手をずっと水につけておくってつらいよね」
遊佐「ああ、確かに……」
だんだん手の感覚が無くなってくる。
霞「じゃ、がんばってねー」
霞の後ろ姿を見ながら俺は。
遊佐「やっぱ、いいなぁ」
と独り言をもらした。
遊佐「……そういえば忘れてたよ」
霞があまりに普通に接してくるから……。
遊佐「いや、俺も普通に接すればいいんだよ」
そうそう。だから今は目の前の皿に集中だ。
店長「おつかれさま」
遊佐「はー、もう手がふやけてますよ」
店長「明日からもそうなるよ」
遊佐「がんばります」
手が白くなってる。
店長「さて、それじゃあ掃除をしようか。霞ちゃん」
霞「はーい。先輩ーこっち来て」
遊佐「はいよ」
部屋に入って。
霞「ここに掃除する道具があるからまずイスを上げておいて床を掃いてモップをかけるの」
遊佐「毎日?」
霞「そう」
遊佐「なるほど」
やはり店は毎日掃除しなくちゃいけないんだろうな。
霞「それじゃ、始めよ。遊佐君はまずイス上げて」
遊佐「ほい」
掃除はある意味自分との戦いに近いきがする。
適当にやろうとも真面目にやろうとも……、だが!
霞「ほらほら、ちゃんと拭いて」
遊佐「……はい」
掃除なんて真面目にやったことない俺にはなかなか大変だった。
店長「飲食店というのはそういうものだよ」
店長はコーヒーポットを拭きながら笑顔で話しかけてくる。
遊佐「大変……ですね」
霞「床が終わったらテーブルの上ね」
霞がイスを下ろしながら指示をしてくる。
遊佐「わかりました」
最終更新:2007年02月01日 22:40