お昼休みだ!


【時期】出会い2回目から数日後?
【設定】昼休み
【場所】中庭のベンチ付近
【登場人物】主人公【俺】、中島、武僧都【都】



●4時間目が終わって、昼休みに突入したての教室
【中島】「しゃっー!飯だ!」
そう叫ぶとカバンから大きな包みを取り出し、机の上に起き開くとドカベンが姿を現した。
蓋を開けると、大量の白いご飯と真ん中に梅干が一つだけ入っていた。
所謂、日の丸弁当である。

【俺】「なんだそれは…。」
【中島】「なんだって、おまえ。日の丸弁当に決まってるじゃないか。
     それより、おまえは今日もコンビニのパンか。寂しいなぁ!はっはっ!」
日の丸弁当に言われたくはなかった。
腹が立つので俺は教室を出て、晴れているので中庭で食べることにした。


●中庭
コンビニの袋をぶら下げながらダラダラと中庭に足を運ぶと、
天気のいい日だ、晴れわたる青空の下での食事は、どんなものでも美味しく感じてしまう。
既に中庭には数名生徒がそれぞれの憩いを満喫していた。
はい、あ~んして。おいしいよ、ハニー。なんてやっているバカップルを横目に、
俺はなるべく空いているところ探し、隅にあるベンチにたどり着いた。
他の場所に比べれば日当たりはよろしくないが、夏の暑い日に一人で昼飯を満喫するには十分な場所だった。

ベンチに座り、コンビニの袋を空けて中に入っているパンとパックの紅茶を取り出す。
高校2年生の男子の食事では無いな…。
そんなことを思いながら、ゆっくりとパンを食す。

しばらくそんな一人の時間を満喫していると、にゃは!という声が遠くで聞こえた。
武僧先輩だろうか。
声の主を探していると、案の定、武僧先輩の姿を発見した。
こちらに気がついているようで、手を振り近づいてきた。

【都】「にゃは、一人なぁん?お友達と食べへんの?」
【俺】「はは。いやぁ、たまにはこういうのも良いかと思って。」
【都】「ふむ。」
武僧先輩は何かを納得した様子でうなずく。
隣ええ?と言われたが、断る理由も無いので一緒にお昼を食べることにした。
大きな巾着袋を膝の上にのせ、紐を解き広げると、これまた大きなお弁当箱が姿を現し、
3段のお弁当箱には、お弁当定番のメニューがぎっしりと、それでいて綺麗に収まっていた。
にゃはははと嬉しそうに笑い、手を合わせて頂きます!としっかり言ってからお弁当に手をつける。
部活のときの荒々しさからは見られなかった、行儀の良さが見えた気がした。
武僧先輩は黙々と丁寧にお弁当を嬉しそうに食べている。
俺も持っているパンを黙々とかじり続けた。

周りの和気藹藹とした雰囲気に覆われる中庭の隅の一角だけ、妙な沈黙が流れている。
俺達の場所なわけだが、とりわけ何をしたわけでもないが、気まずい雰囲気に包まれている。
どうしたものか…。
とりあえず、会話だな!

【俺】「先輩の、お…」
【都】「あんなぁ、…」
同時に口を開いてしまったらしい。

【俺】「あっと、どうぞ。」
【都】「にゃあ、先にええよ?」
また同時に切り出した。

武僧先輩はそれがおかしかったのか、にゃははは!と笑い出し、俺も釣られて笑ってしまった。
少しだけ、雰囲気が回復したような気がした。
そして、武僧先輩が先に会話を切り出した。

【都】「ほなら、先に言わせてもらうで?
    こないだのこと、ほんまに堪忍なぁ。」
【俺】「この間のこと?」
【都】「3人に絡まれとった時の事や。
    あれ、元空手部員なんや。
    ゴメンなさい…。」
そういうと武僧先輩は項垂れてしまった。
部長としての責任を感じていたのだろう。

【俺】「いえ、気にしなくて良いですよ。
    先輩に助けてもらったし、それに…。」
【都】「それに?」
武僧先輩は俺のほうを向き、首をかしげる。

そこへすかさず、
【俺】「武僧先輩と知り合いになれました。」
そう言って俺は武僧先輩に向かって極上スマイルを繰り出した!

【都】「にゃはは…。」
微妙な反応だ…、レジストされた…?
いや、きっと照れているだけだ。そうに違いないと思うことにした。

…ちょっとだけ、また気まずい沈黙が流れている気がする。

【都】「せや、遊佐君の話はなんだったん?」
【俺】「えっと…、なんだったっけなぁ…。」
話を切り替えられた!やっぱり、レジストされてたか…。
極上スマイルは俺には扱えない、だから今後一切封印することを胸に誓い、
話の内容を思い出すことにした。
なんだっけなぁ、先輩のおっぱい大きいですねじゃなくて。
てか、こんな事言ったら殺されそうだし。

思い出すことに専念して、あちらこちらを見回していると、俺はお弁当箱を見て思い出した。

【俺】「そう、思い出しました。」
俺はお弁当箱を指差し、
【俺】「先輩のお弁当箱、大きいですねって言おうとしてたんです。」
と言うと、武僧先輩は手でお弁当箱を隠してしまった。
お弁当箱が大きすぎて隠れてないけれど。

武僧先輩は顔を赤くして、
【都】「にゃは!?にゃはははは!
    あたし燃費が悪くて、これくらい食べんとすぐお腹が空いてしまうねん。」
と答えた。ちょっと恥ずかしがっているようだ。

【俺】「沢山体動かしてますからね。良い事だと思いますよ。」
とフォローを入れておくのを忘れない。
俺は微妙な好感度のUPを図りながら、持っているパンを口に運んだ。

武僧先輩もお弁当箱を少し手で隠しながらも、パクパクとお弁当を口に運びはじめた。


少したって、武僧先輩は俺の持っているパンを指差して、
【都】「遊佐君はそんなんで足りるん?
    パンと紙パックの紅茶だけって、男子高校生のお昼ご飯ちゃうでぇ?」
と、情けないものを見た後のような口調で言ってきた。実際情けないのかもしれないが…。

俺はパンを見て、「ええ、自分でもそう思います…。」と一言返しちょっと項垂れると、
武僧先輩はニィっと笑い、「仕返しやぁ。」と言った。
そんな、なんとなく楽しそうな武僧先輩を見て、俺もなんだか楽しくなって笑い出した。
それを見ていた武僧先輩も同じように笑い始めた。

そして、二人して笑いながら楽しくお昼御飯を済ませた。
なかなか有意義な一時を過ごせた気がした、真夏の昼休みだった。
最終更新:2007年03月07日 21:31