弓削ルート 7月16日 【いつもの君へ】
?
視界がはっきりしてきて、何時もの風景が目にはいる。
今何時だ?目覚ましはなってないはずだが~。
遊佐「ぉ……珍しいじゃん」
目覚ましがたたき起こす5分前。
学校に行くには十分過ぎる時間だな。
遊佐「まぁ、さっさと準備をしていきますか」
目的もあるし、早起きは三文の特っていうしな。
遊佐「制服制服……」
何時もと色違いのズボンをはく。
遊佐「うっし……まだ朝食も出来ていないだろうから、今日は買い食いでもしますか」
台所にいくと、朝食を作っている音が聞こえるな。
夏休みが近いから一度家に見に着たいっていきなり押しかけてくるんだもんなぁ……自炊しない分楽だけど……
遊佐「母さん。俺、準備が出来次第いくから。ごめん朝食は買い食いしていくわ」
母「ん~、それじゃーさっさといっちゃいなさい」
流石母……放任主義者はこういうときにいいよな。時々寂しいけど
顔を洗って、歯を磨いて、あとーやべ……財布財布。
玄関に置いてある鏡の前に立って最終チェック。
……。
OK、問題なし
遊佐「それじゃ、いってきます」
母「ん、何をするかは知らないけど頑張ってらっしゃい。女の子は絶対泣かしちゃダメだよ!」
えーとそれはどんな意味でしょうお母様?
遊佐「い、いってきま~す」
母恐るべし……。
っまこの時間じゃまだ早いよなぁ。誰も居やしないな。
弓削は居るかも知れないけど……
一年生の靴箱は~……
弓削「遊佐先輩?」
遊佐「お?」
弓削「おはようございます、どうしたんですか?
こんな時間に」
遊佐「おはよ。ん~、きっと弓削と理由は一緒」
弓削「あ……」
遊佐「困ってる時は助け合わないとな。可愛い後輩が困ってるならなおさらだ」
弓削「あぅ~」
ありゃ……耳まで真っ赤にしてまぁ
あれ?
遊佐「弓削、ちょっと顔を見せてみろ」
弓削「え、あ……あの」
覗き込んでみる……。
可愛いな――じゃねぇ
目が赤い……
遊佐「ちゃんと寝てないだろ?」
弓削「すみません……」
遊佐「ったく、ちゃんと寝ないと体調不良で今日一日効率が悪いぞ?」
弓削「でも、後は学校くらいしかないですし。そう思うと……」
遊佐「はぁ、しょうがないか」
弓削「……」
遊佐「一緒に探そう、な?
弓削もそのつもりだったんだろ?」
弓削「はい、でも。二手に分かれたほうが」
遊佐「一緒に行くぞ、本調子じゃないのに一人にして置けるか。ほら、荷物も貸してみ」
手を握って歩き出す。まずは荷物を教室に置かないとな。
弓削「……っ」
色々あったからな……やっぱり調子が悪いんだろう。
遊佐「弓削?教室はここか?」
弓削「あ、はい! そうです、そうです!」
何慌ててるんだか。
遊佐「弓削、席は何処だ?おいてきて――」
弓削「いえ!自分で置いてきます!」
……何なんだ?元気があるかないかよく分からないぞ。
弓削「お、お待たせしました」
遊佐「ん、慌てなくてもいいぞ」
弓削「いえ、大丈夫です。それより」
遊佐「探しに行くか」
弓削「え? 遊佐先輩の荷物は?」
遊佐「俺はいいよ、以外と教室が遠いからな」
弓削「でも」
遊佐「良いから良いから、時間かもったいないぞ」
弓削「……はい」
さて、時間はあまりないし、一ヵ所を重点的に探してみるか。
遊佐「ん~職員室を先ず探してみよう。まだ先生も少ないだろうし」
弓削「そうですね……」
遊佐「決まりだな訳を話して探させてもらおう」
職員室へ向かっていく途中丁度片山先生が見えた。
片山先生「あら、遊佐君。今日は早いわね~。解らないところでもあった?」
弓削「おはようございます。先生」
遊佐「おはようございます、片山先生。残念ながら外れですよ」
片山先生「む、なら生徒会の仕事かしら?」
遊佐「まぁ、そんなところです。職員室で探し物するんですけど構いませんよね?」
片山先生「良いけど、何を探すの?」
弓削「髪留めなんですけど、大事なもので……あ、会長には言わないでください……」
片山先生「生徒会の仕事なのに……?
ん~まぁいいか、散らかしちゃダメよ」
遊佐「はい、わかりました。ありがとうございます。」
弓削「すみません。」
片山先生「それじゃ、私は色々とあるから。遊佐君またあとで」
遊佐「了解ですー」
片山先生「学校に来ていて、遅刻なんて許さないからね。じゃ~弓削さん見つかると良いわね」
弓削「はい……」
頑張ってね~、と手を振りながら階段へと消えていった。
遊佐「さて、許可ももらったし。時間まで探そう」
弓削「はい」
遊佐「失礼しまーす」
弓削「失礼します」
遊佐「え~っと弓削、職員室で何したんだっけ?」
弓削「私は、予算報告と書類の印刷です。」
そんなに動いてないな、落とす確率は低ってところ……。
遊佐「あとはー……あ、掃除」
弓削「はい……先生達が体育祭の片づけをしてた間に職員室の掃除です」
そうなると……職員室全域か、マジかよ。
遊佐「とにかく、散らかさずにやるか」
弓削「はい」
遊佐「結局、ここには無かったな……」
弓削「すみません……」
遊佐「謝るな、何も悪くないだろう」
弓削「でも、せっかく一緒に探してもらったのに」
遊佐「だからって落としてないところにあるわけが無いだろ」
弓削「それでも見つかって欲しかったです」
俯くな、お願いだから俯かないでくれ。ましてや泣かれると。
弓削「すみません、朝から。昼休みは一人で探してみます」
おいおい……その状態で授業受けて昼休みは探し物か。
遊佐「あのな?
弓削。あれが弓削にとって凄い大切なものってのはよく分かる」
弓削「はい……私にとってとっても大事な物です」
遊佐「今日だけ俺に任せてくれないか?」
弓削「それだと……私は……」
遊佐「分かってる。だから今日だけだ、それでも見つからなかったら一緒に探そう」
弓削「……だめです」
遊佐「何でダメなんだ?
ちゃんとした理由を言ってくれ」
弓削「遊佐先輩が探してるのに私が探さないなんて、おかしいです。そんなの私が許さないです」
遊佐「俺が許す。俺が許せないのは、その状態でいることだ」
弓削「そんなの・・・理屈です」
強情だな
すまん、脅すみたいなことをするけど……。
遊佐「なら、甲賀先輩に相談しても良いんだぞ?」
弓削「それはだめです」
遊佐「なら」
弓削「わかりましたその代わり――」
遊佐「この件は甲賀先輩には言わない。あと無茶でもなんでも付き合ってやる、これが交換条件」
弓削「……腑に落ちない点はありますけど……分かりました。」
遊佐「ん、聞き分けのいい後輩は好きだぞ」
やわらかく頭をなでてやる。
弓削「…………」
遊佐「それじゃ、そろそろ予鈴なるから俺は行くぞ?あんまり根気つめるなよ」
弓削「はい」
結局、昼休みを使って探してみたものの成果は無かったな…。
一度弓削の教室を見に行ったらちゃんといたし。言いつけは守ってくれたみたいだけど。
遊佐「ふぅ……このままじゃ、だめだよなぁ」
弓削「すみません……」
やべ、弓削いつの間に。
弱気になってたらだめだろ!俺。
遊佐「弓削」
弓削「なんですか?」
遊佐「任せてくれよ?」
弓削「……はい」
遊佐「失礼しまーす」
弓削「失礼します」
甲賀「やぁ来たね、お二人さん。弓削、調子は大丈夫?」
弓削「はい、問題は無いです」
女子生徒会員「え? 梨香ちゃん体調悪いの?」
弓削「そんなことは無いですよ先輩」
甲賀「ちょっと疲れてるってところかな? で、どうする? ちょっと片付けてもらいたい事があるんだけど」
弓削「はい、何でしょう?」
甲賀「各教室の備品チェックをして欲しいの」
甲賀「このごろ各クラスの役員が巧く機能してないみたいでね~」
遊佐「それで備品チェックですか?それは各委員長に伝えれば良いんじゃ?」
甲賀「その委員長からの相談でね、生徒会がじきじきに動けば示しがつくでしょ」
弓削「……それでどうすればいいんです?」
甲賀「とりあえず、あとは2年の備品チェック。まぁ簡単なものだから、黒板けしと掃除用具点検、ロッカーなど」
遊佐「使えそうに無いのを報告すればいいんです?」
甲賀「っまそういうこと」
弓削「分かりました」
甲賀「あ、あと昨日私達がやった仕事の最終点検なんかもしてくれるとうれしいかな」
……何気に多くないか?でも俺一人でも出来るし。
弓削「以上で終わりですか?」
甲賀「えぇ、終われば報告は明日で良いから。疲れたら途中で帰って良いから」
弓削「いいえ、仕事は仕事ですから。それでは会長いってきます」
甲賀「?いってらっしゃい」
遊佐「お、おい弓削待てって」
弓削「……大丈夫ですからまかされたことをしましょう」
なんか……しゃべり方が何時もより冷たいような。
遊佐「これくらいの仕事俺一人でも出来るから、弓削は――」
弓削「仕事は仕事です。やらせてください」
これ以上言っても無駄か……。
遊佐「なら、さっさと片付けますか」
そうすれば弓削も休めるだろ。
遊佐「そこ、これもやばいんじゃないか?」
弓削「そうですね。これはもう使えないです」
てきぱきと作業を進めていく。
弓削「これも、もうだめですね」
用具入れの蝶番が壊れていた。
遊佐「あーこれはな、意外と簡単に直せるんだ」
確か針金かなんかで――こんな感じに。
遊佐「ほれ、これで問題なし」
弓削「……なんでも知ってるんですね。」
遊佐「たまたま知ってただけさ。弓削だって俺の知らないこと一杯知ってるだろ?」
弓削「……私は」
遊佐「弓削はもう少し自信を持たなきゃな?」
弓削「自信ですか……」
遊佐「そ、自信。俺なんかすぐに追い抜くぞ?会長も目じゃないぜ?」
弓削「……そうでしょうか?」
遊佐「そうそう」
弓削「遊佐先輩……私は」
遊佐「ん~?」
弓削「あ、いえ。何もありません」
それよりさっさと片付けましょうかね。
時折、部活の掛け声が聞こえる中で、黙々と作業を続けた。
遊佐「それじゃ、お疲れ様」
弓削「お疲れ様です」
甲賀「お疲れさん~気をつけて帰るんだよ~」
時刻は7時前、都合よく学校内のめぼしい場所は二人で探し終わったんだけど……。
結局、成果は無し。本当にどこに落としたんだ?
遊佐「弓削は、甲賀先輩に送って貰うし……俺は俺で探すか」
と言っても、探す場所はあと少ししかないわけで。
遊佐「学校から打ち上げしたところまでか」
広いけどまぁ、なんとかなるだろ。
遊佐「ないな……」
普通に歩いてて落とすような事はしないよなやっぱり……。
あれから一時間近く、そろそろ補導とかされそうだ
遊佐「あ!」
それらしい物発見!
植え込みの中だけど問題ないだろ。
腰元まである枝を掻き分けながら進んで――
ッビリ
…………。
夏服よさらば。
???「こら!こんな時間にしてるの!」
!?……補導かこりゃ?生徒会が補導されるってやばくないか?
片山先生「遊佐君?何してるのそんなところで」
遊佐「片山先生?」
良かった、まだ話が分かる人で……。
片山先生「朝早く見掛けたと思ったら。今度は制服でこんな時間に、補導されてもおかしくないわよ?」
遊佐「すみません……」
片山先生「制服も破けてるし……まだ探し物?弓削さんもいるのかしら?」
遊佐「いえ、俺だけです」
片山先生「本当に?」
遊佐「本当です」
片山先生「……肝心のものは見つかった?」
遊佐「はい!やっとみつけました!」
届くところまでにあった髪留めを――
片山先生「それ?」
…………
違う、子供用みたいなデザイン……それに弓削が大切にしているのならもっと綺麗なはず。
遊佐「……」
片山先生「違うのね?」
遊佐「はい……」
片山先生「残念だけど、見掛けた以上はほっておけないわ。分かるわね?」
遊佐「っっっ」
しょうがないよな……弓削が一緒じゃないのが幸いだ。
片山先生「でもま、そんなに悪い子ではないし・・・今日は御両親に説明だけね?」
遊佐「あ、ありがとうございます」
片山先生「ん、遊佐君の家って近かったわよね?直接一緒に行くから。車に乗って」
見つけれないまま今日は終わりか……