遊佐「それにしても」
霞「ん?」
遊佐「あんまり変わってなかったな」
俺は思った今更ながら思ったことを口にした。
霞「遊佐君も変わってなかったね」
遊佐「そうかぁ?」
霞「そうだよ」
自分ではたった今変になったつもりだったけど……。
霞「ねえ?」
遊佐「何?」
霞「何かきっかけがあって思い出したの?」
遊佐「きっかけかぁ」
俺は少し考える。
遊佐「夢、かなぁ」
霞「夢?」
遊佐「ああ、ここ数日よく夢を見たんだよ」
霞「どんなの?」
遊佐「……恥ずかしいから言わない」
夢に霞っぽい人が出てきたなんて言えるか……。
霞「えー」
遊佐「えーじゃない」
霞「うー」
遊佐「でも夢が全部じゃない。夢は俺が探すきっかけを与えてくれただけだった」
遊佐「一応、最後の一撃をくれたのは中島だったな」
なんか嫌だけど、認めるしかない。
奴は確かに俺と霞の恋の……いや気持ち悪いな。
ごめんな、中島!
霞「そっかぁ」
遊佐「でも……」
俺は神社を見ていた。
遊佐「ほら」
俺がそっちを指差す。
霞「え?」
遊佐「あそこだよ」
一番のきっかけはあそこだったのかもしれない。
いや、そうに違いないんだよな。
霞「……うん」
遊佐「あのさ」
霞「……」
遊佐「今年は……あそこだな」
霞「そうだね」
そう、これは二度目なんだ。
俺は霞に向き直る。
とりあえずの今、一番の心配事といえば。
遊佐「退院はいつごろできそう?」
霞「明日」
遊佐「……」
あっけらかん。
遊佐「何でそんな大事なこと早く言わないんだ……」
うなだれる。
霞「言う暇が無かったから」
遊佐「……だよな」
俺がすぐ部屋から連れ出して、さらに引きこもられて。
遊佐「よかったな。早く退院できて」
俺は霞の頭をくしゃりと撫でてやる。
さわり心地がいい。
霞「あ」
遊佐「ん?」
霞「んー」
どうしたんだ?
遊佐「おーい?」
霞「はっ」
遊佐「……」
霞「もう一回」
遊佐「撫でるのをか?」
霞「うん」
もう一回くしゃりと撫でてやる。
霞「あーう」
………………。
最終更新:2007年05月10日 01:57