「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
さわやかな朝の挨拶が、澱み切った曇り空にこだまする。
ゴチャックザック様のお庭に集うオークたちが、
今日も天使のような無垢な笑顔で、冒険者を惨殺していく。
汚れた心身を包むのは、深い朱色の返り血。
腰巻のプリーツは乱さないように、赤いトサカは翻らせないように、
ゆっくり歩くのがここでのたしなみ。
もちろん、HPギリギリでバトルダンス連発などといった、はしたない生徒など存在しようはずがない。
私立ダボイ女学園。
クリスタル戦争中に創立されたこの学園は、もとは首族の修道士のためにつくられたという、
伝統あるアルタナ系お嬢様学校であった。
ノルバレン領下。ジャグナー森林の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、
ゴチャックザック様に見守られ、候補生から兵卒までの一貫教育が受けられる豚の園。
時代は移り変わり、闇の軍勢がクリスタル戦争に敗れた今日でさえ、
十八年通い続ければ温室育ちの純粋培養お豚様が箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重な学園である。
最終更新:2006年12月26日 20:06