#シーン『神速の★彗星【弓削】』
登場キャラ『遊佐、弓削、(田中学園長)』
BGM『喜びっぽい曲、告白シーンっぽい曲、ドタバタ系の曲』
背景『黒一色、グラウンド』


(背景→黒一色。BGM→なし)

 

田中学園長「――三、ニ、一……試合終了ぉぉぉ――う!!」
田中学園長「このヴァナ・ディール学園創立以来の悲願、全学年オールスター戦を制した優勝チームは……」
田中学園長「井草千里率いる二年生だぁぁぁ――――!!!!」

 

(背景→白くなりグラウンドへ。BGM→喜びっぽい曲)

(暗転。背景→夕暮れの屋上)

季節にしちゃ珍しく、やさしい風が吹いていた。
空は暮れ掛け、グラウンドには少し黒い影が伸び――
それでも、活気はやまないようにフォークダンスの歌が聞こえていた
遊佐「ん~っ……」
胸いっぱいに空気を詰め込む。
屋上特有の開放感に浸りながら、グラウンドを見下ろす。
遊佐「最後は花火で締めか……」
生徒会の仕事とはいえ、もう少し位たわってくれても良いよなぁ。
甲賀先輩曰く――
甲賀『花火を上げる時間はまだ余裕あるけど、お願いね!』
なぁーんて……時間余りすぎだろ……ずっと屋上なんてまじありえねぇ……。
弓削は弓削でなんか忙しそうだったし……まぁ、仕方ないか。
遊佐「ふぅ……しっかし疲れたなぁ。時間もあるし……少しくらい寝るか……」
携帯のタイマータイマーっと。
遊佐「うし……」
確か、良い場所にベンチあったよなぁ。あ、あったあった。
んじゃまー……おやすみなさいですっと。
目を瞑り……また一つ深呼吸する……。
眠る時と水に潜る時って結構似てるかもな……。
あ、水といえば。弓削結構ぬれてたけど大丈夫かな?
しっかし……弓削があんなに……
あんなに……
…………
……


『ぽぉ』っと、淡い灯がともるように、暗かったカーテンが少しずつ開けていく。
右を寄り掛けていたコンクリートが少し暖かい。
あ~……気持ち良い……。
良い感じに、体を冷やしてくれる風も……何か落ち着く良い香りも。
まどろんでるって今のこといってるんだな……二度寝してぇ……。
陽が暖かいなぁ……なんか暖かいものがあるしなぁ……。
二度寝していいよね~……タイマーかけてるしさ~……。
あー……でも手が痺れてる……。
少しだけしびれた手をピクリと動かす。
???「ん……」
ん~?
動かないな~……あ、痺れてるから当たり前か。
もう一度~……
???「くふふ……」
あれ? 痺れてって言うかなんか重い?匂いも花とかそういう匂いじゃないような……
てか、何かやわらかい物が手の上に乗ってる様な……てかむしろ左半身が暖かい……
…………
寝違えたように回らない首を無理やり左へもっていく……
遊佐「うぉ!」
こちらの肩へ頭を預けるように、すやすやと眠る。子が一人……。
何故か弓削がいた。
弓削「ぅ?」
あ、やべ……おきる……
遊佐「ナ、ナンデモナイヨー」
弓削「あぃ…………すぅすぅ……」
……
…………
今なら分かるぜ……一人娘を持つ親父の気持ちがっ!
……
いや、何で起こさなかった! 俺!
どうするどうする?とりあえず寝顔を観察――
俺は変態か!
どうする――!てか、マジ可愛い!
というか、あの件のあとにこれは生殺しだぞ!
落ち着け……現状を把握しろ……
タイマーは後何分だ!
不明! 後ろのポケットだ!
右手じゃ……取れないな……。
なら左手で――
…………
……
弓削さん……の脹脛が指を……
ふ、不可抗力なんだからね! 勘違いしないでよっ!
……何言ってんだ。
やべぇ……この状況はやべぇぞ……まず左手をどうにかしよう……。
ゆっくり……ゆっくり……と安全圏へ……。
弓削「ん~」
?!
起きるな!
遊佐「ナンデモナイヨー」
弓削「くふぅ…………」
…………
……
OK……沈黙を確認。
デ、デンジャラス……。
ゆっくり……ゆっくりと~――
よっし!抜けた!
携帯を――
ピピピピっ
!?びっくりしたじゃん!
弓削「ん……携帯ぃ?」
やっべ、フォロー不可能!絶対起きる!
ここは……死んだふり。
曰く、寝たふり!
あわてて右の壁へ頭をよりかける。
遊佐「ぐー」
(棒読み)
弓削「ふぁ…………あれ?」
寄り掛かっていた頭が周りを見渡すように動く……。
ふわりと髪の毛が揺れると同時に香りが振りまかれる。
弓削「…………ぁ!」
やっと状況がつかめたようで。あわてて飛びのいたようだ。
弓削「わ……何で……えと……落ち着いて……あわてちゃダメ……」
こちらがまだ寝てると思っているのか、一人で言い聞かせている声が聞こえる。
弓削「屋上に来て……遊佐先輩が寝てて……私も少し座ろうと思って……あ!花火!」
思い出したかのように大声を上げる。
弓削「遊佐先輩! 起きてください!」
起きてますよ。
少しくらい演技しなきゃばれる!
弓削「起きてくださいー」
遊佐「うーん」
(棒読み)
弓削「花火しなきゃならないんですよ!」
いや、そうなんだが……
けっして二人で「ウフフ」「アハハ」みたいなシュチュエーションにはならないぞ?
遊佐「んー、花火……っは!花火!」
(棒読み)
弓削「おはようです」
遊佐「お……おぅ、って弓削が何でここに?」
アフター演技も完璧ダッゼ!半分、地だが……
冷や汗ものだな……心臓が破裂しそうだ……
今日一日で、10年くらい寿命縮まったんじゃないか?
弓削「え、遊佐先輩がねて……じゃなくて、甲賀先輩に最後の打ち上げ花火準備してきてって言われて」
あーなー……俺じゃ不安だったわけ?
遊佐「そっか」
弓削は自分の携帯をちらりと見る。
弓削「丁度、時間ですし……そろそろですよ」
遊佐「了解」
ポケットに入っていた点火用のライターを取り出す。
弓削「えと、花火は――」
遊佐「あー、ここだから大丈夫だぞ?」
そういってベンチのしたから花火の入った袋を取りだす。
弓削「あれ……?」
遊佐「ん? どうした?」
不思議そうにこちらを見る。
弓削「えと……私も甲賀先輩から花火を渡されたんですけど……」
そういって階段の行って、すぐさま戻ってくる。
弓削「これです」
遊佐「それって……」
弓削が取り出した花火は……なんとまぁ市販されている奴でも大き目のもの。
『一花咲かせましょう!30連発!』なんて書いてあるしな……。
一方の俺は……普通のロケット花火5本……。ひでぇあつかいだな……。
弓削「えと……どうします?」
遊佐「どうするって?」
弓削「どっちを――」
遊佐「そんなの決まってるだろ?」
弓削「へ?」
遊佐「両方ともやればいいさ、最後は派手にいった方が皆も喜ぶだろ?」
にやりと笑い返しながら、袋と半分位まで水の入ったペットボトルを本数分出す。
弓削「ふふ……そうですね!」
遊佐「んじゃ……きっちりと」
弓削「はい!」
打ち上げるのなら……芸を凝らすか。
てきぱきと準備を済ます。
といっても……ペットボトルと弓削の持ってた花火をを置いて。
点火を待つだけだ。
遊佐「弓削、秒読みよろしく!」
弓削「はい!」
…………
……
弓削「後10秒です!」
遊佐「OK!」
弓削「10……9……8……7……6……」
うし!
弓削「5!」
遊佐「GO!」
1秒ごとに、ロケット花火を赤く染まった空へ飛ばす。
それが分かったようにグラウンドのほうから、声が聞こえる
弓削「0!どうぞ!」
遊佐「ラスト!いっけぇ!」
火を最後の本命につける。
ボシュン!と
今までと違った音を皮切りに連発で30発空へ打ち込まれ――
打ち上げられた玉は、まだ少し明るい空へ小さな星を作る。
男子生徒「ひゃっほ~!」
女子生徒「屋上からやってるんだー!」
それぞれの言葉で体育祭に終わりを告げ始めていた。
遊佐「んー、夜ならまだもっと綺麗なんだろうな」
グラウンドを見下ろすようにフェンスに寄り掛かる。
弓削もそれに続いた。
弓削「残念ですね……最後まで甲賀先輩がそのほうが良いって。色々頼んでたみたいですけど」
なんだ……そういう事か……見えないところで頑張りすぎですって……。
遊佐「甲賀先輩らしいな」
弓削「だから私は好きなんですよ」
遊佐「そうだな……でも弓削」
弓削「何ですか?」
遊佐「でも、バリスタの借りはいつか返さないとな」
弓削「ふふ、そうですね!」
遊佐「んじゃ……弓削」
あらためて弓削のほうに向く。
弓削「はい?」
遊佐「お疲れ様」
弓削「はい! 遊佐先輩もお疲れ様です!」
いや……
そんなに笑わなくても……

…………

……
あーもー
遊佐「弓削には敵わないな」
弓削「へ?何です?」
遊佐「弓削は俺より強いって事」
弓削「バリスタですか? でも、私は遊佐先輩に負けてましたよ?」
遊佐「ん~……ま、そういう事にしときましょう」
弓削「えー、それってどういうことですか!」
遊佐「まぁまぁ、さっさと片付けて降りよう」
綺麗に彩ってくれた花火の後片付けをして。階段へ向かう。
弓削「むぅー、腑に落ちません!」
遊佐「置いていくぞー」
弓削「待ってください!」
慌しかった体育祭が終わりを告げると同時に。
何かが少し変わったような気がした。

 

最終更新:2007年05月11日 16:47