即席オープニング例
こんな始まりから1日を通して色んなオナノコと知り合っていく感じ?
○ 放課後・教室
人の出会いと別れなんてあっけないものだ。
大人の意思ひとつで、それまで毎日一緒にいるのが当たり前だった人達とはもう会えなくなり、再び周囲の人間との関係を1から築き始めなければならなくなる。
でも、時間に任せておけば結局慣れちゃうんだろうな。
だって、ほら、馴染みの友との別れに悲しむ心もあれば、新しい土地での新しい出会いに期待している自分もいるじゃないか。この気持ちは実際に引越しを終えて、周辺の住宅街を歩いて、これから過ごすことになる学校の誰もいない放課後の教室に入って……そんなことをしているうちにどんどん膨らんでいくに違いないのだ。
俺「ここか」
2年B組――そう記されたプレートの下にあるドアを前にし、俺はひとつの深呼吸をした。
今日は、翌日からの授業への参加に備えた準備登校だ。ドアの向こうには誰もいない。ただ自分の教室、自分の机を確認し、実感するだけだというのに、何故だか緊張が収まらなかった。
しかし、いつまでもただ突っ立っているわけにはいかない。俺は今一度気持ちを奮い立たせてドアに手をかけた。
これまで数え切れないほど開閉されたドアが、少しばかり抵抗しながら横に滑る――
?「あっ」
俺のものではない透き通る声が、薄暗い教室を照らした。
窓際にもたれていた少女は虚を突かれた表情で俺を凝視する。
学園の制服、近くの机に置かれたカバン。どう見ても学園の生徒だろう。お互い知らない人同士だけど、この場合、新参者の俺が不振な侵入者にでもなった気分だ。
俺「あー、えっと」
?「転校生さん?」
不振な立場から逃れるためのフォローの言葉が思いつく前に、その少女自身から助け舟を寄越された。
俺「はい。そうです」
そう言っても信じてくれるかはわからないが、まあでも学校に不審者が侵入するなんてこと、そうそう無いだろうしな。
少女は目を輝かせながら胸の前で両手を組んだ。
?「わぁー! そっかそっかー。
皆キミのこと楽しみにしてるよ。ていうか皆より先に御対面だなんて、わたしちょっとラッキー?」
明るく、そして機転の利く子、といった感じだろうか。
少女は頭の頂上に立っているアホ毛をヒラヒラと揺らし、途中で机に蹴つまづきながらも駆け寄ってきて、俺の手を取った。危なっかしい子だ。
?「わたし白子っていうの。明日までに覚えてね☆」
ウインクまでされてしまっては、さすがの俺もときめかざるを得ない。
俺「お、おお覚えます覚えますとも」
白子白子、白子と。よし、もう忘れないぞ。
というか、初日(の一日前)からこんなかわいい子と手がつなげるなんて、何だか幸先がいいな。
白子「転校生クンの名前は?」
おっと、舞い上がってしまってつい失念していた。
俺「あ、ごめん。俺は」
白子「すとーっぷ!」
名前を言うより先に、小ぶりな手で口をふさがれてしまった。
白子「やっぱり名前はお預け! 明日までの楽しみにしながら悶々としとくよ」
明るく機転が利いて、少しおっちょこちょいな気まぐれ屋さん……
俺「肩書きつけてたらキリがないな」
白子「え、なーに?」
俺「いやいや何でも」
つい余計な思考が口から出てしまったようだ。
実は中々の優等生であるらしい、という肩書きが後日追加されることになるのだが、今はもうやめておこう。
白子「じゃ、わたしはもう帰るから。明日からよろしくね☆」
一度窓際に戻ってカバンを手に取ると、少女は俺に軽く手を振って教室の出口へ向かった。
それにしても、放課後の電気がついていない教室で一人、彼女は何をしていたのだろう?
答えが出ないであろう疑問は、当ての無い思考のいいネタになりそうだ。
俺は白子が立っていた窓際に歩み寄り、赤く染まっている外の景色を眺めた。
その中で、白子と思わしき女学生が石につまづいて前のめりに倒れていた……
○ 転校初日・教室
?「お前、シロに何したあぁぁーっ!」
……
…………
えっと、これは何なのだろう?
朝のホームルーム。担任の教師に従って教室に入った途端、飛び蹴りを顔面に食らったのだが。
何? これがヴァナ・ディール学園流の挨拶ってわけかい?
俺「いってえええじゃねえかこのヤロウ! 俺が何したってのさ!」
いきなりこんなことされたんだから、少しぐらい怒ってもいいよね!
?「だから私がそれを聞いてるんじゃねぇかよ!」
俺「ぎゃあ!」
俺が悲鳴を上げたのは、頭頂部に踵落としを食らったからだ。いや、叫んでる場合じゃないだろってくらい痛い。
そんなよくわからない暴行を止めに入ってくれたのは、ああ麗しの白子さん。
白子「あぁあ~、もう! 聖ちゃんやめてってば! 何度も言ってるけどコレは自分でやったの。転校生クンは関係ないよ!」
コレって何だろう? 痛みを堪えて顔を上げると答えはすぐに出た。きっと昨日転んだときに傷を負ったのだろう。白子の鼻の頭にはバンソーコーが貼ってあった。
「聖ちゃん」と呼ばれた暴力女学生は、しかし白子の言葉が耳に入っていない様子。
聖「おい転校生、謝るなら今のうちだぞ。私のシロに手ぇ出した罪はそんなモンじゃ消えねぇがな、ちょっとは収まるかもよ」
いやいやいや、白子の鼻の傷のことで怒っているのだとしたら、俺には謝るほどの責任なんてないぞ?
聖「……どうやらその気は無いようだな。さらに痛い目を見たいか」
勘弁してください。
暴力女学生の拳が大きく振り上げられた。
聖「いっぺん死んで来い!」
マジで死にそう……先生、何とかしてくれ、って何隅っこで怯えてるんですか。
俺「ひぃぃ」
聖「食らえ!」
……しかし、その拳は俺の体に届くことは無かった。
聖「ちっ、しのぶか」
今度は何だろう、先ほどまで振り上げていたはずの拳をさすっている聖の視線の先では、指先でシャーペンを弄びながら不敵な笑みを浮かべる少女が机に着いていた。しのぶさんというのだろうか。
しのぶ「死んで来い、ってのはちょいと行き過ぎた表現だよね。しかも本気っぽかったし」
本当に本気で殺す気だったのですか。
しのぶ「これ以上騒ぐなら、寛容な生徒会長様もさすがに黙っておけないから。いい加減にしなよー」
さらに、しのぶの隣に座っていた優雅な金髪の女学生が静かに追い討ちをかける。後で聞いたところによると、あかねさんというらしい。
あかね「ムネナシはムネの小ささを見習ってもうちょっと大人しくしたらどう?」
むむ、確かに少しだけ、小さ目というか何というか。恐れ多くて口に出しての同意は出来ないけど、確かに聖のおっぱいは小さく見える。
聖「っ――! 転校生、命拾いしたな。おいあかね! お前もムネムネうるさいんだよ、後で覚えとけ」
あかね「忘れた」
……すごいクラスに転入してしまったな。
結局何の自己紹介も出来ないまま、1限目の始まるチャイムが鳴ってしまった。
この聖って子は、どうやら白子のボディーガード的な役割を果たしているらしい。白子本人が望んだわけではなく、いつの間にかそういうポジションになっていたそうな。
ただ、ひとたび熱くなると見境がなくなるのは何とかならないものかな。
まあ、ため息をつきたくなる状況にうんざりしながらも、白子が俺の手を取って気遣ってくれると気分は一瞬で晴れるのであった。
聖「こるぁぁあ! 性懲りも無く、しかも私の目の前でシロに手ぇ出してんじゃねぇ!!」
手を出したのはどちらかというと白子さんなんですけど!
俺「ひぃぃ」
何これ、癖になりそう!
意見など
最終更新:2009年06月03日 10:52