遊佐「一番辛い選択って、どう言う事?」

階段を下りながら、ましろちゃんに尋ねる。

ましろ「…………」
遊佐「ねえ?」

踊り場で立ち止まっていたましろちゃんに、振り向いて尋ねる。

ましろ「遊佐君」
遊佐「ん?」

手招きされて、そのまま近寄る俺。
ぎゅっと抱きしめられた。

ましろ「あったかいね」
遊佐「まあ、人間ですから……」

思わず変な回答をしてしまう。
階段の段差もあって、丁度俺の顔の真横にましろちゃんの顔がある。

ましろ「遊佐君」
遊佐「な、なにかな?」

やっと開放された。
少し残念な気もする。

ましろ「さよなら」
遊佐「え?」

不意に、突き飛ばされ、俺はバランスを崩した。
ちょっ、これは……。
洒落になら……。

どしゃっ。

…………
……

階段を転げ落ちていく遊佐君を、わたしはじっと見つめていた。
打ち所が悪かったらしく、頭から血が流れている。
バリスタの時みたいに、選びきれない可能性もあったけど、わたしはちゃんと選べた。
選べた事が、少し悲しかったけど。
わたしは選ばないといけない。
正解を選び続けるのが、わたしの出来る贖罪だと思うから。
そのために、正しい選択をしたんだ。
そのはずだ。
なのに……。
なのになんで……。

ましろ「何で、涙が出てくるのかな……」

ごめんね。遊佐君。
好きだって言ってくれて嬉しかったよ。
ごめんね。わたしは選ばないといけないんだ。
遊佐君が居たら選べなくなっちゃうんだ。
だから、ごめんね。
わたしも、本当に遊佐君の事好きだったんだよ。

ましろ「ごめんね」

もう、帰ろう。
また、選ばないといけないんだから。
いつまでもここにいてはいけない。

ましろ「さよなら、遊佐君」

大好きだった人。
せめて、キスくらいしてあげたかったな……。
最終更新:2008年04月17日 10:01