現在朝の登校時間。今日は気分が悪い。昨日の事件で負傷した首の傷が痛むからだ。
……要は痛くて眠れなかった。
中島「よぉ! 遊佐!」
今、気分がさらに少し悪くなった。
遊佐「よぉ、中島」
中島「お? どうした?」
遊佐「ちょっとお前が恨めしくあると同時に、自分の不甲斐なさを思い出しちまったのさ」
中島「……はぁ。それは大変だな」
とにかく昨日の出来事は忘れてしまいたいところだが。
中島「ところでお前その首のところどうしたんだ」
遊佐「聞くな、何も聞くな」
中島「いや、でも結構すごいぞ」
遊佐「ほっとけ」
とりあえず投げやりに答えておく。
中島「ちっ。わかったよ」
とりあえず、今日一日いろんな人に聞かれそうだ。何か適当な理由でも考えといた方がいいか。
ましろ「おはよー」
遊佐「ああ、おはよう」
後ろから声をかけられる。いつものコンビ、ましろと聖。ましろが駆け寄ってきて聖は無言で歩いて続く。
中島「おっす。今日もいい感じに揃ってきたじゃないか」
遊佐「何がだよ?」
ましろ「そうだね」
わけのわからないところで会話が成立している。
聖「……ところで、遊佐」
後ろから聖が何かを聞きたげに声をかけてくる。
遊佐「聞くな」
聖「は?」
遊佐「何も聞かないでくれ」
殴られた理由を言ったら、またましろが云々理由をつけられて違うアザをつけられてしまう気がする。
ましろ「んー。つん」
遊佐「っ! つぅ!」
ましろ「痛い? よねぇ……」
遊佐「結構……痛い。触らないでくれ」
俺は一歩身を引く。この流れからすると
中島「おら!」
遊佐「やっぱりかぁああ!」
予想通り近づいてきた中島の腕を右で払って左で軽くボディに。
中島「んげふ!」
聖「相変わらずだな」
ましろ「あはは……」
遊佐「ふあぁあ」
授業中も痛くて眠れたもんじゃなかった。とりあえず今日は一日ぼーっとしていたい。
がらっと教室の扉が開く音。
忍「こんにちはー。遊佐君いる? あ、いたいた」
続いてこの忍先輩の言葉が聞こえてくる。……ゆっくりできそうになかった。
遊佐「……何ですか?」
まさか昨日のことを根に持っているとか? あれは俺の責任じゃないはずだ。
だが世の中、というよりこの国というものは基本女性の言うこと優先される時代なのだ。
忍「ちょい、ちょい。ちょっと
生徒会室に来て欲しいんだけど。ね、お願い」
遊佐「とりあえず、理由は何です?」
忍「手伝って欲しいことがあるんだってばー」
遊佐「いや、別に俺じゃなくてもいいでしょう。中島に頼めば喜んでやってくれますよ」
忍「あー、ダメダメ。中島君じゃたぶん役に立たないから」
残念だったな中島……。お前役に立たない扱いされているぞ。
遊佐「あいつがダメなら俺も似たようなもんだと思いますけど」
忍「ふふふ……そこが甘いところなんだよ遊佐君。とりあえずこれは遊佐君にしかできないことなんだよ」
俺にしかできないこと……?
遊佐「すっごく怪しいんですけど。どうしても言えないんですか?」
結局核心にはついてこないし内容はまったくわからないので、俺はイエスともノーともいえず。
忍「なかなか強情だね……」
遊佐「いや、まぁ……」
手伝うこと自体は構わないけど、何か不穏な空気を感じてしまって警戒しているわけで。
そもそも本当に手伝いなのか?
忍「とにかくっ! 今日放課後に生徒会室! お願い!」
遊佐「わかりましたよ。顔出すだけ出してみますよ」
やばそうだったら即刻逃げるつもりだけど。
忍「わかった! 楽しみにしてるから!」
遊佐「ちょっ」
だだっと駆けて出て行く忍先輩。その言葉は……色々まずいって。
クラスから、えーっとか、怒声が聞こえるような気がする。
中島「遊佐ぁああああっぁああ!」
どこからやってきたのか、どこから聞いていたのか中島が急に現れた。
遊佐「うお!?」
中島「俺は、俺はぁ! 遊佐のバカぁ!」
遊佐「ぐへ!」
最終更新:2008年06月26日 03:03