7/4(水)
ましろ「おはようー」
聖「おはよう、ましろ」
今日も聖とましろは一緒に登校している。二人のキャラクターは全然違うものだが仲が良いのは間違いない。
ましろ「それでね、あ、おはよう杏ちゃん」
ましろは校門の先でみつけた杏に声をかけたが、杏は一瞥してさっさといってしまった。
杏「……」
心配そうに見つめる聖と、不安そうな顔をしたましろ。
聖「……しょうがないわ、ましろ。行きましょう」
ましろ「うん」
遊佐「よ、おはよう」
俺はいつものように登校してきた二人を下駄箱でみつけ挨拶をする。
ましろ「あ、おはよー」
聖「おはよう」
それぞれ靴を脱ぎ上履きに履き替える。
遊佐「んでもよー、珍しいよな」
ましろ「何が~?」
遊佐「いや、さっきみかけたけど杏が遅刻せずに、っとわりぃ」
聖「いいのよ。あの子が実際いつも遅刻してるのは事実だし……」
遊佐「うーん……」
会話をしながら階段を上っていく。
遊佐「ん? 屋上のドアの音がしたような」
ましろ「どうしたの?」
遊佐「あ、いや。なんでもない」
こんな時間に屋上にいく理由があるだろうか。気になるがホームルームまでほとんど時間はない。どうしようか。
1まぁ、いいか
2やっぱり気になった
(こんな感じの選択肢?)
遊佐「悪い、先行っててくれ」
ましろ「あ、遅れちゃうよ~?」
ましろの間延びした声が聞こえてきたが、かまわず俺は駆け上がって言った。
それを聖は何も言わず見上げていた。
ガシャーン
遊佐「微妙な天気だな……誰かいるのかな?」
ぐるっと見回したところ。
遊佐「あ」
見覚えのある後ろ姿。黒い長い髪を風に揺らしながらフェンス越しに町を見つめて
たたずんでいる女生徒。
遊佐「よお。何やってるんだ?」
杏「別に。あなたこそ何を?」
遊佐「……俺も別に、だな。ただ誰かが屋上に行った音がしたから気になっただけ」
杏「そう」
遊佐「……」
杏「早く教室にいったら?」
何かを突き放すような言い方。
遊佐「まぁ、そうだけど。別にホームルームくらいサボってもいいかな、なんて」
杏「……」
遊佐「いい眺めだよな。丘の上に学校があるからなおさらな」
杏「眺めは良くても、この町でいいことは何もないのよ」
この町では、でなくこの町で、という言い方が引っかかった。
遊佐「そうかもな」
チャイムが鳴り響く。
遊佐「始まったか。んじゃまぁ一応行くわ。あとで教員室に連絡しにいくのも面倒だしな。まぁ、気が向いたらまた授業で」
そういって俺は屋上を後にした。
その日の四限目には杏は教室に姿を出した。その姿をみて何となく安心した。別にいつものことなのに、屋上での会話をしたせいか、気になっていた。その後は滞りなく授業はいつものように睡眠を貪りながら終了していった。
遊佐「うわー。雨降ってる」
雨が降り始めていた。勢いが激しい。
こりゃさっさと帰ったほうがいいかも。
遊佐「わりぃ、今日はやっぱ帰るわ」
遊ぶ約束をしていた友達に断ってさっさと帰ることにした。
遊佐「んじゃまたな」
遊佐「……」
黒い髪をして、たたずむ女性が目に入った。その足元は紅く染まっている。何故赤いのか、一瞬わからなかった。その光景をたたずんで見ていた。こちらに気付いた女性は向こうへ走っていった。一瞬見えたその顔は、
遊佐「まさか……!」
おれはそれを追いかけるように走っていった。俺の不安は的中するのか、外れるのか。別にそんなのはどうでもいい。追いかけなければならない。今はそんな気がするのだ。
遊佐「何やってんだろうな俺は……!」
赤い色は点々と続いていく。それを俺は確かめながら走っていく。
赤い点が途切れた。そこは動物病院の前だった。
遊佐「……なんで?」
俺は疑問に思いながらも、動物病院の扉を開いた。
遊佐「あ、居た」
そこには杏がいた。そして、服にべったりした赤い色がついてるのが見えた。あれはやっぱり血だろうか?
遊佐「なんで動物病院なんだ……?」
おれは治療室を覗き込んだ。受付の人から怪しい目で見られる。
遊佐「あ、いえ。知り合いが」
言い訳をする。
遊佐「あ、なるほど」
やっとわかった。あの血は犬だ。犬の腹が血だらけになっているのだ。状況はわからなかったが、犬がケガをしていたので病院まで連れてきたのだろう。あの不良と呼ばれている彼女が、という疑問もあった。しかし目の前の彼女はそんな雰囲気もまったくなかった。
遊佐「よ、おつかれさん」
おれは治療室からでてきた杏に話しかけた。
杏「……なんであなたがここにいるの?」
遊佐「いや、偶然」
杏「……」
遊佐「うそです。つけました……」
杏「別に」
遊佐「いや、赤い色が見えてさ、血だと思ってなにやらやばい匂いがしたからつい」
杏「そう、正義感が強いのね」
遊佐「気になっただけ、かな」
遊佐「ごめん。俺勘違いしてた。君のこと」
杏「不良だって? 勘違いじゃないわよ」
遊佐「不良だと思ってるのは否定できないけど、もっと内面的なところ」
杏「……」
遊佐「やっぱ、わかんねえよな。人って。見かけで判断しちゃいけないっていうかさ」
杏「そう、でもあながち間違いじゃないわ。姉は真面目で優等生。その妹は非行に走ってぐれている不良。姉の姿をその妹の姿を見れば分かるわ。容姿はそっくり。でも全然違う」
すごい剣幕で長く喋る。
遊佐「だよなぁ。俺もそう思うわ」
杏「それじゃ、私にこれ以上関わらないことね」
遊佐「あー、まぁそれはわかんねぇけど、君のこと1つ知ってよかったと思うよ」
興味がないといった感じで病院をでていった。あのまま帰ったら流石にまずい気がするんだけど。
遊佐「んじゃとりあえず俺も帰るか」
その時受付の人が
受付「お金」
……やっぱり俺の勘違いか?
最終更新:2007年02月19日 22:49