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3時限目を大幅に遅刻しつつも、俺は無事に昼休みを迎えることが出来た。
ちなみに聖も4時限前辺りから戻って来ている。
大丈夫そうで何よりだ。
さて、それはともかく、やっぱり暑いのは暑いわけだ。

遊佐「じゃ、ちょっと行ってくる」
ましろ「うん。待ってるね」
遊佐「いや、暑くて食欲がわかないから、涼しいところで食べるよ」
聖「そうか。行ってこい」
ましろ「でも、涼しいところって?」
遊佐「内緒」

というわけで、れっつごー階段。
ホコリっぽいけど、この猛暑が凌げるのだからマシだ。
購買でカツサンドとバナナマンゴージュースを入手。
分量に不安があるからコッペパン(ジャム別添え)を買っていこう。
地味って言うな。日持ち良いんだぞ。

そしてごく普通に到着。
先客がいた。

遊佐「よう。杏も昼飯か?」
杏「……ええ」

杏が腰かけてアンパンをもふもふしていた。
むっ。
高さ的に杏の方が上にいるわけだが。
もう少しでぱんつが見えそうだ。
こう、もうちょっとこっちを見てくれれば……。

杏「何か?」
遊佐「はっ」

危ない危ない。
もう少しで軽蔑されるところだった。

遊佐「隣座るぞ?」
杏「……いや」
遊佐「そうか」

きっぱり断られた。

遊佐「でも座る」
杏「…………」

有言実行してみた。
杏が逃げる気配はない。
何か隣からむかついてるオーラが出てる気がするけど気のせいさ。

遊佐「アンパンか」
杏「ええ」
遊佐「シンプルだな」
杏「コッペパンもってるあなたに言われたくはないわ」
遊佐「これは非常用だ。コッペパンは保管しやすいんだぞ」

シンプルゆえにな。

杏「どうでも良いわ」
遊佐「ひどいな。コッペパンがかわいそうだろう」
杏「はいはい」
遊佐「コッペパンは歌もあるんだぞ」

らららコッペパンってひたすら繰り返してるような歌だが。

杏「アンパンはキャラクターまでいるわ」
遊佐「ぐぅっ。それは……」

く、俺はお前を応援するからな! コッペパン!

遊佐「ああ、全然関係ないんだが」

俺はカツサンドのふくろをぺりぺりと破きながら、何となく思い出した。

遊佐「2時限の時、聖が倒れたぞ」
杏「…………」

言葉の反応は無いけどビックリしてるようだ。
あと興味もあるようだ。

遊佐「軽い熱射病だな。今はケロッとしてる」
杏「そう」

むぐむぐ……。

遊佐「何か寝不足だったらしいけど、何か知ってるか?」
杏「知らないわ」
遊佐「そっか。まあ、どうでも良いんだけどな」
杏「そうね」

そして降り立つ静寂。
うーん。何か話題ないかなぁ。
…………。
思いつかないなぁ。
あー。食い終わってしまった。

遊佐「ところで俺邪魔かな?」
杏「ええ」

そう答えるだろうと分かってたけどな。

遊佐「まあ、それはおいといて」
杏「…………」

不機嫌オーラが出たけど気にしない。

遊佐「何でサボったりしてんの?」
杏「唐突ね」
遊佐「まあ、俺としてもそれとなく観察したりしてたんだよ」

杏を。

遊佐「けど、不良って言われてる割には特にそれっぽい事してないじゃん?」

タバコ吸ってる訳でもないし。
喧嘩もしてないし。
万引きカツ上げとかも聞かないし。

遊佐「まあ、俺としてはサボらなければ、ただの人嫌いなんじゃね? と思うわけですよ」
杏「人嫌いだと分かってるなら放っておいて」
遊佐「しかしだ。杏を見てるとその線も薄い気がするんだ」

半分以上勘だが。

遊佐「なんつーかな。こう、怖がってるように見える」
杏「……それで?」
遊佐「いや、それだけだ」

ほぼ全て予想だけどね。

杏「人の心を詮索して楽しい?」
遊佐「うっ」
杏「……はぁ」
遊佐「うーん。他人の心って分からないものじゃないか」
杏「…………」
遊佐「特に杏は分かりにくいから、かえって考えてみたくなったんだよ」
杏「……物好きね」
遊佐「まあね。でも、もしも杏が何を考えてるのか、少しでも分かったら」
杏「?」
遊佐「きっと、もっと話とかできるようになると思うんだ」
杏「遠慮するわ」
遊佐「やれやれ。つれないな」

手ごわい限りだな。

遊佐「杏は俺が嫌いか?」
杏「変なことを聞くのね」
遊佐「そりゃ、邪険にされてりゃ気になるさ」
杏「……そうね」

まあ、嫌いだったら俺が来たらどっかいくよな。

遊佐「ところでふと思ったんだが」
杏「何?」
遊佐「ここって二人の秘密基地みたいなもんだよな」
杏「は?」
遊佐「他の人は誰も知らないしな」
杏「…………」
遊佐「まあ、人が増えたら暑いから教えてないだけだけどな」
杏「……はぁ」
遊佐「なんだよ。そのため息は」
杏「何でもない」
遊佐「ともかく、せっかくだし秘密基地と言う事にしておこうぜ」
杏「……子供みたいね」
遊佐「いつまでも少年の心を忘れないで居たいんだ」
杏「……ぷっ」
遊佐「ん? 今笑ったろ」
杏「知らないわ」
遊佐「いや、絶対笑った」
杏「気のせいよ」
遊佐「じゃあ、笑って見せてくれよ」
杏「いや」
遊佐「ケチケチするなよ。幸せが逃げていくぞ」
杏「はいはい」

馬鹿な話で昼休みは過ぎていった。
それから笑ってくれなかったけど、一歩前進した気がする。
最終更新:2008年10月09日 04:42