聖「遊佐。ちょっといいか?」
遊佐「別にかまわないが、 何だ?」



不機嫌そうだな。
今日はまだ何もしてないぞ?



聖「これを見てくれ」
遊佐「ん?」



写真?
ましろちゃんの体操服姿か。
良く撮れてるなぁ……。



遊佐「あれ?」
聖「気づいたか」
遊佐「お前が撮った……んじゃないよなぁ」
聖「ああ、違う」



隠し撮り写真。
まあ、それは別に良い。
しかし、問題なのは……。



遊佐「これって更衣室だよな?」
聖「ああ」
遊佐「……まずくないか?」
聖「当たり前だ」



聖が仏頂面なのも分かるな。
更衣室の中を隠し撮りしたヤツが居るわけだ。



聖「私が利用しているルートの物ではないらしい」
遊佐「お前が利用してるルートって?」
聖「ああ、グレーゾーンギリギリの物までなら何でも揃う裏組織でな」
遊佐「あやしい組織だな」
聖「まあな。そこで良くましろの写真を購入していたんだが」
遊佐「っておい。何でそんなものがあるんだよ」



というか買うなよ。



聖「この裏組織は生徒が作った組織だからだ」
遊佐「そんなものがあったのか」
聖「ああ、グレーだがクリーンな組織でな」
遊佐「いや、わけ分からんが」
聖「で、代表の有戸から、最近出所不明のこういうものが流れてる。と、教えてもらったんだ」
遊佐「ふむ」
聖「天晶堂としては、許可なく流通させてる不埒者を始末したいらしい」
遊佐「天晶堂って?」
聖「組織名だ」



本格的だな。



聖「それに、これはアウトだから、クリーンな組織としては制裁をくわえたいらしい」
遊佐「始末だの制裁だのの時点でクリーンじゃない気がするけどな」
聖「仕方ないだろう。グレー組織なんだし」
遊佐「でも、何でお前に話がきたんだ?」
聖「利害の一致だな。主にましろの写真のみが流通しているらしいし」
遊佐「ふむ。なるほど」



ましろちゃん関係なら、聖は必ず動くだろうしな。



聖「とはいえ、情報提供はもらえるが、実質的に動くのは私たちだけだ」
遊佐「さりげなく俺を含むのか」
聖「バックアップがあるわけではないから、犯人のグループを見つけたとき、苦戦をするかもしれない」
遊佐「しばき倒す前提なんだな」



後、今ようやくクリーンな組織なわけが分かった。
問題が起こった生徒の関係者に情報を流して、高みの見物をしてるんだな。
あまり趣味が良いとは思えないが、それなら確実にクリーンだろう。
本当にグレーだけどな。



聖「というわけで、手伝え」
遊佐「拒否権はないのか?」
聖「何のためにお前を生かしていると思っている?」



怖いこと言うなよ……。



遊佐「まあ、いいよ。で、アテはあるのか?」
聖「ああ、この写真の元の持ち主から丁寧に聞き出しておいたぞ」



笑顔が逆に怖いなぁ。
ご愁傷様……。



聖「残念ながら、名前も顔も分からないが、売買の場所は突き止めた」
遊佐「何で分からないんだ?」
聖「顔を隠しいたらしい」



手が込んでいるというか何と言うか……。



聖「と、いうわけで、行くぞ」
遊佐「ああ、もう少し心の準備がぁ~」



むんずっと襟をつかまれ。ずりずり引きずられる。
ボスケテー。



…………
……



聖「というわけで、この先の準備室でやってるらしい」
遊佐「何が、というわけ、なんだ?」
聖「まあ、いいじゃないか」



なんのこっちゃ。



聖「たのもー!」
遊佐「堂々と入り口から入るのかよ!」



もっとこう、襲撃とか色々考えて入るんじゃないのかよ!
って、本当に入ってったよ。



生徒「あ、いらっしゃい」
聖「ここで秘密の写真が手に入ると聞いてきたのだが」
生徒「はい、セットごとに値段が違いますけど、どれにします?」



普通に応対する生徒。
いや、普通びびるだろ。そこは。



聖「ふむ。どう違うんだ?」
生徒「いや。ボクは中身知らないんで、なんとも」



雑なぬいぐるみを被った生徒は困ったように頭?を掻いた。



聖「む? お前は提供者じゃないのか?」
生徒「ええ。良く分からないけど、頼まれてここに居ます」
聖「ふむ。提供者は誰だ?」
生徒「あ、一応機密だから、言っちゃいけな――」



ギンッ。



聖「提供者は誰だ?」
生徒「だだだだだダメですって。言ったらお金もらえなくなるし」
聖「貴様に選択肢をやろう。答えるか。死ぬか」
生徒「ヒィッ。そそそこのひと、たすけて……」
遊佐「あー。すまん。ちょっと無理」



可愛そうにガクガク震えている。
とはいえ、かばう義理もないしな。



聖「後10秒だ。9・8・7」
生徒「わわわかりました! 言います! 言いますってば!」
聖「ふふふ。良い心がけだ」



どう見ても聖が悪役だなぁ。



生徒「影井君です! 影井君に頼まれました!」
聖「ふむ。聞かない名前だな」
生徒「も、もう帰っていいですよね?」



何故俺に聞く。



聖「待て。とりあえず『商品』は置いていけ」
生徒「え? でも……」
聖「真っ裸で授業を受けたいならかまわないが?」
生徒「うぅ。分かりました……」



後ろにおいてあった小袋を丸ごと差し出す生徒。



聖「他には無いな?」
生徒「は、はい」
聖「ふむ……良いだろう」
生徒「じゃ、じゃあ、失礼します……」



いやいやいや。



遊佐「ちょっと待て」
生徒「な、なんすか?」
遊佐「涙目なのはわかるが、もうちょっとだけ教えてくれ」
生徒「は、はぁ」
遊佐「その影井だけなのか? お前の後ろに居たの」
生徒「えっと、多分……」
遊佐「人数とかは分からんか?」
生徒「すみません……」



ふむ。嘘をついている様子はないな。
まあ、そんな余裕ないだろうけど。



遊佐「じゃあ、そいつはどこのどいつだ?」
生徒「1-Cです」
遊佐「ふむふむ」



1年なのか……。
ちょっと暴走しただけかな?



生徒「も、もう良いですか?」
遊佐「ああ、最後に一つ」
生徒「な、なんですか?」
遊佐「ここであったことは黙ってておいてくれ。今日だけで良い」
生徒「え? それは……無理です……」
遊佐「何でだ?」
生徒「終わったら売り上げを渡さないとなので……」



まあ、それもそうか。



遊佐「いつだ?」
生徒「えっと、もうそろそろ時間です」
遊佐「どこでだ?」
生徒「生物準備室ですけど……」
遊佐「と、いうことは、俺らが先に行ったら会えるのか?」
生徒「た、多分」
遊佐「ふむふむ。じゃあ決まりだな」
聖「…………」
遊佐「ん? どうしたひじ……」



振り向くと、聖が顔を緩めまくって写真を眺めていた。
こ、こいつは……。



遊佐「お前はアホか!」



スパーン。



聖「な、なにをする!?」
遊佐「俺が重要な話を聞きだしていたっつーのに何してんだよ!」
聖「え? あ、な、何もしてないで聞いていたに決まってるだろうが」
遊佐「嘘つけぇぇぇ! 思いっきり写真を見てただろうが!」
聖「そ、それはだな、妙な写真が無いかをだな」
遊佐「ガン見して満喫してただろうが!」
聖「ば、バカなことを言うんじゃない。私がこんな写真如きで……」



チラ見してそのまま固まる聖。



遊佐「思いっきり魅了されてんじゃねえか!」
聖「はっ」
遊佐「ふぅ……。もういいよ」
聖「何か失礼な雰囲気を感じるんだが」
遊佐「気のせいだろ。それより」
聖「何だ?」
遊佐「首謀者に会えるかもしれないぞ」
聖「何!?」



やっぱり話聞いてなかったんじゃねえか。



遊佐「というわけで行くぞ?」
聖「ああ、こんな不埒なしゃし……」
遊佐「それはもういいっつーに」



とりあえず一時的に没収しておこう。



聖「な、なにをする」



聖が見ている写真をぶんどると、ようやく我に返ったようだ。



遊佐「はいはい。終わったら返すから我慢な」
聖「まるでそれがあると私が腑抜けになるみたいではないか」
遊佐「いや、事実その通りだろうが」



自覚ないのかよ。



遊佐「というわけで、行ってくるわ。ちょっと時間潰して来てくれ」
生徒「あ、はい。分かりました」



さて、首謀者ってのはどんなやつかねぇ。
あれ? 聖が居ない。



遊佐「聖?」
聖「…………」



まだ写真持ってたのかよ……。
最終更新:2008年10月15日 10:18