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さて、格好良くキメてはみたものの、どうしたものか。
俺が言ったからって聖が動くとも思えないし?
全く、二人とも意固地だな。
って、考えてたら向こうからやってきたな。
何か爆走してるように見えるが。

遊佐「よう。どうした?」
聖「ん? はぶっ」

俺の呼びかけに気を取られた聖が、廊下の壁に激突した。

遊佐「痛そうだな」
聖「いつつ……お前が急に声をかけるからだ」
遊佐「あ、鼻血」
聖「んなっ」

慌てて鼻に手をやる聖。

遊佐「冗談だ」
聖「お前は……」
遊佐「はっはっは。怒るな怒るな」
??「追いつきましたよ! 私の女神よ!」

このみょーな言い回しは。

遊佐「あ、影井君か」
影井「おや、いつぞやの」
遊佐「相変わらずストーカー気味?」
影井「ディープラブと言って下さい」
遊佐「ものは言い様だな」
聖「くそ。遊佐のせいで追いつかれてしまった」
遊佐「まあ、たまになら相手してやれよ」
聖「教室を離れたら、毎回どこからともなく沸いて来るんだが?」
遊佐「毎回?」
影井「これで17回目の追いかけっこですね。ふふふ」

17回って……いつのまにそんなに?

遊佐「教室には来ないのか?」
影井「さすがに上級生の教室に押し入るほどの常識無しではないですよ」

いや、16回以上逃げられてるのに追いかけるのは非常識じゃ?

聖「影井! いい加減しつこいぞ貴様!」
影井「それが取り柄ですので」

威張れるこっちゃねーな。

影井「さあ! 私の胸に飛び込んでくるのです!」
聖「断る。言う事を聞かせたかったらさっきの賭けをすることだな」
影井「それこそ出来ません。何より賭けになっていない」

賭け?

遊佐「賭けって?」
影井「とてもひどい話ですよ」
聖「何がひどいものか」
遊佐「さっぱり分からんのだが」
聖「簡単な賭けだ」
遊佐「ふむ」
聖「勝負して、勝ったほうの言う事を聞く。それだけだ」
遊佐「勝負って?」
影井「簡単に言えば決闘です」
遊佐「決闘? 穏やかじゃないな」
影井「ええ、私が勝てるわけがない」
聖「ふん。なら諦めるんだな」
影井「それとこれとは別です」

ふむ。決闘か。
聖らしいといえばらしいな。
多分、諦めさせる建前なんだろうけど。
聖もバカじゃないし、もし飲まれても勝てると見越してのことだろう。

影井「大体、そんなことで決めて後悔しないのですか?」
聖「ふん。受ける度胸もない男に用はない」
影井「いやいや。これは重要なことなのですよ」
聖「そこまで出来る相手ならば、潔く要求をのむさ」
遊佐「でも、聖より強い人って3年とかにいっぱいいるよな」
聖「そんな相手から申し込まれても私は受けんがな」

だろうな。

遊佐「じゃあ、俺が申し込んだらどうするよ?」
聖「は?」

何か口からこぼれ出ちゃった気がする。

聖「まあ、受けてもいいが」
遊佐「あ! 今俺の事を楽な相手くらいに思っただろう!」
聖「ふん。むしろ練習相手にもならないと思ったさ」
遊佐「言ったな!? 後悔させてやんよ!?」
聖「お前にそんな力があるとは思えないがな」
遊佐「ほえ面かくなよ! 絶対倒してやるからな!」
聖「いいだろう。対戦の日時は明後日だ」
遊佐「執行猶予のつもりか? 舐められたもんだ」
聖「いや、体育祭があるから、そのときだ」
遊佐「片手間にやろうって言うのか?」
聖「バリスタがあるから道具を借りやすいだけだ」
遊佐「バリスタ?」

きょとんとする俺に、聖はわざとらしいまでにため息を吐いてみせる。

聖「体育祭のメインイベントだ。まあ、後は自分で調べろ」
遊佐「ちっ。分かったよ」
聖「私は失礼するぞ」
影井「ちょ、ちょっと待って下さい」
遊佐「ん? どうした影井」
聖「ちっ」

聖。ひょっとして……、
どさくさにまぎれて逃げるつもりだったのか?

影井「まさか、先輩が勝ったらマイエンジェルは先輩の物に?」
遊佐&聖「ぶっ!?」

そ、そういえば、元ってそういうものだっけ?
いやいやいや。
俺は単に――。

聖「ま、まあ、どうせ負けることはない。ではな!」
遊佐「あ、おい!」

一目散に走り去っていく聖。
影井から逃げることには成功したようだ。

影井「ん? 違うのですか?」
遊佐「いや……あー。そう言う事でいいや」
影井「え? ちょ!」

後ろで叫んでる影井を置いて、俺もダッシュで逃げ出した。

…………。
……。

遊佐「さて、と」

廊下をアテもなくさまよいながら、状況の整理を試みる。

遊佐「何か決闘することになっちまったな」

売り言葉に買い言葉というやつだ。
まあ、勝てばいいよな。うん。
正直勝てる気はせんが、それはおいておこう。
負けたほうが言う事を聞くってルールだったな。
ん? これはチャンスか?
聖に杏と仲良くしろって堂々と強制できるわけだし。
……んむ。いいチャンスかもしれん。
勝てるかどうかだが、負けたときのことは考えないでおこう。
勝たないとならない。
そのくらい自分を追い詰めないと勝てなさそうだし。
さて、後は勝負の内容だな。
バリスタがあるから楽って言ってたけど、何のことだろう?
バリスタが分からん。
誰か説明してくれる奴はいないだろうか?

中島「お? こんなところで何してんだ?」
遊佐「何このゆとり設計」
中島「は?」
遊佐「いや、中島に会えたことに感激をしただけだ」
中島「キモイ、主に全てがキモイ」
遊佐「それは既に『主に』じゃないだろ」
中島「後、俺はノンケだからな?」
遊佐「安心しろ。俺もだ」

っと、バカな掛け合いしてる場合じゃないな。

遊佐「なあ、中島。ちょっと聞きたいんだが」
中島「何だ? 性的な事だけは断るぞ?」
遊佐「ねーよ」

全く、相変わらずのバカっぷりだな。

遊佐「バリスタって何だ?」
中島「は?」

顔面全体に『何言ってんのコイツ?』って書いてるけど、ここは我慢だ。

遊佐「体育祭の競技っぽいんっだが、良く分からないんだ」
中島「お前、この学校の名物的なものだぞ?」
遊佐「知らないんだからしょうがないだろうが」
中島「んー。簡単に言えば」
遊佐「ふむふむ」
中島「戦争だ」
遊佐「戦争? 陣取りゲームみたいなもんか?」
中島「いや、どっちかというと首取りゲーム」
遊佐「首って……お前物騒だな」
中島「まあ、首っつーのは例えだが、毎年多数のけが人が出る人気競技だ」
遊佐「ふむふむ」
中島「ちょっと具体的に言うと、各々が得意な得物を持って、敵対勢力を皆殺しにするゲームだ」
遊佐「なあ、それも例えだよな?」
中島「いや?」

まじかよ。

中島「細かいルールは毎回変わる、それも大体当日まで分からん」
遊佐「ふむ」
中島「毎回壮絶な戦いが起こるのは確かだが」
遊佐「何で続いてるんだ? そんな危険な行事」
中島「知らん。参加生徒はやる気にみなぎって、放課後特訓とかしている」
遊佐「そうなのか?」
中島「多分今日もやってるぞ」
遊佐「今日も? バリスタっていつだ?」
中島「お前……明後日体育祭だろうが」
遊佐「ああ、そういえば」

そんな話がホームルームでやってたな。
半分以上寝てたけど。

中島「俺も参加したかったなぁ」
遊佐「何で?」
中島「なみいる敵をバッタバッタと斬り捨てる。浪漫溢れるじゃないか」

……俺のイメージでは、中島は斬り捨てられる役割にしか映らんが。

中島「そんなところだな、ああ、参加したいなぁ」
遊佐「過ぎたことをしつこいな」
中島「まあな」
遊佐「ともかく助かった、ありがとよ」
中島「おう、知らないままだと我が校の生徒として赤っ恥だったな」
遊佐「うっさい」

ともかく『実戦』なわけだな。
ほんとに決闘じゃねーか。
まあ、得物まで本物って事はないだろうが。
これは真面目にどうするか考えないとまずいな。
まず必要なのは、情報だ。
対策を練るにもそれが第一だろう。

中島「遊佐。考え事してるときに悪いが、予鈴鳴ったぞ」
遊佐「そうか」

まず、聖の得意武器を調べないとな。
後、戦闘スタイルだな。

中島「俺は先に行くぞ? お前も遅れるなよ」
遊佐「そうか」

聖のイメージは猪突猛進だが、侮るわけにはいかない。
ついでに弱点とか分かればなおよし。

遊佐「なあ、中島。聖についてなんだが」

……?

遊佐「中島?」

……誰も居ない。
中島だけじゃなく、他の生徒の姿もない。

遊佐「よし、落ち着いて考えてみるぞ俺」

校内がこれだけ静かなのは、限られたケースだ。
一番可能性が高そうなのはずばり。

遊佐「授業始まってる!?」

思考が結論にたどり着いた瞬間走り出したが、当然の如く遅刻だ。
中島覚えてろよ!
多分逆恨みだけどな。
最終更新:2008年10月18日 15:33