ベットの上で封筒をくるくる回すと蛍光灯に照らされて中身が薄く見えそうになる。
遊佐「困るんだよなぁ」
とりあえず、これを渡すべきかどうか考えよう。
封筒に書かれた文字が目に入る。
―マグリフォン茜さんへ
遊佐「……」
そもそも、中身がわからないままでは考えようがないではないか。
しかし言われたことを破るのは人としてよくないのではないか。
遊佐「うーん」
変な事になったな……。
マーちゃん……。
マーちゃんは俺が好き? なら俺はマーちゃんが好きか?
もちろん好きだけど、恋の方なのか? LOVEではなくLIKEだ。
遊佐「こんな事考えるの恥ずかしいな……」
でも、いやじゃない。
遊佐「恋か……」
じゃあ、俺は誰に恋してる? もしくは誰にも恋してないのかもしれない。
遊佐「……ごめん先輩。中身覗くよ」
そうでもしないと何となく落ち着かなくて、気持ちが収まらない。
そっと、綺麗に開ける。

―マグリフォン茜さんへ
まずは、あなたに謝らないといけないことがあります。
わたしは遊佐君へあなたがキスをしたところを見てしまいました。
それを謝罪させてください。ごめんなさい。
あなたはきっと遊佐君の事を好き

がさっ!

……ダメだ、やっぱりこれ以上は見ちゃダメなんだ。
ごめん、先輩。約束ちょっと破っちまったよ。



中島「おーい遊佐!」
遊佐「おっす、中島。今日も元気だな」
中島「俺から元気を取ったら」
遊佐「エロが残るだけだな……」
中島「まーな!」
なんだろう。今日はいつもよりずっとすがすがしい気がする。
中島「いいよな! エロはよ!」
遊佐「いいかどうかは知らんが……、あ」
マーちゃんだ……。渡すべきだろうか。昨日の手紙。
そっとノリつけなおしてカバンにいれておいたけど。必要だろうか。
中島「どうした? あー、マグリフォンさんか……。なんかこうトゲトゲしい雰囲気があるけどいいよな」
遊佐「すまん、ちょっと用事があるんだ」
中島「あ、おい?」
俺は気づけばマーちゃんの方へ走っていった。
遊佐「マーあーグリフォンさん?」
俺は何を言ってるんだろうか……。
茜「どうしたの?」
遊佐「これ、あのほら。生徒会長の……知ってるかな。その人が渡してくれって」
俺、焦ってる焦ってる。
茜「わかった。見ておくわ」
遊佐「あ、うん。渡したからこれで!」
俺は恥ずかしくなって走って中島の所へ戻っていった。
中島「何だ今の、なぁなぁ!」
遊佐「うっせ!」
きっと今の俺の顔真っ赤だ。恥ずかしい。渡すんじゃなかった。
背中に視線を感じたが、後ろを振り向くことはできなかった。
中島「遊佐ぁ!」
遊佐「やかましい!」


もう、授業どころじゃなかった。ずっとマーちゃんの事が頭から離れない。
遊佐「くそぅ……」
苦悩していた。いや、ちょっと楽しんでたかも……。
先輩のせいだ……。絶対そうだ。
中島「なぁ遊佐……そんなに返事を待つので疲れたら持たないぞ」
遊佐「は? 返事?」
中島「だから、ラブレターだろ?」
遊佐「ば、違うって! 違う違う! 忍先輩に頼まれたんだって!」
中島「まー、嘘つきたい気持ちもわかるけどよー」
遊佐「あほ! まじなんだよ!」
先輩怨みますよ!!!
気づくとマーちゃんがこっち見てるのと目が合った。
やばい、やばいよ。何だろうコレ。
遊佐「あー、もうなんか飲み物買いに行くぞ!」
中島「はいはい、話を聞きましょう」

遊佐「はぁー」
もう、疲れた。一日中色んな事考えて頭が糖分を欲している。気がする。
遊佐「文句いいにいってやる」
もちろん忍先輩のところへ。
……。
遊佐「忍先輩ぃぃい!」
俺は叫びながら生徒会室の部屋を開けて、その中の光景を見て光速で扉を閉めた。
な、なんでマーちゃんも中に居るんだよぉおお!?
俺は扉の前で固まった。動作停止。エンジンストップ。
遊佐「はぁ……はぁ……落ち着け俺。きっと焦って開けたから違う次元に繋がってしまったんだ……若しくは幻影をだな……」
忍「なんで入らないの?」
遊佐「そりゃもう……幻影かもしくは次元のねじれ的なドアがですね……って、ぎゃー!」
忍「ドラぴー?」
遊佐「ははは……もうそれでいいですよ」
もはや何が何だかわからなかった。
茜「失礼しました。それと、遊佐君。また会いましょう」
遊佐「お、おう……また明日な」
最終更新:2008年10月28日 01:36