家についてからも、頭の中はパンクしたままだった。
寝床の上でごろごろしつつ、いろいろとぐるぐるぐるぐるぐるぐる……。

遊佐「落ち着け俺!」

こういう時は紙に書くといいらしいぞ!
適当にメモ帳を引っ張り出し、今の混乱の原因を書き出してみた。

『杏にもう関わるなと言われた』
『聖にキスされた』

…………。
やっぱりわけわかんねぇよ!
いやいやまてまて。
もっと細かく書いてみようじゃないか? 同志俺。
まず、杏にいわれた事って何だっけか。
うーん。

『何のために?』

後は……。

『善意の押し売りは嫌い』

それが嘘だともっと嫌い。か
そりゃまあ、誰だって押し付けられたら嫌だろうけど……。
でも、二人のことを思って……。
確かに押し売りかなぁ。
でも、昨日も一昨日も何も言わなかったよな。
何でだろう?
って、考えても杏の考えは読めそうにないな。
じゃあ、その前の言葉について考えてみよう。
『何のために?』
二人のため……本当にそうなのか?
そうだと……思う。
けど、それじゃダメなんだ。
俺がそうしたいと思ったきっかけは何だった?
目を閉じて考えてみる。
ふと浮かんだのは唇の感触。
柔らかくて何かいいにおいが……。

遊佐「って、ちっがーう!」

全く、ポーカーフェイス遊佐の名が泣くぜ。
そんな二つ名ないけど。

遊佐「もう一回な。もう一回」

誰かに言い訳をしながら、再び目を閉じる。
何のために?
……誰のために?
杏は迷惑がっている。
じゃあ、杏のためではない?
杏のためを想うなら、杏が自分から歩み寄れるようになるのを待つべきだろう。
それの助けになるようにするべきなんだろう。
じゃあ……。

遊佐「聖……なのか?」

聖のためなのだろうか?
確かに、聖は杏を気にかけている。
けど、拒絶を恐れ、自分から歩み寄れないでいる。
でも、俺が聖のために?
確かに、聖は良い奴だろう。
すぐ手を上げる点を除けば、だが。
でも……。

杏『何で聖のために?』

イメージの杏が俺に尋ねた。
……多分、聞かれるだろう。
何で……か……。
分からない。
ただ、放っておけなかった。
でも、それだと杏は……。

遊佐「あああぁぁぁもう! わけわからん!」
遊佐「聖も聖だ! あんな突然キ……」

ぴたっと停止する俺。

遊佐「もうだめだ! 俺死ぬ! 死んじゃうよ!?」

床でゴロゴロと17回転ほどして、ようやく落ち着く。

遊佐「にしても聖の奴」

なに考えてるんだ?
俺が好きとか言うのか?
……いやいやいや。
確かに美人だし料理は上手いが、まさかそんなことはあるまい。
今までの付き合いから考えて、そう思われるような事も起きなかったと思うし。
基本的にいつもふざけてただけだしなぁ。
確かにあいつとバカな話してるのは楽しいけど。
ん? そっか。
だからかな?
あいつが何か悩んでるのは見たくない。
あいつとはバカ話をしていたい。
その為なんだ。
……じゃあ、杏には悪いことをしたなぁ。
俺の身勝手で、杏に仲直りを押し付けてるんだから。

遊佐「明日会ったら……謝らないと……な……」

安心したら、急に眠くなってきた。
おやすみ……り……。
最終更新:2008年10月30日 02:08