バリスタ開始

●校庭・2年生席

1年生との戦いに圧勝した俺達は、作戦会議後の混乱から立ち直り、
各々士気を高めて次の戦いに向けての心の準備をしていた。
「俺達は!」「つよーい!!」などとお互いに声をかけ、
円陣を組んでいる者達もいた。

ましろ閣下と聖は、陣地の選択のために体育際実行委員本部にてくじ引きをしに行っていた。


【俺】「意外と順調だな」
俺は率直な感想を中島に言った。

【中島】「作戦会議でグダグダになってたが、茜さんが良い動きしてたからな。
     作戦参謀としてやっぱり優秀だな」
中島は茜さんの方をチラリと見た。
茜さんは多くの者に囲まれ、賞賛の声を浴びせられていた。
当の本人は心なしか、うざったそうにしているように見えた。

【俺】「あれだけ上手くやれるなら、俺達が茜さんに進言しなくても良いんじゃないか?」
中島は小さく頭を振った。
【中島】「いや、茜さんは基本的に戦場に出ない。
     作戦を考え、聖かましろちゃんに進言するだけだからな。
     その状況を教えるのが、俺達戦闘部隊の役目だ。
     このリンクパールを介して、いろんな情報流れてるだろう?
     それを拾って作戦を立てているんだから、
     どんな些細なお前の情報でも必要な事もあるだろう」
【俺】「なるほど」

中島は俺の反応を見て「それに……」と言葉を付け足した。
【中島】「何より、甲賀先輩はお前を気にしながら動くかもしれない。
     だから次の3年生戦は非常に重要な役回りなんだよ」

【俺】「む……」
重要な役回りと聞いて、少しばかりプレッシャーが掛かった。
上手く情報を掴めると良いんだが……。

【中島】「まあ、気楽に行こうぜ!
     お前に出来る事なんて些細な事なんだ。
     あまり悩みすぎると禿げちまうしな!HAHAHA!」

俺に出来るのは些細な事。これは確かにそうだろうな。
なら、出来る事だけすれば良いさ。うん。

【俺】「わかった、出来る事を考えてみるよ」
【中島】「出来る事じゃなく、お前がやりたいようにすれば良いさ」


やりたい事か……。
やっぱり、宣言通り武僧先輩を倒す事だが。

【俺】「やりたいこと……。俺は、武僧先輩を倒さなきゃいけない。
    けど、そのためのリスクが大きすぎる気がするんだ」
【茜】「それが貴方の望みなら、そうするといいわ。
    どちらにせよ、武僧先輩を倒さなければ私達に勝ちはないから」
ようやく解放された茜さんは、少し疲労した顔で俺に言った。

【茜】「結果的に勝てれば、柊さんも怒らないでしょうし」
【中島】「そういうこと。問題は方法だな」
【茜】「ええ」

茜さんが俺を見つめて言った。
【茜】「貴方に指令を与えます。
    戦場を駆け回り情報を集めてください。
    敵は武僧先輩だけじゃないわ。
    あの人を倒すには周りから崩さなければ、
    まともに対峙することすら難しいと思うの」

茜さんは一拍何かを考えるかのように俯き、
そしてすぐに顔を戻し、続けて俺に指令を与えた。

【茜】「村崎先輩と武僧先輩の連携を潰すのが、最終的な目標よ。
    仕掛けるタイミングは任せます。
    他の五蛇将をどうするかは、貴方次第。
    勿論、倒せるならそれに越した事はないのだけど、
    情報だけでもいいから、拾ってくれると助かるわ」
【俺】「俺に出来るかな」
【中島】「竜さん、武僧先輩、甲賀先輩はお前の事意識してるみてぇだし、
     注意はそらすことは出来そうだな」

茜さんは一度軽く頷き「最悪、貴方は武僧先輩の事だけを考えていれば良い」と付け足した。


正直自信は無い。逃げ回るだけで良いと言われても、それすら難しいかもしれない。
けれど、俺はやり遂げなければいけなかった。
あの輪に加わるために。



バリスタ決勝戦が開始された。
最終更新:2009年01月12日 18:44