●バリスタ負けED
……気を失っていたらしい。
俺は保健室のベッドで寝ていた。
傍らに目をやるが誰もいない。
これで3度目か……、でも先輩がいないな。
ごそごそと音を立てならが起き上がると、閉まっていたカーテンが開き、
保健室の先生(三十路越え独身・略称保先)が姿を現した。
【保先】「二度あることは三度ある。まさにその通りね」
【俺】「第一声がそれですか。
……ああ、そうだ試合は」
【保先】「貴方達の負けよ。都ちゃんにも負けたわ」
【俺】「そうですか……。やっぱりだめだったか。あーあ……」
【保先】「あーあ。
都ちゃん、泣いてたわよ。
またやってしもた!って」
俺は黙り込んでしまった。
勢いで威勢を張ってみたものの、結局彼女を泣かせてしまう結果を残しただけか。
【俺】「……あの、武僧先輩は?」
【保先】「帰らせた。保健室には、あたしと貴方の二人きりよ。
んで、体育祭も終わって生徒も殆ど帰ったわ」
【俺】「…………なんですか、その妙な言い方」
【保先】「妙な事なんてないわよ。
あたしは貴方に興味があるの。
……いけない?」
保険の先生は、なまめかしく耳元で囁くと濃艶に笑いかけた。
香水と先生の匂いが、鼻をくすぐる。
とてつもない緊張感が俺を包むが、ナニかに期待して興奮しかけている俺がいた。
ドキドキと鼓動が大きくなっていく。
【しのぶ】「はーい、校内でエッチな事は禁止ねー」
【俺】「うわああああああ!」
【保先】「……チッ」
空気を読まない甲賀先輩が突然入って来て、辺りを包んでいた妖しいムードは消え去った。
甲賀先輩はやれやれと手を振り厭きれながら、ため息をついた。
【しのぶ】「あんたも色々問題になって面倒だから、もうやめてって言ったじゃない。
学校外なら遊佐をどうするも知ったことじゃないけど」
【保先】「学校だから楽しいのに……」
もうやめてって事は、前にもあったっつー事ですかね?
そして問題になって面倒と……。
それが指し示す答えは。
……遊ばれた\(^-^)/
【しのぶ】「あんたもそんな顔しない。学校外なら好きにすれば良いよ。
それと、あんたは暫く保健室禁止ね?」
【俺】「学校外なら……。あ、いや、保健室禁止ってどういう……?」
【しのぶ】「このエロ馬鹿に校内で会わせない為。
もう一つ付け加えるなら、都をもう泣かせないため。
どういうことかわかるよね?」
……ぐうの音も出ない。
彼女と一緒にいるには、俺では力不足だった。
そういう事だ。
俺の心はもう決まっていた。
【俺】「……はい、わかりました」
そう答えると、甲賀先輩は軽く息をついた。
【しのぶ】「良い返事だよ。今のあんたじゃ都を傷つけるだけ。
体の丈夫さは評価してもいいけど、運が無かったね。
けど、これはあんたのためでもあるよ」
【俺】「俺のため?」
【しのぶ】「あの子に関わると、あんたも傷つく。
舞もリューコも、そしてあたしも」
それを聞いた保健の先生は、何か事情を知っているのか悲しい気な表情になった。
理由は……、聞かない方が良いのだろう。
というより、聞くなと言っているようなものに感じた。
甲賀先輩はそれを言うと部屋を出て行き、先生と二人きりになった。
先生は俺に何もせず「とりあえず今日は帰りなさい」と言った。
そして帰りの支度をして、保健室を出ようとすると「続きは学校の外でね」と付け足した。
あれから数ヶ月。
結局、俺は武僧先輩とまったく関わらなかった。
時々一人で部活をしている先輩を見かけたりもしたが、
なるべく意識しないようにしていた。
ちなみに、俺のあだ名はスケベ大魔神になっている。
まあ、そういうことだ。
~~~~~~終わり~~~~~~~
最終更新:2009年02月15日 11:29