第427話:疑惑交差
フリオニールは
マッシュと
スコールが村の入り口に向かってきているのに気付いた。
二人ともかなりの実力者だと一目で見抜いたが、マシンガンもラグナロクがあるため、さほど恐れてはいない。
だが、まったく別の方向より、さらに数人やってきたのを見て、再考。
どちらかの組でも、ゲームに乗っていれば彼には好都合だが、さすがに自分に有利な前提条件で考えるわけにもいかないのだ。
子供の存在や人数から考えても、絶対ではないが向こうの三人組がゲームに乗っている可能性は低い。
さらに、大男は雲に乗っていて機動力は高そうだし、子供の方は銃をくるくると回している。
目の前の二人組を相手にすれば、上空から近づかれたり、撃たれたりする可能性がある。
三人組を相手にするのはダメだ。さっきは不意打ち(といっても断末魔をあげられてしまったが)だったのにもかかわらず、
マシンガンでは一人も殺せなかった(といっても一人は回復したわけだが)。
三人を一瞬で仕留め切れなければ、近くの二人組と接近戦を行わなければならなくなる。
さらに、マシンガンを脇に置いたまま数人相手に戦うのはどう考えても無謀だ。
戦っている隙にマシンガンを取られかねない。
ここは、全員が合流するのを待つべきだ。
まとまって緊張が解けたところに不意打ちをかけ、全員蜂の巣にしてやればよい。弾数の節約にもなる。
全員仕留めきれなくとも、二方向を同時に相手にすることはなくなる。
こう考え、フリオニールは他に気付かれぬよう、茂みで待機することにした。
一方、マッシュ達も
ハッサン達に気付く。
「……」
「……」
ハッサンとマッシュ、
サックスとスコール、お互いに相手を見極めるかの如く、武器を構え、無言で相手の目を見る。
といっても、ハッサンの構えているのはラケット、サックスの構えているのは盾、銃を構えているのがルカ。
しかもハッサンが止まれない。風に煽られ、雲が少しずつ流されていく。
端から見ればなんとも奇妙な光景だ。フリオニールは失笑を抑えきれなかった。
「なぁ、ルカ。これ、どうやれば消せるんだ?」
マッシュの方を見ながら、真顔でこう尋ねた。
「俺たちも君たちと一緒、ゲームには乗っていないからね。しっかり目を見ればすぐに分かることだから」
すぐにこう言って、銃の構えを解き、魔法を唱え、すでに場から離脱しかけていたハッサンを雲から下ろした。
「あんたたちがフリオニール、…というわけでは無さそうだな」
カインから聞いた特徴と一致しない。
さらに、この名前が出たことで、フリオニール自身も攻撃を思いとどまった。
「俺はマッシュで、こっちは」
「スコールだ」
スコールは自分で答えた。
「俺はハッサンで、こっちがサックス、こいつがルカだ。フリオニールってやつを見てないか?」
「一通り調べてみたが、この村には何もないし、誰もいないぞ。死体がいくつかあるだけだ。
建物も…ほら、この通りだ。建物の中には人はいないはずだ」
スコールが近くにあった壁らしきものを軽く叩く。
それだけで壁は粉々に砕け、崩れ落ちた。
原型をとどめた建物はあるが、それに入ろうものなら、それだけで生き埋めになってしまいかねない。
「ということは、まだ来てないみたいですね」
「そうだね」
「俺たちはもう行く。ここにいても無駄だからな」
スコールが村を出ようとするのを、マッシュが制す。
「まあ待てよ。せっかくだし、情報交換くらいはしておこうじゃないか。探している仲間の手がかりもつかめるかもしれないぜ」
「それもそうか。どうやら、他にも誰かと待ち合わせているようだしな。」
「あれ、どうして分かったんですか?」
疑問に思うサックスに、ルカが答える。
「ハッさんがフリオニールさんとスコールさんたちを間違えたから、だよね。
俺たちはカインさんに話を聞いたんだよ。待ち合わせているのは、そのカインさんと
ケフカさんって人だよ」
「ケフカだって!?」
マッシュが素っ頓狂な声をあげ、話を続けようとしているのを遮る。
「あんたら、本当にケフカと待ち合わせてるのか!?」
「そんなに驚いて、どうかしたの?」
マッシュの様子の変化に四人ともとまどいを隠しきれない。
「そいつは俺と同じ世界から来たヤツでな。一度は世界を滅しかけたやつだ。
性格は残酷非道で、抜け目がない。
俺がアルティミシアを信用するような人間だとしても、ケフカだけは信用しないだろうな。とにかくそんなヤツだ」
ハッサンら3人には話が理解できない。
彼らのケフカ像は、ちょっとふざけすぎている面もあるが、戯けていて、気のいい道化師、というものなのだ。
何より、ハッサンは怪我を治してもらっており、彼は恩人である。世界を滅ぼしかけた人間などと考えられるはずもない。
「人違いじゃないの? ケフカさんは大怪我していたハッさんを助けてくれたし、
ゲームに乗っているような様子も全然ないよ。
それに、確かにすごい魔法を使うけど、世界を滅ぼせるような強さはないと思う」
人違いのはずがないのだ。ケフカという名の人物は一人しか参加しておらず、名簿にあの顔が載っているのだから。
だが、マッシュには、ルカとハッサンが嘘を付いているようにはどうしても思えなかった。
「いいケフカ、なんて想像もできないな」
「改心したんじゃないのか?」
「あいつが改心するとは思えないんだけどな」
ここで、マッシュはふと思い出した。
ケフカは魔法を使えるようになるために手術を行った際、心が壊れたと聞いたことがあったのだ。
大体ケフカは一度倒したはずだし、死んだはずのレオ将軍も参加していた。
つまり、過去の人物も参加しているということだ。
過去、ケフカは幼い
セリスが実験段階の改造計画に参加するのを不憫に思って、彼女の参加を取り下げてもらったらしい。
もちろん、ケフカにも参加命令は下っていたらしいし、後の実験にはセリスが加わったのは確かだが、
そのころのケフカに情というものがあったというのは推測するに難くない
「…スコール、悪いがもう少しここにいさせてくれないか?
ケフカのやつを見極めようと思う。
あいつが何か悪事を企んでいるのなら、すぐに潰さないといけないし、
もし今のあいつが悪人でないのなら、兄貴や仲間にも伝えておく必要があるからな」
「ああ、そうだな…」
スコールは賛同した、が、少し考えた後、別の問いを返す。
「あんたたち、
リノアに会ってはいないか?
黒髪の、青いワンピースを着た女なんだが…」
「俺は会ってないな。お前らはどうだった?」
サックスもルカも、首を横に振る。
あの時確かに聞こえたリノアに似た声。同じころにマッシュが見たという光。そしてこの町の惨状。
リノアの声が聞こえてきたときから嫌な予感はしていたのだ。
本当は今すぐにでもここを離れてリノアを探しに行きたいのだ。
リノアに会い、自分の心配はただの考えすぎだということを証明したいのだ。
だが、全く手がかりなしに彼女を捜しても、徒労に終わる可能性が高いのだというのも理解している。
ここは演劇や物語の世界ではないのだから。
「そうか、悪かったな。あんた達、まだ話の途中だったよな」
「え、ああ、そうそう。それで、カインさんがフリオニール、
スミスって人と待ち合わせをしているとも言っていたんだ」
「俺のことだな。俺がフリオニールだ」
ここで狙ったように現れたフリオニール。タイミングを狙っていたから当然ではあるのだが。
彼らが警戒したり流されたりで近づかず、もどかしく感じているところで、
三人組がカインと待ち合わせをしていると聞いて、再考。
彼らがゲームに乗っているようには見えないので、
カインかスミスに何か策があるのではないかと判断。
たてつづけの戦闘で疲労しているし、ならば今ここで敢えて交戦する必要もないと考えたのだ。
「ところで、カインとスミスはどうしたんだ?」
「カインさんには、少し用事を頼まれてもらったんだ。
本当は俺たちがやらないといけないことだけど、ハッさんが動けなくて…。
今頃はケフカさんと一緒にこっちに来ていると思う。スミスさんは分からないや」
そして、
ユフィ。彼女はちょうど今たどり着き、近くに潜伏して様子を伺っていた。
マシンガンは危険だし、フリオニールのまわりに数人いることもあって、
カインと出会うまで接触するのは避けようと考えたのだ。
だが、フリオニール達の交わしている会話を聞いて、彼女は混乱していた。
(ちょっと、どういうことよ? どうしてあいつがカインのこと知ってるのよ。しかも、カインを仲間みたいに言っちゃってるし)
エッジが信用していたし、会ったときも紳士的にふるまっていたこともあり
ユフィはカインがゲームに乗っているとは微塵も考えていなかった。現在もそうである。
フリオニールがゲームに乗っているのは明白。
そして、フリオニールはカインが仲間であるかのような言動を取っている。
そこから導き出される結論。
(カインは騙されてる?)
「カインさんはここから西の方にいますけれど、探しに行きますか?」
「いや、いい。あいつならそう簡単にくたばることもないだろう。少し休みたい。
それから、片腕のない小娘、カイン以外の金髪の騎士、燃えるような赤い髪の男のどいつかを見かけたら教えてくれ。
そいつらは敵だ。俺を狙っているかもしれない」
(気をつけろって…。 ちょっと、先に仕掛けてきたのはどこのどいつよ!)
確かにユフィはフリオニールにとっては敵である。
が、これではまるでユフィがゲームに乗っているような言い草だ。
さらに、スコールが反応する。
「そういえば、キンパツニキヲツケロとかいう紙を拾ったな。そいつのことか」
ユフィも全く同じ内容の紙を拾っていた。
(あの金髪がゲームに乗ってたの? というか、なんでそいつと一緒にあたしを出すかなぁ…。誤解されちゃうじゃん)
さらにサックスが追い打ちをかける。
「もしかして、その赤い髪の男、
サラマンダーって名乗っていませんでしたか?」
「さあ、名前までは聞いていないが。どんなやつだ?」
「ゲームに乗っていて、好戦的な男です。何度も襲われました。僕の仲間も殺されてしまって…」
サックスの表情が暗くなる。サックスは
ロランがサラマンダーに殺されたと思っているのだ。
ハッサンやルカに、それなら余計に生きないといけないと励まされ、一応気持ちは落ち着いたものの、
やはり悲しみや恨みといった感情を簡単に捨て去ることはできないのだ。
その表情を見て、マッシュが答える。
「とにかく、余計に警戒した方がいいみたいだな」
一方ユフィ。
(どっちもゲームに乗ってたのかよ! っていうツッコミもしたいけど、
そんなことよりも、なんかあたしもついでに殺人者認定されちゃってない…?)
挙げられた三人のうち、二人がゲームに乗っている。
ということは、そのままもう一人もゲームに乗っていると思われても変ではない。ましてこの状況だ。
(最悪じゃん。カインはここにはいないし…。
カインは西の方にいるんだっけ、何とかフリオニールのやつの正体を教えて、誤解を解いてもらわないと)
話の感じから、フリオニール以外はゲームに乗っていないように思えた。
カインになんとか説得してもらって、彼らを味方に引き込めば、フリオニールも倒せるだろう。
ユフィは気付かれないように場を脱出すると、西の方へ向かって走り出した。
【ユフィ(疲労/右腕喪失)
所持品:風魔手裏剣(19) プリンセスリング フォースアーマー
ドリル 波動の杖 フランベルジェ】
【第一行動方針:フリオニールの正体をカインに教え、協力して倒す
第二行動方針:アポカリプスを持っている人物(
リュカ)と会う
第三行動方針:マリアの仇を討つ 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズスの村→カズス西の砂漠へ】
【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、
ティナの魔石、神羅甲型防具改、
バーバラの首輪、
レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
吹雪の剣、ビームライフル、エアナイフ、ガイアの剣、
アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:情報交換を済ませ、ケフカを見極める
第二行動方針:
アーヴァイン、リノアか
エドガーを探す
第三行動方針:ゲームを止める】
【フリオニール(HP1/3程度 MP1/2)
所持品:ラグナロク ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) 三脚付大型マシンガン(残弾9/10)
第一行動方針:カインと合流する
最終行動方針:ゲームに勝ち、仲間を取り戻す】
【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【ルカ(浮) 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 、風のローブ、シルバートレイ
行動方針:
ギードたちと合流する】
【ハッサン(HP 1/5程度)
所持品:E爆発の指輪(呪) 、ねこの手ラケット、チョコボの怒り、拡声器
行動方針:オリジナル
アリーナと自分やルカの仲間を探す、特にシャナクの巻物で呪いを解きたい
最終行動方針:仲間を募り、脱出 】
【共通第一行動方針:休んで、カインと待ち合わせ】
【現在地:カズスの村入り口】
最終更新:2008年01月26日 18:51