303話

第303話:ベアトリクス強襲


―?…ああ、なんじゃ。人の声か…。
「さっきの爆発音といい一体何があったんだい?酷い有様だねぇ?」
「爆発音の割りに燃えたという感じがしないあたり、おそらくフレアだな」
わずかに意識をつないでいたフライヤの耳に誰かの声が聞こえる。
「こっちのモンスターは既に事切れている」
「この男はまだ息があるね。よーし、ちょっと待っとき。今回復してやるからね。
 ザンデ、辺りの警戒を頼むよ!」
体はもうほとんど動かない。視界も霞の中。
人とものの判別もつかないが、誰かがやってきたようだ。
―伝えなければ。危険な連中、カインやスミスのことを―

「ウネ、あそこにも誰かいるようだ。わしが見てこよう」
仲間に声を掛けて、背の高い影が動き近づいてくるのがわかる。
フライヤは最後の力を使って顔を上げ、
「む?こっちもまだ息があるのか」
目の前の影に向けて喉の奥から声を絞り出した。
「竜騎士カイン…飛竜…スミス……剣士……フリオニール…」
「無理はやめろ。すぐにウネが回復してくれる」
「わしらを……裏切って。………気をつけ……じゃ」
伝えるべきことは伝えた。限界に達し、フライヤの意識はそこで途切れた。


「向こうにも生きている奴がいる。これはどうやら仲間に裏切られたらしい。
 裏切り者の名はカイン、スミス、フリオニール。
 …無理をしてでもどうしても伝えたかったようだ」
「あいよ、裏切りとはえぐい話さね。しかしこっちも結構なダメージだよ。
 杖が持つといいけどねぇ」
ライアンを回復しながら、ウネは不安げに手にしている杖を見る。
少しヒビの入った癒しの杖は頼りなさ気に光を放っていた。

側に立って青い光を湛える旅の扉を眺めていたザンデは、
森の一角に何か妙な気配が現れたのを見逃さなかった。

―禍々しい、血の気配。…こちらへ来るか。
「ウネ、気をつけろ!敵が来る!!」
警告の叫び。気配は木々の間を一直線に素早く向かって来る。
ザンデが現れた女の姿を確認し身構えたその時、同時に強力な衝撃波がザンデを襲う。
ベアトリクス必殺の『ショック』。
「何だって、敵かい?まったく――」
振り向いたウネの傍らをザンデへ向けられたショックの余波が通り過ぎていった。

―ぬう…重い!
ザンデの心に己への過信が無かったとは言えないが、この場合はショックの力を褒めるべきであろう。
放たれた一撃の予想外の威力に押され、ザンデは後ろにあった旅の扉に飲み込まれる。
衝撃波の余韻が消えゆく中、現れたベアトリクスは消えた獲物を探している。
今のその隻眼には何の感情も感じられない。
「ザンデ?ちいっ、転送かい?嫌なとこを襲われたもんだよ。
 それにしてもあの女、イカれちまってんのかねぇ、っとぉ!」
ザンデの代わりにこちらを認識し、疾風の如く斬りかかってきたベアトリクス。
とっさに手にしている癒しの杖で受ける。何とか受け止めることはできた、
が。本来戦闘用でない癒しの杖はアルテマソードとの衝突に耐え切れず、
嫌な音を立てて限界を知らせていた。

「こいつ…エアロ!」
このままでは押し切られる、というところでウネは
杖から片手を離し鍔迫り合いの至近距離からエアロを炸裂させた。
あまりの近さにまともに受けたベアトリクスだけでなく使い手のウネも後方へ吹っ飛び、
騎士と魔導士は一旦間合いをあけて対峙する。

「怪我人がいるってのに厄介なもんだ。やるしかないのかねぇ。やれやれ…
 仕方ない…いくよ!『夢見る魔導士』ウネが相手さね!」

【ウネ 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:ベアトリクスを何とかして、ライアンを守る 
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する】 】

【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走) 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:目の前の相手を殺す 基本行動方針:参加者を見つけたら殺す】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶) 所持品:アイスソード(破損)】
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
【行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する
【現在位置:新フィールドへ】

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最終更新:2008年02月15日 01:36
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