第119話:決断を
空に浮かんでいた魔女の姿が消えた。再び、夜空が戻ってくる。
『ゲームの脱落者』として並べられた名前、それは同時に死を意味している。
自分の殺めた老人の名もあったのだろう。確認はしていないが、おそらくは。
皮肉なものだ。
裏切り者の自分はまだここに生きているのに、セシルはもう逝ってしまった。
ただそれだけを思う。…涙を流す理由など、もう無いから。
所詮、現実とはそんなものなのだろう。正しい者が勝つとは限らない、生きるとは限らない。
…今回は、俺が生き抜いてみせよう。
カインは目を閉じて一度深呼吸をすると、空高く跳び上がった。
「
エッジ…さん、すみません…待って下さい…」
「お、おい!大丈夫か!?」
膝をつき座り込んだマリアに、
ユフィを担いだエッジが慌てて駆け寄り――瞠目する。
月明かりに照らされた彼女の真っ青な顔、頬を汗が伝わって地に落ちるのを見て。
(――何て馬鹿野郎なんだ…俺は!)
エッジはとにかく必死で走っていた。まだ助かるはずの、瀕死のユフィを助けたい一心で。
それでもマリアがついてこれるスピードは保っていたつもりだったし、
実際に彼女はすぐ後ろをしっかりと走ってついてきていたのだ。
しかしついて来れているからといって、彼女が忍者である自分と同じ体力を持っているはずが無いのだ。
きっと彼女も、ユフィを助けたい一心でここまで無理していたのだろう。
…それに気付けなかった自分が情けない。エッジはぐっと拳を握りしめる。
そんなエッジに、マリアは少しばかり困ったような表情で言った。
「ごめんなさい…エッジさん、先に行って下さい」
「なっ…」
「本当は私も行きたいんですが…ごめんなさい、立てそうになくて…
…随分走りましたし、きっともう近くまできています。これを持っていって下さい…」
マリアは呼吸を整え、持っている波動の杖をエッジに差し出した。
しかし、エッジはそれを受け取らない。受け取るわけにはいかない。
(マリアさんを置いて行ける訳がねえだろが…
…しかし、どうする…?一刻も早く処置しないとこいつは死んじまう…)
エッジは迷った。今、迷っている時間こそ勿体ないことはわかっている。
それでも――決断は難しい。
エッジ達三人よりも少々離れた場所で、カインは手頃な木を見つけると音を立てないよう着地した。
もちろん、三人の存在に気付いた上での行動である。
(相変わらずだな、エッジ…)
カインは一目で状況を理解した。エッジの背中に片腕を無くした女がいることを見れば一目瞭然。
おそらくは、あれを助けてくれる人間でも探しているのだろう。もう一人も…仲間だろうか。
(さて、どうするか)
エッジの強さはカインもよく知っている。そして今は、どんな武器を持っているかもわからない。
二対一ということも含め、確実に倒すには…真っ向から行くのは得策ではないだろう。
相手の手負いを利用するか、あるいは騙まし討ちでもするか。
…しかし、それでいいのだろうか?仮にもかつての仲間だ――と、そこまで考えて首を横に振った。
(いや、そんな事は関係ない…。 ……あっちは、まだ俺には気付いていないか)
さあ、どうする。
【ユフィ(瀕死) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー
行動方針:死を待つ】
【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル
第一行動方針:悩み中(波動の杖の向く先(
アルカートのところ)へ走る) 第二行動方針:仲間を探す】
【マリア(疲労) 所持品:波動の杖 アポカリプス+マテリア(かいふく)
第一行動方針:休息(ユフィを助ける) 第二行動方針:夫を探す】
【現在位置:アリアハン北の橋から西の平原】
【カイン(傷はほぼ回復) 所持品:ランスオブカイン
第一行動方針:様子見 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:エッジ達のすぐ北、森の入り口辺りの木上】
最終更新:2008年02月15日 22:44