340話

第340話:素晴らしい力


「…なんだアレは?」
ハッサンとの戦いを終え砂漠を後にしたセフィロスの視界に、妙なものが映った。
人とも獣ともつかない何かが、ものすごいスピードで、こちらに近づいてくる。

「フン…まあいい」
セフィロスは村正を構える。
アレが何であれ、自分には関係はない。
来るというのなら切り捨てるまでだ。

低空を全身のバネを使って飛び回る。
奇妙な動きだが、捉えきれないほどではない。

セフィロスはタイミングを合わせ、村正を振り下ろす。
しかし、ソレは唐突に軌道を変え、斬撃をかわした。
そして、振り下ろした攻撃の隙を狙って、ソレは飛び込んできた。
口に咥えたナイフで、正確に首を狙う。

その攻撃を、セフィロスは左腕の甲で受けとめる。
すぐに刃を引き抜き、ソレは距離をとる。
貫かれた左腕から血が噴出す。

だが、そんなことはたいした問題ではない。
この程度の傷、ジェノバ細胞がすぐに修復するはずだ。
問題はそんなことではない。
近づいてきたソレは、片腕と片足が剥がれ落ち、とても戦える状態とは思えない。
こんな奴が自分と渡り合うなど、ありえない話だ。
「…なんだ貴様は、なんなんだ?」

セフィロスは気づかない。目の前のソレが、ティファであるということに。
もっとも、ティファである面影など何一つ残っていないソレを、
ティファであると言い当てることは、幼馴染であるクラウドでも無理だろう。

再度駆けてくる敵にめがけ、刃を振り下ろす。
だが、先ほどと同じように、刃は空を切る。
そして、咥えられたナイフは、セフィロスの左足を貫いた。

「…なるほど」
思いのほか速く、反応もいい。
捕らえるのは困難なようだ。
だが、攻撃はワンパターンなヒットアンドウェイのみ。
どうやら、考える頭はないようだ。
この程度なら、いくらでもやりようはある。

そして、敵はセフィロスの予想通り、同じように突撃してくる。
予定調和のように、セフィロスは刃を振り下ろし、敵はそれをかわす。
そして隙の出来た、がら空きの左胸めがけ刃が放たれる。
セフィロスはそう来るのがわかっていたような動きで、そのナイフを右手で掴んだ。
口に加えたナイフをつかまれ、敵の動きが一瞬止まる。
もちろんそれを見逃すセフィロスではない。
左腕に持ち替えた村正で、その体を真っ二つに引き裂いた。


…なんだったのだ、コレは。
その生き物は、セフィロスの理解を超えていた。

名簿にこのような人物はいない。
つまり、参加者の成れの果てということだ。
しかし、人間がこのような姿になれるとは思えない。
ましてやこの崩れた体で、自分とまともに渡り合うなど…
そして、セフィロスの思考は、ある答えに行き着いた。
「…なるほど、これがこのゲームの目的か」

死に行く者の怨念、人が死する際に発するエネルギー。
ライフストリームの循環に帰るであろうそれを。
一箇所の密閉された空間で発生させ、集め、留める。

そして、それを生き残った参加者に植え付ける。
もしくはそのエネルギー自体が目的か。

殺し合いの生き残りだ、器としてはうってつけだろう。
壊れかけた器、事故のように生まれたであろうコレですらこれほどの力だ。
自らを器として、参加者すべての怨念、魂を飲み込めば。
いったいどれほどの力を得れるのだろうか?

「…素晴らしい」
それはなんと素晴らしい力だろうか。
コレは簡単に壊れて、飲み込まれてしまったようだが。
自分の精神は、高々100人ちょっとの怨念に飲み込まれるほど脆くはない。
その程度、やすやすと跳ね返せる自信があった。

さて、そうなると、こんなくだらないゲームは早々に終わらせる必要がでてきた。
セフィロスは思考する。
そして、いい作戦を思いついた。
そうだ、あれを使おう。

黒マテリアだ。

クラウド程度では、あのような小さなメテオしか呼ぶことはできなかったが。
自分ならば、かって呼んだような、巨大なメテオを呼ぶことができる。
そうすれば、大陸諸共、参加者全員を抹殺することが可能だ。

たとえそれに自分も巻き込まれ、バラバラになろうとも、ジェノバ細胞はリユニオンする。
ひとつの意思の下に集い再生を果たす。
そうなれば勝者は私だ。
そうすれば素晴らしい力が手に入る。
戦いを楽しむのもいいが、今は手に入る力に興味は向いている。

だが、あの黒マテリアはアリアハン大陸と共に消え去ってしまった可能性が高い。
クラウドと共に瓦礫に埋もれたアレを、回収している者がいるのだろうか?

「まあ、探してみるのもいいだろう」
そう呟き、セフィロスは歩き始めた。

全ては彼の推測に過ぎない。

だが、セフィロスには妙な確信があった。
この大陸に黒マテリアは存在する。
ゲームに勝ち残れば、素晴らしい力を得れる。
そして、生き残るのは自分であると。

【セフィロス(HP2/5程度)
 所持品:村正 ふういんのマテリア 攻略本 いかづちの杖 奇跡の剣 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:黒マテリアを探す
 基本行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘
 最終行動方針:生き残り力を得る】
【現在地:カズス北西の森西の草原】

【ティファ 死亡】
【残り 78名】

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最終更新:2008年02月16日 15:49
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