第270話:流転
レーベの村。
ローグと再会して暫くした後、
アルスは暫く空を眺めていた。
正直、アルスはまだ迷っていた。
バッツの言葉も、シドの言葉も、自分には大切なことだと思える。
だが判っているはずだ。正義を救い悪を斬らなければならない、それだけの事。
それだけだが、この状況では形容しがたい迷いが生まれてしまう。
アルスはそう思い、考え、悩んでいた。
「おい、出発だ。用意しろ」
ふと気づくと、隣にシドがいた。
彼の言った言葉に、アルスは少し違和感を覚える。
「彼女は…どうする?」
「あいつは
イクサスに任せることにした。俺らといてもメリットあると思うか?」
「確かに戦力としてはあまり有難くは無い印象だったが……」
「つーかお前と一緒に行動するのが苦痛だと思うぞ」
確かにそうだ、と納得する。寧ろ納得せざるを得なかった。
アルス達には専門的な薬の知識があるわけではない。
だからここは双方に不利益のないようにする事を重点に置いた。
その結果が、アルスとシドの2人だけでの出発なのだ。
ふと、アルスはここで気になったことがあった。
それは先程のシドの落胆振りだ。
放送を聴いてから、かなり落ち込んでいた。
今はそんな素振りすら見せないが……。
「ほら、扉が消えねぇ内にさっさと行くぞ」
「あ、ああ…わかった」
アルスの考えを途中で堰き止めるかのようにシドが歩き出した。
そしてそれに続くように、アルスも村の中心へと向かっていった。
「あ、これやるよ。お前の為にあの家から2冊くらい取ってきた…どうせ好きなんだろ?」
「フッ…この僕が官能小説で喜ぶと思ったのか?全く、くだらないな……まぁ、貰うけど」
「貰うのかよ」
少しして、そんな無駄話をしていた時だ。
アルスは村の入り口に誰かがいるのを見た。
一見貴族風の男。少し疲れているのか、座って休んでいる。
だが相手もこちらに気づいたようだ。
男はすぐに立ち上がって、何かを構えた。
そして奇妙な音が聞こえると、シドがすぐに左肩を抑えた。
苦しがっている。あの男が何かをしたのか。
「おい、シド!?」
「チ……ッ!拳銃か……」
「けんじゅう?けんじゅうとは何だ!?」
「遠くから相手を殺すために作った武器だ!逃げたほうが良い、急いで扉に入るぞ!」
確かに今の彼らの武器では無理だろう。
それに今の解説でアルスが拳銃を完全に理解したとは言えない。
大規模な戦闘になる前に逃げるのが得策だ。
そうしている間に男は、今度は剣を持ってどんどん近づいてくる。このままではマズい。
――――少し時間が前に戻るのだが。
デールは思いのほか早くレーベに辿り着いた。
そして村の入り口で休憩をしていると、あの2人に気づいたのだ。
壊せるときに壊しておかなければ、このゲームでは生き残れない。
デールはマシンガンを構えた。そして照準を合わせ、引き金を引く。
狙い通り、相手の肩に当たったようだ。
そして一気に仕留める為、これを期にデールは走った。
アポカリプスを構え、更なる追撃を狙う――――
そして今に至る。
アルスはドラゴンテイルとドラゴンシールドを構え、デールの斬撃をシールドで受け止めた。
よく見てみれば、剣での戦闘に慣れていないのか攻撃が稚拙だ。
まともに接近戦でやり合えば勝てるかもしれないが、相手の未知なる武器のこともある。
そして隙を突いてドラゴンテイルで距離を取った後、すぐにアルスは叫んだ。
「今だ、いくぞ!」
そしてそのままアルスとシドは扉へと飛び込んだ。
取り残されたデールは、してやられたと悔しがる。
だが、間髪入れずに自分も扉へと入っていった。
そして光に包まれて、3人は消えていった。
【アルス 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘 官能小説3冊
第一行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【シド(左肩負傷) 所持品:ビーナスゴスペル+マテリア(スピード) ロープ
第一行動方針:同上 最終行動方針:ゲームの破壊】
【現在位置:新フィールドへ】
【備考:食料多】
【デール 所持品:マシンガン(残り弾数1/3) アラームピアス(対人) ひそひ草 アポカリプス+マテリア(かいふく) リフレクトリング
第一行動方針:新フィールドでも虐殺 第二行動方針:皆殺し(
バーバラ[非透明]と
ヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在位置:新フィールドへ】
最終更新:2008年02月16日 16:04