第366話:はぐれた者達
「それでボクの妹の名前はアルマって言って…って、あれ?」
旅の扉からベラベラと喋りながら、一人の男が現れた。
その男こそ騎士の名門ベオルブ家の末弟、
ラムザ=ベオルブである。
ラムザはあたりを見渡す。
周りは岩に囲まれ、すぐ近くに外の景色が見える。
どうやらどこかの洞窟の入り口近くのようだ。
それはいいとして、一緒に旅の扉を潜ったはずのテリーと
ファリスの姿が見当たらない。
いったいどうしたことか?
ラムザは原因を思い出してみる。
『お前に兄弟はいないのか?』
旅の扉を潜る直前、珍しくテリーのほうから話しかけてきた。
そこは悲しき職業病か、思わず反射的に思い切り喋りまくってしまった。
そのまま喋り続けていると、最初に潜った時とは違う空間の歪みを感じた。
どうやらそれが原因のようだ、旅の扉と言うのはそれほどデリケートなものなのだろう。
しかし喋りすぎが原因とは…
このジョブになってから説得などで一時的に仲間は増えたが、何か違う気がしてきた。
(ジョブ変えようかな…)
なんだかこのままこのジョブを続けていたら、自分が自分じゃなくなってしまいそうだ。
そう思いながら、ラムザはトボトボと洞窟の出口へと向かった。
洞窟を抜け、目の前に広がるのは輝く一面の湖。
湖の中心には小島がポツンと浮かぶのみで、橋のようなものは見えない。
左右を見渡しても、高い山脈が見えるばかりで、とても越えれそうにない。
どうやらここは、他から遮断された場所のようだ。
考えようによっては安全な場所なのかもしれないが。
「はぐれたテリー達が心配だな…。結局
アグリアスさんとも合流できてないし…」
この状況がテリーの意図したものだったのか、そうでないのか。
それはテリー本人にしかわからないが、少なくともラムザはテリーを微塵も疑ってはいなかた。
「一気には渡れないかも知れないけど、あの小島までなら届くかな…」
そういいラムザは、力を込め大地を蹴り、空高く宙を舞った。
その体は、大きな放物線を描きながら小島の頂上へと着地する。
「ん?」
着地したすぐ近くに、ぐったりと倒れこむ存在に気づいた。
『大丈夫かい?』
ラムザは近づいてゆき、屈みこみ視線を合わせ話しかける。
『…あなたは…?』
『僕はラムザ=ベオルブ。さあ、これをお食べ』
そう言って、ザックからパンを取り出し分け与える。
『ああ…ありがとう、あなたは、私の言葉が解るのね?』
そう言う彼女の姿は、人ではなく犬。
ラムザは話術士のアビリティである『まじゅう語』の効果によって彼女の言葉が理解できた。
『うん、だから安心して。きみの名前は?』
『私は
アンジェロ、ありがとうラムザ』
パンを食べ終わり、ふらつきながらアンジェロは立ち上がる。
『どうしてアンジェロは、こんな山の上にいるんだい?』
『…わからないの。お爺さんに助けられて、いろんな所を彷徨って、
結局気づいたときにはここで力尽きてしまったの…。会いたい…
リノアに会いたいわ』
『リノアって言うのは、きみのご主人様かい?』
『ええ、大切な友達よ』
『…よし、それじゃあボクと行こう。ボクもはぐれた仲間を探してるところだからね』
『本当に?』
『ああ、一人でいるより、そのほうがいいだろう?』
『ええ、ありがとうラムザ』
『よそ、まずは向こう岸に渡ろう。僕の背中に乗って』
そういいラムザは背を向け、アンジェロがその背に乗る。
(当分はこのジョブのままかな…)
アンジェロを背負い、対岸の岸を見つめながらラムザは一人ごちた。
(なんか頭の上が騒がしいな…。どうしようかな思い切った話しかけてみようかな…)
頭上の二人の知らぬところで、水辺の小島に扮した
ブオーンは苦悩していた。
【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)
所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ
第一行動方針:仲間を集める(テリー、ファリス、アグリアス、リノア優先)
最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】
【現在位置:ブオーンの頭の上】
【ブオーン 所持品:くじけぬこころ、魔法のじゅうたん
第一行動方針:話しかけようか考え中 第二行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の泉の真ん中】
最終更新:2008年02月17日 22:08