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止まる『世界』、回る運命(後編) - (2019/07/25 (木) 21:55:08) の1つ前との変更点
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「あの女が銃を持っていたのは見たか?」
照明のない廃工場。踏み入ったの薄闇に目が馴染むまでの一瞬に、承太郎はキャスターに確認を行った。
果たしてキャスターは首肯し、仮面の奥から見聞を返す。
「ああ。飛び道具を使い、なおかつマスターが近辺に見当たらない様子からするとアーチャーだろう――対魔力持ちとは少々面倒だな」
「……訂正すると、あたしはガンナーね」
そこで微かに、痛みによって揺らいだ声で女が割り込んだ。
まだ痛みが抜けきっていないのか、それとも動揺の現れか、顔を掌で撫でながら『第七階位』――ガンナーのサーヴァントはゆるりと立ち上がり、承太郎たちと視線を結んだ。
あれだけスタープラチナで殴りつけてやったが、暗さに慣れた目に止まるほどの外傷はない。出血していた事実と矛盾がないように考えると、この短時間で治癒したのだろうか。
「銃使いのエクストラクラス。結構思い入れがあるから、ちゃんと呼んで貰えると嬉しいわ」
「良いだろう。つまり対魔力はないということだな」
《――Explosion, now――》
聞くが早いか、キャスターは準備しておいた指輪魔術を発動した。
宝具、『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』。キャスターが腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
それがただの一小節で発動させたのは、空間を操る大魔術だ。
紫の魔法石の煌めきに合わせて、圧縮された高密度の魔力が炸裂する。
仄暗い工場の半分を爆炎が埋め尽くすその威力は、彼のマスターである承太郎が喰らったそれより遥かに増大していたが――ガンナーは既に、その範囲を知悉していたかのように躱していた。
小刻みなステップを挟みながらも、前へと跳んで。
爆風を背に接近するガンナーに、奇襲じみた一撃を避けられたキャスターも魔杖を片手に応じようとする。
しかし、彼が一歩踏み出すよりもさらに早く。
「――スタープラチナ・ザ・ワールド!」
再び、時間の流れが凍結した。
時間の停止した『世界』には、眼前のサーヴァントも入門できない。ならば有効打を浴びせられずとも、単純に体勢を崩させるだけでキャスターを有利にできる。
己がサーヴァントの手を借りるのは癪ではあるが、まずは一枚、『聖杯符』を回収することこそが優先される――そのように思考していた承太郎は次の瞬間、驚愕に打たれた。
「――何?」
それは――時間停止を発動するための意識の集中、その一瞬の隙に撒かれた、致死の罠。
停止した『世界』の中には、承太郎を取り囲むように配置された、コーラ瓶とも見紛う巨大な弾丸の群れが、剣山のように現れていた。
視線を巡らせれば、爆発を逃れる位置の工場の床や――空中に。乗用車の倍はある長さの、尋常ではない七銃身の巨大ガトリング砲が合わせて五門存在し、無人のまま夥しい量の弾丸を吐き出す最中に停止していた。
突如として出現した異様な銃砲の群れと、その神速の早撃ちが、銃使いの英霊の仕業によるものとは即座に看破できた。
だが、その変化した状況の再把握と解析までに一秒以上、承太郎は限られた時間を行使してしまっていた。
スタープラチナの超視力は、サーヴァント同士の高速戦闘をも容易に把握する。
しかし迎撃などを自動でさせるわけでもないなら、その視覚で得た情報を処理し判断するのは、あくまで生物学的に人間である空条承太郎の脳神経だ。
サーヴァント本体の動きを注視し過ぎて、時を止める瞬間に生じる隙、そこで放たれた攻撃へと気づくのが遅れてしまったのだ。
(既に発射された数だけで、三十八発……)
思わず連想したのはエジプトの決戦時、DIOの繰り出して来たナイフ投げか。
だが、明らかにあのナイフ以上に重量があり、しかも停止した弾頭付近が空気を圧縮してかげろうのように揺らめいているのを見るに、弾速も音の壁を越えている。それだけの運動量を前にしては、あの時のように腕の一振りで何発も弾くといった芸当も困難だ。
(……停止していない場合だと、一門相手にスタープラチナのラッシュが追いつくかどうか。最短距離は弾幕に潰されている。捌いて攻め込むには手数が足りない)
回避に徹するしかないという苦渋の結論を下し、同時にガンナーへの攻撃を諦めざるを得なくなった承太郎はバックステップで後退。必要以上にスタンドパワーを浪費する前に時の運行を再開させる。
直後、鋭角の衝撃波を伴った砲弾が床を穿って炸裂し、別の射線が工場の壁を内から食い破って外へ飛び出して行った。
(――焼夷弾か)
「オラオラアッ!」
人払いが済んでいたことに安堵するより早く、射線が動く。追ってきた弾丸を、スタープラチナが高速かつ精密な動作で横合いから殴り飛ばして軌道を逸らす。
星の白金の狙いは正確。自然発火を誘発することなく、衝撃派の猛威からも射線を免れたが、予想以上に重い。
この勢いでは躱し切ることすらできないかもしれない――そんな悪寒が脳裏を掠めた直後、承太郎の前に白い影が割り込んだ。
「下がっていろ」
その正体は、展開した魔法陣で秒間三百五十発の弾丸をあっさりと遮断しながら、未だ魔力で輝く指輪を翳したキャスターだった。
直後、五箇所で立て続けに爆発が起きる。ガンナーの設置していた五つのガトリング砲をほぼ同時に、空間爆破の魔術で破壊していたのだ。
……承太郎とは桁違いの防御力と、圧倒的な攻撃力。
人が、馬ほど早く走れないように。あるいは魚ほど上手く泳げないように。能力は通用するとしても、スタンド使いとサーヴァントでは、基礎的なスペックに大きな格差があることを強く再認識させられる光景だった。
そんな、サーヴァントの強大さを知らしめた一因たる指輪が、突如としてキャスターの掌から弾け飛ぶ。
犯人は当然、ガンナー。手にした大型拳銃、デザートイーグルでの精密射撃は、サーヴァントの指を曲げることもできず、魔法石で作られた指輪を壊せないまでも、キャスターの指から脱落させるには充分な威力を持っていた。
「うん、下がっていた方が良いわよ。向かって来るなら、もうあたしも容赦はしないから」
殺意を載せたはずの通告は、どこか爽やかな調子で言い放たれた。
「特にあなたの場合はね――ニンゲンとはいえ南米の神様の親戚みたいなものなんだもの、あなた。油断はしてあげられない」
「何を言っている?」
自身の家系図から完全に外れたガンナーの表現に、承太郎は思わず問い返していた。
「それよ、それ。その青紫っぽいヒトガタの」
キャスターに拳銃を向けたまま、ガンナーはスタープラチナを目で示して言う。
(こいつにもスタンドが見えているのか)
当初の戦いで、キャスターは完全にスタープラチナを視認していた。
それは承太郎と契約したからという線も考えていたが、どうやらサーヴァントは一律、スタンドを視認できると見ておく方が賢明そうだ。
「しかも、時を止められるなんて驚いたわ。納得はしたけど、それ、本当は天界とかの管理する権能よ?」
――能力の秘密を見抜かれた。
覚悟していなかったわけではないが、苦いものを噛み締めるしかない承太郎とは対照的に。
いつまでも余所見をする敵を前に待つほど、彼のサーヴァントは辛抱強くはなかったようだ。
無言のままに駆け出したキャスター。ガンナーが牽制で放つ大口径拳銃弾も、キャスターの手の甲が展開した魔導障壁には全くの無力だ。
距離を詰めた勢いのまま、直線、最速の突きとして繰り出されるキャスターの得物こそは宝具、『屍殻穿つ魔杖(ハーメルケイン)』。
ランクこそ低いが、魔力で構成されたサーヴァントに対しても特攻を発揮し得る強力な白兵武器。単純な物理破壊力だけでも、サーヴァントの膂力で繰り出される一撃は先のガトリングの一射を遥かに凌ぐ。
そんな必殺の刺突を、ガンナーは横への小さいステップのみで回避する。
最速の一撃をあっさりと躱されたキャスターはしかし、そのクラス傾向の例外に属する存在だ。近接戦闘においても目を瞠る技倆を有す彼は、ただのそれだけで動作が停滞する愚は犯さない。
キャスターは逃れた敵への追撃のため、淀みなく魔杖を翻す。
その瞬間、キャスターの引いた力に向け、合気のようにしてガンナーが発砲した。
サーヴァントに対しては豆鉄砲ほどの脅威にもならないだろう拳銃弾は、しかし放たれた瞬間、そしてその狙いが凄絶の一言に尽きた。
キャスター自身の力を利用するための、完璧なタイミングを余さず捉えたピンポイント連続射撃。不意に襲い掛かったマイナス方向の力は見事に彼を絡み取り、武器を取り零しかけたキャスターは体勢を崩し、そのまま後退した。
「まだ引きこもっているつもり?」
そして刃の間合いから逃れた途端、両手を下げて構えを解き、謎めいた問いかけを発するガンナー。まるで無警戒なその姿に対し、キャスターは慎重な所作で構えを直す。
この女のような手合も戦法も承太郎は目にしたこともなかったが、この様子を見るに、どうやらそれはこのサーヴァントにとっても同じであったらしい。
「そうだな。もう少しこのままで居させて貰おう」
「そう。じゃあ、こっちから引っ張り出してあげるしかないのかしら」
再び宝具を片手に斬りかかるキャスターに対し、撃ち尽くしたデザートイーグルの弾倉を取り替えるでもなく虚空に消したガンナーは手を上げようとして、瞬時にその身を屈めた。
距離を詰める、と見せかけてキャスターが一閃した杖より放たれた魔力の刃が、彼女目掛けて飛来していたのだ。逃げ遅れたフリッツヘルムが弾き飛ばされ、鉛色に輝く髪が数本、巻き起こった風に流されて行く。
屈んだ勢いのまま転がりつつ、手元に召喚したライフル銃を構えるガンナー。銃弾そのものの威力が全身を装甲したキャスターに通じるとは思っていないだろうが、指輪を狙っての精密狙撃が放たれる。
対するキャスターは指輪を嵌めた手の甲に魔法陣を展開し、射線を完全にシャットアウト。妨害を物ともせず、腰の宝具まで指輪を運ぶ。
「横だ!」
先の反省と、主戦場から距離を取っていた分、今度は承太郎の方が早く気づいた。
だが、如何に鋭く尖らせようと、肉声による警告では遅い。正面から狙うガンナーとちょうど十字となるように、空中に出現した一回り巨大なライフル銃は既に、音速に数倍する銃弾を発していた。
それは承太郎の警告が届くより早く、キャスターの構えた障壁をギリギリで掻い潜る入射角で突き進み、先の再現のようにしてキャスターの指輪を掌から弾き飛ばし、魔術の詠唱を阻止してみせた。
音速超過の攻防の中に銃弾を混ぜ込む、本人の凄まじい早撃ちと精密射。加えてそれを、何処からともなく召喚した、自在な射角を持つ銃砲でさえも可能とする。
単純ではあるが、現代兵器による飽和攻撃に神憑り的な精密性が加わることの脅威を、同じく精密動作を売りとするスタープラチナを持つ承太郎は理解した。
微かな戦慄を覚える承太郎の横で、キャスターは阻止された魔術に拘泥せず駆け出した。あらゆる角度から瞬時に狙い撃って来るこの敵には、一小節の詠唱は悠長過ぎると悟ったのだろう。
接近に合わせて立ち上がるガンナー。その手を降った勢いのまま、延長線上に今度は倍の計十門、美しい白銀の砲塔の列が翼のようにして拡げられ、即座に斉射された。
放たれた砲弾の初速と連射性は、先のガトリング砲に僅かに劣っていた。だが、弾丸はさらに二倍どころか三倍に迫る巨大さ、質量でいえば約二十倍。映画で見る戦車の主砲に採用されるようなそれだ。
それをキャスターは、指輪を介さず手の甲に展開した小さな魔術障壁だけで凌ぎきり、着弾の衝撃で僅かに速度を緩めながらも前進する。
遅れた颶風が、承太郎の頬を撫でる。余波だけで老朽化した工場に激震が走り、あわや倒壊しかねないだけの火力が行使されているのだ。
その照準を一身に集め、なお無傷の男は、遂に女を刃の致死圏に捉える。
繰り出された一突き。ガンナーは魔杖を横に流した掌で逸らし、軌道を曲げさせた。
同時、思い切りよく宝具を手放したキャスターの裏拳がそのまま、ガンナーの下顎を目指して翻る。
ガンナーは空いた手で顎を庇う。互いに弾き合った次の瞬間に、キャスターの右膝がガンナーの腹腔を狙うが、同じく閃いたガンナーの右足が迎撃。
連動して繰り出されたガンナーの左拳を、キャスターは右手に展開した魔法楯で逸らし、その勢いで互いに弾き合い、距離が離れたと思った瞬間、またも激突する。
キャスターとガンナー。本来は遠距離での攻防にこそ真価を発揮するクラスで現界したはずのサーヴァント二騎が、その原則に真っ向から背くかの如く、苛烈な白兵戦を展開し続ける。
瞬きも忘れるほどに白熱した、肉を打つ音が連続する攻防は果たして、どれほどの時間続いたのか。
濃密な一挙手一投足の交換の中、やがて生じた一瞬の間隙を衝き、キャスターが大威力のために魔杖の刃を後ろへ引く。
同時、ガンナーの頭上に出現した機銃が発砲。先の再現として、敵自身の動きを利用して体勢を崩させようとしたが、キャスターは当然学習していた。
刃を引いたのはブラフ。左の回し蹴りが突如として跳ね上がり、白き迅雷の如くガンナーの首を狙う。
しかしその動きを、ガンナーは既に見切っていた。
自身が銃撃しなかったことで空けていた両手で、キャスターの蹴りを完全に受け止める。そのまま追加の機銃掃射で重心を崩させたキャスターを持ち上げ、豪快なスイングで投げ飛ばした。
そして、宙で身動きの取れない獲物にガンナーが追撃の砲門を呼び出す――――その瞬間こそが、キャスターの狙いだった。
《――Yes! Special――》
背面を装甲された自身の背中、前面を手の甲に展開した簡易の魔導障壁。そして側面をは弾丸を通さないウィザードローブで遮断した状態で、なおかつガンナーを狙える体勢を作り出すことが。
「――っ!」
キャスターの指輪から放たれたのは、彼の膨大な魔力を変換した黄金の衝撃波。ガンナーの展開した銃砲の群れを破砕し、誘爆させ、そして彼らの主までもを呆気なく、破壊の奔流に呑み込んでいく。
《――Understand?――》
「――なんだと」
ベルトが詠唱を、指輪が魔力の照射を終えたと同時、キャスターの張り詰めた声をスタープラチナの聴力が拾った。
「……やるわね、今のは焦ったわ」
告げたのは、光の奔流に呑まれたはずのガンナーだった。
無傷、ではない。鉛色の髪は煤に汚れ、パンツァージャケットの左腕部は焼き切れている。その下の白い肌も、一部は熱を帯びて膨れ上がるのを通り越し、醜く焼き爛れていたが、なおも五体満足の立ち姿だ。
その傷ついた体からは、キャスターが放った物よりも澄んだ光の粉のようなものが舞っていた。
直後、その輝きが一層強まった気配を、ガンナーが身に纏う。
そして、工場最奥まで落下し終えたキャスターの元へと一気に駆けた。
その速度は、寸前までの比ではない。先の魔術も、その出力で直撃を逸らしたか。
咄嗟にキャスターは『屍殻穿つ魔杖(ハーメルケイン)』を口元に構え、不気味な音色を響かせた。
刹那、展開されたのはキャスターの身体を完全に覆い尽くす円形の魔法陣。手の甲に出現させていた簡易なそれとは、強度も範囲も桁違いの代物。
それを。
「せーのっ!!」
輝きを載せた拳の一撃、それ自体が砲弾と言わんばかりの勢いで、ガンナーはキャスターの魔法楯を弾き飛ばした。
魔導障壁は、なお砕けはしなかった。だが着弾の衝撃、その連動に引っ張られたように、キャスターの手から魔杖があらぬ方向へ投げ出される。
おそらくは、こうして防御手段を取り上げて、一瞬体勢を崩すだけで充分だったのだろう。
「……っ!」
思わず息を呑んだのは、承太郎か、それともキャスターか。
ガンナーが拳を振り抜いた、その瞬間に。彼女の背後に、超弩級の火砲が姿を顕したことに気づいたが故の、絶句。
それは本当に、度を越して巨大な砲塔だった。
工場に収まりきらない全長の、圧倒的な存在感を感じさせる大筒。承太郎の位置からは、その口径がどれほどの物かを視認することはできないが、馬鹿げた数字に決まっていると確信できた。
その、どう考えても何十キロも先の要塞を粉砕するために用いられるのだろう大砲が、ほぼゼロ距離と言って良い距離で照準するのは、キャスターという人間大のサーヴァントただ一騎。
承太郎をして心底戦慄した刹那。極限の緊張により加速した視野に、超巨大な鉄の塊が火を噴く、その予兆となる稼働が垣間見えた。
「――スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
三度、承太郎は時を止めた。
列車砲への最短距離には、案の定。能力発動の隙にガンナーが配置した無人の機銃による弾幕が既に、展開されていた。
どの道、アレを殴って止めたところでこちらも無事では済まない。弾幕はそもそも無視して、一度だけ工場の奥に視線を向ける。
スタープラチナの射程は二メートル。停止時間は五秒間――キャスターを安全地帯に連れ出すことは不可能だ。
そこまで判断した時点で、身を翻して工場からの脱出を図りながら、承太郎はさらに思案を巡らせた。
令呪を使う? 時止めを解除してからでは命令が間に合わない。だが停止している時間の中で発した命令は、果たしてそれを認識できないだろうサーヴァントに有効なのか?
……そもそも、あの男を救う必要はあるのか?
募るのは疑問ばかりではなく、そのような黒く冷たい閃きもまた、承太郎の胸の裡に降ってきた。
これでキャスターが死ねば、奴の聖杯符が出現する。スタープラチナの能力を駆使し、ガンナーに先んじて回収できれば、目的の一段階をクリアできる。
その利益に引き換え、我が子を亡くしたとはいえ一個人の事情を理由にして、理不尽な犠牲をどこまでも撒き散らそうとしたあの邪悪を救う意義とは何だ?
だが……仮に、キャスターの聖杯符が出現したとして。それを、時間停止の発動とその隙を見逃さずに対処してきているガンナーに先んじて、回収できるという保証はあるのか?
聖杯符を確実に入手できる状態に持ち込む前に、サーヴァントという戦力を失ってこの先はあるのか?
……停止した時間の中で、無意味な思考が錯綜する。
迷っている場合ではない。迷いは弱さだ。
(あの頃の……おれなら、どうしていた?)
最も強かったあの頃。DIOを倒した時の若き自分。迷いなど欠片も持ち合わせることのなかった己なら、こんな時、どんな選択を――
「――オラアッ!!」
迷う間にも、まず己の生存のための脚は止めなかった。
スタープラチナが、外れかかっていた工場の鉄扉を留め具から引きちぎる。分厚い鉄板を抱えたまま工場から飛び出した頃には、猶予は残り一秒にまで迫っていた。
「――――令呪を以って命じる。躱せ、キャスター!!」
承太郎が叫び終えると同時、凍っていた『世界』の時は再び流れ出し――そして爆風が、何もかもを洗い流した。
◆
「ぬ……ぐぅ……っ!」
身体の節々に生じた痛みを知覚して、承太郎は目を覚ました。
あの馬鹿げた大砲の発射現場に、至近距離で居合わせてしまい、破滅的な衝撃波をモロに浴びた。
ただそれだけのことで、何の備えもなければ即死してしまっていただろう。飛来する破片から身を守るための頑丈な鉄扉のおかげで致命傷は受けなかったが、それでも吹き飛ばされて数秒失神していたようだ。
(……このザマじゃあガンナーから先手を取る、なんてのはどの道不可能だったろうな)
自身に覆い被さっていた鉄板をそろりと外しながら、承太郎は粉塵が濃霧の如く充満する破壊の跡で立ち上がった。
……寸前まで戦いの舞台となっていた工場は、跡形もなく消し飛んでいた。
それも、大部分はあの砲撃の標的になったからではなく、その発射の余波に巻き込まれただけで。
時を止めて外へ避難していなければ、承太郎も脳髄をシェイクされて御陀仏だったに違いない。
そして如何にサーヴァントとはいえ、この零距離射撃を前にしては、不死身を売りにしているような英雄でもなければ消滅は免れないだろう。
「令呪は……かっきり消えている、か」
右手の甲を見れば痣の一部、三画ある令呪の一つが欠けていた。時間停止中の命令は、どうやら令呪そのものには受理されたらしい。
ならば後は、その絶対命令を受け取る張本人――キャスターがあの砲弾を回避できたか、だが……
「……ぐぁ」
遠く、小さな苦鳴が聞こえた。
スタープラチナの聴力が拾ったその声の主を、スタンドの超視力が見つけ出し、解像する。
途端、承太郎は自身の体温が急速低下するような錯覚に見舞われた。
……か細い声の主は、着弾によるクレーターの縁に膝を着き、白い影を降ろすキャスター。
スタープラチナが目にしたのは、原石のような仮面がひび割れ、左腕から胴体の半分近くまでを飴細工のように引き千切られ喪ったキャスターが今、微細な魔力の粒子にまで分解されて消滅する、まさにその瞬間だった。
「――キャスター!」
「焦るな」
思わず身を起こした承太郎は、背後から降り掛かった声にさらなる驚愕を覚えた。
「――どういうことだ」
瞬時に混乱を呑み干し振り返った承太郎の、その視線の先にいるのは――埃一つ着いていない、真っ白な戦闘服を纏ったキャスターだった。
つい先程、目の前で消滅したはずのサーヴァントが晒す無傷な立ち姿に視線を険しくする承太郎に、新たに現れたキャスターは小さく鼻を鳴らす。
「何の事はない。先程までガンナーと戦い、今しがた消えたのは魔術で造った私の分身に過ぎん」
説明の言葉とともにキャスターが翳した手の甲の寸前で、火花が散る。それは先程、何度も目に焼き付けた光景の再演だ。
「うん、やっと出てきたわね。戦争ではちゃんと、自分の命を懸けないと駄目よ」
キャスターの出現に呼応したかのように、肉薄してきたのはガンナーだった。フリッツヘルムを被り直していた彼女は無傷ではないが、酷かった火傷は既に軽傷にまで回復している様子だ。
その口ぶりからすれば、どうやらガンナーは己が仕留めたキャスターが分身体に過ぎなかったことはとっくに――振り返れば接触したその最初期から、既に把握していたらしい。
詰るようなガンナーの物言いに、キャスターは肩を竦めた。
「生憎、この仮初の命は持ち合わせが一つしかないからな。工房の中で大切にさせて貰っている」
「自分のマスターは戦場に放り出しておいて?」
「当人の強い希望だったものでな」
キャスターの答えは事実だ。スタンドの伝承保菌論の実証、そして『天国』に到達するために必要な『聖杯符』の入手をと、静かに意気込んで承太郎は戦場に臨んだ。
だが、終わってみれば己は、ただの道化だった。
あるいは遭遇したのが眼前のガンナーよりも与し易い相手であれば、話は変わっていたかもしれないが――逆に、より苛烈な、危険なサーヴァントを相手にする運命になってしまっていたとしたら。
忸怩たる思いが、承太郎の口を塞いでいるのを知ってか知らずか。キャスターは契約上の主を顧みることなく一人、ガンナーと会話を続ける。
「とはいえ、このまま外で貴様とやり合うのは避けた方が賢明のようだ。だからマスターを迎えに来た」
「そう。じゃあ今回はこれでお開きにしましょうか」
意外な返答に、承太郎は微かに眉を動かした。
キャスターもまた、流石にこれは想定外だったのか、少し間を置いてから返答する。
「……随分とあっさり見逃してくれるものだな」
「まだ初日だもの。こんな序盤でキャスタークラスを落としてしまったら面白くないわ。
それにあなた達も、ジェロ――ああうん、これは藪蛇になりそうね。ただ個人的に期待しているとこがあるから、頑張って生き残ってみて」
「付き合いきれんな」
勝手気ままの過ぎるガンナーの物言いに、キャスターは邂逅当初のような苦笑を漏らした。
同時に、空間転移の魔術を起動。波打つ空間が彼自身と、承太郎とを呑み込んで、一瞬の暗転。
――視界が晴れた時には、破壊し尽くされた工場跡地から水族館にある承太郎の待機室にまで戻ってきていた。
「仮に奴が追撃してきたとしても、陣地内ならば遅れを取るような相手ではない。外から水族館ごと砲撃されても問題なく対処は可能だ」
テーブルを挟んで、承太郎と正反対の位置にまで歩を進めながらキャスターが解説する。
「分身一つ分の魔力を早々に潰されたのは損失だが、緒戦としては悪くない量の情報を得られたと言えるだろう。ガンナーの妨害で第八階位への追跡を一旦断念せざるを得ないことと――貴様が令呪を無駄に消費した以外は、な」
そして仮面越しに、侮蔑の言葉を投げかけてきた。
「……誰かさんが教えてくれていなかったからな」
対する承太郎は自身の不甲斐なさとキャスターの不実への怒りをせめぎ合わせながら、負け惜しみのように返すのが精一杯だった。
契約したマスター自身の透視力でも識別できなかった以上、そうと言われなければ同行していた相手が偽物などとは普通、考えるはずもない。
だが、事実としてこの魔術師は分身を作成でき、またガンナーはそれを容易く見抜き、スタープラチナ・ザ・ワールドの時間停止にも対抗できる洞察眼を有していた。
対サーヴァント戦闘は、それこそ複数のスタンド使いと同時に交戦する時以上に警戒を強めるべきであったし――何よりキャスターは信用できないという認識を徹底できなかった、己の至らなさへの反省は強く胸に刻むべきだ。
「それは悪かった。私としてはそもそも、貴様に明かす意義を見出していなかった。それで不利益を被るとは思えなかったからな」
素顔を晒さないままにキャスターが口ばかりの謝罪をして――それから、どこか呆れた調子で言葉を続けた。
「まさか――貴様が敵を討つためではなく、私を生かすために令呪を切るとは想像もしなかった」
「……単に、戦力を惜しんだ。てめーが分身におれを守らせたのと同じ理由だ」
そう、キャスターが承太郎を庇ったのは単にそれだけの理由だとは理解している。
仮に別の魔力供給源があるとしても、契約を喪えばサーヴァントは現世に留まるための要石を失くし、その間は万全の実力を発揮し得ない。
それを恐れただけの行動だとは、わかっていても。
DIOを討ったあの時の自分なら――損得勘定とはまた別に、自身の心に後味の良くないものを残すまいとしたはずだと、血迷ってしまった。
その迷いが、あの瞬間、承太郎の中の天秤を狂わせた。
「結果として、我々は令呪を一画無意味に失った、か。なるほど準備不足は高くついてしまったな」
仮面の奥から、溜息一つ。それからもう一息置いて、キャスターは承太郎に言う。
「良いだろう。次からは敵を騙すためにまず味方から、などという迂遠な真似は控えよう。貴様もどうやら、最後の希望を見据え始めたようだからな」
もう一度拳を握れるようになった、とでも告げたいのか。
歩み寄るようなキャスターの言葉は、しかし承太郎の胸の内に何ら響かない。
仮面の男は、承太郎の行為に絆されたわけではない。ただ、己のマスターが次なる愚行を犯さぬよう、制御しようとしてきているに過ぎないことが明白だったからだ。
先の戦いで、既に重々承知させられた。この男は信用できない、と。
だが。
「……そうだな」
……彼の、今は亡き娘を想う気持ちだけは本物だ。
選んだ道が間違ったものだとしても、目的を果たさんとする漆黒の意志、その強さだけは認められる。
そしてその一点だけは、確かに空条承太郎とキャスター――笛木奏は等しい存在だった。
信頼などない。だが、承太郎の見出した拳を握る理由――最初に復讐を果たすためには、ある程度聖杯戦争で勝ち抜く必要が確かにある。
それまでの間は、どれほどの屈辱であろうとも。己に与えられた唯一の手札であるこのキャスターを逆に利用するしか道はない。
「もう一度、詳しく話して貰うぞキャスター。おまえの能力を細かくな」
あの吐き気を催す邪悪を――娘の仇を討つための新たな力が必要だというのなら、それを手に入れるために如何なる艱難辛苦も飲み干そう。
その一念だけが敗北者となった父親を立ち上がらせる、最後の希望なのだから。
◆
「……ごめんなさいねトワイス。派手に暴れておいて、戦果なしで」
キャスターとそのマスターが転移した後。取り残されたガンナーは、未だ中央病院に居るトワイスに向けて念話を送っていた。
「(それ自体は構わないよ。結局のところ、私達自身は勝者にはなれないのだから)」
果たして戦いの趨勢を見守っていたトワイスは、ガンナーの謝罪をやんわりと受け入れた。
その上で、問いかけが一つ、投げられる。
「(……だが、彼らは本当に我々の後継になると思うか?)」
「欠落があったからこそ躍進する、という意味では、ジェロニモたちはその体現だと私は思うわ」
かつて、ゴヤスレイだった戦士ジェロニモは言うに及ばず。『第五階位』のキャスターもまた、何ら特異な因果と関わらずにいた平凡な男が、大切な何かを喪って英霊にまで到達した人間――ということは、最高ランクの千里眼を有するガンナーには見通せる事柄だった。
逆に彼のマスターである――見透かした身元証明品によるとジョータロー・クージョー……ジョジョは、何やらその血が大きな因縁を背負っていると思われたが、本人の置かれた現状はキャスターと近しいものと見えた。
そして、その身に秘めた成長の可能性に、当人が思い当たっているらしき気配も。
「(……だが、肉親に価値を見出す者が、私の思想に賛同してくれるとは思い難いが)」
「かもしれないわね。でも、盛り上げ役が成長した実例なのは良い配置になるでしょ?」
「(なるほど。そういう理由ならば許容しよう。少しヒヤヒヤさせてくれたが)」
ジェロニモに伝えた通り。長期戦でこそ真価を発揮するキャスターのクラスは、それだけ聖杯戦争を泥沼化させ、苛烈な物へとに育ててくれるだろう。
その中で、彼ら自身の心変わりを得られぬとしても。やがては彼らとも命の遣り取りをすることになる最後の勝者の目には、戦争の中でこそ輝く人間の姿が焼き付くはずだ。
それを乗り越えた者にこそ、己やトワイスの願いを託してみたいと、ガンナーは思っていた。
何の意外性も発展もなく、ただの既定作業として人々の命を潰えさせて行くような停滞した『世界』――そんな未来の到来をこそ、塗り替えて貰うために。
……もっとも。勝者として辿り着くのがヒデオのように、優し過ぎる人の子なら、その目には叶わない眺めかもしれないが。
それでも、戦争の中で成長した誰かが、また。陰惨で、卑劣で、卑怯で、容赦のない戦争を前にしても。人間としての知性を尽くして、勇気に満ち溢れた答えをくれるなら……きっと。あの日のマックルのように、トワイスも……
脇道に逸れた思考を閉まって、ガンナーは派手に破壊した周囲の様子をもう一度見回した。
「後始末とかの隠蔽はシエルたちがやってくれるのよね?」
「(そういう手筈だろうな。幸い、『第五階位』の手際がよかったおかげで目撃者もいないなら、君が気に留める義理はないだろう)」
「安心したわ。じゃあまた、例のイレギュラーを追ってみようかしら」
「(……あのイレギュラーを見失ったのがジョジョという男の影響なら。彼を生かしたまま、イレギュラーに近づくのは危険ではないかい?)」
「大丈夫大丈夫。ジョジョが時を止められる目処はだいたいわかっているから、それを踏まえて立ち回れるわよ。
それに今更潰しに行こうったって、流石に陣地に乗り込んだら無事じゃ済まないと思うわ。多分あっちはここみたいに気軽に壊せないでしょうし、攻め込むにも時期を見計らわなきゃね」
やや不安な様子のトワイスに回答しながら、負傷した今は流石に人目を避けようと判断したガンナーは霊体化を果たした。
そして、最後に目撃した位置と進行方向から割り出した目的地に向かって、高速移動を開始した。
◆
……祖父らしき高齢の男性に肩車をされてはしゃぐ、小さな女の子。
ベンチに腰掛け、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でる女性と笑顔を見せるその友人。
和気藹々と追いかけっこする腕白な子供たち。そのうちの一人が落とした帽子を拾って、丁寧に汚れを拭った後に優しく手渡す若い清掃員。
のどかな昼下がり。スノーフィールド中央公園を訪れた人々は、誰もが各々の時間に没頭していた。
「――今、止まってたぞ。おまえ」
何気なく瞳に映り込んだ、暖かな眺めに見惚れていた最中。唐突に、そんな言葉を隣に現れたライダーから浴びせられ。噴水の縁へ腰掛けていたコレットは自身の感知し得ぬ間に、検証が終わったことを理解した。
「三回ぐらいな」
その言葉にコレットは、ライダーが腰を預けていたバイクからいつの間に離れていたのかわからなかったのが、聴覚が鋭敏になったはずの自身のうっかりではないと理解した。
「(そっか、全然気づかなかった……)」
数十分前に遭遇した奇妙な現象。
主観にして、およそ五秒間の――自分たちを除いだ世界の、時間停止。
誰がどんな意図を以って起こしたものかはわからないが、人為的な現象ならば再発の可能性があると推測したライダーはこの公園に場所を移した後、そこでコレットに協力を要請して来たのだ。
『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』から降りた状態で、再び時間が停止した場合――先程無事だったコレットは果たしてその対象に含まれるのか否か、という実験に。
そして再び訪れたその瞬間には、ライダーの宝具から降りたコレットもまた背後の噴水や公園内を行き交う人々と同じように、風になびく髪の一本一本に至るまで停止してしまっていたのだという。
「これで、単に関係者が除外されているって線は排除されたな」
聖杯戦争、という具体的な単語は口にせず。ライダーは昨夜の開幕宣言のような、聖杯戦争関係者に対するムーンセルの大規模干渉という可能性が無くなったことを告げてきた。
「(……やっぱり、誰かが『世界』の時間を止めているっていうこと?)」
「みたいだな。どこのどいつだかは知らないが」
周辺の様子を伺っていただろうライダーは、呟きとともに肩を竦めた。
どうやら近辺に該当者は居ないらしいが、それにしても時間停止能力者とは恐れ入る。
それは伝説の大魔術タイムストップや、それを再現した秘蹟アワーグラスのような驚異の御業だ。
……そんな天の奇蹟に等しい異能も、悪魔であるライダーには通用しない、とすれば絶大なアドバンテージだ。様子を見る限りは、宝具に頼らずとも彼自身の特性として耐性を持つらしい。
だがそれも、あくまでも現時点での推測に過ぎない以上、油断はできないだろう。
思考を巡らせたコレットの不安を察したように、ライダーはその口を開いた。
「……探してみるか?」
「(うん……ううん、やっぱり口裂け女の方が……)」
一度、流されるままに頷きかけた首を、コレットは横に振った。
聖杯戦争を止めるために、まず疑う予知もなく関係者である時間停止能力者と接触したい、という気持ちは確かにある。
けれど、やはり優先すべきは、NPCと化した市民にも明確な危害を加えている都市伝説を食い止めることだと、コレットは思う。
先程ライダーが英霊や魔術の徒ではないと判断した、公園内を行き交う人々の姿を見ればなおのこと、だ。
この、月の眼が観察する箱庭の中で人々が見せる営みは――押し着せられた配役で為す、偽りの風景に過ぎない。
けれども。裏返せばそれは、巡り合わせにさえ恵まれれば人々は隣人を慈しみ、親しき人を愛せるということの証明だ。
もちろん、意図したものであれ無自覚であれ、人が悪意を持つことは知っている。世の中には理由の有無に関わらず不幸もあり、そして避けようのない犠牲が求められることがあることも。
それでも、全てが克服できない悲しみばかりではないはずだ。生きてさえいれば、この公園に溢れているような幸福に辿り着けることもあると、コレットは信じたい。
だから、こんなところで彼らの命を理不尽に奪われることなど許してはならない、という一念が増していく。
「――――?」
そんな決意を再認していた中、ふとした違和感をコレットは覚えた。
……いつの間にか。視線の先に、一人の少女が現れていたからだ。
可愛らしいフリルをふんだんにあしらった、サテンドレスに身を包んだ白い童女。
衰退世界のシルヴァラントならいざ知らず、文明の進んだスノーフィールドであれば、それはさして珍しい衣装ではないかもしれない。
しかし、和気藹々とした市民公園を訪れるには些か不似合いに思えるその愛らしい姿が、寸前まで意識に上っていなかった事実に、コレットは奇異な印象を覚えたのだ。
気になって、もう少し観察してみれば――要人の息女にも思える出で立ちの幼い少女の近くには、保護者となるような人物が誰も見当たらなかった。
いいや、それどころか……コレットと、その視線に釣られたらしいライダー以外、公園に居る全ての人々が、良くも悪くも気を引きそうな一人の少女に、一瞥も寄越す様子がない。
「どうかしたのか?」
「(あっ、ううん……)」
ライダーの問いかけに、なんでもないよ、と首を振りながらも。
まるでただ独り、誰からも認識されない幻のようにして在る淡い姿が気になったコレットはつい、もう一度だけ、そちらに注意を向けた。
「あれ?」
――その瞬間、碧と紫の視線が結びついた。
他と比べて、明らかに自身を注視する気配の存在を察知した白い少女が、コレットの方へ振り向いたのだ。
不思議そうに、こちらを見つめて来るつぶらな瞳と相対し。あんまりじろじろと見て、失礼だったかもしれないと反省したコレットは、謝意を込めて頭を下げた。
「わあ……!」
だがコレットの所作に対し、少女は予想から少し外れた反応を見せた。
大きな感嘆の声を漏らし、華の咲くような笑顔を浮かべ。それから、とてとてとて、たったったっ、と。ずっと待っていた誰かのところへ急ぐように、コレットの方へ駆け出した。
接近者に気づいたライダーもそちらを向いた頃には、少女は手を伸ばせば届くほどの距離にまで詰めていた。
そして、息も整わぬ興奮した様子で、期待に満ちた眼差しで、彼女はコレットの顔を見上げて来た。
「おねえちゃん、あたしが見えるのね!?」
「――――?」
紫水晶の瞳を星空の如く輝かせながら、謎めいた問いかけを発する白い少女。
声を失くしたコレットは、返事のできない罪悪感と困惑を誤魔化すように、曖昧な微笑で喫驚する童女と向き合った。
互いが伴う破壊者の気配、そして躙り寄る闘争の臭いを、未だ知覚し得ぬままに。
運命の回す時計の針は、くるくると踊り始める。
【E-5 中央公園/1日目 午後】
【コレット・ブルーネル@テイルズオブシンフォニア】
[状態] 天使疾患終末期(味覚、皮膚感覚、発声機能喪失中)
[令呪] 残り三画
[装備] なし
[道具] チャクラム(破損中)
[所持金] 極少額(学生のお小遣い未満)
[所持カード] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に巻き込まれた全員の生還
0.えと、この子(ありす)は……?
1.聖杯戦争に関係のある被害を食い止める
2.まずは『口裂け女』事件と聖杯戦争の関連性を探る
[備考]
※ライダー(門矢士)が生きた人間(疑似サーヴァント)であることを知らされていません。
※スノーフィールドにおける役割は「門矢士に扶養されている、重度の障害を持つ親類」です。
【ライダー(門矢士)@仮面ライダーディケイド】
[状態] 健康
[装備] 『全てを破壊し繋ぐもの(ディケイドライバー)』、『縹渺たる英騎の宝鑑(ライドブッカー)』、『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』
[道具] 『伝承写す札(ライダーカード)』、『次元王の九鼎(ケータッチ)』
[所持金] 数百ドル程度
[思考・状況]
基本行動方針: コレットの十番目の仲間としての役目を果たす
1.コレットと協力し、彼女のサーヴァント、かつ、一人の仮面ライダーとして戦う
2.『口裂け女』事件を追う
[備考]
※サーヴァントですが、「(自称)フリーカメラマン」というスノーフィールドにおける役割を持っています。
※スノーフィールドでライダーが撮影した写真には奇妙な歪みが発生します。
※『世界』に働きかける時間停止能力者の存在を認識しましたが、正体や居所は把握できていません。
【ありす@Fate/EXTRA】
[状態]健康(?)
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針:遊ぶ
1.おねえちゃん(コレット)といっぱいおしゃべりして、遊びたい
2.タタリのおじさんの劇で、みんなと遊べるといいな
[備考]
※聖杯戦争関係者以外のNPCには存在を関知されません。
【バーサーカー(ジョーカーアンデッド)@仮面ライダー剣】
[状態] 狂化、霊体化
[装備] 『寂滅を廻せ、運命の死札(ジョーカーエンド・マンティス)』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:ありすの守護
1.――――――
2.―――■■
[備考]
※聖杯戦争関係者以外のNPCには存在を関知されません。ただし自発的な行動はその限りではありません。
※ありすの消耗を抑えるため、彼女の機嫌次第では霊体化することもあるようです。
【F-5 工場地帯/1日目 午後】
【ガンナー(マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ)@レイセン】
[状態] 顔面に軽度・左腕等に中度の火傷(再生中)、霊体化、コレットらを探して移動中
[装備] 無銘・『フリッツヘルム』
[道具] なし
[所持金] ほどほど
[思考・状況]
基本行動方針:トワイスとの契約に則り、人類規模の戦争を起こさせるために戦う
1.自分自身も『戦争』を楽しむ
2.再びツカサ(ライダー)と金髪の少女(コレット)を追う
3.二つのキャスター陣営の今後に期待。ただし、次に戦う時は見逃さない
[備考]
※闘争ではなく作業的虐殺になりかねないので、マスターは基本的には狙わない方針です。
※口裂け女の被害者に宿る、悪い気配を感じています。
※宝具由来の気配遮断は銃を使う上での技能なので、霊体化中では使用できません。
【E-5 中央病院/1日目 午後】
【トワイス・H・ピースマン@Fate/EXTRA】
[状態] 健康、魔力消費(小)
[令呪] 残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 医師相応
[所持カード] なし
[思考・状況]
基本行動方針:全人類のために大戦争を起こさせる、後継者たるマスターを見出す
1.当面は様子見を続ける
2.引き続きガンナーにイレギュラーのサーヴァント(門矢士)を追わせる
3.空条承太郎は早々に潰すべきと思うが、ガンナーにその気がない現状、どうしたものか
[備考]
※サイバーゴーストに近い存在ですが、スノーフィールドでは中央病院勤務の脳外科医という役割を得ており、他のマスター同様に市民の一員となっています。
※イレギュラーのサーヴァント・門矢士の存在を認知しました(ただし階位とクラス、「仮面ライダーディケイド」の真名は未把握)
※第五階位、第八階位がそれぞれキャスターであること、およびそのマスターの容姿を把握しました。
【D-6 路地裏/1日目 午後】
【音を奏でる者@Steel Ball Run 】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] ナイフ(精霊による祝福済)
[道具] 安物の服、特注の靴
[所持金] サンドマン主観で数カ月一人暮らしには困らない程度
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯により知識と富を獲得して土地を取り戻す。
1.ジェロニモに従いこの場から離れる
2.ジェロニモと同じタイプの魔術師に興味。接触を急ぐ
3.最後には倒すべき敵だが、マックルイェーガーには一つ借りができた
[備考]
※スノーフィールドでのロールはオールアップ済みのB級映画スタントマンです。
※『第七階位』の真名、ステータス及び姿を確認しました。
【キャスター(欠伸をする者)@Fate/Grand Order 】
[状態] 健康、霊体化
[装備] ナイフ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:サンドマンのために聖杯をとる
1..このエリアから迅速に離脱する
2.土地の力を借りる魔術師と早急に接触し、戦力を増強する
3.マックルイェーガーを警戒する
[備考]
※精霊を通じて水族館に魔術師が陣取っていること、自分以外にも土地の力を借りている魔術師がいること、土地自体に魔術的に手が加えられていることを把握しています。
他にも何か聞いているかもしれません。
※『第七階位』のサーヴァントがマックルイェーガーであることを知りました。
※マックルが水族館からの追手を脱落させるかは強く疑問視しています。
【F-6 水族館内、待機室/1日目 午後】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン】
[状態] 漆黒の殺意、若干の迷い、疲労(小)、精神疲労(中)、全身に打ち身等のダメージ(小)
[令呪]右手、残り二画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金]
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針: 『最初』に邪悪を滅ぼす。『最後』には……
0.やはりキャスター(笛木)は信用できない……
1.キャスターを利用し、目的を果たす
2.スタンドはサーヴァントにも有効、だが今のパワーでは心許ないらしい
3.聖杯符を入手し、可能ならスタンドを進化させる
[備考]
※スノーフィールドでのロールは水族館勤務の海洋学者です。
※『第八階位』のステータス及び姿を確認しました。
※『第七階位』のクラス、ステータス、宝具及び姿を確認しました。
【キャスター(笛木奏)@仮面ライダーウィザード 】
[状態] 健康、魔力消費(中・回復中)
[装備] 『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を掴み、暦を幸せにする
1.娘のために空条承太郎を利用し、聖杯戦争を勝利する
2.失われた魔力の回復に努める
3.ガンナーのような強敵とは、本体は陣地外での交戦を避ける
4.『第八階位』は……
[備考]
※承太郎の意向に関わらず自活するだけの力を得た、という発言が事実であるかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
[全体備考]
※正午頃、F-6 工場地帯でガンナーが列車砲を使用し、一区画を破壊しました。
|009:[[英雄と蛇、邂逅(前編)]]|投下順|011:[[学校の怪談、口裂け女のウワサ]]|
|~|時系列順|~|
|007:[[始まりはZero、終わりならZet]]|音を奏でる者|015:[[ブラックパンサーズ]]|
|~|キャスター(欠伸をする者)|~|
|~|空条承太郎|014:[[二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は月を見た。一人は星を見た]]|
|OP2:[[オープニング]]|キャスター(笛木奏)|~|
|001:[[神は沈黙せず]]|トワイス・H・ピースマン|013:[[静寂を破り、芽吹いた夢(前編)]]|
|~|ガンナー(マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ)|~|
|~|コレット・ブルーネル|~|
|~|ライダー(門矢士)|~|
|008:[[your fairytale/Bad Apple princess]]|ありす|~|
|~|バーサーカー(ジョーカーアンデッド)|~|
--------
*止まる『世界』、回る運命(後編)◆aptFsfXzZw
***PREV:[[止まる『世界』、回る運命(前編)]]
「あの女が銃を持っていたのは見たか?」
照明のない廃工場。踏み入ったの薄闇に目が馴染むまでの一瞬に、承太郎はキャスターに確認を行った。
果たしてキャスターは首肯し、仮面の奥から見聞を返す。
「ああ。飛び道具を使い、なおかつマスターが近辺に見当たらない様子からするとアーチャーだろう――対魔力持ちとは少々面倒だな」
「……訂正すると、あたしはガンナーね」
そこで微かに、痛みによって揺らいだ声で女が割り込んだ。
まだ痛みが抜けきっていないのか、それとも動揺の現れか、顔を掌で撫でながら『第七階位』――ガンナーのサーヴァントはゆるりと立ち上がり、承太郎たちと視線を結んだ。
あれだけスタープラチナで殴りつけてやったが、暗さに慣れた目に止まるほどの外傷はない。出血していた事実と矛盾がないように考えると、この短時間で治癒したのだろうか。
「銃使いのエクストラクラス。結構思い入れがあるから、ちゃんと呼んで貰えると嬉しいわ」
「良いだろう。つまり対魔力はないということだな」
《――Explosion, now――》
聞くが早いか、キャスターは準備しておいた指輪魔術を発動した。
宝具、『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』。キャスターが腰に装着する、ベルト状の呪文代行詠唱装置。
それがただの一小節で発動させたのは、空間を操る大魔術だ。
紫の魔法石の煌めきに合わせて、圧縮された高密度の魔力が炸裂する。
仄暗い工場の半分を爆炎が埋め尽くすその威力は、彼のマスターである承太郎が喰らったそれより遥かに増大していたが――ガンナーは既に、その範囲を知悉していたかのように躱していた。
小刻みなステップを挟みながらも、前へと跳んで。
爆風を背に接近するガンナーに、奇襲じみた一撃を避けられたキャスターも魔杖を片手に応じようとする。
しかし、彼が一歩踏み出すよりもさらに早く。
「――スタープラチナ・ザ・ワールド!」
再び、時間の流れが凍結した。
時間の停止した『世界』には、眼前のサーヴァントも入門できない。ならば有効打を浴びせられずとも、単純に体勢を崩させるだけでキャスターを有利にできる。
己がサーヴァントの手を借りるのは癪ではあるが、まずは一枚、『聖杯符』を回収することこそが優先される――そのように思考していた承太郎は次の瞬間、驚愕に打たれた。
「――何?」
それは――時間停止を発動するための意識の集中、その一瞬の隙に撒かれた、致死の罠。
停止した『世界』の中には、承太郎を取り囲むように配置された、コーラ瓶とも見紛う巨大な弾丸の群れが、剣山のように現れていた。
視線を巡らせれば、爆発を逃れる位置の工場の床や――空中に。乗用車の倍はある長さの、尋常ではない七銃身の巨大ガトリング砲が合わせて五門存在し、無人のまま夥しい量の弾丸を吐き出す最中に停止していた。
突如として出現した異様な銃砲の群れと、その神速の早撃ちが、銃使いの英霊の仕業によるものとは即座に看破できた。
だが、その変化した状況の再把握と解析までに一秒以上、承太郎は限られた時間を行使してしまっていた。
スタープラチナの超視力は、サーヴァント同士の高速戦闘をも容易に把握する。
しかし迎撃などを自動でさせるわけでもないなら、その視覚で得た情報を処理し判断するのは、あくまで生物学的に人間である[[空条承太郎]]の脳神経だ。
サーヴァント本体の動きを注視し過ぎて、時を止める瞬間に生じる隙、そこで放たれた攻撃へと気づくのが遅れてしまったのだ。
(既に発射された数だけで、三十八発……)
思わず連想したのはエジプトの決戦時、DIOの繰り出して来たナイフ投げか。
だが、明らかにあのナイフ以上に重量があり、しかも停止した弾頭付近が空気を圧縮してかげろうのように揺らめいているのを見るに、弾速も音の壁を越えている。それだけの運動量を前にしては、あの時のように腕の一振りで何発も弾くといった芸当も困難だ。
(……停止していない場合だと、一門相手にスタープラチナのラッシュが追いつくかどうか。最短距離は弾幕に潰されている。捌いて攻め込むには手数が足りない)
回避に徹するしかないという苦渋の結論を下し、同時にガンナーへの攻撃を諦めざるを得なくなった承太郎はバックステップで後退。必要以上にスタンドパワーを浪費する前に時の運行を再開させる。
直後、鋭角の衝撃波を伴った砲弾が床を穿って炸裂し、別の射線が工場の壁を内から食い破って外へ飛び出して行った。
(――焼夷弾か)
「オラオラアッ!」
人払いが済んでいたことに安堵するより早く、射線が動く。追ってきた弾丸を、スタープラチナが高速かつ精密な動作で横合いから殴り飛ばして軌道を逸らす。
星の白金の狙いは正確。自然発火を誘発することなく、衝撃派の猛威からも射線を免れたが、予想以上に重い。
この勢いでは躱し切ることすらできないかもしれない――そんな悪寒が脳裏を掠めた直後、承太郎の前に白い影が割り込んだ。
「下がっていろ」
その正体は、展開した魔法陣で秒間三百五十発の弾丸をあっさりと遮断しながら、未だ魔力で輝く指輪を翳したキャスターだった。
直後、五箇所で立て続けに爆発が起きる。ガンナーの設置していた五つのガトリング砲をほぼ同時に、空間爆破の魔術で破壊していたのだ。
……承太郎とは桁違いの防御力と、圧倒的な攻撃力。
人が、馬ほど早く走れないように。あるいは魚ほど上手く泳げないように。能力は通用するとしても、スタンド使いとサーヴァントでは、基礎的なスペックに大きな格差があることを強く再認識させられる光景だった。
そんな、サーヴァントの強大さを知らしめた一因たる指輪が、突如としてキャスターの掌から弾け飛ぶ。
犯人は当然、ガンナー。手にした大型拳銃、デザートイーグルでの精密射撃は、サーヴァントの指を曲げることもできず、魔法石で作られた指輪を壊せないまでも、キャスターの指から脱落させるには充分な威力を持っていた。
「うん、下がっていた方が良いわよ。向かって来るなら、もうあたしも容赦はしないから」
殺意を載せたはずの通告は、どこか爽やかな調子で言い放たれた。
「特にあなたの場合はね――ニンゲンとはいえ南米の神様の親戚みたいなものなんだもの、あなた。油断はしてあげられない」
「何を言っている?」
自身の家系図から完全に外れたガンナーの表現に、承太郎は思わず問い返していた。
「それよ、それ。その青紫っぽいヒトガタの」
キャスターに拳銃を向けたまま、ガンナーはスタープラチナを目で示して言う。
(こいつにもスタンドが見えているのか)
当初の戦いで、キャスターは完全にスタープラチナを視認していた。
それは承太郎と契約したからという線も考えていたが、どうやらサーヴァントは一律、スタンドを視認できると見ておく方が賢明そうだ。
「しかも、時を止められるなんて驚いたわ。納得はしたけど、それ、本当は天界とかの管理する権能よ?」
――能力の秘密を見抜かれた。
覚悟していなかったわけではないが、苦いものを噛み締めるしかない承太郎とは対照的に。
いつまでも余所見をする敵を前に待つほど、彼のサーヴァントは辛抱強くはなかったようだ。
無言のままに駆け出したキャスター。ガンナーが牽制で放つ大口径拳銃弾も、キャスターの手の甲が展開した魔導障壁には全くの無力だ。
距離を詰めた勢いのまま、直線、最速の突きとして繰り出されるキャスターの得物こそは宝具、『屍殻穿つ魔杖(ハーメルケイン)』。
ランクこそ低いが、魔力で構成されたサーヴァントに対しても特攻を発揮し得る強力な白兵武器。単純な物理破壊力だけでも、サーヴァントの膂力で繰り出される一撃は先のガトリングの一射を遥かに凌ぐ。
そんな必殺の刺突を、ガンナーは横への小さいステップのみで回避する。
最速の一撃をあっさりと躱されたキャスターはしかし、そのクラス傾向の例外に属する存在だ。近接戦闘においても目を瞠る技倆を有す彼は、ただのそれだけで動作が停滞する愚は犯さない。
キャスターは逃れた敵への追撃のため、淀みなく魔杖を翻す。
その瞬間、キャスターの引いた力に向け、合気のようにしてガンナーが発砲した。
サーヴァントに対しては豆鉄砲ほどの脅威にもならないだろう拳銃弾は、しかし放たれた瞬間、そしてその狙いが凄絶の一言に尽きた。
キャスター自身の力を利用するための、完璧なタイミングを余さず捉えたピンポイント連続射撃。不意に襲い掛かったマイナス方向の力は見事に彼を絡み取り、武器を取り零しかけたキャスターは体勢を崩し、そのまま後退した。
「まだ引きこもっているつもり?」
そして刃の間合いから逃れた途端、両手を下げて構えを解き、謎めいた問いかけを発するガンナー。まるで無警戒なその姿に対し、キャスターは慎重な所作で構えを直す。
この女のような手合も戦法も承太郎は目にしたこともなかったが、この様子を見るに、どうやらそれはこのサーヴァントにとっても同じであったらしい。
「そうだな。もう少しこのままで居させて貰おう」
「そう。じゃあ、こっちから引っ張り出してあげるしかないのかしら」
再び宝具を片手に斬りかかるキャスターに対し、撃ち尽くしたデザートイーグルの弾倉を取り替えるでもなく虚空に消したガンナーは手を上げようとして、瞬時にその身を屈めた。
距離を詰める、と見せかけてキャスターが一閃した杖より放たれた魔力の刃が、彼女目掛けて飛来していたのだ。逃げ遅れたフリッツヘルムが弾き飛ばされ、鉛色に輝く髪が数本、巻き起こった風に流されて行く。
屈んだ勢いのまま転がりつつ、手元に召喚したライフル銃を構えるガンナー。銃弾そのものの威力が全身を装甲したキャスターに通じるとは思っていないだろうが、指輪を狙っての精密狙撃が放たれる。
対するキャスターは指輪を嵌めた手の甲に魔法陣を展開し、射線を完全にシャットアウト。妨害を物ともせず、腰の宝具まで指輪を運ぶ。
「横だ!」
先の反省と、主戦場から距離を取っていた分、今度は承太郎の方が早く気づいた。
だが、如何に鋭く尖らせようと、肉声による警告では遅い。正面から狙うガンナーとちょうど十字となるように、空中に出現した一回り巨大なライフル銃は既に、音速に数倍する銃弾を発していた。
それは承太郎の警告が届くより早く、キャスターの構えた障壁をギリギリで掻い潜る入射角で突き進み、先の再現のようにしてキャスターの指輪を掌から弾き飛ばし、魔術の詠唱を阻止してみせた。
音速超過の攻防の中に銃弾を混ぜ込む、本人の凄まじい早撃ちと精密射。加えてそれを、何処からともなく召喚した、自在な射角を持つ銃砲でさえも可能とする。
単純ではあるが、現代兵器による飽和攻撃に神憑り的な精密性が加わることの脅威を、同じく精密動作を売りとするスタープラチナを持つ承太郎は理解した。
微かな戦慄を覚える承太郎の横で、キャスターは阻止された魔術に拘泥せず駆け出した。あらゆる角度から瞬時に狙い撃って来るこの敵には、一小節の詠唱は悠長過ぎると悟ったのだろう。
接近に合わせて立ち上がるガンナー。その手を降った勢いのまま、延長線上に今度は倍の計十門、美しい白銀の砲塔の列が翼のようにして拡げられ、即座に斉射された。
放たれた砲弾の初速と連射性は、先のガトリング砲に僅かに劣っていた。だが、弾丸はさらに二倍どころか三倍に迫る巨大さ、質量でいえば約二十倍。映画で見る戦車の主砲に採用されるようなそれだ。
それをキャスターは、指輪を介さず手の甲に展開した小さな魔術障壁だけで凌ぎきり、着弾の衝撃で僅かに速度を緩めながらも前進する。
遅れた颶風が、承太郎の頬を撫でる。余波だけで老朽化した工場に激震が走り、あわや倒壊しかねないだけの火力が行使されているのだ。
その照準を一身に集め、なお無傷の男は、遂に女を刃の致死圏に捉える。
繰り出された一突き。ガンナーは魔杖を横に流した掌で逸らし、軌道を曲げさせた。
同時、思い切りよく宝具を手放したキャスターの裏拳がそのまま、ガンナーの下顎を目指して翻る。
ガンナーは空いた手で顎を庇う。互いに弾き合った次の瞬間に、キャスターの右膝がガンナーの腹腔を狙うが、同じく閃いたガンナーの右足が迎撃。
連動して繰り出されたガンナーの左拳を、キャスターは右手に展開した魔法楯で逸らし、その勢いで互いに弾き合い、距離が離れたと思った瞬間、またも激突する。
キャスターとガンナー。本来は遠距離での攻防にこそ真価を発揮するクラスで現界したはずのサーヴァント二騎が、その原則に真っ向から背くかの如く、苛烈な白兵戦を展開し続ける。
瞬きも忘れるほどに白熱した、肉を打つ音が連続する攻防は果たして、どれほどの時間続いたのか。
濃密な一挙手一投足の交換の中、やがて生じた一瞬の間隙を衝き、キャスターが大威力のために魔杖の刃を後ろへ引く。
同時、ガンナーの頭上に出現した機銃が発砲。先の再現として、敵自身の動きを利用して体勢を崩させようとしたが、キャスターは当然学習していた。
刃を引いたのはブラフ。左の回し蹴りが突如として跳ね上がり、白き迅雷の如くガンナーの首を狙う。
しかしその動きを、ガンナーは既に見切っていた。
自身が銃撃しなかったことで空けていた両手で、キャスターの蹴りを完全に受け止める。そのまま追加の機銃掃射で重心を崩させたキャスターを持ち上げ、豪快なスイングで投げ飛ばした。
そして、宙で身動きの取れない獲物にガンナーが追撃の砲門を呼び出す――――その瞬間こそが、キャスターの狙いだった。
《――Yes! Special――》
背面を装甲された自身の背中、前面を手の甲に展開した簡易の魔導障壁。そして側面をは弾丸を通さないウィザードローブで遮断した状態で、なおかつガンナーを狙える体勢を作り出すことが。
「――っ!」
キャスターの指輪から放たれたのは、彼の膨大な魔力を変換した黄金の衝撃波。ガンナーの展開した銃砲の群れを破砕し、誘爆させ、そして彼らの主までもを呆気なく、破壊の奔流に呑み込んでいく。
《――Understand?――》
「――なんだと」
ベルトが詠唱を、指輪が魔力の照射を終えたと同時、キャスターの張り詰めた声をスタープラチナの聴力が拾った。
「……やるわね、今のは焦ったわ」
告げたのは、光の奔流に呑まれたはずのガンナーだった。
無傷、ではない。鉛色の髪は煤に汚れ、パンツァージャケットの左腕部は焼き切れている。その下の白い肌も、一部は熱を帯びて膨れ上がるのを通り越し、醜く焼き爛れていたが、なおも五体満足の立ち姿だ。
その傷ついた体からは、キャスターが放った物よりも澄んだ光の粉のようなものが舞っていた。
直後、その輝きが一層強まった気配を、ガンナーが身に纏う。
そして、工場最奥まで落下し終えたキャスターの元へと一気に駆けた。
その速度は、寸前までの比ではない。先の魔術も、その出力で直撃を逸らしたか。
咄嗟にキャスターは『屍殻穿つ魔杖(ハーメルケイン)』を口元に構え、不気味な音色を響かせた。
刹那、展開されたのはキャスターの身体を完全に覆い尽くす円形の魔法陣。手の甲に出現させていた簡易なそれとは、強度も範囲も桁違いの代物。
それを。
「せーのっ!!」
輝きを載せた拳の一撃、それ自体が砲弾と言わんばかりの勢いで、ガンナーはキャスターの魔法楯を弾き飛ばした。
魔導障壁は、なお砕けはしなかった。だが着弾の衝撃、その連動に引っ張られたように、キャスターの手から魔杖があらぬ方向へ投げ出される。
おそらくは、こうして防御手段を取り上げて、一瞬体勢を崩すだけで充分だったのだろう。
「……っ!」
思わず息を呑んだのは、承太郎か、それともキャスターか。
ガンナーが拳を振り抜いた、その瞬間に。彼女の背後に、超弩級の火砲が姿を顕したことに気づいたが故の、絶句。
それは本当に、度を越して巨大な砲塔だった。
工場に収まりきらない全長の、圧倒的な存在感を感じさせる大筒。承太郎の位置からは、その口径がどれほどの物かを視認することはできないが、馬鹿げた数字に決まっていると確信できた。
その、どう考えても何十キロも先の要塞を粉砕するために用いられるのだろう大砲が、ほぼゼロ距離と言って良い距離で照準するのは、キャスターという人間大のサーヴァントただ一騎。
承太郎をして心底戦慄した刹那。極限の緊張により加速した視野に、超巨大な鉄の塊が火を噴く、その予兆となる稼働が垣間見えた。
「――スタープラチナ・ザ・ワールド!!」
三度、承太郎は時を止めた。
列車砲への最短距離には、案の定。能力発動の隙にガンナーが配置した無人の機銃による弾幕が既に、展開されていた。
どの道、アレを殴って止めたところでこちらも無事では済まない。弾幕はそもそも無視して、一度だけ工場の奥に視線を向ける。
スタープラチナの射程は二メートル。停止時間は五秒間――キャスターを安全地帯に連れ出すことは不可能だ。
そこまで判断した時点で、身を翻して工場からの脱出を図りながら、承太郎はさらに思案を巡らせた。
令呪を使う? 時止めを解除してからでは命令が間に合わない。だが停止している時間の中で発した命令は、果たしてそれを認識できないだろうサーヴァントに有効なのか?
……そもそも、あの男を救う必要はあるのか?
募るのは疑問ばかりではなく、そのような黒く冷たい閃きもまた、承太郎の胸の裡に降ってきた。
これでキャスターが死ねば、奴の聖杯符が出現する。スタープラチナの能力を駆使し、ガンナーに先んじて回収できれば、目的の一段階をクリアできる。
その利益に引き換え、我が子を亡くしたとはいえ一個人の事情を理由にして、理不尽な犠牲をどこまでも撒き散らそうとしたあの邪悪を救う意義とは何だ?
だが……仮に、キャスターの聖杯符が出現したとして。それを、時間停止の発動とその隙を見逃さずに対処してきているガンナーに先んじて、回収できるという保証はあるのか?
聖杯符を確実に入手できる状態に持ち込む前に、サーヴァントという戦力を失ってこの先はあるのか?
……停止した時間の中で、無意味な思考が錯綜する。
迷っている場合ではない。迷いは弱さだ。
(あの頃の……おれなら、どうしていた?)
最も強かったあの頃。DIOを倒した時の若き自分。迷いなど欠片も持ち合わせることのなかった己なら、こんな時、どんな選択を――
「――オラアッ!!」
迷う間にも、まず己の生存のための脚は止めなかった。
スタープラチナが、外れかかっていた工場の鉄扉を留め具から引きちぎる。分厚い鉄板を抱えたまま工場から飛び出した頃には、猶予は残り一秒にまで迫っていた。
「――――令呪を以って命じる。躱せ、キャスター!!」
承太郎が叫び終えると同時、凍っていた『世界』の時は再び流れ出し――そして爆風が、何もかもを洗い流した。
◆
「ぬ……ぐぅ……っ!」
身体の節々に生じた痛みを知覚して、承太郎は目を覚ました。
あの馬鹿げた大砲の発射現場に、至近距離で居合わせてしまい、破滅的な衝撃波をモロに浴びた。
ただそれだけのことで、何の備えもなければ即死してしまっていただろう。飛来する破片から身を守るための頑丈な鉄扉のおかげで致命傷は受けなかったが、それでも吹き飛ばされて数秒失神していたようだ。
(……このザマじゃあガンナーから先手を取る、なんてのはどの道不可能だったろうな)
自身に覆い被さっていた鉄板をそろりと外しながら、承太郎は粉塵が濃霧の如く充満する破壊の跡で立ち上がった。
……寸前まで戦いの舞台となっていた工場は、跡形もなく消し飛んでいた。
それも、大部分はあの砲撃の標的になったからではなく、その発射の余波に巻き込まれただけで。
時を止めて外へ避難していなければ、承太郎も脳髄をシェイクされて御陀仏だったに違いない。
そして如何にサーヴァントとはいえ、この零距離射撃を前にしては、不死身を売りにしているような英雄でもなければ消滅は免れないだろう。
「令呪は……かっきり消えている、か」
右手の甲を見れば痣の一部、三画ある令呪の一つが欠けていた。時間停止中の命令は、どうやら令呪そのものには受理されたらしい。
ならば後は、その絶対命令を受け取る張本人――キャスターがあの砲弾を回避できたか、だが……
「……ぐぁ」
遠く、小さな苦鳴が聞こえた。
スタープラチナの聴力が拾ったその声の主を、スタンドの超視力が見つけ出し、解像する。
途端、承太郎は自身の体温が急速低下するような錯覚に見舞われた。
……か細い声の主は、着弾によるクレーターの縁に膝を着き、白い影を降ろすキャスター。
スタープラチナが目にしたのは、原石のような仮面がひび割れ、左腕から胴体の半分近くまでを飴細工のように引き千切られ喪ったキャスターが今、微細な魔力の粒子にまで分解されて消滅する、まさにその瞬間だった。
「――キャスター!」
「焦るな」
思わず身を起こした承太郎は、背後から降り掛かった声にさらなる驚愕を覚えた。
「――どういうことだ」
瞬時に混乱を呑み干し振り返った承太郎の、その視線の先にいるのは――埃一つ着いていない、真っ白な戦闘服を纏ったキャスターだった。
つい先程、目の前で消滅したはずのサーヴァントが晒す無傷な立ち姿に視線を険しくする承太郎に、新たに現れたキャスターは小さく鼻を鳴らす。
「何の事はない。先程までガンナーと戦い、今しがた消えたのは魔術で造った私の分身に過ぎん」
説明の言葉とともにキャスターが翳した手の甲の寸前で、火花が散る。それは先程、何度も目に焼き付けた光景の再演だ。
「うん、やっと出てきたわね。戦争ではちゃんと、自分の命を懸けないと駄目よ」
キャスターの出現に呼応したかのように、肉薄してきたのはガンナーだった。フリッツヘルムを被り直していた彼女は無傷ではないが、酷かった火傷は既に軽傷にまで回復している様子だ。
その口ぶりからすれば、どうやらガンナーは己が仕留めたキャスターが分身体に過ぎなかったことはとっくに――振り返れば接触したその最初期から、既に把握していたらしい。
詰るようなガンナーの物言いに、キャスターは肩を竦めた。
「生憎、この仮初の命は持ち合わせが一つしかないからな。工房の中で大切にさせて貰っている」
「自分のマスターは戦場に放り出しておいて?」
「当人の強い希望だったものでな」
キャスターの答えは事実だ。スタンドの伝承保菌論の実証、そして『天国』に到達するために必要な『聖杯符』の入手をと、静かに意気込んで承太郎は戦場に臨んだ。
だが、終わってみれば己は、ただの道化だった。
あるいは遭遇したのが眼前のガンナーよりも与し易い相手であれば、話は変わっていたかもしれないが――逆に、より苛烈な、危険なサーヴァントを相手にする運命になってしまっていたとしたら。
忸怩たる思いが、承太郎の口を塞いでいるのを知ってか知らずか。キャスターは契約上の主を顧みることなく一人、ガンナーと会話を続ける。
「とはいえ、このまま外で貴様とやり合うのは避けた方が賢明のようだ。だからマスターを迎えに来た」
「そう。じゃあ今回はこれでお開きにしましょうか」
意外な返答に、承太郎は微かに眉を動かした。
キャスターもまた、流石にこれは想定外だったのか、少し間を置いてから返答する。
「……随分とあっさり見逃してくれるものだな」
「まだ初日だもの。こんな序盤でキャスタークラスを落としてしまったら面白くないわ。
それにあなた達も、ジェロ――ああうん、これは藪蛇になりそうね。ただ個人的に期待しているとこがあるから、頑張って生き残ってみて」
「付き合いきれんな」
勝手気ままの過ぎるガンナーの物言いに、キャスターは邂逅当初のような苦笑を漏らした。
同時に、空間転移の魔術を起動。波打つ空間が彼自身と、承太郎とを呑み込んで、一瞬の暗転。
――視界が晴れた時には、破壊し尽くされた工場跡地から水族館にある承太郎の待機室にまで戻ってきていた。
「仮に奴が追撃してきたとしても、陣地内ならば遅れを取るような相手ではない。外から水族館ごと砲撃されても問題なく対処は可能だ」
テーブルを挟んで、承太郎と正反対の位置にまで歩を進めながらキャスターが解説する。
「分身一つ分の魔力を早々に潰されたのは損失だが、緒戦としては悪くない量の情報を得られたと言えるだろう。ガンナーの妨害で第八階位への追跡を一旦断念せざるを得ないことと――貴様が令呪を無駄に消費した以外は、な」
そして仮面越しに、侮蔑の言葉を投げかけてきた。
「……誰かさんが教えてくれていなかったからな」
対する承太郎は自身の不甲斐なさとキャスターの不実への怒りをせめぎ合わせながら、負け惜しみのように返すのが精一杯だった。
契約したマスター自身の透視力でも識別できなかった以上、そうと言われなければ同行していた相手が偽物などとは普通、考えるはずもない。
だが、事実としてこの魔術師は分身を作成でき、またガンナーはそれを容易く見抜き、スタープラチナ・ザ・ワールドの時間停止にも対抗できる洞察眼を有していた。
対サーヴァント戦闘は、それこそ複数のスタンド使いと同時に交戦する時以上に警戒を強めるべきであったし――何よりキャスターは信用できないという認識を徹底できなかった、己の至らなさへの反省は強く胸に刻むべきだ。
「それは悪かった。私としてはそもそも、貴様に明かす意義を見出していなかった。それで不利益を被るとは思えなかったからな」
素顔を晒さないままにキャスターが口ばかりの謝罪をして――それから、どこか呆れた調子で言葉を続けた。
「まさか――貴様が敵を討つためではなく、私を生かすために令呪を切るとは想像もしなかった」
「……単に、戦力を惜しんだ。てめーが分身におれを守らせたのと同じ理由だ」
そう、キャスターが承太郎を庇ったのは単にそれだけの理由だとは理解している。
仮に別の魔力供給源があるとしても、契約を喪えばサーヴァントは現世に留まるための要石を失くし、その間は万全の実力を発揮し得ない。
それを恐れただけの行動だとは、わかっていても。
DIOを討ったあの時の自分なら――損得勘定とはまた別に、自身の心に後味の良くないものを残すまいとしたはずだと、血迷ってしまった。
その迷いが、あの瞬間、承太郎の中の天秤を狂わせた。
「結果として、我々は令呪を一画無意味に失った、か。なるほど準備不足は高くついてしまったな」
仮面の奥から、溜息一つ。それからもう一息置いて、キャスターは承太郎に言う。
「良いだろう。次からは敵を騙すためにまず味方から、などという迂遠な真似は控えよう。貴様もどうやら、最後の希望を見据え始めたようだからな」
もう一度拳を握れるようになった、とでも告げたいのか。
歩み寄るようなキャスターの言葉は、しかし承太郎の胸の内に何ら響かない。
仮面の男は、承太郎の行為に絆されたわけではない。ただ、己のマスターが次なる愚行を犯さぬよう、制御しようとしてきているに過ぎないことが明白だったからだ。
先の戦いで、既に重々承知させられた。この男は信用できない、と。
だが。
「……そうだな」
……彼の、今は亡き娘を想う気持ちだけは本物だ。
選んだ道が間違ったものだとしても、目的を果たさんとする漆黒の意志、その強さだけは認められる。
そしてその一点だけは、確かに空条承太郎とキャスター――[[笛木奏]]は等しい存在だった。
信頼などない。だが、承太郎の見出した拳を握る理由――最初に復讐を果たすためには、ある程度聖杯戦争で勝ち抜く必要が確かにある。
それまでの間は、どれほどの屈辱であろうとも。己に与えられた唯一の手札であるこのキャスターを逆に利用するしか道はない。
「もう一度、詳しく話して貰うぞキャスター。おまえの能力を細かくな」
あの吐き気を催す邪悪を――娘の仇を討つための新たな力が必要だというのなら、それを手に入れるために如何なる艱難辛苦も飲み干そう。
その一念だけが敗北者となった父親を立ち上がらせる、最後の希望なのだから。
◆
「……ごめんなさいねトワイス。派手に暴れておいて、戦果なしで」
キャスターとそのマスターが転移した後。取り残されたガンナーは、未だ中央病院に居るトワイスに向けて念話を送っていた。
「(それ自体は構わないよ。結局のところ、私達自身は勝者にはなれないのだから)」
果たして戦いの趨勢を見守っていたトワイスは、ガンナーの謝罪をやんわりと受け入れた。
その上で、問いかけが一つ、投げられる。
「(……だが、彼らは本当に我々の後継になると思うか?)」
「欠落があったからこそ躍進する、という意味では、ジェロニモたちはその体現だと私は思うわ」
かつて、ゴヤスレイだった戦士ジェロニモは言うに及ばず。『第五階位』のキャスターもまた、何ら特異な因果と関わらずにいた平凡な男が、大切な何かを喪って英霊にまで到達した人間――ということは、最高ランクの千里眼を有するガンナーには見通せる事柄だった。
逆に彼のマスターである――見透かした身元証明品によるとジョータロー・クージョー……ジョジョは、何やらその血が大きな因縁を背負っていると思われたが、本人の置かれた現状はキャスターと近しいものと見えた。
そして、その身に秘めた成長の可能性に、当人が思い当たっているらしき気配も。
「(……だが、肉親に価値を見出す者が、私の思想に賛同してくれるとは思い難いが)」
「かもしれないわね。でも、盛り上げ役が成長した実例なのは良い配置になるでしょ?」
「(なるほど。そういう理由ならば許容しよう。少しヒヤヒヤさせてくれたが)」
ジェロニモに伝えた通り。長期戦でこそ真価を発揮するキャスターのクラスは、それだけ聖杯戦争を泥沼化させ、苛烈な物へとに育ててくれるだろう。
その中で、彼ら自身の心変わりを得られぬとしても。やがては彼らとも命の遣り取りをすることになる最後の勝者の目には、戦争の中でこそ輝く人間の姿が焼き付くはずだ。
それを乗り越えた者にこそ、己やトワイスの願いを託してみたいと、ガンナーは思っていた。
何の意外性も発展もなく、ただの既定作業として人々の命を潰えさせて行くような停滞した『世界』――そんな未来の到来をこそ、塗り替えて貰うために。
……もっとも。勝者として辿り着くのがヒデオのように、優し過ぎる人の子なら、その目には叶わない眺めかもしれないが。
それでも、戦争の中で成長した誰かが、また。陰惨で、卑劣で、卑怯で、容赦のない戦争を前にしても。人間としての知性を尽くして、勇気に満ち溢れた答えをくれるなら……きっと。あの日のマックルのように、トワイスも……
脇道に逸れた思考を閉まって、ガンナーは派手に破壊した周囲の様子をもう一度見回した。
「後始末とかの隠蔽はシエルたちがやってくれるのよね?」
「(そういう手筈だろうな。幸い、『第五階位』の手際がよかったおかげで目撃者もいないなら、君が気に留める義理はないだろう)」
「安心したわ。じゃあまた、例のイレギュラーを追ってみようかしら」
「(……あのイレギュラーを見失ったのがジョジョという男の影響なら。彼を生かしたまま、イレギュラーに近づくのは危険ではないかい?)」
「大丈夫大丈夫。ジョジョが時を止められる目処はだいたいわかっているから、それを踏まえて立ち回れるわよ。
それに今更潰しに行こうったって、流石に陣地に乗り込んだら無事じゃ済まないと思うわ。多分あっちはここみたいに気軽に壊せないでしょうし、攻め込むにも時期を見計らわなきゃね」
やや不安な様子のトワイスに回答しながら、負傷した今は流石に人目を避けようと判断したガンナーは霊体化を果たした。
そして、最後に目撃した位置と進行方向から割り出した目的地に向かって、高速移動を開始した。
◆
……祖父らしき高齢の男性に肩車をされてはしゃぐ、小さな女の子。
ベンチに腰掛け、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でる女性と笑顔を見せるその友人。
和気藹々と追いかけっこする腕白な子供たち。そのうちの一人が落とした帽子を拾って、丁寧に汚れを拭った後に優しく手渡す若い清掃員。
のどかな昼下がり。スノーフィールド中央公園を訪れた人々は、誰もが各々の時間に没頭していた。
「――今、止まってたぞ。おまえ」
何気なく瞳に映り込んだ、暖かな眺めに見惚れていた最中。唐突に、そんな言葉を隣に現れたライダーから浴びせられ。噴水の縁へ腰掛けていたコレットは自身の感知し得ぬ間に、検証が終わったことを理解した。
「三回ぐらいな」
その言葉にコレットは、ライダーが腰を預けていたバイクからいつの間に離れていたのかわからなかったのが、聴覚が鋭敏になったはずの自身のうっかりではないと理解した。
「(そっか、全然気づかなかった……)」
数十分前に遭遇した奇妙な現象。
主観にして、およそ五秒間の――自分たちを除いだ世界の、時間停止。
誰がどんな意図を以って起こしたものかはわからないが、人為的な現象ならば再発の可能性があると推測したライダーはこの公園に場所を移した後、そこでコレットに協力を要請して来たのだ。
『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』から降りた状態で、再び時間が停止した場合――先程無事だったコレットは果たしてその対象に含まれるのか否か、という実験に。
そして再び訪れたその瞬間には、ライダーの宝具から降りたコレットもまた背後の噴水や公園内を行き交う人々と同じように、風になびく髪の一本一本に至るまで停止してしまっていたのだという。
「これで、単に関係者が除外されているって線は排除されたな」
聖杯戦争、という具体的な単語は口にせず。ライダーは昨夜の開幕宣言のような、聖杯戦争関係者に対するムーンセルの大規模干渉という可能性が無くなったことを告げてきた。
「(……やっぱり、誰かが『世界』の時間を止めているっていうこと?)」
「みたいだな。どこのどいつだかは知らないが」
周辺の様子を伺っていただろうライダーは、呟きとともに肩を竦めた。
どうやら近辺に該当者は居ないらしいが、それにしても時間停止能力者とは恐れ入る。
それは伝説の大魔術タイムストップや、それを再現した秘蹟アワーグラスのような驚異の御業だ。
……そんな天の奇蹟に等しい異能も、悪魔であるライダーには通用しない、とすれば絶大なアドバンテージだ。様子を見る限りは、宝具に頼らずとも彼自身の特性として耐性を持つらしい。
だがそれも、あくまでも現時点での推測に過ぎない以上、油断はできないだろう。
思考を巡らせたコレットの不安を察したように、ライダーはその口を開いた。
「……探してみるか?」
「(うん……ううん、やっぱり口裂け女の方が……)」
一度、流されるままに頷きかけた首を、コレットは横に振った。
聖杯戦争を止めるために、まず疑う予知もなく関係者である時間停止能力者と接触したい、という気持ちは確かにある。
けれど、やはり優先すべきは、NPCと化した市民にも明確な危害を加えている都市伝説を食い止めることだと、コレットは思う。
先程ライダーが英霊や魔術の徒ではないと判断した、公園内を行き交う人々の姿を見ればなおのこと、だ。
この、月の眼が観察する箱庭の中で人々が見せる営みは――押し着せられた配役で為す、偽りの風景に過ぎない。
けれども。裏返せばそれは、巡り合わせにさえ恵まれれば人々は隣人を慈しみ、親しき人を愛せるということの証明だ。
もちろん、意図したものであれ無自覚であれ、人が悪意を持つことは知っている。世の中には理由の有無に関わらず不幸もあり、そして避けようのない犠牲が求められることがあることも。
それでも、全てが克服できない悲しみばかりではないはずだ。生きてさえいれば、この公園に溢れているような幸福に辿り着けることもあると、コレットは信じたい。
だから、こんなところで彼らの命を理不尽に奪われることなど許してはならない、という一念が増していく。
「――――?」
そんな決意を再認していた中、ふとした違和感をコレットは覚えた。
……いつの間にか。視線の先に、一人の少女が現れていたからだ。
可愛らしいフリルをふんだんにあしらった、サテンドレスに身を包んだ白い童女。
衰退世界のシルヴァラントならいざ知らず、文明の進んだスノーフィールドであれば、それはさして珍しい衣装ではないかもしれない。
しかし、和気藹々とした市民公園を訪れるには些か不似合いに思えるその愛らしい姿が、寸前まで意識に上っていなかった事実に、コレットは奇異な印象を覚えたのだ。
気になって、もう少し観察してみれば――要人の息女にも思える出で立ちの幼い少女の近くには、保護者となるような人物が誰も見当たらなかった。
いいや、それどころか……コレットと、その視線に釣られたらしいライダー以外、公園に居る全ての人々が、良くも悪くも気を引きそうな一人の少女に、一瞥も寄越す様子がない。
「どうかしたのか?」
「(あっ、ううん……)」
ライダーの問いかけに、なんでもないよ、と首を振りながらも。
まるでただ独り、誰からも認識されない幻のようにして在る淡い姿が気になったコレットはつい、もう一度だけ、そちらに注意を向けた。
「あれ?」
――その瞬間、碧と紫の視線が結びついた。
他と比べて、明らかに自身を注視する気配の存在を察知した白い少女が、コレットの方へ振り向いたのだ。
不思議そうに、こちらを見つめて来るつぶらな瞳と相対し。あんまりじろじろと見て、失礼だったかもしれないと反省したコレットは、謝意を込めて頭を下げた。
「わあ……!」
だがコレットの所作に対し、少女は予想から少し外れた反応を見せた。
大きな感嘆の声を漏らし、華の咲くような笑顔を浮かべ。それから、とてとてとて、たったったっ、と。ずっと待っていた誰かのところへ急ぐように、コレットの方へ駆け出した。
接近者に気づいたライダーもそちらを向いた頃には、少女は手を伸ばせば届くほどの距離にまで詰めていた。
そして、息も整わぬ興奮した様子で、期待に満ちた眼差しで、彼女はコレットの顔を見上げて来た。
「おねえちゃん、あたしが見えるのね!?」
「――――?」
紫水晶の瞳を星空の如く輝かせながら、謎めいた問いかけを発する白い少女。
声を失くしたコレットは、返事のできない罪悪感と困惑を誤魔化すように、曖昧な微笑で喫驚する童女と向き合った。
互いが伴う破壊者の気配、そして躙り寄る闘争の臭いを、未だ知覚し得ぬままに。
運命の回す時計の針は、くるくると踊り始める。
【E-5 中央公園/1日目 午後】
【[[コレット・ブルーネル]]@テイルズオブシンフォニア】
[状態] 天使疾患終末期(味覚、皮膚感覚、発声機能喪失中)
[令呪] 残り三画
[装備] なし
[道具] チャクラム(破損中)
[所持金] 極少額(学生のお小遣い未満)
[所持カード] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯戦争に巻き込まれた全員の生還
0.えと、この子([[ありす]])は……?
1.聖杯戦争に関係のある被害を食い止める
2.まずは『口裂け女』事件と聖杯戦争の関連性を探る
[備考]
※ライダー([[門矢士]])が生きた人間(疑似サーヴァント)であることを知らされていません。
※スノーフィールドにおける役割は「門矢士に扶養されている、重度の障害を持つ親類」です。
【ライダー(門矢士)@仮面ライダーディケイド】
[状態] 健康
[装備] 『全てを破壊し繋ぐもの(ディケイドライバー)』、『縹渺たる英騎の宝鑑(ライドブッカー)』、『世界を駆ける悪魔の機馬(マシンディケイダー)』
[道具] 『伝承写す札(ライダーカード)』、『次元王の九鼎(ケータッチ)』
[所持金] 数百ドル程度
[思考・状況]
基本行動方針: コレットの十番目の仲間としての役目を果たす
1.コレットと協力し、彼女のサーヴァント、かつ、一人の仮面ライダーとして戦う
2.『口裂け女』事件を追う
[備考]
※サーヴァントですが、「(自称)フリーカメラマン」というスノーフィールドにおける役割を持っています。
※スノーフィールドでライダーが撮影した写真には奇妙な歪みが発生します。
※『世界』に働きかける時間停止能力者の存在を認識しましたが、正体や居所は把握できていません。
【ありす@Fate/EXTRA】
[状態]健康(?)
[令呪]残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] なし
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針:遊ぶ
1.おねえちゃん(コレット)といっぱいおしゃべりして、遊びたい
2.タタリのおじさんの劇で、みんなと遊べるといいな
[備考]
※聖杯戦争関係者以外のNPCには存在を関知されません。
【バーサーカー([[ジョーカーアンデッド]])@仮面ライダー剣】
[状態] 狂化、霊体化
[装備] 『寂滅を廻せ、運命の死札(ジョーカーエンド・マンティス)』
[道具]
[所持金]
[思考・状況]
基本行動方針:ありすの守護
1.――――――
2.―――■■
[備考]
※聖杯戦争関係者以外のNPCには存在を関知されません。ただし自発的な行動はその限りではありません。
※ありすの消耗を抑えるため、彼女の機嫌次第では霊体化することもあるようです。
【F-5 工場地帯/1日目 午後】
【ガンナー([[マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ]])@レイセン】
[状態] 顔面に軽度・左腕等に中度の火傷(再生中)、霊体化、コレットらを探して移動中
[装備] 無銘・『フリッツヘルム』
[道具] なし
[所持金] ほどほど
[思考・状況]
基本行動方針:トワイスとの契約に則り、人類規模の戦争を起こさせるために戦う
1.自分自身も『戦争』を楽しむ
2.再びツカサ(ライダー)と金髪の少女(コレット)を追う
3.二つのキャスター陣営の今後に期待。ただし、次に戦う時は見逃さない
[備考]
※闘争ではなく作業的虐殺になりかねないので、マスターは基本的には狙わない方針です。
※口裂け女の被害者に宿る、悪い気配を感じています。
※宝具由来の気配遮断は銃を使う上での技能なので、霊体化中では使用できません。
【E-5 中央病院/1日目 午後】
【[[トワイス・H・ピースマン]]@Fate/EXTRA】
[状態] 健康、魔力消費(小)
[令呪] 残り三画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金] 医師相応
[所持カード] なし
[思考・状況]
基本行動方針:全人類のために大戦争を起こさせる、後継者たるマスターを見出す
1.当面は様子見を続ける
2.引き続きガンナーにイレギュラーのサーヴァント(門矢士)を追わせる
3.空条承太郎は早々に潰すべきと思うが、ガンナーにその気がない現状、どうしたものか
[備考]
※サイバーゴーストに近い存在ですが、スノーフィールドでは中央病院勤務の脳外科医という役割を得ており、他のマスター同様に市民の一員となっています。
※イレギュラーのサーヴァント・門矢士の存在を認知しました(ただし階位とクラス、「仮面ライダーディケイド」の真名は未把握)
※第五階位、第八階位がそれぞれキャスターであること、およびそのマスターの容姿を把握しました。
【D-6 路地裏/1日目 午後】
【[[音を奏でる者]]@Steel Ball Run 】
[状態] 健康
[令呪]残り三画
[装備] ナイフ(精霊による祝福済)
[道具] 安物の服、特注の靴
[所持金] サンドマン主観で数カ月一人暮らしには困らない程度
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針: 聖杯により知識と富を獲得して土地を取り戻す。
1.ジェロニモに従いこの場から離れる
2.ジェロニモと同じタイプの魔術師に興味。接触を急ぐ
3.最後には倒すべき敵だが、マックルイェーガーには一つ借りができた
[備考]
※スノーフィールドでのロールはオールアップ済みのB級映画スタントマンです。
※『第七階位』の真名、ステータス及び姿を確認しました。
【キャスター([[欠伸をする者]])@Fate/Grand Order 】
[状態] 健康、霊体化
[装備] ナイフ
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:サンドマンのために聖杯をとる
1..このエリアから迅速に離脱する
2.土地の力を借りる魔術師と早急に接触し、戦力を増強する
3.マックルイェーガーを警戒する
[備考]
※精霊を通じて水族館に魔術師が陣取っていること、自分以外にも土地の力を借りている魔術師がいること、土地自体に魔術的に手が加えられていることを把握しています。
他にも何か聞いているかもしれません。
※『第七階位』のサーヴァントがマックルイェーガーであることを知りました。
※マックルが水族館からの追手を脱落させるかは強く疑問視しています。
【F-6 水族館内、待機室/1日目 午後】
【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 Part6 ストーンオーシャン】
[状態] 漆黒の殺意、若干の迷い、疲労(小)、精神疲労(中)、全身に打ち身等のダメージ(小)
[令呪]右手、残り二画
[装備] なし
[道具] なし
[所持金]
[所持カード]
[思考・状況]
基本行動方針: 『最初』に邪悪を滅ぼす。『最後』には……
0.やはりキャスター(笛木)は信用できない……
1.キャスターを利用し、目的を果たす
2.スタンドはサーヴァントにも有効、だが今のパワーでは心許ないらしい
3.聖杯符を入手し、可能ならスタンドを進化させる
[備考]
※スノーフィールドでのロールは水族館勤務の海洋学者です。
※『第八階位』のステータス及び姿を確認しました。
※『第七階位』のクラス、ステータス、宝具及び姿を確認しました。
【キャスター(笛木奏)@仮面ライダーウィザード 】
[状態] 健康、魔力消費(中・回復中)
[装備] 『詠うは白き慟哭の声(ワイズドライバー)』
[道具] なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を掴み、暦を幸せにする
1.娘のために空条承太郎を利用し、聖杯戦争を勝利する
2.失われた魔力の回復に努める
3.ガンナーのような強敵とは、本体は陣地外での交戦を避ける
4.『第八階位』は……
[備考]
※承太郎の意向に関わらず自活するだけの力を得た、という発言が事実であるかどうかは後続の書き手さんにお任せします。
[全体備考]
※正午頃、F-6 工場地帯でガンナーが列車砲を使用し、一区画を破壊しました。
|009:[[英雄と蛇、邂逅(前編)]]|投下順|011:[[学校の怪談、口裂け女のウワサ]]|
|~|時系列順|~|
|007:[[始まりはZero、終わりならZet]]|音を奏でる者|015:[[ブラックパンサーズ]]|
|~|キャスター(欠伸をする者)|~|
|~|空条承太郎|014:[[二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は月を見た。一人は星を見た]]|
|OP2:[[オープニング]]|キャスター(笛木奏)|~|
|001:[[神は沈黙せず]]|トワイス・H・ピースマン|013:[[静寂を破り、芽吹いた夢(前編)]]|
|~|ガンナー(マックルイェーガー・ライネル・ベルフ・スツカ)|~|
|~|コレット・ブルーネル|~|
|~|ライダー(門矢士)|~|
|008:[[your fairytale/Bad Apple princess]]|ありす|~|
|~|バーサーカー(ジョーカーアンデッド)|~|
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