*ギルバート・デュランダル&キャスター◆lkOcs49yLc 今あなたが不運な状態にあるなら、それはあなたがそうなるように仕向けた結果です。 逆に、今あなたが幸運に恵まれているなら、それもあなたがそうなるように仕向けた結果です。 ―ジョセフ・マーフィーより ◆ ◆ ◆ 「しかし、聖杯戦争、か……。」 自邸の応接間で、相手のいないチェス盤を一人で弄っている、黒い長髪の男がいた。 名はギルバート・デュランダル、嘗てはプラントと呼ばれる惑星を率いていた男だった。 しかし嘗てはザフトを率いた彼も、今では只の学者だ。 それでもコーディネイターであったお陰か、遺伝子工学としての実績は有るようだが。 あの時、確かにデュランダルは死んだはずだった。 愛するタリアと、友と同じ顔を持ったレイと一緒に。 しかしどういう訳かデュランダルは此処に生きており、代わりにレイとタリアは消えた― タリアとはロール上での付き合いを持っているのだが、そのタリアは偽物だ。 生憎、デュランダルの知る彼女はいない。 (しかし、私はどうすれば良いのだろう……) デュランダルが思い浮かべたのは、己に銃を向けた少年だった。 その少年は万能に愛されていた。 本当の意味でデュランダルの親友とは真逆の道を生きており、彼を撃ったのもその少年であった。 だがそれでも、彼は只の人として生きようとしていた。 そして叫んだ、誰もが皆、明日を望んでいるのだと。 己に銃弾を向けたのは、自分の理想を信じ続けてきたはずのレイだった。 彼もまた、自らの計画に異を唱え、明日を望んでいるのだと、その時デュランダルは悟った。 人の生き方を選ばなくても。 人の運命を手繰らなくても。 人は、幸せに生きていけるのだと。 キラ・ヤマトと言う少年は、確かにそう言ったのだ。 『マスター、話がある。』 不意に、デュランダルの脳内に声が響き渡る。 己のサーヴァント、キャスターからだ。 キャスターは、デュランダル邸の地下室を陣地とし、作業をしていたのだが、恐らくそれが終わったのだろう。 『分かった、直ぐに向かう。』 ◆ ◆ ◆ 地下室に繋がるエレベーターを伝って、デュランダルは地下室に到着した。 エレベーターを降りて見渡せば、其処らにはデュランダルの知る所では無い道具が彼方此方に散乱してある。 デュランダルの知る所では、その空間は使いみちが見つからぬ故に放置されていたのだが、今ではキャスターの陣地となっているため、この様に道具が大量に置いてあるのだ。 「来たか、マスター。」 部屋の真ん中に立っているのは、黒い鉢巻を頭に巻きつけ、漆黒の鎧を纏った、一人の青年だった。 彼こそがキャスター、デュランダルが聖杯戦争において招き寄せたサーヴァントである。 「どうしたのかね、キャスター、何か見せたいものでも?」 「そうだ、早速試しに作った"号竜人"が完成したのでな、実用する前に貴様にも一度見せてやりたいと思った所だ。」 デュランダルの穏やかな態度に対し、キャスターは何処か素っ気ない態度で答える。 「"ゴウリュウジン"……君が言っていた、"ゴウリュウ"の事かね?」 「そうだ、その号竜を貴様にも見せてやる。」 ―号竜。 キャスターの発明した兵器だと、デュランダルは聞いている。 話に聞けば、「呪術」と呼ばれる特殊な術式を使い、デュランダルのいた世界でも存在し得ぬだろう素材を以って組み立てる兵器だそうだ。 キャスターの本領は、この「号竜」を組み立て手繰ることが武器なのだというのだが、デュランダルもそれは気になることでは有る。 「分かった、見せてくれ、君の作った"ゴウリュウ"なるものを。」 「良いだろう。」 キャスターはデュランダルの合図に答え彼に背を向け、その化物の様な形をした左掌に魔力を込める。 赤い球の様なエネルギー体がキャスターの掌に集まり、キャスターはそれを壁に目掛けて発射する。 発射された赤い球弾は壁にぶつかったかと思えば、壁に空間の穴の様な物を開ける。 その中から表れたのは、人、しかし、その姿格好はあまりにも異様すぎる。 その異様さには、デュランダルも思わず眼を見開いた。 両胸には呪詛のような物が書かれた半紙がぶら下げられ、顔には鏡のようなプレートが嵌められている。 まるで、個が、いや、人間性そのものが捨て去られた様な姿をしている。 これは人ではない、兵器だということを、デュランダルは雰囲気でそう感じさせられた。 嘗てシン・アスカが捕えたエクステンデッドにしても、彼処まで人間らしさは失われなかったろうに。 「これが、"ゴウリュウ"……なのかね?」 驚きを隠せないデュランダルに、キャスターが振り向き口を開く。 「そうだ、特にこの号竜人は、材料が少なく使い勝手も良くてな、俺も使い魔としては重宝していたよ。 機動力と隠密力はは高いが、火力は些か他の号竜には劣っていてな。 戦闘力の高い号竜については後々作る予定に有る。」 「少なくとも、戦力の心配をする必要は無い様だな。 しかし、キャスター。」 「何だ?」 デュランダルは、眉をぐっと潜めて俯く。 「私にも嘗ては、どうしても叶えたい願いがあった。 だが今では、それを叶えようとする気になれないのだよ。」 もし、嘗てのデュランダルが来ていたら、きっと「デスティニー・プラン」の実現を望むであろう。 人間が、運命という荒波に押し流されることもない世界。 ルークなら左右にのみ動き、ビショップなら斜めにのみ動き、ポーンは只前にのみ進み続ける。 子供が産めずにタリアと別れてしまった自分と同じ悲しみを知る人間がいない世界の到来を、デュランダルは待ち望み続けていた。 勿論、それが悪だという考えも分かる。 だが、このままで本当に良いのかと思えず、今更後戻りすることすら、自分には出来はしなかった。 だから計画を実行することにしか進む道は無かった、そう思っていた。 それを否定したのが、キラ・ヤマトだった。 更にレイもそれに準じ、己の理想を否定した。 デュランダルは、そうやってレイと同じ顔を持ち、同じ境遇に生きた人間を知っている。 ―ラウ・ル・クルーゼ。 デュランダルの親友だった彼は、只の人としては生まれることが出来なかった人間だった。 コーディネイターを生むためのクローンとして生み出され、失敗作となった彼は、人としての生を歩むことを許されなかった。 憎悪に狂ったクルーゼは連合とザフトを争わせ、キラ・ヤマトとの戦いの末に果てた。 レイもまた、こうして生み出されたクローンだ。 クルーゼの憎悪を受け継ぎ、クルーゼとして生きようとした彼だったが、彼はその考えを改めた。 只の人としての生を歩むことを、レイ・ザ・バレルと言う一人の人間として生きたいという想いを。 一発の銃弾に込めて、デュランダルを撃ったのだ。 これで良かったのだと、今なら言えるだろう。 「だが、生きてみようという願いなら有る。 例え生き方が歪められようとも、希望はあると。 嘗てそう言った少年の言葉を、私は信じてみたい。」 デュランダルが選んだのは、生存の道。 或いは脱出派、願いを叶えず、見定めた方針によっては聖杯を壊すことも考えている。 成るべく人を蹴落とす様な真似はしたくない、それでも「生きてみせる」。 聖杯を掠め取る気はない。 只、もう一度信じてみたいだけなのだ。 運命を決めつける事が無くても、人は人として生きていけるのか。 もしかしたら、自分は再びデスティニー・プランに手を伸ばそうとするのかもしれない。 だが、あのラウ・ル・クルーゼと同じく運命に弄ばれたはずのレイが否定したことは事実だ。 運命が決められることが無い人生を、もう一度歩んでみたい。 それこそが、今のギルバート・デュランダルが願うことだ。 ◆ ◆ ◆ ―光あるところに 、漆黒の闇ありき。 魔界と呼ばれる異界からは、陰我を通して常に「ホラー」と呼ばれる化物が他者を喰らっていた。。 ―古の時代より、人類は闇を恐れた。 それに抗う術を持つ者こそ、「魔戒法師」と呼ばれる存在であった。 ―しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、 人類は希望の光を得たのだ。 されどその魔戒法師の時代も終わりを告げ、世は「黄金騎士」を象徴とする「魔戒騎士」の時代へと移り変わった。 キャスターもまた、魔戒騎士の家に生まれ、それを誇りとして生き続けてきた男だった。 彼には才能があった、優しさもあった。 しかし、彼は卑怯だった、臆病だった。 故に騎士の名は渡されなかった。 キャスターは騎士を憎み、法師の世を取り戻そうとした。 だが、弟も、恋人も、己の理想を認めようとはしなかった。 彼は憎しみのままに彼等を捨てた。 どうして従わないのだ、どうして分からないのだと。 こうして法師が憎むべき存在へとその身を落としたキャスターだが、それでも道を止めることはなかった。 全ての魔戒騎士に、呪いの刻印を打ち付け、苦しませ、全ての騎士を消そうと企んだ。 伝説のホラーの骸と、それを素材とした最高傑作の力によって。 だがキャスターの野望は、儚くも破れ去ってしまう。 破ったのは、全ての騎士と、全ての法師達であった。 こうして己も、嘗ての友に破れ、嘗ての弟に、その筆を託した。 キャスターもまた、マスターと同様に願いを持たなかった。 魔戒法師と魔戒騎士が共存し、己の憎悪は友に否定された。 最早無念は無い。 もし無念があるとしたのなら、それは己が生きたいと思った生き方を貫けなかった事だ。 嘗て、己は護りし者として生きることが出来なかった。 だからせめて、この第二の生においてはもう一度、あの頃の自分が目指した護りし者に、もう一度、なってみたい。 それこそが、キャスターのサーヴァント、布道シグマの願うことだ。 ------- 【クラス名】キャスター 【出典】牙狼-GARO-~MAKAISENKI~ 【性別】男 【真名】布道シグマ 【属性】中立・悪 【パラメータ】筋力B 耐久C 敏捷A 魔力A+ 幸運C 宝具A++ 【クラス別スキル】 陣地作成:B 自らに有利な陣地を創りだす能力。 法術の行使に適した空間を創りだす他、外界からの接触を阻む結界を創り出せる。 道具作成:B+ 魔力を帯びた器具を創りだす能力。 生前「号竜」を創りだした逸話から、号竜の作成に長けている。 しかしキャスターが作成するのは理念こそ同じではあるが布道レオの発明品とは別物であり、「号竜人」「リグル」「鉄騎」等多種多様なバリエーションを持っている。 また、号竜の作成に必要不可欠なソウルメタルの錬成もホラーの骸無しに可能となった。 【保有スキル】 法術:A 魔戒法師が使用する魔術基盤で、呪術系統の1つ。 「魔導筆」と呼ばれる礼装を媒介にして行使する。 彼は神童と呼ばれた布道レオすら上回る法術の才能を持っていた。 ギャノンの骸:EX キャスターが入手した伝説のホラーの骸。 宝具の核ともなる重要な存在で、キャスターの仮面と腕を作り出し力を与えている。 生前は彼の強い憎悪に反応して暴走した為、相当に危険な代物とも言える。 戦闘続行:B 往生際が悪い。 致命傷を受けない限り戦闘を続行する。 【宝具】 「術師の世を開く抑止の竜(イデア)」 ランク:A++ 種別:対界宝具 レンジ:1000 最大捕捉:10000 キャスターが魔戒騎士に対する怨念を以って設計した「最強の号竜」。 ギャノンの骸を核とした、「全てのホラーを消し去る存在」。 キャスターが乗っている球体状のコアに、四つの柱が手足に変形し合体することで完成、巨大な竜の姿へと形を変える。 ただし、これを発動するには一からの作成が必要となり、動力源に一人の生贄と膨大な魔力を要する。 その上乗っているものの邪念に反応したギャノンが暴走しイデアが乗っ取られる危険性もある。 しかしその戦闘力は申し分なく、一撃が核兵器に匹敵する威力となり、更にキャスターが作成した無数の号竜を使い魔として操ることが出来る。 「破滅の刻印」 ランク:C 種別:呪術宝具 レンジ:2 最大捕捉:1 キャスターが魔戒騎士達に埋め込んだ呪い。 これを胸に埋め込まれたサーヴァントは、宝具を使う度に刻印に魔力を吸い取られる。 解放型は使う度に追加でダメージを喰らい、常時発動型は常に魔力を奪われることとなる。 解呪はキャスターにしか出来ない為、これを埋め込まれたサーヴァントは魔力に悩まされることとなる。 【Weapon】 「魔導筆」 キャスターが愛用した筆。 霊獣の毛皮を筆毛にした、魔戒法師の礼装。 魔戒剣の様に筆毛を刃に変化させることも出来る。 「ギャノンの腕」 ギャノンの骸を基に創りだした義手。 破滅の刻印の埋め込みやホラーの力を行使するときなどに使用する。 「号竜人」 人型の号竜。 他の人間に姿を偽装することも出来る。 「リグル」 人と化物、双方の顔を持つ巨大な号竜。 壁にカモフラージュして潜ませることが出来る。 「鉄騎」 リグル同様、壁にカモフラージュして隠すことが出来る号竜。 だがこの号竜はキャスター自ら乗り込んで操縦する。 【人物背景】 「閃光騎士」の称号を受け継ぐ家系の長男。 法術、剣術、何れにおいても並外れた才能を併せ持っていたが、「守りし者」としての心が無かったと判断され称号の継承権を失う。 それに憤り家を飛び出すが、父が死んでから「魔戒法師がホラーを倒す時代に戻そう」という思想を掲げ実家に戻り、弟のレオを誘う。 兄弟で考えた「号竜」の最高傑作「イデア」の完成の為にレオ、恋人のミオと共に日々頑張っていたが、しかしその手段を選ばないやり方に二人に疑問を抱かれる。 それに絶望し、激怒したシグマは逆上してミオを殺した後、完全に闇に堕ちてしまう。 それから全ての魔戒騎士に生命を蝕む「破滅の刻印」を宿した後、遂にイデアを完成させる。 だがイデアは暴走し計画は失敗、イデアが全ての魔戒騎士と法師に倒された後、往生際悪く黄金騎士に一対一の決闘を申し込み、儚くも敗れ去る。 目的のためなら手段を選ばない傾向から「守りし者」に相応しくない人物であることに間違いはない。 だが、根は誇り高く仲間思いな人物である事もまた確かな事実である。 【聖杯にかける願い】 友や弟ともう一度やり直したいという思いもあるが、それ程執着しているわけでもない。 只、嘗て夢見た「守りし者」として生きてみたいという気持ちもある。 【マスター名】ギルバート・デュランダル 【出典】機動戦士ガンダムSEED DESTINY 【性別】男 【能力・技能】 ・コーディネイター 遺伝子組み換えによって誕生した天才児。 人並み以上のポテンシャルを持つ。 ・カリスマ ザフト議長としての優れたカリスマ性。 ・遺伝子工学 嘗ては遺伝子工学の権威として名を誇っており、デスティニー・プランにもこの技術力が応用されている。 【人物背景】 コーディネイターの惑星「プラント」を統治するザフトの議長。 その温厚な人柄から、彼を慕う者は多い。 しかし目的のためには手段を選ばない傾向があり、己の邪魔をする人間は例えザフトの人間であろうとも排除するスタンスを取っている。 その目的とは「デスティニー・プラン」、全人類を遺伝子操作によって生ませ運命づけられた才能とそれに見合った人生を与えるという計画であった。 子供が作れなかった事で恋人と別れたことと、世界に絶望した親友の死が積み重なって作り上げた計画であったが、結局は失敗、友の顔を持った子に撃たれ倒れる。 メサイアが爆発した直前からの参戦。 【聖杯にかける願い】 元の世界に帰る資格も無ければ、あの夢を叶える気も無い。 だが運命に抗ってみたいという思いもある、その為にも死ぬわけには行かない。 ------