TITLE:さくらぁぁぁっ!
深夜2時に起床、たけし邸に向かう。 前日夜に釣具店に集合していた。前から気合十分だった自分を除き、ロングキャストできるロッドさえないたけしとコリンが新品の対サクラ兵器を購入するためだ。たけしはロッドを、コリンはリールも含めたフルセットを手に入れ翌日集合時間等を決めて解散。 今回はたけし・こりんとの3人旅だ。途中迎えにいったのに出かけているヤツや、犬になっているヤツを回収するようなことはなく、全員集合時間通り、さらに予定時刻より早く出発できた。急遽揃えたグッズを忘れることも無く、今までに無い順調な出だしだった。 しかし、出発当初周囲は真っ暗だったが、O市に入る前に明るくなり始める。S漁港付近で既に朝まずめを迎えてしまった。だが、あせりは禁物。ここでは銀色はあがらない。
道中、盛り上がっていたテンションはS町付近でピーク。海の様子は荒れ気味に見えた。所々波の穏やかなところはあったが、既に釣り人が入り、中には撤収し始めている人もいた。 ようやく釣り場に到着。T河口付近は風も強く、波も高めで好条件とは言いがたかった。そして普段は雪山でジャンプしているヤツが海にノコノコやってきて海神の逆鱗に触れたのだろうか、原田雅彦の生き写しコリンが釣り道具準備中強い風が吹いた。 新品のロッドは風に煽られて立てかけていた車の側面を滑るように倒れる。その先にはドアが口を開いて待っていた。「閉めておこう。」いや、もう遅い。コリンは自らの手で止めを刺した。「危ない、挟まるところだった。」いや、もう挟まった。 あわててドアを開けてロッドを手に取ると・・・ 死亡確認 。 &attachref 先端30センチはいっただろうか。蒼ざめたコリンをよそに準備を整えた二人。出発する頃には青を通り越して群青色になったコリンを引きずって浜に出た。 激しく白波がたつ上に昆布漁に来たのかと思わせるほどの海藻類。キャストしたルアーは、まりもっこり・・いや、まっくろくろすけのような形状になって戻ってくる。しかも激しく重たい。 海草だけでも波に引かれるとこの重さ。魚がかかったらとんでもないことになりそうだ。
骨折ロッドでも負けじと戦い続けたコリンはもちろん、荒れた海・冷たい風・そして釣れる気配の無い絶望的状況で、全員の脳裏に次の二文字が頭に浮かんだ。 &attachref 撤収 。 これは逃げるのではない、戦うために退くのだ。 凍えた3人はコンビニのトイレに駆け込んだ。
移動中、たけしが「ここだ!」と絶叫したポイントまで戻る。 日は高く上り既にバーストタイム終了を告げていた。しかし、ここまできて不完全燃焼で終わるわけには行かない。S川攻略が始まった。 &attachref 川から入って、海に向かってポイントを探りながら移動。川岸は始めは背の高いススキのようなものがまばらに生えていたが、次第にコンクリ舗装護岸になっていった。 ようやく長いロッドのキャスティングにもなれてきて、たけしと喋りながら川を探っていると・・・ ! 重たい! 何かいる! ギリギリとリールを巻くと、フックに引っかかった40センチオーバークラスの流木。 川底に沈んでいるもの以外にも、良く見ると上流から枝や流木がかなり流れてきている。 &attachref 大物だ、50アップだなどと言っていると、ルアーをほとんど手前まで寄せて引き上げようとしたとき、ガクンと重たい感触。根がかりした時にキツク閉めたドラグがギーィギィ悲鳴を上げる。 「 フィィーッシュッ!! 」 「またぁ」 たけし隊長、ひどすぎ。信用してないのね。 相当至近距離でヒットしたため、すぐに魚体が姿を現す。 バシャッ 白銀の腹が見えた。しかもデカイ。 バシャバシャ 背は薄緑、後はよくわからないが、どう考えてもサクラマス! 水面までは持ってこれるが、コンクリ護岸は50センチくらいある。その距離を引き上げなくてはならない。水中ではグングン縦方向に引き込まれる。水面に持ってくるとグルングルン回ってロッドが右に左に揺さぶられる。 これはどう考えても、護岸の上まで引き上げることはできない。 そうだ!こんなときは!! 「 たけしっ! タモ! 網貸して!! 」 「 ない。 」 死んだ。 サクラマスは激しくデスローリングを繰り返し、フックをはずして逃走した。 手足は震えていた。不思議とこのときは悔しい思いよりも、生サクラマスを見たこととあまりのパワーに圧倒されたことで混乱状態になっていた。
想像を絶するサクラパワーに打ちひしがれて、次にかかったときは、護岸の無い浜まで走るという原始的な作戦を立て、再度挑戦するも同じ場所で当たりはもう来ることは無かった。 そのまま一人海まで出て行ってみる。 海草はあまり無い。枯葉がかかるくらい。波もそれほど高くない。なかなかいけそうだ。 しばらくキャストして、どうも海底の様子が変。目の前は膝くらいの深さがあるが、その先はかなり浅そうだ。波しぶきを時々受けながら沖に向かって歩き出す。くるぶし位まで浅くなってまた深くなる。その手前に陣取って再開。 さっきのサクラマスがまぶたに焼き付いている。だんだん悔しくなってくる。悔しさで力みすぎてうまくキャストできない。じれったくなって少しずつ沖に歩いていたのだろうか、波しぶきが顔にかかる。 ミスキャストしたからさっさと回収しようと、早めに巻いていると、ガックン。 また、単純に巻いているだけの至近距離ヒット。 「 浜まで走るぞ! 」 振り返ると20メートル以上はある。知らない釣りおじさんがこっちを見ているのか、堤防のような高いところで釣り道具を持って立っていた。 重たい。 下がりながら、もっていかれないように浅瀬まで引きずる。さっきより腹回りが太くてまん丸に見える。またサクラマスだっ! 側面がピンクというか血がにじんでいるというか、赤っぽく見えた。 デカイ、重い、その上激しく暴れる。 くるぶしくらいの浅瀬まであと少し、抱きついてでもとる覚悟をしたとき。 ドザーッ 大きな波。ラインのテンションが一気に軽くなる。 リールを巻く。 もう、その時は重たい感触も、縦横無尽に暴れる感覚もなくなっていた。
浅瀬に倒れこみそうになりながら、隊長に敗戦報告。知らないおじさんは、浜まで降りてきていた。 「おまえなんかにゃ、まだまだ早い、わしが釣ってやる」 とでも言いたげにフライ竿を振っていた。 もう、ここまで来ると、打ちひしがれて悔しくてたまらなくなり・・・ 「 あれは、サクラマスじゃなくて流木だった。 」 と、現実逃避をはじめた。 いつかまた戦うことを誓って、お昼を食べに移動。 そこで一気に疲れと眠気に襲われる。隊長はラーメンまずいと文句もたれる。次のポイントまで移動中、運転者の自分を除いて二人とも沈黙した。
次のポイントに来ると、雲が出て日差しは届かなくなっていた。風も強い。寒い。
&attachref キャストもうまくいかないし、釣れる気配も無く、早々に撤収。 S川の魚たちは神風によって、フィニティ軍を退けたのだ。すごいぞ大自然。
そして、このままボウズで帰るわけにもいかないと、もう一箇所よっていく。日も沈みかかっていい感じなのだが、いかんせん神風は吹き続け、川は濁流。 またもや、歴史通り、S川の魚たちは、2度のフィニティ軍の侵攻を食い止めたのだった。 結果、3人合わせて0本ゲット。 あまりの悔しさに、翌日大きなランディングネットを購入しました。