ヤガタムギツク(矢形麦突、学名:Coreoleuciscus splendidus)は、条鰭綱コイ目コイ科に分類される淡水魚。本種のみでCoreoleuciscus属を構成する。
和名にはムギツクが付くが別属。朝鮮語名は쉬리(swiri)で、映画『シュリ』のタイトルはここから取られている。
分布
朝鮮半島固有種。大韓民国の漢江・洛東江・錦江・蟾津江と、日本海に注ぐ河川に生息する。
1935年、森為三が慶尚北道蔚珍において発見し、最初の科学的な報告を行った。森は、1936年に同地で産卵を観察し、1939年には錦江と蟾津江にも生息していることを発見した。
1966年4月から1989年10月まで行われた韓国における調査で、軍事境界線 (朝鮮半島)付近の非武装地帯の4909ヶ所の調査点のうち659ヶ所で発見された。しかし、黄海に注ぐ栄山江(全羅南道)・挿橋川(忠清南道)・安城川(京畿道)では発見されていない。
形態
全長10~15cmまで成長する。長く細い体を持ち、とがった先端部を持つ。目は小さく馬蹄形である。頭部は灰色がかった茶色で、背は暗い。腹部は明るい色をしており、しばしば白に近い。また、体の両側に沿って明るい縞模様を持つ。縞模様の多くは黄色で、まれにオレンジ色の縞を持つ個体もある。これはカロテノイド色素による発色である。
生態
一般的に、5月はじめから6月中旬に産卵する
人間との関係
1999年の韓国映画『シュリ』のタイトルはこの魚の現地名から取られている。ただし「シュリ」の表記は쉬리(swiri)の発音との隔たりが大きい。より原音に近く日本語に転記する方法としては「スィリ」「シィリ」「シュィリ」などがある。劇中の主人公と敵役の会話において、朝鮮固有種で軍事境界線付近に生息する本種が、朝鮮分断の状況と重ね合わせて象徴的に言及されている。本種の姿は主人公のオフィスの水槽に見ることができる。
最終更新:2011年01月23日 21:55