ウグイ

ウグイ(鯎、石斑魚、学名:Tribolodon hakonensis)は、コイ目コイ科ウグイ亜科に分類される魚。

生態

雑食性で体長は30cmほど(大きなものは50cmを超える)になる。全体にこげ茶色で側面に1本の黒い筋がある。腹部は繁殖期以外には銀白色である。春になると雌雄ともに鮮やかな3本の赤い条線を持つ独特の婚姻色へ変化する。婚姻色の赤い条線より「アカウオ」や「サクラウグイ」と呼ばれることもある。この時期には川の浅瀬で比較的流れの緩やかな直径2~5cmの礫質の場所を選び、集団で産卵をおこなう。 一生を河川で過ごす淡水型と一旦海に出る降海型がいる。降海型は北へ行くほどその比率が増す。

産卵行動は、水温が11~13℃に上昇する時期に始まり、直径2mm程度で粘着性のある淡黄色の卵を、流速10㎝/s以下の緩流部で藻の付着していない小石に産み付ける。卵は、水温13℃程度で約1~3週間かかり孵化する。孵化から1年目に約5cm、2年目に10~15cm程度に成長し、2~4年目で繁殖活動を行う。
なお、近縁種としては、北海道などの河川、湖沼に生息するエゾウグイ (Tribolodon ezoe) や、新潟県周辺の河川に生息する絶滅危惧種ウケクチウグイ (Tribolodon nakamurai) などが知られ、いずれも完全な淡水型である。 また、汽水域や内湾、沿岸域に生息し、産卵のために河川を遡上する遡河回遊魚、マルタウグイ (Tribolodon brandti) も、ウグイの近縁種の一つである。なお、ウグイとマルタとは交雑しやすい。


分布

沖縄地方を除く日本全国に分布する。多くの地方でオイカワやカワムツなどと一括りに「ハヤ」と呼ばれるほか、分布の広さからアイソ、アカハラ、クキ、タロ、ニガッパヤ、イダなど各地の独特な名前が付けられている。

河川の上流域~下流域に幅広く生息する。水生昆虫、水に落ちた昆虫、水底のコケ、小さな魚、魚の卵など何でも捕食する典型的な雑食性。補食に際して、群れを組んで泳ぎ回るので、橋の上などから魚影を確認することができる。 東北地方や北海道では上流から下流まで広く生息している。全国の河川でもっとも普通に見られた魚だが、関東地方などの河川ではオイカワやカワムツが増えウグイの生息域がだんだん上流に追いやられ個体数が減少傾向にある。

幅広い水域で見られる魚ではあるが、特筆すべきはpH 4以下の強酸性でも生きられる点であり、強酸性のためクニマスが絶滅した田沢湖や恐山の宇曽利湖や屈斜路湖、猪苗代湖等でも生息している。また、水質汚染が激しい水域でも割合生息が可能である。


漁獲

水遊びの相手として古来よりなじみ深い魚である。釣りでは、ほとんどの餌に食いついてくるため、他の魚を狙う場合にも釣れることがある。餌は普通の釣餌以外に魚肉ソーセージ、かまぼこなどの魚肉練り製品、イカの塩辛、鳥のレバー、カステラ、羊羹、干しぶどう、油揚げ、米粒、毛針などでも釣れる。また、小型ルアーを使うルアーフィッシングやフライフィッシングでも釣れる。引きは小さなサイズでもヤマメ、イワナと区別できないくらいパワフルである。マス類の禁漁期のターゲットともされている。

一部では海に下りたウグイをオオガイと呼び区別する。体長も大きいもので50センチを超えるものの、降海型は食用魚として認識されていないので、専門に釣る人はほとんどいない。また、生息域がハゼ等の食用魚と重なるため、それを専門としている釣り人からは餌取の外道として嫌われている。

専門の漁は4月から6月の産卵期に行われ事が多く、長野県の信濃川流域の一部地域では、流れの中に人工の産卵場所を作って魚を誘う「つけ場漁」と呼ばれる漁法で捕獲し、川に隣接した小屋で料理が提供される。茨城県、群馬県などでは、アイソ漁と呼ばれる梁漁が行われている。


料理

川魚独特の臭いと小骨が多いため(骨切りをすることでコリコリとした食感が得られる)一般的に食用としている地方は少ないが、甘露煮、塩焼き、天ぷら、燻製などで食用にされる。福島県の会津地方では、いずし(はやのいずし)にして食べる風習があった。なお、いずしはウグイの腸管に生育するボツリヌス菌により、致死率が高い食中毒を引き起こす恐れがあるので注意を要する。

滋賀県におけるなれずしの一種(鮒寿司)では、高級品であるフナの代わりに、安価なウグイを用いるときがある。


名前の由来

鵜が食う魚、海鯉(ウミゴヒ)、浮魚(水面近くを遊泳していることから)などの解釈がある。

文化


宮城県北上川上流の寺では不動尊の使いと扱われる。福島県には木屑を川に投じるとウグイに変貌したという伝説がある。

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最終更新:2011年01月29日 21:44
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