ブッキーはたまにすごく変な質問をしてくることがあった。
「もし誰かと入れ替わったらどうする?」
「明日死ぬなら何したい?」
最初の頃、あたしと美希は面食らってしまい何も答えられなかった。
すると彼女は滅多にそんなことしないのに、ぷいとそっぽを向いて帰ってしまうのだ。
答えても彼女が中身のないものだと判断したら少し拗ねてしまう。
今だにあたしと美希は彼女の問いに正解を答えているのか自信がない。
「ねぇ、もしも好きな人からフラれたらどうする?」
せつながブッキーを見た。美希はネイル作業を止めて訝しげに顔をあげる。
あたしはぽけーっとエアコンの肌寒さを感じながら煎餅を口にした。
「何かあったの?」
「ううん。聞いてみたいだけ」
「そうね……気持ちの整理はなかなかつかないかもしれないけど、フラれてもその人の幸せを願うわ」
せつなちゃんらしいねとブッキーは口にした。
せつなにはまだわからないだろうけど、ブッキーはつまらなそうな声色をしている。
ブッキーが美希を見た。
どうする美希たん。ここはブッキーの家。追い出されるのは勘弁したい。
「あたしは好きな人に好きな人がいたら、そっちをまずあたしに夢中にさせる。それからあたしの好きな人をフラせて、あたしの元に帰ってこさせる」
「好きな人の好きな人は?」
「それなりに楽しむ」
もう同性とかごちゃまぜだね。せつなが内容にびっくりしてるよ。
でもブッキーの興味はひけたみたい。
良い流れであたしの番になった。
「一、フラれた後監禁・束縛。二、体を奪う」
「強姦?」
「うん。三、最後にたくさん甘ったるく愛を囁いて受け入れてもらう終わり」
「付き合えるの?」
「三が成功するまで一と二をエンドレス」
せつなは真っ青で、美希はブッキーの様子を伺っている。
面白い……
ブッキーはぽつりと呟いた。
どうやら今回のミッションは成功したらしい。
あたしは安堵してジュースが入っているコップを手にした。
面白いねラブちゃん。
美希ちゃんのもいいかなと思ったけど愉しそう……
あたしは急に震えが止まらなくなった。
あたしにはないはずの第六感が逃げろと命じている。
美希も不安げな目であたしを見る。
「ラブちゃんはせつなちゃんと付き合ってるけど、私はラブちゃんのこと好きだったんだよ」
あたしは自分をほんとに愚かだと思った。
初めて正解した問いは、一番答えてはならないものだった。
ねぇ、せつなあたしが消えても泣かないでね。
あたしはずっとせつなが好きだから……
ふふっ
エンドレスって素敵
ラブちゃんが堕ちるまでってことでしょう?
END
最終更新:2011年08月02日 22:56