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新-341

39
なんてことはない金曜日の夜。
寝る前に飲んだ珈琲がいけなかったのでしょうか。なかなか寝付けません。

「うー、眠くないよぉ」

こういうときはどんなにふかふかのベッドで目を閉じても効果がありません。
そんな時、あなたならどうしますか?


「というわけで、第一回寝起きドッキリというか悪戯を開催しちゃいます。起きて、せつなちゃん!」
「うぅ、眠いわブッキー」

せつなちゃんは私の枕を抱きしめたまま寝ようとしている。この計画はアカルンがいなければ成立しない。彼女がいなければ中止になってしまう。

「美希ちゃんの寝てる姿見れるよ」
「好きな時に見に行ってるから」
「変態。明日水着撮影らしいから、痕つけないように裸かも……」
「早く行きましょうブッキー!」
「変態」

私は手早くバッグに必要なものを詰めこみ、急げと手招きをするせつなちゃんに抱き着く。
その瞬間赤い光が私たちを包み込んだ。


「着いたわ。さて美希はっっ」
「声大きいよ」
「わかったから口から手を離して」

部屋に着いた瞬間いい香りがする。アカルンは自慢げに私の回りを飛んでいる。
ちょっとだけ、ほんとにちょっとだけせつなちゃんの能力が羨ましくなった。

「ぶ、ブッキー……美希が」
「何?」
「服着てる」
「あ、来週の話だった」
「ガーン……来週また来よ」

ごめんね美希ちゃん。来週の責任は持ちません。

「可愛いね」
「うん。寝てる時すっごく無防備な顔するでしょ」

せつなちゃんは美希ちゃんの頬っぺたをぷにぷにと触っている。
起きるんじゃないかと心配になったが、美希ちゃんはすやすやと眠り続けている。

「じゃあ、早速。はいこれ」
「ペン?」
「うん。落書きしよう」
「なっ!そんなことは……」
「せつなちゃんの印が!痕が残せるんだよ!!」
「…………やる」

私とせつなちゃんは黒と赤のペンを手にした。

「ふふっ」
「まだ起きないんだ」

小声で話しながら身体を寄せあって、綺麗な顔にペンを滑らせる。
いつ起きるかわからなくてどきどきする。

「完成」
「いい出来だね」
「あっ」

つい気が緩んでしまったのだろう。せつなちゃんの手からペンが滑り落ちる。

コンッ
「っ………」
「あ!?」

美希ちゃんが眉を寄せながら寝返りをうつ。咄嗟に私はペンに手を伸ばした。

「んんー」
「へ?」

きゅっと抱き着かれ身動きが取れなくなる。女の子特有の柔らかい感触にドキッとした。

「美……希ちゃん?」

「ん……」

だんだんと彼女の顔が近づいてくる。
このままだと―――

「だめーーー!!!」

「ぶはっっっ」

美希ちゃんが孤を描きながら吹っ飛んだ。
せつなちゃんナイス!

………やり過ぎかなぁ。

「……ったた、はっ!何が起こったの!何でいるの!?」

目を覚ました美希ちゃんは頬っぺたの痛みと私たちの姿に混乱している。私はそっと電気をつけた。

「おはよう」
「ございます」
「おは……よ?」

とりあえず挨拶してみる。
まだ混乱しているらしい。

「何……してるの?」

「美希!」

せつなちゃんが美希ちゃんに抱き着いた。

「ちゅーは私にして!」
「意味がわかんない!」
「ブッキーに……キスしようとした!」
「えっ!?嘘」
「ほんと」

私が冷静に返すと彼女はさっと青ざめた。

「え、えーと、ほら!あたし寝てるとき変な行動とるし!無意識だったから」
「ほんと?」
「うん」

ぎゅーとせつなちゃんを抱きしめて必死に弁解をしている。
これはこれで中々面白いものが見れた。

「信じる。じゃあ一週間美希の枕を貸して」
「うん」
「あと―――」

美希ちゃんはまだ軽く寝ぼけてる上よほど混乱しているらしい。せつなちゃんの要求に肯定しかしめさない。
裸エプロンは流石に美希ちゃんの貞操の為に止めるべきかなぁ。
まぁ、いっか。

「ねぇねぇ美希ちゃん」
「何?」

私はそっと手鏡で彼女をうつした。



「さいってー!何しに来たのよ!」
「暇だったんだもん」
「美希の裸が見たかったんだもん」
「せつなうざっ。水性だったのが救いだわ。肉とか書かないで!」
「ヒゲは怒ると思って止めたよ」
「これでも怒るわよ!もー」
「美希ちゃん」
「何?」
「写真とっちゃった」
「ぎゃっ!?」
「ブッキー、私にも焼き増しして」
「ちゃんとせつなちゃん抱きしめてるとこも取ったから。美希ちゃんのアホ面」
「最高ね!」
「最悪よ………」
「なんだかんだ許してくれる美希ちゃん好き」
「あ!ブッキーってば。私は大好きだからね美希」
「あー、もうかなわないわよ」


40
「きたわね。ラブの部屋」

今度はメンバーが三人になった。さっきの出来事から回復したらしい美希ちゃんは、今回悪戯する側でわくわくしているようだ。

「ブッキー悪戯できるの?」
「…………」

正直ここに来るかぎりぎりまで迷った。最後は強引にせつなちゃんに連れられてきたのだ。
ラブちゃんはうさぴょんを抱きしめすやすやと眠っている。

か、可愛い………。

「うさぴょん取っちゃおうか?」

美希ちゃんがそっとラブちゃんが抱きしめているうさぴょんに手をかけ、一気に奪う。

「うー」

ラブちゃんが唸りながら手を伸ばす。

「わ、うさぴょん求めてる」
「起きちゃうわ。ブッキー」
「へっ?ちょっと」

せつなちゃんが私の背中を押した。

「おお!」
「落ち着いたみたい」

「これって……」

私はラブちゃんに抱きしめられる。心臓がバクバクと高鳴る。
美希ちゃんのときとは全然違う。
「せつなちゃん、助けて」
「ブッキー、ラブに悪戯するからちょっと待ってて」

状況がよく理解できていないせつなちゃんは私のバッグを漁っている。美希ちゃんはにやにや笑ってる。

「美希ちゃん!助けてよ」
「せつなにしてはナイスよね。何も知らないからだろうけど……じゃあ、あたしはせつなと悪戯にまわるから」

助けてくれる気はないらしい。
ラブちゃんはますます私に抱き着いてくる。

「あ、美希これは?」
「それ、いいわね。やっちゃおう。ラブ寝相悪っ」

二人の悪戯は決まったらしい。

「よし、いっきまーぶはっっっ」
「美希!」

私のアッパーは綺麗に入った。恐ろしいぐらい。

「何するのよ!」
「ワサビをラブちゃんに付けるとか許さないから」
「ブッキー、美希を殴るなんて!」

「うるっさーい」


「夜中に何考えてるの! ブッキーまで二人に付き合って」
「いや、発案者はブッキーで……」
「ブッキーがそんなこと考えるわけないじゃん」
「あたしってそんなに信用ない?」
「私は美希を信じてるけど」

私たちは床に正座して、ベッドの上のラブちゃんを見上げている。ラブちゃんは美希ちゃんが首謀者だと思っているらしい。

「はっ、うさぴょんは!?」
「ここにいます……」
「いつのまに!いつから?」
「大分前……」
「え?うーん。なんかずっとうさぴょんを抱いてたような……安心感があったような……」

私は真っ赤になってしまった。
美希ちゃんが濡れ衣を着せられたことなんてすっかり忘れて。


「よかったね」
「美希ちゃんのばーか」
「照れてる」
「ふん……」

そして美希ちゃんと二人帰ろうとして

「せつな寝ちゃってる!アカルンはせつなの言う事しか聞かないのに」
「泊まってく?」
「いいの。じゃああたしはせつなのベッドで」
「はあ!?許すわけないじゃんそんなの」
「じゃあラブの隣で寝ていいの?」
「美希たんとだと狭くなるからやだ」
「あたしは百貫デブか!じゃあどうすんのよ。床はエアコン直で当たるし遠慮したい」
「とりあえずせつなはあたしのベッドで寝てるからこのままで」
「じゃあじゃんけんでよくない?」
「あたしのベッドなのに。あ!?ブッキーまで寝てるし」
「え、何これデジャブ。もうせつなのベッドでよくない?」
「美希たん寝かせるのはヤダー。予備の布団は客間だから取りに行くとお母さんたち起きちゃうし。座布団とシーツはあるけど。枕がなーい。美希たん腕枕して」
「えーやだ。せつなのベッド行こうって」


なんだかんだ優しい二人。
ラブちゃんの匂いに包まれて、私の一日が幕を閉じた。


41
「アイス買ってきたよー」
「「「ありがとうブッキー」」」
「暑かった」
「じゃんけんで負けちゃったもんね。何買ってきたの」
「モナカのバニラとカップアイスのバニラとアイス棒のバニラとガリガ○君」
「「「ガリガ○君がいい」」」
「え?バニラ嫌い?」
「いや……なんかバニラ推し過ぎて」


42
「せつな、花火残ってるからやる?」
「やりたい!」
「やったら帰ってね。あゆみさんからせっちゃんが帰って来ないって、あたしに鬼電かかってくるし」
「うん。花火ってそんな細かったっけ?」
「これは線香花火って言って結構人気あるのよ。最後にしんみりとやるものかな」
「すごく綺麗……」
「ね。これね玉が落ちて終わりなんだけど、勝負しよっか。先に落ちた方が負けね」
「へー、うん。わかった……ぼーっとしてどうしたの?」
「え、や、あああ、な、何でもない(無邪気な姿が可愛いかったとか言えないっ……)」
「?じゃあ勝ったら一つだけ言うこときくのも追加ね」
「うん………あ、勝った」
「負けちゃった。何をきけばいい?」
「……せつなは何をあたしにしてもらいたかったの?」
「あはは、私はチューとか……」
ちゅ
「へっ?」
「はい、おしまい」
「美希!頬っぺじゃなくて口がいいっ!!」
「調子にのらないで!(あたし絶対毒されてる……)」


43
「アカルン、ごめんなさい」
「キィ」ぷいっ
「ああ、花火アカルンに落としたのは謝るから。そもそも花火を下から見ようとするから」
「キィ!?キィーー」
「ごめんてば。謝るから早く連れて帰って。あゆみさんからの着信が鳴りやまないんですけど」
「美希ー」
「てかもういっそ歩いて帰りなさいよ!」
「ブルンがいろんな服に着替えさせてくれる」
「あたしより仲良くない?」


44
「せつなちゃんは海は初めて?」
「ええ。すごく楽しいわね」
「せつなもブッキーも水着姿可愛い!」
「ラブちゃんもね」
「今日美希は?」
「水着姿になるのが恥ずかしいんだって。小さいから」
「気にしなくていいのに……でも確かに小さいけど」
「美希ちゃんの分も私たちが胸をはって遊びましょう」
「そうねブッキー」
(ブッキーひどっ。美希たん明日撮影だから絶対日焼けできないって言っただけなのに…)


45
「ブッキー助けて!!」
「どうしたのラブちゃん?」
「夏休みの宿題が終わらない」
「ねぇ、ラブ。もう学校始まって数日たつけど……」
「美希たん達みたいに計画的にやれなかったんだもん。あたしバカだから!」
「威張ることじゃないわよ」
「大丈夫よラブちゃん。私が力になるから」
「ブッキー天使!えっとね、こことかわからなくて……」
「ああ、そこはねまずはχを求めて――」
「ブッキー、あたしも宿題でわかんないとこが」
「美希ちゃんは自分でやれば」
「だからわかんないから聞いてるの!」
「馬鹿なの?」



続く
最終更新:2011年09月12日 01:35