コンコン。
「せつな、起きてる?」
ラ、ラブ!?
思考の海へと潜り込んでいた私は、一瞬にして覚醒する。
慌てて時計を見ると、時刻は午前1時30分。
普段の彼女ならとっくに眠っているはずの時間だ。
こ、こんな時間に、どうして私の部屋へ?
最近ラブがこの部屋を訪れることはめっきり少なくなった。
それは、私のラブに対する態度が原因ではあるのだけれど。
ラブと二人きりになるなんて、今の私には耐えられそうもない。
けど寂しい。ラブに会いたい。
私の中で、終わりのない葛藤が繰り広げられてきた。
でも今、ラブが訪ねて来てくれた。
こんな時間に、私の部屋に。
用件が何であれ、こんなに嬉しい事はない。
ラブの声が聞けた。ただそれだけで。
こんなにも、心が歓喜に震えている。
「せつな?入るよ?」
あ、と思ったときにはドアがそうっと開けられた。
私はとっさにドアに背を向け、寝たふりをする。
「・・・おじゃましま~す。」
そろり、そろりと彼女が近づいてくる気配がする。
心臓が早鐘の様に鳴り、体中が熱を帯び始める。
とっさの事とは言え、どうして寝たふりなんてしてしまったのか。
後悔が胸を過ぎるが、今更やめる事も出来ない。
何より、こんな状況でまともに彼女の顔なんて見れやしない。
ラ、ラブ。一体どうしたというの?
この状況って。ま、まるで夜這いみたいじゃない。
ありえないと思いつつも、淡い期待を抱かずにはいられない。
もし、もしもラブが-。
「ねぇ、せつな。」
彼女はそっと私の肩を揺すり、私をまどろみから呼び覚ます。
「ん・・・。どうしたの?ラブ。」
私は重い瞼を少し開け、焦点の合わない目で彼女を見つめる。
「せつな・・・一緒に寝てもいい?」
彼女は少し恥ずかしそうに俯きながら、私の目をちらちらと見てくる。
やっと頭がはっきりしてきた。ラブの不安そうな顔が目に映る。
私が断るとでも思っているのかしら?ホント、可愛い子ね。
「眠れないの?・・・怖い夢でも見たの?」
私は優しく彼女に微笑みながら、布団の端を上げておいでと手招きする。
彼女は顔を赤くしながら、私の横に潜り込んでくる。
「うん・・・。とっても怖い夢を見ちゃったの。」
潤んだ瞳で私を見上げ、パジャマの裾をキュッと握ってくる。
「可愛そうなラブ。一体、どんな夢を見たの?」
彼女の髪を優しく撫でながら、そう尋ねる私。
「・・・せつなが。せつながいなくなっちゃう夢。」
手を止め、彼女の潤んだ瞳を見つめる。
「あたし、あたし必死にせつなに手を伸ばしたの。でも、その手は届かなくって。」
震えている。まるで、本当に起こってしまった事であるかのように。
「せつなは、大丈夫よって。あたしを安心させるように微笑んで。けど!」
「もういいわ、ラブ。もう、話さなくてもいいのよ。」
「よくないよ!あたしは、あたしはせつなを!・・・んっ!」
彼女の唇を自分のそれで塞ぐ。彼女がもう、辛い言葉を吐き出さなくても済むように。
ゆっくりと唇を離し、再び彼女の瞳を見つめる。
「私は、ここにいるわ。どこにもいったりしない。ずっと、ラブの側にいるから。」
そういって、再び唇を重ねた。彼女の口内に舌を差し入れる。
「ん・・・せつな。あむ・・・ふぁ。せつな、せつなぁ!」
ラブも私の舌に自分のそれを絡めてくる。お互い、貪欲に相手の唇を貪った。
「せつな、せつな。もっと、あたしにもっとせつなを感じさせて・・・。」
私は彼女のパジャマのボタンに手を掛ける。
キスをしながら、器用にボタンをひとつずつはずしてゆく。
「お願い、せつな。せつながここにいるって。どこにもいかないって。あたしの体に、刻み込んで・・・。」
ゆっくりと、乳房に舌を這せてゆく。彼女の熱い吐息を感じながら、私はラブの体に溺れていった-。
はぁ、はぁ。
一瞬でそこまで妄想して、私は荒い息をつく。
た、たまらないわ。ラブ、なんて可愛いの!
やっぱりせつラブは最高だわ・・・。少し幼い感じのラブの仕草がポイントね。
・・・じゃなくて!こんな時に何を考えてるの、私は!
いつの間にかすぐ側にラブ来てるみたいだし!
ね、寝たふりって気付かれてないかしら。
さっきの妄想で体は火照ってるし、息遣いは荒くなってる。マ、マズイわ。
落ち着くのよ、せつな。そう、素数でも数えて心を静めるのよ。
2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47・・・。
「ねぇ、せつな。あたし、何だか眠れないの。・・・一緒に寝ても、いい?」
私は死んだ。(理性的な意味で)
「ねぇ、せつな。あたし、何だか眠れないの。・・・一緒に寝ても、いい?」
そう言って、あたしは眠っている彼女の肩に手を掛けた。
ビクッと彼女の体が震える。
やっぱり、起きてたんだ。でも、どうして寝たふりなんかするんだろう。
やっぱりあたしのこと、警戒してるのかな。
そうだよね。こんな時間にいきなりやってきて一緒に寝ようだなんて。
こんなの、どう見ても夜這いにしか見えないよね。
奮い立った心が萎みそうになる。
やめておけばよかった。そう、弱音を吐きそうになる。でも。
こんなのあたしらしくないよ。前に、進まなきゃ。
「せつな、入るよ。」
あたしは意を決して彼女の布団に潜り込む。
目に見えて彼女の背中が硬直するのがわかる。
でも、もう止まれない。もう、突っ走るしかない。
「せつな、あたしね。最近せつなに避けられてるみたいで、すごく悲しかったんだ。」
「あたしの態度が原因で、せつなが戸惑ってるのはわかってる。でも。」
「どうしようもないんだ。あたし、少しでもせつなに近づきたくて。」
「せつなにとっては迷惑かもしれない。でも、もう我慢できない。」
「あたしは・・・せつなの事が好き。友達としてじゃなく、一人の女の子として。」
言った。ついに、言ってしまった。
もう後戻りは出来ない。祈るような気持ちで、彼女の背中を見つめ続ける。
しかし、彼女は微動だにしない。まるで、時が止まってしまったかのように。
「せつな?」
突然、ガバっと彼女の体が覆いかぶさってきた。
両方の手首をつかまれベットに押し付けられる。
驚きに目を見開く。そこには、潤んだ瞳の彼女の顔があった。
「せ、せつな。どうし・・・んっ!」
唇が塞がれる。それがキスだと気付いたときには、彼女の舌が私の口内を蹂躙していた。
「ん!ンッんんーっ!」
何も考えられない。せつなが私に、キスをしている。
妄想ではなく、現実で。
あまりの驚きに、嬉しさよりも動揺の方が先に来てしまった。
こ、これって本当に現実なの?疑問符があたしの頭の中を飛び回る。
そんなあたしに構わず、せつなはあたしの顔にキスの雨を降らせてきた。
せつなにキスされた箇所がじんわりと熱を帯びている。
これがまぎれもない現実だと、あたしに突きつけるように。
これは、現実なんだ。せつなが、あたしに、キスしてるんだ。
少しずつ、心に喜びが広がってくる。
再び彼女の舌が口の中に入ってきた。
それに答えるように、今度はあたしも舌を絡める。
あたし、せつなとキスしてる!嬉しい!!
喜びが私の中で爆発した。もう止まれない!!
「せつな!せつなぁ!」
今度はあたしから。せつなの顔にキスの雨を降らせる。
彼女がもどかしげにあたしのパジャマのボタンをはずしている。
あたしも負けじと、彼女のパジャマを脱がしにかかる。
「ラブ、ラブ!好き!好きなの!!」
普段の彼女からは想像できない程の激しさで、あたしの体を抱きしめてくる。
こんなに、こんなにあたしのことを求めてくれるなんて!
あたしの目じりから涙がこぼれる。
もう、嬉しすぎてどうしたらいいかわかんないよ。
せつなの方を見ると、彼女も涙を溢れさせている。
それはきっと、うれし涙。あたしと同じ・・・涙。
心が痛む。甘く。切なく。
こんなに嬉しいのに。心が痛んで、涙がこぼれるなんて。
嬉しすぎると、悲しい時と同じみたいになるんだね。
あたし、知らなかったよ。
これはせつなが教えてくれた気持ち。
せつなだけが、あたしに与えてくれる気持ち。
二人だけの、大切な気持ち。
せつなの手が、ゆっくりと下腹部に伸びていく。
「あぁ、せつな、せつな!そ、んな。は、げし・・・あ、ああーーっ!」
-しばらくお待ち下さい-
「はぁ、はぁ・・・。」
すごかった。そうとしかいいようがない。
カーテンの外はうっすらと明るくなっているようだ。
一日の始まり。けど、あたしの体は疲労でもうヘトヘトだ。
動かない体とは裏腹に、心は例えようもない充実感で満ちていた。
満ち足り過ぎて、心が破裂しちゃうんじゃないかと思うくらい。
愛情たっぷりだよ~。えへへ。
自分の体を見ると、体中に赤い跡が付いている。
もう、せつな、積極的過ぎ。
もはやあたしの体で、せつなの手と唇がふれていない場所なんて、なかった。
せつなの、ラブになっちゃったな。
口元がほころび、自然と笑みがこぼれてくる。
布団を捲ると、うっすらと赤が混じった、あたしとせつなが愛し合った証が付着している。
あっちゃ~。お母さんになんて言い訳しよう・・・。こっそり洗うしかないよね。
苦笑しながら横に顔を向けると、穏やかな寝息を立てるせつなの顔があった。
柔らかに瞼を伏せながら、彼女も微かに微笑んでいるようだ。
その、せつなの体にもたくさんの赤い跡。
あたしも負けじとせつなに付けた、あたしだけのせつなだっていう証。
誰にも、渡さないんだから。
また、胸がいっぱいになる。
幸せ過ぎるってこういうのをいうのかなぁ~。
にんまりと笑いながら、あたしは、これから始まるせつなとのイチャラブ生活に胸を弾ませていた。
「大好きだよ・・・せつな。」
こうして作戦その45、なんだか眠れないの。せつな・・・一緒に寝てもいい?は、
これ以上ないくらいの大成功を収めたのだった。
~おまけ~
【せつなside】
「せつな、入るよ。」
9929、9931、9941、9949、9967、9973・・・。
「せつな、あたしね。最近せつなに避けられてるみたいで、すごく悲しかったんだ。」
3.14159265358979323846264338327950288・・・。
「あたしの態度が原因で、せつなが戸惑ってるのはわかってる。でも。」
ええっと、ほ、他には・・・。そ、そうだわ!私の中の欲望を倒せばいいのよ!
変身よっ!ビートアップ!
「どうしようもないんだ。あたし、少しでもせつなに近づきたくて。」
真っ赤なハートは幸せの証!熟れたてフレッシュ、キュアパッション!
私の理性を汚すものよ!あこぎな真似はおやめなさい!とうっ!
「せつなにとっては迷惑かもしれない。でも、もう我慢できない。」
ああ!私の理性が!!な、なんて強いの・・・。まるで歯が立たない!
ごめんね、ごめんねラブ。私、負けちゃった。もう、限界だわ。ラブ、私は・・・。
「あたしは・・・せつなの事が好き。友達としてじゃなく、一人の女の子として。」
そう、ラブのことが好きなの。友達としてじゃなく、一人の女の子として…って。え?
ラ、ラブ?い、いま何て?
アナタイマ、ナントオッシャイマシタカ?
私のことが好きって、そう聞こえたのだけれど。
ハッ!これは夢!?また妄想の世界に来てしまったの!?
それなら無問題ね。ラブ。いただきます。
・・・温かい。ラブの唇、とっても温かい。
どして?夢なのに・・・。も、もしかして!
レロレロ。
やっぱり、ラブの口の中もとても温かくて心地いい。
ゆ、夢じゃない・・・夢じゃないのね!
ラブ!ラブラブらぶぅ~。好き好き大好き!!
あぁもう!ラブ!愛してる!!
「ラブ、ラブ!好き!好きなの!!」
~END~
最終更新:2012年03月18日 01:44