新-396

「カオルちゃ~ん!自転車のパンク直せない~!?」
「ごめんなさい…ラブったら…珍しくサイクリング行こうなんて言うから…」
「任せてよ、オジサン何でもできるからね。ほら、ここを外して…」
「ふんふん…」
「ここをこう…」
「ふんふ…ん?」
「で、こうしてこうして…」
「……」
「出来た!ほら、簡単だろ?」

「ダメだわ、カオルちゃん…複雑過ぎてラブの頭もパンクしたみたい…」

*******

「うわ~ん!!カオルちゃ~ん!またパンクしちゃったよ~!!」
「度々ごめんなさい…カオルちゃん……」
「OKOK、チャチャっと直しちゃうから、お嬢ちゃん達はドーナツでも食べて待っててよ」
「わーい!さっすがカオルちゃん!じゃあお言葉に甘えて……パクパクパク……」
「ちょ、ちょっとラブ!」

「よし、出来た、と…。お嬢ちゃん、修理完りょ…って、ありゃ?」
「う~ん…う~ん…」

「ごめんなさい、カオルちゃん。ラブったら待ってる間に食べ過ぎて今度はお腹がパンクしちゃったみたいで…」

*******

「カオルちゃんゴメン……自転車のパンク……その……」
「……何度もごめんなさい…」
「そんなに申し訳なさそうにしなくていいって。……と、こりゃ中のチューブごと変えなきゃダメだな。少し時間掛かるよ」
「そうなんだ……本当にゴメンね。ありがとう」


「せつなもゴメンね…まさかいきなりパンク連発するなんてついてないや」
「いいけど…でもどうしたの、ラブ?突然サイクリングに行こうだなんて…」
「うーん、色々考えたんだけど、車じゃ味気ないし、歩いて回るとそんなに遠くまで行けないしさ。自転車ならそれなりに遠出も出来るしね、あちこち見て回れるでしょ」
「え?見て回る、って?」
「ホラ、いつか平和になって、せつなはもしかしたらラビリンスに帰る事になるかも知れない。だからそれまでに、この世界の事、もっと知ってて欲しいし……。それに、自転車で走った時に感じる風や、流れる景色。そんなのも大切な思い出になるかなって…勿論、あたし達二人の大切な思い出にも、ね」
「ラブ…」
「ん?どしたの、せつな?」
「ううん…なんだかね、今度はあなたの気持ちで私の心がパンクしちゃったみたいなの…」
「わはー、参っちゃったな。それはカオルちゃんでも直せないかも…」
「ふふ、大丈夫よ。もう直ったから。ただ、ラブが……その……空気、入れてくれると嬉しいかしら……」
「え!?く、空気入れるって…そ、その態勢は……こ、こういう事かな?」

ちゅっ。

「ぷは…あんまり空気入れるとせつなホントにパンクしちゃうかも。せつなもチューブ替えることになったりして。チューが原因だけに……なんてね、グハー」
「…バカ」


「さあ、今度は大丈夫!キッチリ直したからさ」
「やったー!さっすがカオルちゃん、完璧!あたし信じてた!!」
「もう、ラブってば浮かれ過ぎよ……ありがとう、カオルちゃん」
「いいっていいって!さ、今日一日、思い切りサイクリングを楽しんでおいで!」

「うん!幸せゲットしてくるよ!」
「精一杯楽しんでくるわ!」



おしまい
最終更新:2011年10月02日 04:54