「わっは~、ふっかふか。美希たんのベッドは柔らかくって気持ちいい~!」
綺麗に整頓された美希の部屋。行き届いたベッドメイク。さっきまで、枕投げで散らかっていたはずなのに。
青一色に整えられた部屋は、奥行きが広く感じられ、さながら小さな海のよう。
真っ白なシーツは、打ち寄せる小波。
違うのは匂い。磯の荒々しい臭いじゃなくて、甘く爽やかなラベンダーの薫り。
「ラベンダーは安眠効果が高いのよ。きっと、素敵な夢が見られるわ」
美希が説明するのを待たず、ラブが飛び出した。
まずはベッドにほお擦りして、ゴロンと敷き布団の上を転がって、みんなもおいでよと手招きする。
「ちょっと、ラブ! プールじゃあるまいし飛び込まないでよ」
「あ~あ、せっかく美希ちゃんが食事中に抜け出して整えてくれたのに」
「そうそうって、なんでブッキーが知ってるのよ?」
「おばさんじゃなかったんだ」
「顔に書いてあるよ?」
「ないわよっ! せつなもジロジロ見ないの、そんなわけないでしょ」
「美希は、見えないところでいつも頑張ってるのね」
「ラブちゃんは相変わらず。せつなちゃんと二人の時もこうなの?」
「そうね、あんまり変わらないわよ」
呆れた顔で話すせつなの表情は、でも、楽しいって感情を隠しきれずにほころんでいた。
子どもなんだから、と溜息を漏らすせつなにラブが抗議する。
「えっ~せつなだってこの前は」
バフン!
せつなの投げた枕が、ラブの顔面を直撃する。
かくして――――止めようとする美希の奮闘も空しく、枕投げの第二ラウンドが勃発したのであった。
『お邪魔しま~す!!!』
ジャージ姿で蒼乃家の門をくぐる、ラブ、祈里、せつな。扉を開いた美希も、首にスポーツタオルをかけたトレーニングスタイルだ。
休日を利用しての、早朝からのダンスレッスン。昼からミユキさんもコーチに加わってのハードメニューだった。
みんなクタクタに疲れていたのだが、表情は活き活きと弾む。
理由は、各自が抱える大きなバックが物語っていた。今日は――――パジャマパーティーなのだから。
「いらっしゃ~い。みんな、ゆっくりしていってね」
「ゆっくりはするわよ、お泊りなんだから」
「もう、美希ちゃんのイジワル。そんな言い方しなくたっていいのに」
「ゴメンってば。今夜の夕食はアタシたちが作るから、ママものんびりしてよね」
「それは助かるわぁ~、美希ちゃんのお料理は味気なくって」
「アタシはママから教わったんだけど……」
後ろでクスクス笑い出した三人に気が付いて、美希が顔を赤らめる。「行くわよ」と、レミを置いてさっさと自分の部屋に上がる。
慌てて後を追うラブたちを、レミは可愛らしく手を振って見送った。
「おばさん、相変わらずね。母娘というより、友達同士の会話みたい」
「もう、恥ずかしいんだから」
「でも、見ていて仲がいいのが伝わってくるわ」
「うん、あたしたちもおかあさんと仲良しだけど、美希たんのとこと少し違うよね」
「そうね。アタシはママの娘だけど、気の合う友達であり、相談相手でもあるのよ」
「だって、美希ちゃんしっかりしてるんですもの。あたしとしては、もう少し頼って欲しいのだけど」
「それはママがだらしないから……。って、なんでここにいるのよっ!」
「お風呂沸いたわよ、って伝えにきたのよ。ローズマリーを浮かべておいたから、サッパリするわよ~」
怒って追い出す美希と、懲りた様子のないレミ。こんな性格だから、二人っきりの暮らしも寂しくないのだろう。
「それにしても、美希たん家のハーブ湯なんて久しぶり~」
「せっかくだから、みんなで入っちゃおうか?」
「ええっ? 私は恥ずかしいから後で入るわ」
「わたしも、自信ないからやめとく」
「お風呂に何の自信がいるのよ? 女の子同士なんだから気にしないの」
「そうそう。行くよっ! せつな」
「きゃっ! ちょっと、ラブったら押さないで」
「わたし、信じてる……」
「だから、何をよ……」
二人暮しとは思えない、豪華で広いバスルーム。アイドルだったレミは、お風呂には特にこだわりがあった。
湯船には可愛らしい花柄模様の布袋が浮かぶ。中にはハーブの茎葉がたっぷりと入っていた。
「美希のアロマ好きは、お母様ゆずりだったのね」
「いい匂い。ずっとこうしていたいくらい」
「そんなの、バスタブに体を隠してる理由にはならないわよ?」
「せつな、背中流してあげる」
「「嫌だって、言ってるのに……」」
生き返ったようにツヤツヤしているラブ。緊張してグッタリ疲れたせつなに、何やら落ち込んでいる様子の祈里。
そんな中、美希はテキパキと髪にタオルを巻き、ローションマスクを貼り付けていく。
「美希たん、毎晩そんなことしてるんだ?」
「当然でしょ? 入浴後は時間との戦いなのよ。さっ、みんなも早くするのよ」
初めての体験に、みんなくすぐったがったり、おかしくなって笑ったり。にらめっこしてるんじゃないんだから、と美希にたしなめられる。
パジャマパーティー。一日だけでも違う家庭の暮らしに触れると、新しい発見も多い。
感じ方や考え方の違い。個性と呼ばれる人のあり方の違いの多くは、日々の暮らしから生まれるものなのだろう。
スキンケアが終わるのを待てずに、ラブがキョロキョロしながら辺りを物色し始める。
勝手知ったる幼馴染の部屋。トランプを見つけて遊ぼうと持ちかける。
「はしゃぐのはもう少し後にしてね。後十分くらいは動いちゃダメよ」
「じゃあね、せつな、占いしてよ」
「いいけど、何を占えばいいの?」
「え~っと、明日の運勢とかかな?」
「せつなちゃん、また占いするようになったのね」
「アタシは占いなんて信じないわよ」
「ふ~ん? じゃあ、美希の運勢を占ってあげる。最悪ね、この先きっと良くないことが起こるわ」
「ちょっと! 縁起でもないこと言わないでったら」
「冗談よ、やっぱり気になるんじゃない」
「ゴメンナサイ……」
「でも、運勢ってなんだろう。運命って始めから決まってるものなのかな?」
「わからないわ。私にとっては、運命はメビウス様が決定されるものだったから……」
「せつなっ!」
「せつなちゃん?」
「せつな、あなた……」
「いいの。もう、私はイースであったことを受け入れようって決めたの」
せつなは、真摯な眼差しでみんなを見つめる。
それは、あの日に決意した想い。未来にかける願い。ダンスユニット“クローバー”の再結成の誓い。
そんなせつなの想いを受け止めて、みんなは――――みんなは……一斉に吹き出した。
「ちょっと、何が面白いのよっ!?」
「だって……、ククク」
「そんな顔で、アハハ」
「パックが崩れちゃう……、クスクス」
「もうっ! 許さないんだから!」
せつなの投げた枕が、美希の頭をわずかに掠める。美希はチラリと時計を見てから、不敵な表情でパックを外した。
ラブと祈里も、顔を見合わせて同時に剥がした。
せつなも力強く剥ぎ取った。パックにも劣らない真っ白な素顔が、戦士の表情を形作る。
「ちょうど十分ね、受けて立つわ!」
「私に勝てると思ってるの?」
「恒例、枕投げ対決、行くよ!」
「負けないんだから!」
ここに、パジャマパーティー史上、最大の決戦の火蓋が切って落とされたのだった。
「今夜はあたしの特製のハンバーグだよ」
「私も、クリームコロッケに挑戦するわ」
「じゃあ、アタシは付け合せのサラダでも作ろうかな」
「わたしは……。みんなのお手伝いをするね」
今度はみんなで夕食の準備。
パジャマ姿のままで、上からエプロンを付ける。一見、お遊戯じみているが、実は彼女たちの腕は中々のものだった。
各自の得意料理。別々に作るかと思いきや、ラブとせつなは作業を分担しあって調理を進めていく。
包丁を握るラブと、下味をつけるせつな。左右に行き交う食材たち。
“焼き”と“揚げ”だけは、それぞれの手で行った。
「この二人って、……一体……」
「シェフじゃないんだから……」
前回のパジャマパーティーと比べても、遥かに腕を上げた二人の手付きに目を見張る。
美希も負けじと、豊富な食材を使って、色とりどりのサラダを完成させた。
テーブルを埋め尽くす料理の数々に、レミも驚きの表情を浮かべる。
ハンバーグにコロッケ。サラダに炒め野菜。スープにデザート。
栄養のバランスもしっかりと考えられていて、ボリュームはあるが見た目ほど量が多いわけでもない。
『いただきま~す』
「いいわねぇ~、家庭でこんなに美味しいご飯が食べられるなんて」
「いやぁ~、それほどでも」
「おかあさんは、もっと上手なんです」
「わたしのお母さんのお料理も、負けないくらい美味しいのよ」
「要するに、ママがダメなのよね」
「ヒドイ! 美希ちゃん」
絶え間なく沸き起こる笑い。食卓を囲む笑顔。久しぶりに賑やかな蒼乃家の食卓に、レミも嬉しそうだった。
食後の後片付け。四人一緒だと、そんなことも楽しくて。お話しながら、ゆっくりとテーブルやキッチンを綺麗にしていく。
「美希のお母様は、とても綺麗ね」
「急にどうしたの? 初めて会うわけでもないのに」
「容姿のことじゃなくて、姿勢とか、立ち振る舞いとか、食事の作法とか」
「うん、ママが言ってたの。美しくなりたいのなら、常に他人の視線を意識しなさいって」
せつなはテーブルを拭いてるレミに目を向ける。作業としては決して誉められた手付きじゃないけれど、物腰がとても上品で優雅だった。
経験が人を形作り、それが後の自分の生き方や、家族や友人にまで影響を与えていく。
美希のモデルへの憧れも、アイドルであった母親の、生き方や美しさと無縁ではないのだろう。
そして、思う。
だとしたら、自分は過去から何を得たのだろう。この先、それによって何を伝えていけるのだろうかと。
食事を終えて美希の部屋に戻る。そこで二度目の枕投げの後、一息ついてから、今度は美希が小さい頃の写真を引っ張り出してきた。
ラブと祈里も、申し合わせていたのだろう。それぞれバックの中から、古い表紙の分厚いアルバムを取り出した。
三人の写真は、本当に小さな頃から一緒に映っているものが多かった。
同じ日に撮ったのだろうと思われる写真もあった。
「こっちが弟の和希。アタシとラブとブッキーは~」
「クスッ、わかるわよ。面影がそのまんまじゃない」
「あはは、まだ十五歳だし、あんまり変わらないよね」
「わたし……可愛い」
「えっ?」
「ブッキー、今、なんて?」
「あっ、ううん、なんでもない!」
なぜか拳を握り締めた祈里に、一同が訝しがる。
そんなつぶやきはともかくとして、幼い頃の三人はどれも愛らしかった。
「本当に可愛い。抱きしめてあげたくなるくらい」
「ホントッ? 恥ずかしいけど、せつななら……」
「ばかっ、小さい頃のラブの話よ」
「たはは、でも、せつなの小さい頃だってすっごく可愛かったろうな~」
「……なかったと思うわ。可愛げなんてなかったもの」
「そんなことないよっ! 目付きの悪い小さなイースだって、絶対に可愛いって!」
「ラブちゃん、それ、フォローになってないと思う……」
「ゴメン、せつな。悲しいこと思い出させちゃった?」
「平気よ。アルバム見せてもらうの初めてだったから、とっても嬉しいわ」
「それはね――――」
早くから美希の提案で、アルバムはせつなには見せないようにしようと話していたらしい。
幼い頃の思い出のないせつなにとって、羨ましい写真かもしれないからって。
同じ理由で、それぞれの誕生日パーティーを盛大に祝うこともしないようにしていたのだとか。
「ごめんなさい、気を使わせていたのね。でも、今になってどうして?」
「最近、せつなの様子が変わったからかな」
「美希ちゃんがね、今ならいいんじゃないかって」
「ゴメン。あたし、せつなの気持ちも考えないで、おじいちゃんの写真で騒いじゃったことあったよね」
せつなは首を振って、謝るラブたちに微笑みかける。本当に、自分の知らないみんなの姿を見ることができて嬉しいって。
正確には、せつなは幼い頃の写真がないわけではない。データーという形で、幼少時の姿は記録されている。
しかし――――それは思い出と呼ぶにはかけ離れたものだった。
心の通わない、証明写真のようなものだった。
そんなことまで素直に話せる自分を不思議に思いながら、アルバムを通して、しばらく三人の思い出の中を旅した。
「ねえ、ラブ? これは……。クスッ、もう寝ちゃったのね」
「ブッキーもよ。二人とも、ダンスの練習で疲れていたのね」
「美希は平気みたいね?」
「アタシは鍛え方が違うもの。せつなこそ余裕そうじゃない?」
「そうね。それも……寂しい過去で、笑顔と引き換えにして得たものよ」
美希は立ち上がり、ベッドを占拠して眠るラブと祈里にそっと布団を掛けた。
二人は互いに向き合って、体を丸めて、おでこをくっつけ合うようにして眠っていた。
「こうして見ると、まるで姉妹ね。ううん、美希もそう」
「否定しないわ。幼馴染って、姉妹にも似た関係なんだと思うもの」
ラブと祈里は一人っ子。美希には弟がいるが、離れ離れに暮らしているのでやっぱり一人。
そんな寂しさを埋めあうように、三人はいつも一緒に過ごしてきた。
「それで、ラブに何を聞こうとしていたの?」
「この写真よ、三人とも泣いているわ。それに、ラブがなんだか怒ってるみたいで」
「ああ、それはね……」
それは、美希が弟の和希と別れ別れになって、しばらくした頃のことだった。
当時、美希は少しだけ荒れていて、祈里に八つ当たりして泣かせてしまったことがあった。
駆けつけたラブが祈里を庇って、美希に食ってかかったのだ。そして喧嘩になって、結局は三人とも泣き出してしまった。
「アタシってもともと生意気な子だったし、あの頃は特にね。だから、ラブまでアタシを嫌ったんだって思って泣いちゃったの」
「ラブは、誰かを嫌ったりなんかしないわ」
「そうなの。後でわかったんだけど、ラブはブッキーを庇ったんじゃなくて、アタシを心配して叱ってくれたらしいの」
「ラブは、小さな頃からラブなのね」
「うん。あの時ラブが叱ってくれなかったら、アタシはきっと嫌な子になってたと思う」
「それで、いつもラブがリーダーなのね」
「そうよ、ほらっ、あの子って怒らせると恐いでしょ?」
「クスッ、そうね。それはよくわかるわ」
ちょっとだけ似た境遇。小さな秘密を分かち合って、美希とせつなは顔を見合わせてクスリと笑う。
美希がラブと出会って変わったのなら、それは自分と同じだと思う。
いや、同じではないのだろう。
幼い頃に出会っていたら、人格がかたまる前に知り合っていたら、自分も幼馴染であったのなら……。
一体、どんな人間になれたんだろう。
遅すぎる出会い。取り返しの付かない過ち。夢であってほしかった現実。
もっと早くに、幼馴染として出会えたなら……。そうしたら、どんな今があったんだろう。
「美希、ここだけの秘密にしておいて。私は、やっぱりあなたたちがうらやましい。私も、この中の一人になりたかった」
「もう、なってるじゃない? 幼馴染じゃなくても、せつなはアタシたちにとって、他の二人と同じくらい大切な仲間よ」
「だって、遅すぎるじゃない」
「ねえ、聞いて」
美希は静かに話す。ずっと一緒、そう思っていた三人が、バラバラになってしまった日のことを。
当時、小学校六年生だった美希は、読者モデルとしての第一歩を踏み始めた時期だった。
読モとは言え、本物のモデル業界の厳しさを肌で感じ取った美希は、このままでは夢が叶わないことを知った。
そこでレミと相談して、芸能学校である、私立鳥越学園への進学を決意したのだ。
それは、ラブや祈里と別れ別れになることを意味していた。
ラブは涙を堪えて、懸命に堪えて、がんばってと応援してくれた。
祈里はしばらく泣きじゃくったが、やがて自分も獣医の夢を求めて、進学校である私立白詰草女子学院に行くことにした。
中学生になってからも交流は続いたが、別々の時間を、別々の友人と過ごすことも多くなっていた。
いつも一緒。そんな関係は、夢と自立の名の元に崩れ去っていった。
「このまま、少しづつ距離が開いていくと思ったの。そして、いつかは会うこともなくなるんじゃないかって」
「でも、そうはならなかった。私たちの、ラビリンスの襲撃があったからね?」
「ええ、プリキュアとダンスね。同じ使命と夢を持てたアタシたちは、また一緒に行動するようになった」
「皮肉なものね。大きな不幸が、小さな幸せをもたらしたなんて」
「アタシにとっては小さくなかったわ。イースが現れてアタシたちは集い、せつなの加入でアタシたちは一つになれたのよ」
「私が遅れて来たことにも、意味があったのかしら」
「アタシは三人で完璧だって思ってた。でも、違ったの。せつなが加わって四人になって、それでクローバーは初めて完璧になるのよ」
美希は続ける。せつながこの世界に来て様々な幸せを学んだように、美希たちもまた、せつなの不幸からたくさんの大切なものを学んだのだと。
失ってはならないものが何なのか。本当に人を幸せにするものは何なのか。それをせつなが教えてくれたのだと。
だから、自分たちもまた、あんな答えが出せたのだと。
「私の過去も、無駄ではなかったってこと? 笑顔と幸せを、導く力になれるってこと?」
「それは、この先のアタシたち次第なんじゃないかしら?」
「精一杯、頑張るしかないってことね」
「そしたらきっとできるわ、アタシたちは完璧なんだから。でも、一言だけ伝えたいの」
「なあに?」
「せつなのおかげで、アタシたちはまたクローバーを結成できた。だから……ありがとう」
「美希、私も占いなんて信じない。運命が無数の選択肢なら、最高のものを掴み取るわ。ないなら、無理やりにでも作るから」
「じゃあ、占いはやめちゃうの?」
「やめないわ。それも、私の過去の一部だもの。納得の行く結果が出るまで、何度だって占うだけよ」
「クールなイースが、大人しいせつなが、実はこんなに熱い子だったなんてね」
そう言いながら、美希は布団をせつなに被せて、自分も一緒に潜り込んだ。
せつなの手を握って、何か言おうとするせつなを、「おやすみなさい」って言葉で遮った。
「おやすみなさい、美希」
その夜、せつなは夢を見る。小さなせつなが、四つ葉町に来た夢を。
初めて見るはずなのに、不思議と馴染みのある公園。そこで仲良く遊ぶ、同じ歳くらいの三人の女の子たち。
ツインテールの子が、せつなの視線に気が付いて手を差し伸べる。
「あたし、ラブってゆーの。よかったら、いっしょにあそぼう!」
「わたしは、せつなよ。ひがしせつな。あそんでくれるの?」
「アタシは、あおのみき。みきってよんでいいわ」
「わたしは、やまぶきいのり。ぶっきーよ。せつなちゃんでいい?」
「さあ、いこう。おにごっこしってる? あたしがおいかけるから、せつなはにげるんだよ」
「わたしをつかまえられるとおもってるの?」
「そんなのわかんないよ、はじめてだもん」
「よーい、どーん!」
「いーち、にー、さーん」
「みてないで、にげるのよ、せつな」
「あなたは、みき?」
青い髪の女の子が、せつなの手を引いて逃げる。風に揺れる長い髪が綺麗で、あたたかい手の感覚が嬉しくて。
追いかけて来る、ツインテールの髪の子の笑顔がまぶしくて。
いっそ、捕まってしまいたいくらいに嬉しかった。
気が付くと、隣のサイドポニーの髪の子が、心配そうにせつなを見つめていた。
目が合って、嬉しそうに笑う。
せつなは走る。この素敵な仲間たちと、過去から未来に向けて真っ直ぐに。
いつまでも――――どこまでも。
最終更新:2011年10月09日 23:20