「うわぁ!おいしそー!」
嬉しそうな声に読んでいた本から顔を上げると、
そこには2つ折りにしたようなスポンジ生地をもって目を輝かせているラブがいた。
「ラブ、それ、何?」
私が聞くと、今日のおやつだってー、とにこにこしながら答える。
「ね、せつなー。はやく食べようよー」
ラブは待ちきれないといった様子で、私を呼んだ。
「もう、ラブは食いしん坊さんね」
だってー、と笑うラブの元へ私も笑いながら近づいていく。
「はい、せつな。あーんして?」
「――――へ?」
予想外の出来事に全身が固まった。
いつのまにか2つに割ったパンの片方を私の前に差し出して、
わずかに首をかしげたラブは、とても愛らしくてなんだかどきどきしてしまう。
突然のことに私が戸惑っていると、せつな、どうしたの?と
顔を覗き込むようにしてラブが近づいてきた。
私の鼓動はさらに高まり、あわてて目の前のパンにぱくりとかみ付いた。
ふわふわのスポンジを口に含むと、その間にはさんでいたイチゴクリームの香りが
口いっぱいに広がり、一瞬今の状況を忘れてしまった。
「どう?せつな、おいしい?」
その言葉に、はっと我に返る。
ラブの顔が思いのほか近くにあって、また心拍数が跳ね上がる。
「――――お、おいしいわ。でも、立ったまま食べるなんてお行儀が悪いわよ」
ぱっと後ろに下がって、照れ隠しになぜかマナーの注意なんかをしてしまった。
せっかくのラブとのスキンシップだったのに・・・。
うなだれて自己嫌悪に陥っていると、ラブの明るい声が聞こえた。
「あ、そっか!あはは、ごめんごめん」
じゃあ座って食べよっかーと、暢気に笑いながら机に向かうラブを見ていると、
自分だけがどきどきしていることがなんだか悔しくなってきた。
私は素直に座ってパンを食べているラブに歩み寄り、
ぐっと顔を近づけるとそっと囁いた。
「クリーム、ついてるわよ」
そしてすぐさまラブの唇の脇に口付ける。
そこまではよかったが、ラブから唇を離すと突然恥ずかしくなってきてしまった。
熱くなる頬を隠すように勢いよくラブから離れると、
くるりと向きを変え、私は脱兎のごとく逃げ出した。
でも、部屋を出るときにちらりと見えたラブの顔が真っ赤だったから、
おあいこってことで、ま、いっか。
ラブに触れた唇にそっと指をあてて、頬が緩むのを感じながら、
私はゆっくりと目を閉じた。
最終更新:2009年08月22日 21:47