メビウス統治下のラビリンスに、祝日というものはなかった。一日にある程度の休憩時間は存在したけれど、それも全くの自由というものではなかった。
復興にあたって、祝日を設けることを提案したのは、あのウエスターだった。彼はインフィニティを探すという名目で、相当に散策を楽しんだからだろうか。まとまった時間を作り、旅行することを人々に勧めた。
その結果、恐らくウエスターの思惑とは違った形に事は進んだ。ラビリンスの人々は祝日を使って、被害を与えてきたパラレルワールドに出向いた。そうして、これまでラビリンスが行ってきた罪を、真摯に見つめ直し、これからどうすべきかを、一人ひとりが考えるようになった。
娯楽として旅行を楽しむという、ウエスターの発想は、娯楽を知らないラビリンス人には、まだ理解できなかったのだろう。突然手に入れた時間に使い道を見出せず、途方に暮れていた。
せっかく設けた祝日に、パラレルワールドを見て回ることを提案したのは私だ。これからのラビリンスは、全てをメビウスのせいにして、過去のことにするわけにはいかない。メビウスの罪を償うのは、残されたラビリンスの人々なのだから。
パラレルワールドとの交渉では、サウラーが活躍している。口が立ち、人心掌握も得意で、群を抜いて外交に向いているのだ。彼が関わったパラレルワールドの安定率は高い。とはいえ、この能力でこれまでに、随分と制圧してきたことを思えば、複雑だとも呟いていた。
最初の頃は、私もそれなりに動いていたけれど、男尊女卑の文明が多いという事実を受けて、この手の活動は少なくしている。
ウエスターと私は、主に内政に携わっている。ウエスターは公の場に顔を出しては、人々と草の根の交流を図っている。そう、例えるならミユキさんのような、そういった存在になってしまった。老若男女問わず、人気者になっている。これが彼の才能だったのか。今、ラビリンスに一番必要な存在かもしれない。不思議なものだ。
私はと言えば、インフラなどの社会整備、政治体制や治安維持などを考えては、暫定会議で議論に参加したり、現場視察したり、そんなところ。どうも、私には裏方が向いていると思う。
過去のラビリンスについての資料は、メビウスに抹消され、参考にできない。そのため、地球を始め、パラレルワールドの体制を参考にしている。
メビウスの体制も、確かに効率的ではあっただろう。でも、人間は機械ではないから。プリキュアがきっかけとなり、メビウス体制が崩壊したのは間違いないけれど、人々に溜まっていた疑問や我慢、そしてメビウス自体の限界もあったのだろう。
こんなことを追想しているのは、あれからもうすぐ一年になるからだろうか。あちらは
クリスマスシーズン、四ツ葉町も着飾っていることだろう。
クリスマスは元々、宗教から来ているもので、ラビリンスには適さない。それでも、これまで家族関係も希薄だったラビリンスの人々のため、家族と過ごす時間を大切にしよう、という目的の祝日は設けられた。
日本のように、異性と過ごす日というのができるのは、まだ先の話だろう。
ラビリンスで作った暦と、地球の暦は異なるから、双方の休日が重なるのは、月に一日から三日ぐらいだ。その時には、できるだけ桃園家で過ごすようにしている。
アカルンのおかげで、ラビリンスからでも、リンクルン同士で連絡できるのはありがたい。クローバーが揃うことも少なくない。
今度のクリスマスに、ラブ、美希、ブッキーの3人は、集まってパーティーすることを決めている。
結局、クローバー4人とも、彼氏といえる存在はいない。それに、そのことを気にも留めていないのだ。
以前、その話になったことがあるけれど、想像できないだの、欲しいと思わないだの。年頃の娘としてどうなのかと、笑いあったものだ。
私もクリスマスパーティに誘われた。もちろん行きたいけれど、ラビリンスの方は休日ではないから、ひとまず保留にしておいた。
その後、私はクリスマスを挟む仕事を頼まれた。私がその返答に一瞬の迷いを覚えた時、その場に居たサウラーが、変わりに引き受けてくれた。
その時に、もっと正直になってもいい、などと言われ、お見通しのようで悔しいやら、頼もしい仲間がいてしあわせに思うやらだった。
また、サウラーから話を聞いたウエスターは、お土産にクリスマス限定ドーナツを要求してきた。
何故か彼は、ここのところ引っ張りだこで忙しいようだ。人気者は辛いだなんて、全く辛そうに見えない顔で笑いながら言っていた。流石に、体力に自信があるだけはある。ウエスターが疲労困憊したなんて話、聞いたことが無いもの。
サウラーとウエスターには、おみやげ兼クリスマスプレゼントに、何かあちらで探してこよう。ドーナツとは別にね。
クリスマスに私は、ラビリンスの写真をラブたちに見せようと思う。ラビリンスに戻った笑顔で、ラブたちも笑顔になるはずだから。
ああ、どうしよう。お母さん。私、もう十分に、しあわせになっているわ。
それでも、過去の自分がどうしても許せない。だから、より多くの人をしあわせにできるように、精一杯、頑張ろう。
撒いてしまった不幸の何倍も、しあわせを届けよう。しあわせのプリキュア、それが私の使命なのだから。
クリスマスは、ラブたちに、しあわせを届けたい。
といっても、きっと私のほうが、ずっとしあわせになるのだろうけれど。
Fin.
最終更新:2011年12月22日 00:12